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第八話 2 享官庁の秘密  

ソンジュンが享官庁の中に足を踏み入れるやいなや、ヨンハとジェシンも雪崩れ込むようにその後に続いた。

室内の明かりは既に落とされており、人の気配はなかった。ヨンハはソンジュンを押しのけ、空の湯桶に顔を突っ込んだり、鍵の掛かった戸棚をガタガタいわせたりと忙しく動き回ったが、どうやら何の収穫もなかったらしい。
怪訝な顔で、首を捻るばかりである。
ほっとしたのはジェシンだ。彼は室内にユンシクの痕跡がないことをひと通り確認すると、途端に余裕の表情でヨンハに訊ねた。

「何か見つけたか?」
「……幸い、火の気はないようですね」

憮然としているヨンハの代わりに、ソンジュンが答えた。
とりあえず危機は脱した。どっと疲れがやってきて、ジェシンは大きく伸びをした。

「気が済んだろ。とっとと戻れ。俺も、たまには就寝の点呼にでも出るかな」

と、一歩足を踏み出したときである。その足元に、ぽた、とひとしずくの水滴が落ちてきた。
ジェシンはぎくりとして、そのまま石のように動けなくなってしまった。


い…いる────!


どっと、全身から冷や汗が吹き出した。二滴、三滴と降ってくるそれは、ジェシンの頭上、つまりは、すぐ横の棚の上から落ちてきているものと思われた。
濡れそぼった髪のまま、息を詰めてそこに身を潜めているユンシクの気配を、はっきりと感じる。

「───待て」

ヨンハが、ゆっくりとこちらに歩み寄ってきた。
まさか気付かれたか、とジェシンは肝を冷やす。

「こんなことってあるか?確かにさっきまで明かりが漏れてたんだ」

どん、と拳で棚を殴りつける。びくっと肩を揺らすユンシクの気配がまともに伝わってきて、ジェシンは内心気が気ではない。

よせ、ヨンハ。なんだっていいからとにかくあっち行け。

必死で念を送っていると、突然、入り口の扉が開け放たれた。

「お前たち、何をしてる!」

そこに立っていたのは、ユ博士だった。背後に、書吏を一人引き連れている。よりによって教授陣の中で一番のうるさ型が今夜の見回り担当であるらしい。

「こんな時刻に、しかも享官庁で何をしてる。答えよ!」
「明かりが見えたので確認を」

答えたのはソンジュンだ。ユ博士が、眉間に皺を寄せる。

「明かり?」

確認するように中を伺う。特に異常がないことを見て取ると、ユ博士は言った。

「理由はなんであれ、神聖な建物に許可なく入るとはけしからん。全員減点5点だ」

ヨンハが「先生~」と情けない声を出したが、博士は「早く外へ出なさい」と取り付く島もない。
彼は大きく息を吐き出すと、腹いせのようにもう一度、ユンシクのいる棚を殴ってから、部屋を出ていった。
助かった、とヨンハとは別の種類の溜息をついたのはジェシンと───
そして恐らくは、棚の上に潜んでいる約一名。


「我らがテムルはまだ帰ってない……か」

東斎に揃って戻ってきたものの、中二房の障子は真っ暗なままだ。

「享官庁でもないなら、一体どこにいったんだ?成均館の中にいて、姿が見えなくなるなんてね……」

縁側に腰を下ろしたヨンハが、含みのある目でジェシンを見上げる。

「おかしいよな?コロ?」

ジェシンはそれには答えず、踏み石の上で無造作に靴を脱いだ。だがソンジュンは縁側には上がらず、踵を返す。

「何処へ行く?」
「捜してきます」
「待て!」

つい、声を上げてしまったジェシンは、ヨンハが薄く笑うのを横目に見てひやりとした。
そうだ。やたらと引き止めるのは不自然すぎる。
何気なく、自然に、いつもの俺らしく……って、一体どんなんだ?
それすらもわからなくなってきた。

「放っとけって。心配ない」
「しかし……」
「あいつだって子供じゃないんだぞ。だいたいお前は、あいつに構いすぎなんだ」

それでよく今までバレなかったもんだと内心感心する。いや、相手が頭の堅いこいつだからか?

ソンジュンはひとつ息をつくと、諦めたように中二房の前に引き返してきた。
お前もさっさと部屋に戻れ、とヨンハを促し、ジェシンはようやく、肩の荷を降ろした気分だった。


*   *   *


人の気配が完全に消えるのを待ってから、ユニはそっと享官庁の扉を開け、外を伺った。ユ博士が来てくれて助かった。あのままでは、とても心臓が持ちそうになかった。
周囲には誰もいない。ユニは手早く髷を結い、脱いだ服をまとめると、享官庁を出た。

彼女がそこを通りかかるのを待っていたのだろうか。東斎に戻る途中、ユニは、後ろ手を組み、庭先で一人じっと佇んでいるチョン博士の姿を見た。

「……先生」

博士はこちらに顔を向けると、顰めた眉のまま、深く息を吐き出した。
現れないことを願っていたが、やっぱり来たか。
そんな溜息だった。


「享官庁で騒ぎがあったそうだが、お前か?」

薬草の匂いの立ち込めるこの部屋で、博士の眉間の皺を見るのは何度目になるだろう。薬房で、ユニは胸に抱えた服をさらに押し潰すようにして、小さくなっていた。

「すみません」
「成均館での生活を、暇つぶしの遊びくらいに軽く考えているのか?」
「そんなことはありません、先生」

顔を上げたユニはそこに、じっと自分に注がれるチョン博士の目を見た。
何故だかはよくわからないが、この目は、以前にも見た気がする。成均館に来てからではなく、もっとずっと昔に。
もう、顔もはっきりと思い出せなくなってしまった父。
もしかしたら、こんな目をしていたのだろうか。
ふと、そんなことを思った。

「よく聞きなさい。この成均館でお前は、決して女であってはならないのだ。たとえ露見せずとも、警戒を怠ってはならん。成均館に残るからには、いついかなる時にも命がけで行動するのだ。危険な道を選んだのは、キム・ユニ、お前なのだから」

チョン博士の言葉の一つ一つが、ユニの心に重く響いた。秘密の露見は命にかかわる。自分だけじゃなく、それを知った周囲の者にも、危険は及ぶ。それはよくわかっているのに、心の何処かで思っていたのかもしれない。
いっそ気付いてくれたら、と。

ぞっとした。人を好きになる心は、なんて身勝手なんだろう。
その人を大切に思うなら、むしろ絶対に知られぬように注意を払うべきなのに。
自分が嫌になった。芙蓉花を妬んでいじけていた時よりも、ずっと酷い。

「───肝に銘じます、先生」






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2012/04/25 Wed. 10:11 [edit]

category: 第八話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: ドキドキ☆成均館スキャンダル?

棚の上でローソク落としそうになって焦るユニが好きで、あのへんも実は書きたかったんだけど
例のごとくワタクシの筆力不足でコロ目線オンリーになっちゃいました。

ドラマを文章にするのってやっぱ難しいね~。
まぢで今更だけど(笑)ほんっとに無謀なことやってる気がするわ~(^^ゞ

あまる #- | URL
2012/04/26 10:00 | edit

ドキドキ☆成均館スキャンダル?

題名を上記のように訂正してもいいような、ドッキリンコな場面だったね^^;

✿由美かおる✿のほうもヒヤヒヤだっただろうに~w
サスガ大物☆あっちの意味じゃなくて肝っ玉のデカイという表現がぴったりなユニです。
鼻血ブーな今回、更新ありがとうござる。

みずたま #- | URL
2012/04/25 12:56 | edit

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