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第八話 8 尾行 

市場通りの人ごみの中を歩いてゆく、浅葱色の道袍。
ともすると見失いそうになるその小さな背中を、ジェシンは一定の距離を保ったままこっそりと追っていた。
我ながら何をやってるんだと思うが、無論、最初はそんなつもりはなかったのだ。

インスの手酷い嫌がらせは今に始まったことじゃない。だが、またいつかのときみたいに、一人で泣いていたら、とつい気になって、東斎を出たユンシクの後を追った。
両手に荷物を下げたほっそりとした背中はすぐに見つけた。が、かといって何と声をかけてやったらいいのか。
女の慰め方なんて知るわけがない。男だと思っていたときでさえ、かけてやるろくな言葉も思い浮かばなかったのに。
などとあれこれ考えていたら、結局同室生の後をつけ回しているだけという、何だか妙なことになってしまった。

家で待つ家族に土産でも買いたいのだろう。ユンシクは通りに立ち並ぶ店をなんとなく眺めながら歩いている。
ふと、彼女の足が止まった。菓子屋の前だ。ジェシンは慌てて、数軒離れた金物屋の店先に身を隠した。
鍋を見るふりをしながらそっと伺うと、にこにこしながら店の女将と話している横顔が見えた。

しかし女ってのはどうしてああ甘いもの好きなのか───と思って見ていると、ユンシクは折角買った菓子を店先で物欲しそうにしていた奴婢の子供たちにそっくりあげてしまった。
子供は、おそらく姉弟なのだろう。二人ともぼろをまとい、痩せこけた体は垢じみている。埃まみれで白っぽくなっている姉の頭を、そっと撫でてやっているユンシクの表情はそれまで見たこともないほどに優しく、穏やかで、ジェシンは胸を衝かれた。

儒学を学ぶ儒生といえど、三徳のひとつである仁の心を実践できる者は少ない。裕福な家の者ならまだしも、自らも貧しければ尚更だと思っていた。だが違うのだ。
認めたくはないが、インスの言っていたことは事実だ。生まれたときから食うものに困ったことのない自分たちのような人間には、飢えた民の心を想像することはできても、真に理解することは難しい。同じ痛みと苦しみを知るユンシクであればこそ、あの姉弟の心を我が事のように感じることができるのだろう。

表情を凍りつかせたまま、足元に投げられた包みを拾い、インスに礼を言ったユンシク。
そんなもん拾うな、捨てちまえと怒鳴った自分。

何もわかっちゃいなかったのだ。あのときあいつが、何を思ってそうしたのか。
憤るばかりで、想像すらしてやれなかった。

───畜生。

ジェシンは唇を噛んだ。
何が紅壁書だ。
結局お前もインスたちと同類じゃねぇか───。

頭を思い切り殴りつけられたような気分で、ジェシンは菓子屋を後にするユンシクを見つめた。
すぐそこに見えるのに、先刻よりもずっと遠くに感じる。
今日はきっとこのまま、声をかけられずに終わるのだろう。

ジェシンは一歩、足を踏み出した。

それでも、追わずにはいられなかった。


少女たちの、華やいだ声が通りに響いている。
ユンシクが次に立ち寄ったのは、女物の小物の店だった。両班の娘たちが、帯留めや髪飾りを互いの服にあてがいながら、きゃあきゃあと笑い声をたてている横で、ユンシクはさして迷うこともなく、一本の地味な簪を買った。
勘定を待つ間、彼女が手に取ってじっと見ていたのは、赤い細布〈テンギ〉だった。
女たちが、編んだ髪の端を隠すのに長く垂らしている飾りだ。

ジェシンは、袂に入っていた手巾を取り出し、そこに目を落とした。布の端に施された小花の刺繍を、親指でなぞってみる。こういうものの手の巧拙はジェシンには判断がつかないが、少ない色味でも、一針一針、丁寧に刺しているのはわかる。

いま男物の道袍を着て、短く切った髪を髷に結い、笠の中に仕舞い込んでいるユンシクも、中身は同じ女だ。
事情はわからないが、好きで男装しているわけではないのは明らかだった。
本当なら、隣で笑いさざめいている娘たちの中に混ざっていたっておかしくないはずなのに。

俯き加減で、ぽつんと立つその細い肩を見ていると、ジェシンの胸は知らず、痛むのだった。

結局、ユンシクは細布は買わず、勘定を終えるとそそくさと店を後にした。
やや間を置いて、ジェシンはその店先で、ユンシクの見ていた細布を手に取った。
真紅の地に、薄桃色の牡丹が二つ。

こういうのが好きなのか。あいつは。

ふと、隣に置いてあった売り物の鏡に視線を移した。そこには、物陰に隠れ、ちらちらとこちらの様子を伺っている男たちの姿が映っている。
ジェシンは細布を放ると、のんびりと歩き出した。案の定、怪しげな風体の男たちも後からついてくる。
路地裏に入ったところで、さっと物陰に身を隠し、バタバタと走り込んできた数人をやり過ごす。最後の一人の首根っこを後ろから素早く羽交い絞めにし、くるりと回して民家の壁に押し付けた。喉元を締められた男は、ぐぇっ、とくぐもった声を上げた。チンピラにしてはいい身なりをしている。おそらくは、どこかの両班の私兵だろう。

「言え。誰に頼まれた」

男は、苦しげな息を漏らすだけで答えない。ジェシンは男の喉を押さえつける腕に更に力を込めた。

「さっさと言え!さもないと……」
「兵、兵曹判書だ!」

絞りだすような声で、男が言った。

「兵判が何故俺の後をつける?」
「ち、違う!あんたをつけてたんじゃ……」
「じゃあ誰だ!」
「女みたいに綺麗な顔した、学士だ。べ、別に何かしようってわけじゃない。ただ素性を探るように言われただけだ!」

テムル?

ふっと力を抜いた隙に、男はジェシンの腕を振り払い、あたふたと逃げていった。
兵曹判書までが捜索の手を伸ばすとは。
ジェシンは通りに出てユンシクの姿を探したが、浅葱色の道袍はついぞ見つけることはできなかった。

「あいつ……本当に何者なんだ?」

男装の儒生、キム・ユンシクに対する謎は、深まるばかりだった。




*******************************************************
あまるですどうもこんにちわ。

は~。本日ついに最終回でした。オクタッパン。
地下ブログの方、更新しなきゃ~とは思ったんですが、もーしばらくダメっぽいです。
なんかとにかく泣けて泣けて。まともな文章書けそうにないっス(T_T)
でもソンスはダイジョブだったので、こちらは更新(笑)
今回はストーカーコロたんです。

オクセジャはもうちょっと時間たって冷静になったら、地道にアップしていくつもりですので、
あちらも覗いてくださってるかた、もちっとお待ちくださいね~って、
誰も待ってないかもだけど(笑)

細かい突っ込みドコロは多々ありましたが、ラブストーリーとしては最高のラスト
だったんではと思います。ゆちょもジミンちゃんもほんとーに良かった!
OST聞いただけでしばらく泣けると思います、ワタクシ(^^ゞ
早くDVD出ないかな。もー出たら速攻買い!です。ほんとオススメ!

どーやら7月あたり、スカパーで放送始まるらしいですが(でもKNTVってch契約料バカ高い
んだよな……月3,780円って、よくばりパックと変わんねぇし(^^ゞ)
DVDの発売と重なったら、またカットの嵐なんだろーな~。うーん悩みどころ。




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2012/05/25 Fri. 03:41 [edit]

category: 第八話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

cm 6  tb 0 

コメント

Re: あぁぁ私も気になってます

早速別宅にも起こしいただきましてどうもです~(^^)
ああ~今日は(ってもう昨日になっちゃってますが)ユチョのばーすでーだったというのに、
なんもでけんかった……(T_T)
地下の更新頑張りマスのであちらもよろしく~

あまる #- | URL
2012/06/05 01:04 | edit

あぁぁ私も気になってます

オクタッパン!見たんですねー。うらやましい。
私もネットで検索して二話を字幕なしで見たんですけど、それだけでも面白かったた!

スカパーに入る予定はないけれど、見たい・・・すごく見たい・・・。
早くDVDにならないかしら。
ちょっと別宅にお邪魔してきます♪

りゅうれん #/ZrAXPAI | URL
2012/06/03 22:31 | edit

Re: にゃん太さま

にーちゃんが生きてた頃のコロは、きっともっと可愛かっただろうね~(^^)
愛情、もちろんたっぷし注いでますともさ~。
もしソンジュン演ったのがユチョじゃなかったら、たぶん今頃ユニコロ書いてたに
違いない……(笑)

あまる #- | URL
2012/05/28 02:03 | edit

コロったら~
かわゆいんだから~
不器用だけど、その分うそが無い。
いい青年だ。

あまるさんの、コロへの愛情も感じられるよ。

にゃん太 #- | URL
2012/05/26 17:23 | edit

Re: 行け行け!コロコロっ☆

うんと掘ったら、そのうち温泉でも出てくるかなぁ~と思いつつ……(笑)

コロは正義感が強いから紅壁書とかやってるわけで、そーゆう意味では
ソンジュンと根っこの部分は似てんじゃねーかと思うデス。

オクセジャ、トロトロでごめんなさいです~(^^ゞ
もう水曜が来てもガクちんが見れないと思うと寂しいよ~う(T_T)


あまる #- | URL
2012/05/26 00:53 | edit

行け行け!コロコロっ☆

更新サンクス☆
Mrドリラーじゃないけど、掘り下げ方が今回も絶妙~5星☆☆☆☆☆

画伯がスランプに落ちいったときの、《目からウロコ》状態のコロ。
壁書への挑戦にこうご期待☆

人生善きことも悪しきことも皆、自分の宝物☆
その経験をバネに前へ進もう~。
うまく(すごろく的)な人生をサイコロの様にコロがって行けるといいのだが・・・( ..)φメモメモ

あ~、オクタッパン最終話だったんだね。
ココロの整理ができたら、お待ちしてますよん♪
OST、あまるさん解説を思い浮かべながらしみじみ?聴いてます~(^^♪



みずたま #- | URL
2012/05/25 09:46 | edit

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