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第八話 4 深夜の儒生たち 

「キム・ユンシクは、女なんだろ?」

虫の音だけが響く夜更けの縁側。ジェシンの顔を覗き込み、ヨンハが密やかな声で訊ねる。

「何の話だ」
「とぼけるなよ。私はク・ヨンハだぞ。白粉の匂いだけで下着の色を当てる女林〈ヨリム〉、そしてお前とは十年来の友人」

ふん、とジェシンは鼻で笑った。

「ご立派なこった。それで?」
「しゃっくりだよ。お前は、しゃっくりに耐えられず外に出てきた。つまりこの部屋には女がいる。イ・ソンジュンは誰が見たって間違いなく男だ。となると答えはひとつ。テムル───キム・ユンシク」

ヨンハには確信があるのだ。何かしらの証拠があるわけではない。自分自身の勘と、観察眼がそう言っているに過ぎない。だがそれは、どんな物的証拠よりも彼自身が信頼しているものだった。

その眼とアタマ、もっと別のことに使えよ。

胸の内でそう呟きながら、コン、と手の甲でヨンハの頭を小突く。
もう寝ろ、と言って、ジェシンは立ち上がった。

「目ぇ開けたまま寝言言ってんじゃねぇよ。癖になるぞ」

中二房の扉に手を掛けると、背後からヨンハが歌うように言った。

「いつまで、女と一緒の部屋で我慢できるかな?」

知るか。

少なくともあいつは、単なる遊びだとか好奇心で、こんな男だらけの場所に飛び込んできたわけじゃないだろう。
それは、今までのあいつを見てりゃわかる。
大の男ですら逃げ出したくなるような状況でも、歯を食いしばって立っていた。そこにはきっと、理由があるはずだ。女のあいつが、男としてここにいなきゃならない理由が。
だったら、俺は───。

扉を開けた。
そこには、眠っているユンシクがいた。
伏せられた、長い睫毛。丸い頬と、小さな鼻。そして、この月明かりでもそうとわかる、淡い桃色の唇。

ダメだ。もう女にしか見えない。

というより、どうして今まで何の疑いも持たず男だと思い込んでいられたのか、そっちの方が不思議だった。
ヒクッ、とまた例のしゃっくりがジェシンを襲う。
はっとして、はだけていた服の衿を掻き合わせた。お世辞にも女の前でするべき格好ではないことに、今更ながら気付いたのだ。
いや待て。寝ている間にまたあられもない姿にならないとも限らない。念のため上に羽織るものを、と棚から薄物の快子〈ケジャ〉を引っ張りだした。
と、その拍子に、足元に何かがはらりと落ちた。拾い上げたそれは、一枚の手巾だった。そこに控えめに刺してある小花の刺繍を見てジェシンは思い出した。いつだったか、チンピラに絡まれていた娘を助けたときに、渡されたものだ。

『恩返しさせてください』

そう言って、差し出した。まだ怯えの残る指先が、微かに震えていた。
身なりは粗末だったが、言葉遣いや立ち居振る舞いで、両班の娘だということは何となくわかった。
印象的だった、秀でた額と白い肌。そして、真っ直ぐに相手を見つめる黒い瞳。

あっ、と思った。

初めてキム・ユンシクを見たとき、なんとなく何処かで見た顔だとは思ったのだ。結局思い出せずにそのまま忘れてしまっていたが、間違いない。ジェシンが助けた、あのときの娘だ。

俺に恩返しする気でこんなとこに潜り込んだのか?いやまさか。だがしかし……。

ただでさえ混乱していたのに、ますますわけがわからなくなってきた。
とにかく寝よう。考えても埒があかない、と横になろうとしたジェシンだったが、今度は、すぐ隣にユンシクがいると思うと、いつものごとく布団の上に無造作に寝転がることもできない。

くそぅ、いったいどうすりゃいいんだ。

考えた末、ジェシンは布団を捲り、夏場だというのにそれを蓑虫のように身体に巻きつけるという暴挙に出た。
止まらないしゃっくりは、口の中に手巾を丸めて突っ込み、やり過ごす。

く……苦しい。

が、ヨンハに怪しまれずにこの部屋で眠るためには仕方がない。
とはいっても、この状態で果たして眠れるのか?
ユンシクの寝相の悪さは相当なものだ。もし少しでもこっち側に来られたら、どうしたらいいんだ。
ふと、首を巡らせて背後のユンシクを見た。

ぽろりと、ジェシンの口から手巾がこぼれ落ちた。

先刻まで自分の寝床で真っ直ぐに寝ていたはずのユンシクが、いつの間にか向こうを向き、ソンジュンの背中にぴったりとくっついて、すやすやと寝息をたてている。

そんな衝撃的な光景が、そこにはあった。




そして一方、部屋に戻ったヨンハは。

「キム・ユンシクめ……上手く逃げたな」

横たわった夜具の上で天井を見つめ、一人呟いている。

「女の身で成均館に入学し、王と法を愚弄するとは……」

ふと、思った。
だがそれの、どこがいけない?
法で禁じられてはいるものの、別に人を殺したわけじゃない。
身分や家柄さえ金で買える世の中だ。性別を偽るくらい、なんだっていうんだ?

むくりと、起き上がった。
許せないのは、キム・ユンシクがこの自分まで騙そうとしていることだ。
女を知り尽くした稀代の遊び人、ヨリム。そう呼ばれるこのク・ヨンハ様を騙そうというのだ。あんな可愛い顔をして。
そんなことが許されるか?
いいや、たとえ王が許しても、それはあり得ない。

「コロさえいなきゃ、今日でカタがついたってのに」

悔しさに眠れぬまま、壁の向こうを忌々しげに見つめるヨンハだった。






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2012/05/01 Tue. 00:51 [edit]

category: 第八話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: 待ちに待ったシーンだぁ

>三本の指に入るほど大好きなしーんです。

あと二本はどこだろう~?(笑)

> あの後、どうやってテムルを端に寄せて自分が真ん中に居座ったのか。

それそれ~!!!ワタシも書きながら気になってました!
敷き布団は一体型(笑)になってたから、布団ごと動かすとか無理っぽいし、
となるとやっぱり転がしたのかなとか……
それだってユニの身体触んなきゃできないし、きっと物凄い葛藤があったに違いない。(^^)

あまる #- | URL
2012/05/05 00:20 | edit

待ちに待ったシーンだぁ

あまるさん、こんばんわ。
「口からポロッ」・・・・はぅ・・・悶え死ぬぅ。

このシーン、三本の指に入るほど大好きなしーんです。
読みながら脳内映像化してました!
コロのあの表情はほんと、たまりません。

あの後、どうやってテムルを端に寄せて自分が真ん中に居座ったのか。
かなーりの葛藤があったと推測します!

りゅうれん #/ZrAXPAI | URL
2012/05/03 23:42 | edit

Re: ユニの恩返し???

ワタシは限界まで息吐いて限界まで息吸って限界まで息止める。
これ2回くらいやるとばっちり止まります。
でもここ数年しゃっくりとか出ないなァ(^^ゞそれはそれで不思議だ……。

あまる #- | URL
2012/05/02 05:20 | edit

ユニの恩返し???

バックグラウンドツアー、今日も盛況だね☆
わかりやすいでござる~(^^♪

しゃっくりは横隔膜の痙攣で起こるのですが、
止め方は千差万別。
ダンナはコップで水を反対側から飲むと止まると言ってます^^;
高校の生物の先生は横隔膜をおさえるととまるといいます。
ワタシ~?コロ先生バージョンだね☆
布はかまんが・・・!(^^)!

みずたま #- | URL
2012/05/01 11:12 | edit

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