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第一話 6 科挙の騒動 

ユニは慌てふためいて座席表を見た。正面だとばかり思っていた方向に、五葉松が描かれている。
悪夢だ。表の向きを間違えていたのだ。

「クマはどこだ、クマは。金はこのワン殿が受け取るぞ」

二列向こうの席で、覚えのある合言葉を聞えよがしに繰り返している男がいる。その鼻の横には、大きなほくろ。
……ほくろ?!

(ちょっと待って、そんなもの人相書きには───)

ユニは座席表を放り出し、今度は人相書きを広げた。

───あった。

 紙を伸ばしてよくよく見ると、折皺に隠れていたほくろがしっかり顔を出した。ユニは一縷の望みにすがるように、今の今までワン殿だと思っていた青い快子の男の顔を覗き込んだ。当然だが、この貴公子の端正な顔のどこにも、そんな目立つほくろは見当たらなかった。

「ウソ、人違い…」

 青年の冷ややかな視線が、ユニを鋭く刺す。

「…でした」

 周囲が一気に騒がしくなる。人の集まってくる気配に、ユニはたまらず、青年の袖にすがりついた。

「信じてください、本当に初めてなんです!」

 青年は構わず、繰り返す。

「申し上げます!誰か!」
「助けてください!」

 押し殺した声で叫ぶ。約束したのだ。母に、必ず解決すると。こんなところで捕まるわけにはいかなかった。

「家族の生活が掛かっているのです。早くに父を亡くしたので、私が家族を養わなければなりません。家には、明日をも知れぬ病気の弟もいます。ですからどうか…」

 震える声で必死に言い募るユニの思いが通じたのか、青年は挙げていた手をふと下ろした。

「薬代が必要なのか。…そんな事情があったとは」

 助かった、とユニが顔を上げたのもつかの間。彼はいたって真摯な表情で、言った。

「では、今後は自らの過ちを悔い改め、正しく生きることだ」

そんなぁ!

 ユニは呆然としてその場にへたりこんだ。青年は再び手を挙げ、決然と言い放った。

「ここに試験場を汚す者がおります!」

 周囲が一斉にざわついた。もはや彼はこの試験会場の注視の的だ。ユニは出来る限り身体を小さくして、じりじりと後じさった。こうなったからには一刻も早く、ここから退散するのが身のためだ。

「試験場を汚す者か。それは誰だ」

 鶴撃衣の裾をはためかせながら青年の前にやってきたのは、チョン博士(パクサ)だった。青年は臆することなく立ち上がり、言った。

「私とここにいる儒生たち、そしてあなたです」

 ほう、とチョン博士は面白そうに眉を上げる。

「まず答案を売ることを恥とも思わず、金儲けに必死な者たち。
次に、己の答案を仕上げることにのみ心をくだき、不正を見て見ぬふりをしている儒生たち。
そして、それらを慣例と思っている文官たち。───さらに」

青年の凛とした声が、丕闡堂前庭にひときわ響き渡った。

「これら全てに責任を負っておられる大司成様の罪もまた、決して軽くはないはずです!」

泡を食ったのは、丕闡堂でのんびりと茶をすすっていた当の大司成だ。彼は腰掛けていた椅子を倒さんばかりの勢いで立ち上がると、贅肉のついた顎をぶるぶると震わせて叫んだ。

「あ、あ、あやつめえぇぇ!ええい、何をしてるんですか!直ちにあの者を放り出して、試験場を改めなさい!」

 会場にいた書吏や役人たちがほぼ全員、こちらへ向かって走ってくるのをちらりと見やって、チョン・ヤギョンは青年に向かい、静かに訊ねた。

「では、どう解決するべきかね?」

 青年は即座に答える。

「身分証を確かめ、巨擘と写手を追い出した上で試験場の秩序を正し、役人たちは陛下の御前で全ての罰を請うべきでしょう」

 ヤギョンは無言で青年を見つめた。その口元には、かすかな微笑が浮かんでいる。

「おいおい、何か悪いものでも食ったんじゃないのか?」

 ユニを雇った“ワン殿”が、ばたばたと扇子で顔を仰ぎながら大声で野次ったのをきっかけに、周囲の儒生たちが口々に同様の非難を青年に浴びせ始める。とそこへ、「チョン博士ぁぁぁ~」と叫びながら、大司成が人垣を掻き分け掻き分け、博士の元へと走ってきた。

「私の言ったことが聞こえなかったんですか?!こら貴様ぁ!その生意気な態度、断じて許さんぞ!名簿を!」

書吏が差し出した名簿を引ったくり、太い指を舐める。

「名を言いなさい!いったいどこの息子だ?!」
「イ・ソンジュンと申します」
「イ・ソンジュンだな?!イ・ソンジュン……イ・ソンジュン?!」

 大司成が名簿から顔を上げ、元から飛び出し気味の目をさらにぎょろっとひん剥いた。

「で、ではお前…いや、君はもしかして、左議政様の御令息、イ・ソンジュン君か?」

 左議政、という名が出た途端、さっきまでしきりに野次をとばしていた儒生たちが、ぴたりと口をつぐんだ。ソンジュンは姿勢を正したまま黙っている。全くの無表情だが、そんな風に呼ばれることを喜んでいないことは見てとれた。

静まり返った試験会場に、ジワジワと蝉の鳴く声だけが暑苦しく聞こえている。
真っ先に我に返ったのは大司政だった。

「な、何をしてるんです!とっとと試験場を改めなさい!」

 ソンジュンのすぐ脇にいた書吏の一人が、あたふたと彼の腕を捉えようとした。すかさず、「この御方は違うでしょ!」と、大司成が書吏の腹に膝蹴りをお見舞いする。その変わり身の早さはたいしたものだ。大司成にまで出世した彼の、ひとつの才能といえるだろう。
 大司成は官服の袖を大きく広げ、高らかに宣言した。

「いいですか、たった今からこの試験場では、いかなる不正も、いかなる不道徳も、この私が決して許しません!不正を働く者は一人残らず追い出し、神聖なる試験場に、秩序を取り戻すのです!」





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2011/07/22 Fri. 03:27 [edit]

category: 第一話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: ちびたさま

ソンジュンパパやってるキム・ガプス氏は、韓流ドラマ見てると
必ずといっていいくらい出てますよね。
悪役だったりいいお父さんだったり、王様だったり(笑)役は様々ですが。
あの方の瞳、たまーに、グリーンっぽく見えることがあるんですが……
もしかしてハーフなのかな?若い頃はきっとイケメンだったんだろな~(笑)


あまる #- | URL
2012/05/02 19:17 | edit

あまるさま

このドラマの面白さの一つは、なんといってもキャストの妙ですね。

主役級4人の配役も絶妙!と思いましたが、その他の配役の素晴らしさと言ったら。
出演している俳優さんを見ると、皆さん何らかの時代劇に出演されていたり、大御所と言われる方だったり。
そりゃ、このドラマが面白くないわけがないでしょう(爆)

ちびた #D4zl0nFc | URL
2012/05/02 16:34 | edit

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