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第九話 3 泥棒騒ぎ 

「おい義弟〈メジェ〉、ここにいたのか」

立ち去ったユンシクと入れ替わるように、ソンジュンに声を掛けてきたのはインスだった。初耳だったのか、その横で、ビョンチュンが「義弟ですって?」と驚いたように目を剥いている。
インスは構わず、うっすらと口元に笑みを浮かべた。

「聞いたぞ。結婚の話」
「少し誤解があっただけです。すぐに解決しますので、どうぞご心配なく」

「誤解?」とインスが面白そうに眉を上げた。

「お前は息子だというのに、私より左議政様のことをわかっていないようだな」

そう言って、ソンジュンの肩に手を置く。仕草だけを見れば親しげだが、ソンジュンの不快感は拭いようがない。こんな男と義理でも兄弟になるなど、悪い冗談だ。考えるだけでぞっとする。

だがインスは既に自分の勝利を宣言するかのように、言った。

「覚えておくがいい。お前の父親の決定は、王さえも覆すことはできないのだ」


*   *   *

講義のない日の明倫堂は、一人になるにはいい場所だ。
予習や試験勉強をする儒生たちは大抵、自室にこもるか尊経閣に行くので、だだっ広いだけで何もない講義室にわざわざ足を運ぶ者はいない。いるとすれば、学則で禁じられている書写や代筆業で小遣い稼ぎをしている───つまりは、ユニくらいのものだった。

“愛しいあなたへ”

恋文の代筆なんて、やっぱり引き受けるんじゃなかった、とユニは今更ながら後悔した。
冒頭の宛名がこれでいいのかどうかもわからない。
しかも、恋する者の気持ちを代弁しようと思ったら、ユニの場合、どうしたって浮かんでくる面影がある。

文机に向かっているときはぴんと背筋が伸びているのに、歩くときはほんの少しだけ猫背気味になる後ろ姿。
振り向くとき、肩越しに見える怜悧な頬の線と、長い睫毛。
いつも気難しい顔をしているけれど、たまに笑うと、子供みたいになる表情と、右の目元に寄る、微かな皺。
キム・ユンシク、と呼ぶときの、低くて甘い声───。

はっ、とユニは慌てて筆を上げた。紙に筆先を下ろしたままにしていたので、文字がすっかり滲んでしまっていた。

───涙のあとみたい。

ふと、そんなことを思った。

ソンジュンとの別れ際、インスが彼に向かい“義弟”と呼びかけるのを確かに聞いた。
芙蓉花との縁談が決まったのかもしれない。
気にはなったが、距離を置こうと決めた矢先に、そんな突っ込んだ話を本人には訊けなかった。
それに、事実がわかったところでどうなるというのか。
友でいることすらやめた自分には、全く関係のない話だというのに。

彼女は小さく溜息をつき、書きかけの手紙を丸めた。

明倫堂を出ると、日はもう傾いており、ひんやりとした風が首筋を撫でていった。少し前までの、まとわりつくような生温い空気は既に無い。いつの間にか、だが確かに、季節は変わっていたのだ。

草むらから響く虫の音を聞きながら、東斎への道をゆっくり歩いていたユニは、反対側から、大股でこちらへやってくる背の高い人影を見た。薄暗くはっきりと顔は見えないが、それでもわかる。髷も結わず、肩まである髪をあんな風になびかせているのは、この成均館では一人しかいない。

ジェシンはユニの前に立つと、深呼吸でもするように肩をひとつ上下させ、言った。

「テムル、お前……」

そう口にはしたものの、彼はまるで喉に息を詰まらせたかのように、言葉を切ってしまった。

「先輩?」

何かあったんですか、と無精髭の顔を覗き込む。だがジェシンは、「お前は、その……だから」と、彼らしくもなく意味のない言葉を並べるばかりである。

やがて、頭の中をひっかき回してやっと探し当てたのだろうか。彼は言った。

「お前がここに入った理由は何だ?」

唐突な質問に戸惑って、ユニはジェシンを見返した。頬を歪めた彼の表情〈かお〉は、有り得ないことだが一瞬、泣いているようにも見えた。

「あのことか?お前は何もかも……知ってたのか?」

あのこと?

一体何のことかと聞き返そうとしたそのとき。
書吏のチュンホが慌ただしく駆け寄ってきて、彼等に告げた。

「大変です!すぐに清斎にお戻りを!」


ユニがジェシンと清斎に戻ってみると、そこは蜂の巣をつついたような大騒ぎとなっていた。
東西を問わず、寮生たちが次々と外に飛び出してきては、金や物が失くなったと大声で喚き散らし、右往左往している。
ウタクなどは、どうもいつもと顔が違うと思ったら、眼鏡を掛けていなかった。どうやら、今朝自慢していた煙水晶の眼鏡紐を、眼鏡ごと持って行かれたらしい。
ほんのちょっとしか外してなかったのに、と、小さな目をしょぼしょぼさせながら彼は嘆いた。

もともと泥棒が盗んでくれるほど価値のあるものなど持っていないユニは、自分の部屋を確認する必要すら感じず、ただ呆気にとられてその光景を見つめた。
確か、贅沢品の持ち込みは禁じられているはずだが、いったい彼等はどれだけ学則を犯していたのだろう。
自分の内職なんてまだ可愛いものだと思った。

「まったく悪趣味なコソ泥だよ。どうせ盗むなら、服の色合わせくらい考えればいいものを。お陰で明日から着るものに苦労しそうだ」

ユニとジェシンの傍にやってきたヨリムが、儒生たちの慌てぶりを眺めやりつつ、言った。

「ヨリム先輩も被害を?盗まれたのは、服だけですか?」
「いいや。紫禁城が失くなってる。完成に一年もかかった手工芸の名品だぞ。畜生、ふざけやがって……!」

彼にとっては、服や金などよりも、紫禁城の模型を盗まれたことが余程悔しかったのだろう。珍しく口汚い言葉を吐き捨て、唇を噛んだ。


チョン博士の話によると、泥棒の被害にあったのは、清斎だけではないようだった。薬房からもごっそり薬の束が消えたらしく、儒生たち全員を中庭に並ばせた大司成は、翌日に旬頭殿講を控えているということもあってか、これ以上ないほど憮然とした表情をしていた。

「わ、私は食あたりで動けませんでした!チョン先生もご存知のはずです!」
「私は、ウタクと尊経閣で旬頭殿講の準備をしてました。他にも大勢いましたから、訊いてみてください」

そこで始まった事情聴取は、全く後ろ暗いところのない者たちをも震え上がらせた。何せ、普段から眼光鋭いユ博士が、その目を更に底光りさせて一人一人の顔を間近でじっと見据えてくるのだ。吟味される方の緊張感といったら、尋常ではなかった。
そのユ博士が、目の前で立ち止まる。ユニの番だ。

「キム・ユンシク、君はどこにいた?」
「ぼくは、明倫堂にいました」
「何をしていた」

一呼吸置いて、答えた。

「ぼくも、旬頭殿講の準備をしてました」
「誰か証人はいるか?」
「それは……」

ユニは言いよどんだ。恋文なんて、たとえ代筆でも人のいるところで書けるものではない。わざわざ誰もいない場所を選んで行ったのだから、証人などいるはずもなかった。
すかさず、後ろの列からビョンチュンが声を上げた。

「おかしいな。さっきコロがテムルをあちこち捜し回ってたみたいだが……見つからないって言ってたろ」

そういえばそうだな、と周囲の者たちも口々に言い交わす。

「なあ、皆も聞いたよな?」

ざわつき始めた儒生たちを更に煽るように、ビョンチュンが同意を求めると、ジェシンがユニの隣に進み出てきて、言った。

「それは俺が、明倫堂まで捜さなかったからです」

ユ博士がユニの方を見、「事実か?」と尋ねる。ユニは頷き、即座に答えた。

「はい。本当です。信じてください」

そのとき、書吏のジャンボクが中庭に息を切らしながら駆け込んできた。

「わかりました!犯人を、突き止めました!」
「何だと?」

大司成をはじめ、教官たちが一斉にジャンボクを取り囲む。

「薬屋に薬包を売りに来た学生がいたようです。その者が、盗品も売り払ったのではと」
「で、その者の見当はついたのか?」
「号牌〈ホベ〉を落としていったそうです。これです」

差し出された木片を、ユ博士が手に取った。その表情が、一気に険しくなる。
少しの間の後、博士は儒生たちを見渡し、号牌に記された名を口にした。

「───キム・ユンシク」

指先が、氷の中に突っ込んだように急激に冷えていく。
騒然とする儒生たちの中で、ユニは息を呑んだまま動けなくなった。






*************************************
あまるですどうもこんにちわ。梅雨真っ盛り(なんて言い方あるのか知らんが)ですね!

ウチの子の体操服、たまたま洗濯カゴの一番下になってたんですが。
……カビ生えてました。Σ(゚д゚lll)ガーン
どーすんだコレ。カビキラーで落ちるのか?うーん。

ところで韓国の身内の呼称って、いっぱいありすぎて難しいスね(^^ゞ
呼ぶ本人が男か女かでも違うし。ヒョンブー?ヒョンスニム?アレ?みたいな(笑)
でもいちいち説明しなくてもどういう関係かわかるので、覚えれば便利なんだろうなきっと。
この回のユニにはちょっと酷だったけども。

しかし韓国に嫁に行ったら親戚の集まりとかでめっさ焦りそうだ…←いらん心配



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2012/06/24 Sun. 13:26 [edit]

category: 第九話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

cm 6  tb 0 

コメント

Re: こんにちは。

>snowwhite さま

こちらこそありがとうございました(^^)
リンクは、勝手に貼っていただいて全然構いませんよ~。

一話のあたりは、なんか今読み返してみると妙にこっ恥ずかしかったりするんですが(^^ゞ
楽しんでいただけると嬉しいです。
ソンジュンはほんとにステキですよね!ワタクシの中では最早ツンデレの最高峰です。
ユニへの想いに苦しむグダグダなところがもー愛しくて愛しくて。

でも歌って踊ってるユチョンも最高にセクシーでかっこいいんですよぉ……(とナニゲにアピール(^^ゞ)

> 話は変わりますが、↓、わたしは剣道をたしなんでおりました。

をを、ここにもクサイお仲間が!やはし人はニオイに惹きつけられるのか……?(笑)

あまる #- | URL
2012/06/27 22:59 | edit

こんにちは。

拍手コメント、ありがとうございました。
また、連絡が遅くなりましたが、わたしも勝手にリンクを張らせていただいておりました~。

熱しやすいのがわたしの特徴でして・・・ソンジュンラブ☆の情熱がブログに向わせました笑。

ゆっくりと携帯で一話から読ませていただいています。文で読むとまた別の趣がありますね。
今、しみじみと過去を振り返っているところです笑。

話は変わりますが、↓、わたしは剣道をたしなんでおりました。
確かに防具は臭いんだよね・・・と青春の一幕を思い出しました。

これからも宜しくお願いします。

snowwhite #bSUw9.7Y | URL
2012/06/27 10:14 | edit

Re: 梅雨だね~(>_<)

みずたまさんちのお嬢ちゃんがたは剣道やってるのね!女剣士!かっこええ~(^^)
ウチの兄も中学高校と剣道部だったので、それはそれはクサイブツの想い出があります(笑)
学校の柔剣道場は前を通るだけでそこはかとなく酸っぱいニオイがしてましたものね~
せ~しゅんの1ページですわ。

あまる #- | URL
2012/06/27 01:57 | edit

梅雨だね~(>_<)

ユニ受難の巻其ノ2(@_@) 
ファイティンだよ~☆

かび・・・。
ウチの娘剣士たちの防具(面・胴・小手)もヤバい感じが・・・・。
いや、くさい。
稽古から帰ってすぐ干さないから・・・・。
次の日防具袋を開封すると・・。ウゲッ(-"-)
面の頭頂部がジメっとしてるだ。
今日は洗濯指数100%。
すべてまるっとするっとお天道様におねがいしますた。
上から4名様の稽古後の車内はかなりヤバい。
♪しょ~しゅ~りき~~☆とココロでとなえてるよ。
以上、かびにまつわるエトセトラですた✿

みずたま #- | URL
2012/06/26 23:20 | edit

snowwhite さま

はじめまして~。ご訪問&コメありがとうございます!(^^)

同じソンスのサイトの家主さまからコメントいただくのは初めてなので、すんごく嬉しいです!
こちらこそ今後ともよろしくお願いしますね~。

snowwhite さんのサイトにも、たった今おじゃましてきましたよ!
開設されたばかりとはとても思えない充実っぷりにたまげました。
なんか、これはテキトーなこと書いたら怒られそうだわ~とちょっと冷や汗たらりんこなワタクシです(笑)

ワタシも原作は愛読してますよ~(^^)
ドラマとはストーリーもキャラクターも微妙に違いますけど、世界観は同じなので、それぞれに
楽しいですよね。儒教や党派の考え方とか、当時の時代の空気とか、このブログをやってく上でも
いろいろ参考にさせてもらってます。(ちゃんと生かされてるかどうかは別として(笑))

snowwhiteさんのブログの更新も、楽しみにしてます。またおジャマさせていただきますので
よろしく相手してやってください~。

あまる #- | URL
2012/06/26 00:47 | edit

はじめまして。

最近、トキメキ☆成均館スキャンダルにはまりました。
おお、こんなサイトがある!とちょっと今、感動中です。
それにしてもすごい!ちゃんと登場人物の名前があがっていることもさりことながら、表現がええなぁ~と。。。スミマセン、上から目線で><
原作も読んだのですが、原作とはまた違う空気を感じて楽しいです。
これからも更新を楽しみにしています!

今回のユニはちょっとかわいそうですね。。。

snowwhite #bSUw9.7Y | URL
2012/06/25 14:22 | edit

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