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第七話 6 勝負の行方 

勝利は手にしたも同然だった。
ただいつも通り、弓を引いて、的を狙うだけだ。
それだけで、キム・ユンシク、ひいては、あの生意気なイ・ソンジュンをねじ伏せてやれる。
このハ・インスには絶対に逆らうことはできないと、あいつらの頭に叩きこんでやる。

インスは、弓を構えた。的を見据え、弦を引き絞る。
そのとき、ひらひらと風にはためく薄衣が視界に入ってきた。その陰に、悲しげに眉根を寄せるチョソンの顔があった。

『───お屋敷を、出ることになりました』

ふいに、幼い頃の彼女の姿がインスの脳裏をよぎった。
屋敷の庭先。季節はちょうど今頃、夏の、夕暮れ時だった。近くでヒグラシが鳴いていたのを覚えている。

『どうして?ここを出て、何処へ行くの?』
『モランガク、ってところ……。わたし、妓生になるんだそうです』

子供だった自分には、遊郭というものがどういう場所か、よくはわからなかった。ただ、そこで働く妓生という職業の女たちが、宴席ではもてはやされていながらも、人々に酷く蔑まれていることを敏感に感じ取ってはいた。
屋敷で働く下男たちですら、陰で彼女たちを下卑た話の種にしていた。

『妓生に……?』

こくりと、頭につけたペシテンギを見せて、チョソンが頷いた。淡い桃色の牡丹が刺繍されたその髪飾りは、可愛らしかったが上品な柄で、彼女によく似合っていた。

両班ではない、中人の家の出だとはいえ、彼女は利発で、感性豊かな少女だった。奴婢の者たちにまで軽んじられるような、そんな人間になっていいはずはなかった。

『行っちゃだめだ』

彼女の腕を掴んで、そう言った。

『僕が、父上に言うから。君がずっとここにいられるように、父上に頼むから』
『若さま……』

今にも泣き出しそうだった、あのときのチョソンの鳶色の瞳。
その色は少しも変わらないというのに、今彼女の瞳に映っているのは最早自分ではない。
そしてあのときと同じ、彼女に悲しい表情をさせているのは、父ではなく。
この、自分だ。

あんな、キム・ユンシクなんてつまらない男のために。

溶岩のような熱が、胸に噴き出すのを感じた。苛立ちをぶつけるように、弦を弾いていた。

会場が、騒然としているのはわかった。
だがインスの耳には、何も聞こえない。
標的を見失い、ぽつんと離れて的に刺さる一本の矢を、彼はただじっと見つめていた。


*   *   *


「なんだ?掌議は手を抜いたのか?」
「そんな奴じゃないだろ」

呆然として言葉もないビョンチュンやコボンの傍らで、途端にドヒョンらが色めき立つ。
ウタクが眼鏡をずり上げて、にんまりと笑った。

「勝負はわからなくなってきたぞ。テムルがど真ん中に命中させれば、優勝だ」

思いもしなかった機会が、再び巡ってきた。
ユニは戸惑いながらも、弓を取り、震える手でどうにか矢をつがえた。
的に向かい、弦を引こうとしたそのときだった。
突然、ぶつり、と鈍い音がして、弦が弾け飛んだ。矢は、硬い音を立ててユニの足元に落ちた。

チョソンが、さっと顔色を変えて今にも立ち上がらんばかりにユニを見つめる。ソムソムが消え入るような声で「大変だわ」と呟いた。

ユニはすぐさま切れた弓を置くと、射台を降り、東斎の待機席へと走った。予備にと用意しておいた弓を取り、戻ろうとしたユニは、ぴたりと立ち止まった。ソンジュンが、すぐ傍まで来ていた。

「ぼく……勝てると思う?」

振り返った。ソンジュンは黙って、ユニを見ている。いつもの、あの無表情だ。だがむしろそれが、今のユニには有難かった。

「君は、お世辞や気休めは言えないだろ。だから訊きたいんだ。勝てると思う?」

彼は ふっと息をついて、言った。

「いや……無理だろうな。肩は頼りないし弦を引く力も弱い。呼吸も乱れている。優勝しようと足掻いても、無駄だと思う」

覚悟はしていたが、やっぱり正直過ぎるほど正直だ。ユニの心は塩をかけられたように小さく萎んでしまった。

「───だが」

ソンジュンは、ユニに一歩近づくと、手巾の巻かれた右手を取り、そこに目を落とした。

「君の、この手は認めよう。練習中の君の努力は、優勝に値する。たとえこの勝負に負けたとしても、不可を貰ったとしても、僕にとっての勝者は誰が何と言おうと───君だ」

ユニの肩に手を置き、ぽんぽん、と叩く。それは力づけるような、労うような、優しい仕草だった。そして彼は微笑んだ。

「大物〈テムル〉。見せてくれ、その腕前を」

我ながらなんて簡単なんだろう。
ソンジュンの言葉と、笑顔ひとつで、萎んでいた心がたちまち水を含んだように元のかたちを取り戻す。いやそれどころか、今やはちきれんばかりだ。溢れ出しそうな気持ちを、ユニは彼に微笑み返すことで逃した。

そうだ。自分は精一杯やった。そしてそれを、ちゃんと見ていてくれた人がいる。結果がどうなるとしても、怖がることはないのだ。何も。

射台に戻ってきたユニは、再び矢を取った。息を整え、的に向かう。
全部、ソンジュンが教えてくれた。弓の握り方、立ち方、そして、呼吸。
腕を引く。ためて、それから───

「つっ……!」

右手に、びしりと皮膚の裂けるような痛みが走った。
思わず手元を見る。傷口に巻いていた手巾が、血で真っ赤に染まっていた。
異変に気付いたソンジュンが、待機席から出てこちらに来るのが見える。

(なに、これ……)

弦に目を凝らす。陽に反射して、それはきらりと光った。

───硝子……?

「どうした?」

チョン博士が、訝しげな顔で近づいてきた。
既に一度、弓を変えるために競技を中断している。また取り替えるとなれば、流石に怪しまれる。必ず理由を訊かれるだろう。
ユニは顔を上げた。汗が、首筋を伝う。
王の前で、騒ぎを起こすわけにはいかなかった。

「大丈夫です。何でもありません」

博士が、ユニの血まみれの手に目を止めた。

「しかし、その手では……」

いいえ、とチョン博士を遮って、ユニは言った。

「できます。このまま……やらせてください」





********************************************************
あまるですどうもこんにちわ。

ウソ注意報発令中……。
すんまそん。頑張ってはみたんですが、インス、どーしても泣かすことができませんでした。がくっ←負け

てゆーか、あそこで泣くって、アリなの? (と無駄に足掻いてみる)
なんか眩しかったからとか、俳優さんのそーゆー嘘のよーなホントのよーな談話を見たりすると、
なんか、ねぇ。(^^ゞちっとも泣いてくれなかったデスよ、ウチのインスさん。

とゆーことで、この回の冒頭部分はあまるの妄想の産物ですのでご注意を~。
彼女のお父さんのこととかは、チャンチギのあたりでまた書けたらいいな、と思ってまする。




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2012/03/23 Fri. 00:09 [edit]

category: 第七話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: みみちゃんさま

はじめまして(^^)
楽しんでってくださいまし~

あまる #- | URL
2013/09/01 01:08 | edit

読めば読むほど、楽しみ♪♪~

みみちゃん #R5i0fqmI | URL
2013/08/31 14:23 | edit

Re: ダウト!

お粗末さまでした(笑)

今オクセジャもやってるから、なんか両方見てると頭ワヤになってくるけど(笑)
どっぷりユチョ漬けでシアワセ~(´∀`*)ポッ

あまる #- | URL
2012/03/23 12:59 | edit

Re: にゃん太さま

コメありがとうです(^^)

そうそう、泣いてたのよ~。射た後、ぼろりん、って(笑)
で、ソンスの公式ガイドブックのインタビューで、顔のクローズアップで瞬きができない上に、
正面から陽が差してて、眩しくて涙が出た、みたいなこと書いてあって。
そっかー、とそっちで納得してしまった(笑)

インスは可愛いやつなんス。あんな風になったのも、全部チョソンのためだから~←走る妄想

あまる #- | URL
2012/03/23 12:55 | edit

ダウト!

今日もおいしく読ませていただきました。

ドラマの中のカットに次ぐカットで話がちぐはぐになってる部分を丁寧に掘削されておニクつけていただいて、すんなり読みやすいですよ。
毎日感謝の日々です。
(T_T)ダぁッー。ワタシが泣きました・・・。

みずたま #- | URL
2012/03/23 11:08 | edit

更新、ありがとうございます。

インス、泣いた?
録画、見直してみるよ。
しかし、インスも一途だね~。
初恋か~、かわいいじゃん!?

にゃん太 #- | URL
2012/03/23 11:04 | edit

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