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第七話 4 決勝戦 

息を切らしてジェシンから逃げてきたユニは、門をくぐったところでインス、ビョンチュンら掌議組と出くわした。
たたらを踏んで立ち止まったユニに、インスが冷ややかな笑みを浮かべる。

「よくぞ決勝まで来てくれた。今度は私がお前との約束を守る番だ」

とそのとき、ざわめきと共に、大勢の儒生たちが門前にやってきた。その先頭にいるのはチョソンである。
彼女が儒生たちを引き連れて来た格好だが、実際には移動するチョソンに儒生たちがぞろぞろついてきてしまったのだろう。
だがそんなことには慣れているのか、チョソンは彼等の存在を全く意に介さず、インスの前に進み出た。

「先日は、大変失礼いたしました」
「どうしたんだ?今頃になって後悔してるのか?」

コボンが、まるで自分に言われたかのような口ぶりで答えるのを手で制して、インスは言った。

「もういい。過ぎたことだ」
「妓生の信義が強いか、掌議様のお力が強いか……競おうと仰せでしたね。その答えを申し上げます」

ふわりと女笠の薄衣を揺らして、チョソンはインスの脇を通り過ぎた。そしてユニの前で足を止めると、軽く面を伏せた。
ほとんど傍観者の気分でいたユニは、儒生たちが一斉に「テムル、テムル」と自分の名を連呼し始めたことに困惑した。
いつからいたのか、門の向こう側でジェシンとヨンハ、そしてソンジュンまでもが、何事かとこちらを見ている。
いきなり注視の的になってしまったユニは、戸惑い気味に微笑んだ。

「久しぶりだね、チョソン」
「……若様からの戴き物を、お返しに参りました」

チョソンはユニの右手をそっと手に取った。擦れて傷だらけの手のひらに痛々しげに眉根を寄せると、袂から手巾を取り出した。綺麗に折り畳んだそれを、ユニの手に巻きつける。鮮やかな、五つの牡丹の刺繍。
騒いでいた儒生たちは、いつの間にかしんと静まり返っていた。

「あの晩、貴方がくださった御心をお返しします。私のせいで、つらい目に遭われたと聞いて」

糾弾するような視線をちらりとインスに向け、チョソンは言った。

「貴方と私の想い出が重荷にならぬよう、お返ししなければと……。でもお忘れにならないで。私の心は、こうして……貴方に、結ばれていますから」

と、手巾の上からユニの右手をそっと握り締める。

「貴方は、このチョソンが選んだ殿方です。何があっても屈することはないと、信じてもよろしいですか?」
「チョソン、ぼくは……」

すっ、と、チョソンはユニの足元に跪いた。ユニに対する、忠誠の礼だ。一旦は静かになっていた儒生たちが、また「テムル、テムル」と大合唱を始める。

ユニは助けを求めるように門の向うを見た。だがジェシンは、やってくれるな、といった風な苦笑を浮かべるだけ。ヨンハはぽりぽりと額のあたりを掻きながら、ユニ以上に困惑した顔をしている。ソンジュンにいたっては、硬い表情で目を逸らされてしまった。

一方で、後ろ手を組み、じっと立ち尽くすインスの顔は明らかな怒気に染まっている。カン・ムがじろりと儒生たちを一瞥し、彼等を黙らせた。
チョソンは立ち上がると、ユニに会釈し、再びインスと向かい合った。

「これが妓生の……私の、つまらぬ信義です。貴方様が成均館の掌議として、すべての儒生たちを見守る徳の力をお見せくださると、信じております」

踵を返したチョソンを、カン・ムが追おうとするが、インスの手がそれを阻んだ。

「これ以上笑い者にする気か」

インスの顔色は、怒気を通り越し最早土気色である。来たときと同じように、何事もなかったかのように去ってゆくチョソンに一言も返すことなく、彼はただその肩を震わせていた。


*   *   *


「決勝戦開始!」

銅鑼が打ち鳴らされた。
王が座す特別席の楼閣に向かい、勝ち残った者たちがずらりと並ぶ。彼等を見渡しながら、王は楽しげに微笑んだ。

「決勝に残った二組は、真の強者揃いだ。成均館の掌議率いる掌議組と、老論のイ・ソンジュン、少論のムン・ジェシン、南人のキム・ユンシク……」

ソンジュンが、王の傍らに立つ父を見上げる。左議政イ・ジョンムは傍目にはそれとわからぬほど、微かに頷いて見せた。

「───党派を超えた蕩平組か」

ふと、ジョンムは王の視線が、自分に向けられていることに気付いた。
一国の王が、意味もなく臣下を見ることはない。学識深く、聖王の誉れ高き正祖であれば尚更だ。
ジョンムは王の意を図りかね、内心戸惑ったが、無言のまま軽く低頭する。
王は大司成を振り向き、尋ねた。

「さて、余はどちらを応援すべきかな?」
「それは当然イ……」

言いかけた大司成は、ハ・インスとその父親が揃って自分を見ているのに気付き、 はっとした。

「イ……い、いやあ、そのような難しいご質問は、私にはわかりかねます」

大汗を拭き拭き答える大司成に、ふむ、と頷いて、王は高らかに宣言した。

「決めたぞ。余は、強い者の味方である。勝利する方を応援しよう」


*   *   *

書吏が、クジの入った筒を手に選手たちの前に立った。

「決勝は、先に二勝した組が勝つ。決勝での対戦相手は、各自クジを引いて決める」

チョン博士の説明に、ビョンチュンが戸惑って目をぎょろつかせた。

「クジって……どういうことだよ、いったい」

その間にも、ソンジュン、インス、ジェシンらはさっさと筒の中からクジを引いていく。同じ色を引けばそれが対戦者だ。組み合わせはすぐに決定した。

「イ・ソンジュンとイム・ビョンチュン。ムン・ジェシンとカン・ム。キム・ユンシクとハ・インス」

会場は、一気に緊張した空気に包まれた。
最初の対戦はソンジュンとビョンチュンである。
それまでと変わらず、淡々と弓を構えるソンジュンに対し、ビョンチュンは落ち着きがない。しきりと風向きを気にしたり、手の汗を何度も拭ったりしている。
結果、二回目までは両者同点だったが、三回目の的をソンジュンが命中させたのに対し、ビョンチュンは外し、8点。
一つ目の勝利の赤札は、中二組に貼られた。

そして、二組目。ジェシンとカン・ムがそれぞれの射台に立った。
ジェシンは、待機席にいるユンシクを見た。こっちを見て笑っている。

あいつめ、これで俺達の優勝が決まるみたいな顔しやがって。

ジェシンは額に浮いた汗を拭った。痛みは、目眩がするほど酷くなっていた。

「大監、あやつです」

官軍の指揮官が、兵曹判書に耳打ちした。人相書きを広げたハ・ウギュは、射台で弓を構えるジェシンと、人相書きの射法を険しい顔つきで見比べる。

「奴が下りてきたら、すぐに捕らえよ。内密にな。誰にも悟られぬよう、密かに連行しろ」
「はっ」

陰でそんなやり取りがなされているとは知らず、ジェシンはきりきりと弦を引いた。脇腹の傷が、脈を打つ度に焼けつくようだ。苦悶の表情を浮かべながら、ジェシンは思った。

なんで。
なんで俺は、こんなことをやってるんだ?ここまでして、なんで……。

汗が、ジェシンのこめかみを伝う。荒い息をつく彼の脳裏に閃いたのは、ユンシクとソンジュンの言葉だった。

『ぼくにもできる、信じてもいいんだって、見せたいんです。───自分自身に』
『中二房───蕩平組、準備完了です』

───クソッ!

呼吸を整えることができないまま、彼は指を離した。その行方を追った誰もが、目を疑った。

矢は、的の中心を大きく外していた。
それまでのジェシンの腕からすれば、あり得ないことだった。




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あまるですどうもこんにちわ。
いつもこんなとこで申し訳ないですが、拍手コメのお返事です。

>ちゃむさま
いつもコメありがとうです(^^)お言葉に甘えて伏字ナシにしました(笑)
先日が叔母様の一周忌だったと聞いて、はっとしました。
あの震災から一年、ということは、遺族の方からすれば一周忌なんですよね。
当たり前のことですが、同じ一年でもその長さの重みは全く違うんだろうな、と今更ながら気付いた次第です。
お恥ずかしい……。

この国の政治家に期待したことはあまりありませんが、被災者の皆さんがほんとに心から笑えるように、
今度ばかりは是非ともしっかりしていただきたい。そう思います。

-----------------

サテ、お気づきの方もいらっしゃるかもですが、今回から各話に簡単なタイトルを入れることにしました。
たまに、以前書いた箇所を見直さないといけない場面にちょこちょこ遭遇するんですが、数字だけだとどこに何書いたか、自分でもわけわかめになってきたので(^^ゞ
今一話から順に入れてる最中です。しかしこれがなかなかムズイ(笑)
明日までに全話入れられるかなあ。自分にファイティン~(´・ω・`)




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2012/03/16 Fri. 01:20 [edit]

category: 第七話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: コロ~(>_<)

葉っぱなすりつけただけで……(^^ゞ
フツーありえんわ、不死身のコロたん(笑)

キム・ガプスさんはほんとにいろんなとこで見ますね~。悪役もやればすんげーいいお父さんもやるし、
アチラにはあの年代の俳優さんって他にいないのかしら、と思ったことがありましたけども(笑)
きっとすごい俳優さんなんでしょうね。
あと、お母さん役ってーと、冬ソナのユジンママとか、宮のチェギョンオンマの女優さん、
よく出てますよね~。
ユニママは太王四神記ぐらいしか知らないけど、あのときはお母さんとゆーよりステキな姐さんだった(^^)

あまる #- | URL
2012/03/18 00:34 | edit

コロ~(>_<)

満身創痍なのに・・・・。
気力のなせるワザですな。

トキメキ♡にチョソン登場~☆
またまた混戦模様ですねぇ~、解説のあまるさんっ( ^^) _旦~~

ソンジュン一家の父(イ家の御当主)、いろんなとこに登場されてるから、発掘楽しいね♪
忘れちゃならない、ユニ家のハハもチェキラ~☆

みずたま #- | URL
2012/03/16 18:22 | edit

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