スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
web拍手 by FC2

--/--/-- --. --:-- [edit]

category: スポンサー広告

cm --  tb --  

第九話 4 王の課題 

「ぼくじゃありません!」

チョン博士の目が、じっと自分に注がれるのを感じ、ユニは必死に訴えた。

「先生、本当です。ぼくは何も」
「成均館の学生が、恥を知れ」

インスが、配下を従えてユニに歩み寄る。

「問題は、盗みだけではない。成均館の薬包は、恵民署から届けられる。つまり民の血税であり、貧しい民に還元されるべきものだ。それを売って稼ごうとするとは───」
「まだ断定はできません」

ユニより先に、インスの言葉を遮る者がいた。振り向くと、そこにいたのはソンジュンだった。
どきりとした。真っ直ぐにインスを見据える彼の視線が、一瞬戦慄を覚えるほど鋭く、冷たいものだったからだ。

「キム・ユンシクには、病気の弟がいます。薬包を売りはしないはずです。必要なら、自宅に使いをやり、確認してはいかがですか」
「号牌より確かな証拠があるか?」

あくまでユニを犯人と見なそうとするインスに、待ったをかけたのはユ博士だった。

「イ・ソンジュンの言うとおりだ。キム・ユンシクの家に使いをやって、確認することとする」
「待ってください、それは……それは、困ります」

ユニが拒否したのは、ほとんど反射的だった。泥棒の濡れ衣を着せられるのはたまったものではないが、家には本物のユンシクがいる。いきなり誰かに来られるのはもっと困る。下手をするとコソ泥なんかよりもっと重い罪が露見してしまう。
ソンジュンの咎めるような視線が自分に向かうのは感じたが、どうしようもなかった。
インスが微かに口の端を上げ、ユ博士に言った。

「この件は、斎会〈チェフェ〉にお任せいただきたい」
「斎会に?」

大司成が声を上げると、インスは、まるで予め用意していたかのように、よどみなく答えた。

「成均館の中で起こったことは、義禁府ではなく、成均館の中で片をつけるべきでしょう。キム・ユンシクを斎会において断罪し、成均館の儒生としての責任を果たし、たった一人の卑しい学生によって傷つけられた我々成均館儒生の名誉を守ります」

と、そのとき。

「───では、その議長は余が務めよう」

通用門の方からいきなりそう告げる声が聞こえた。その場にいた者たちは皆はっと息を呑み、一斉に頭を垂れた。
数人の内侍や武官を従えて、成均館の中庭に現れたのは誰あろう、王正祖その人だった。

「へ、陛下!なぜこちらに……?」

低頭しながらも、大司成があからさまに狼狽えた声を上げる。王は構うことなく、高らかに宣言した。

「この事件を、此度の旬頭殿講の課題とする」

儒生たちが、腰を折ったまま互いを見交わす。どの顔にも、困惑の色が浮かんでいた。
ユニは上目遣いにそっと、王を見た。
王宮で初めて尊顔を拝したときや、大射礼のときのような龍袍姿ではない。ごく普通に両班の男が身につけるような道袍を着てはいるが、その身から発せられる名状し難い雰囲気というか、威厳のようなものは、明らかに他の者たちとは違う。
この人はやはり王なのだ、とユニは思った。そして同時に、畏怖も覚えた。

「キム・ユンシク。そなたは退学だ」

王の言葉に、ユニは凍りついた。だが王は儒生たちに向かい、続けた。

「ただしそれは彼が、盗難事件の真犯人だったらの話だ。薬包を売った者が、成均館の盗品を売ったという疑いが強い。その薬屋で、キム・ユンシクの号牌が見つかった。だが本人は無実を主張している。キム・ユンシクが無実と思う学生と、犯人だと思う学生、二つの組に別れ、それぞれ余にその根拠を証明して見せよ。これが、今回の旬頭殿講の課題だ」

大司成がおずおずと切り出す。

「しかし陛下、旬頭殿講とは本来、経典の講経〈カンギョン・暗記試験〉と製述〈チェスル・論文試験〉を行うのが決まりですが……」
「では聞こう。今、ここにいる学生たちに、儒教の教えを論じる資格があるか?」

王はにわかに強い口調で切り込んだ。

「万が一、キム・ユンシクが犯人なら、成均館は泥棒を育てたことになる。そんな教育者や学生たちに、儒学の礼と法を語る資格はない」
「しっ、死をもって償います!」

ユ博士以下、教官たちが痛切な表情で一様に低頭する中、大司成は半泣きで平伏した。

「そしてもし、キム・ユンシクが犯人でないなら、事件はでっち上げられたもので、彼は濡れ衣を着せられたことになる。罪を被せた学生にはここで学ぶ資格など、もはやありはしない。故に、余は今回の事件をもって、試験問題とするのだ。───掌議」

王はインスに向かい、尋ねた。

「はい、陛下」
「都の治安はどこの管轄だ?」

漢城府〈ハンソンブ〉です、とインスが即答すると、王は頷き、学生たちに再び向き直った。

「ここにいる全員に、事件を捜査する権限を与える。旬頭殿講の慣例に従い、期限は2日。余はこれより、成均館の学生たち全員を、2日間漢城府の権知〈クォンジ〉に任命する」
※権知……実習生

*   *   *

「漢城府の権知とは……一介の学生たちに、何ができるというんです」

正録庁では大司成とユ博士、そして数名の書吏たちが渋い顔を突き合わせていた。チョン博士は、話があるという王に付き従い、薬房に戻ったままだ。

「それにしても、なぜ陛下はそんなことを?」

ジャンボクの問いに、大司成はため息混じりに答える。

「ご自身が入学させた学生を退学させないためでしょ。私に耳打ちしてくだされば、ぱっと解決したものを」
「ですが……本当にキム・ユンシク庠儒が犯人なんでしょうか」

心配そうに尋ねるチュンホは、彼が犯人だとはとても信じられない様子だ。ユ博士も同様だったが、その表情は一層険しい。

「たとえ彼が無実だったとしても、真犯人捜しは難しいだろう。既に盗品は売り払われ、犯人は行方をくらましているはずだ。たった2日で、どれだけのことができるか……」

そこにいる誰もが、真実はどうあれ、キム・ユンシクの退学は確定したも同然だと思った。
重苦しい沈黙が、正録庁に流れた。


一方、王が退出した後の明倫堂の中庭では、ユニを前にインスが冷ややかな笑みを浮かべていた。

「安心するな。言っておくが、状況は何も変わっていない。単に、お前の退学が2日延びたというだけだ」

インスはユニに視線を据えたまま、宣戦布告するかのように、言った。

「私はキム・ユンシクの罪を立証し、王の前に、失墜した成均館儒生の名誉を回復する。志を共にする者は?」

おお、とその場にいた大多数の者たちから一斉に声が上がった。
ぞろぞろとインスの後について清斎に戻っていく儒生たちに、わかってはいたことだが、ユニの気持ちは沈んだ。
普段仲の良いドヒョンやヘウォン、ウタクは流石に気が引けるのか、しばらくぐずぐずしていたが、やはり掌議の威光には勝てなかったらしく、気まずそうに言った。

「すまんな、ユンシク。俺はお前の潔白を信じちゃいるが……なんせ、成績がかかってる」
「この状況で無実の側に回ったら、間違いなく不可をくらっちまう。恨むなら、成績重視の社会を恨め」

やっぱり人数の多い方が確実だからな、とそれぞれに言い訳ともつかぬことを言って、ユニの肩を叩き、行ってしまった。

結局。

その場に残ったのはユニを除けば、ソンジュン、ジェシン、ヨンハの3人だけだった。





↓楽しんでいただけたらポチっとお願いします
にほんブログ村 小説ブログ 韓ドラ二次小説へ
スポンサーサイト
web拍手 by FC2

2012/06/27 Wed. 22:35 [edit]

category: 第九話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

cm 0  tb 0 

コメント

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://amaru0112.blog.fc2.com/tb.php/99-4540ac4a
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

2017-08
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。