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第七話 3 束の間の休息 

ソンジュンの正確無比な弓の腕に、儒生たちは皆感心を通り越し最早諦め顔だった。ドヒョンら三人組はウタクの散々な結果も手伝ってか、早々と見物を決め込んでいる。

「見ろよ、百発百中だ。たまげたな。こりゃあ優勝は奴の組で決まりだな」

ドヒョンが、「十」の文字の並ぶ対戦表を指差しながら言うと、ヘウォンがいやいや、と反論する。

「まだわからないよ。掌議組にはあのカン・ムもいるし、掌議だって弓の腕は相当なもんだ」

ウタクが、例によって人差し指を立てて言うことには、

「子曰く、“射は的を主とせず”。つまり、弓術は射抜くことが目的ではない」
「なるほどなるほど、だからお前はビリってわけなんだなー」

中二組の不安要素であったはずのジェシンの腕前も、ソンジュンに負けず劣らず大したものだった。
彼が弓を射る姿など誰も見たことがなかっただけに、一体何処でそんな練習をしていたのかと、皆首を傾げた。

「驚くべき得点を叩き出す中二組、イ・ソンジュン、キム・ユンシク、ムン・ジェシン!この成績なら、予選通過は余裕でしょう」

書吏ジャンボクの実況生中継はますます熱を帯び、それは糸電話という通信手段によりいくつかの中継地点を経由し、貰冊房特別会場に届けられた。
ヒョウンは対戦表の真ん前に陣取り、勝負の行方を固唾を飲んで見守っていた。その近くには、スンドルの姿もある。彼は坊ちゃんの勝利を信じて疑わないのか、口いっぱいに菓子を頬張ってにこにこしている。

酒も入って大いに盛り上がる人々の中に、一人の婦人がひっそりと入ってきた。賭け事とは無縁そうな、いかにも場違いな彼女は、人垣の向うに我が子の名を見つけると、眉をひそめた。しかもあろうことか、好成績で予選通過の勢いであるようだ。

目立つ行動は控えるようにと、あれほど言ったのに。

落ちぶれたとはいえ両班の子息である。弓があまりに下手過ぎても怪しまれるが、こんな風に好成績なのも問題だ。注目を集めれば、それだけ危険も増す。
どうか王の前で、あの子の秘密がばれるようなことがありませんようにと、母は対戦表を見つめながらひたすら祈るのだった。

一方、大射礼会場ではヘウォンの予想通り、全くつけ入る隙のない掌議組が順当に予選を勝ち進んでいった。
中二組も、ほぼ完璧といえるソンジュンを初め、脂汗を流しながらも的は絶対に外さないジェシンと、危なげ無いユニの活躍で次々と他の組を蹴落としていく。
貰冊房店主、ファンは、糸電話を耳に食い込むほどくっつけて、白熱する競技の模様を逐一報告した。

「左手で奇跡を起こすイ・ソンジュン!的の中心に命中させるべく、ど真ん中を狙い───そして今、矢を放ちました!見事、命中です!」

貰冊房は歓声に包まれた。ヒョウンが、どうだと言わんばかりにつんと顎を上げる。
そしてついに、勝負は残る二組に絞られた。

東西の射台の上で、中二組と掌議組が向かい合う。その間で、チョン博士が告げた。

「決勝戦は中二組と掌議組で行う。二組のうち、どちらかが大射礼の優勝者となる。決勝戦は一刻の休憩後に行う。───解散!」

銅鑼が鳴った。ジャンボクの実況生中継も一時休憩となり、会場にそれまでとは打って変わった、くつろいだ空気が広がる。
途端に元気になったのはヨンハである。

「ここからは入れませんって」
「私の的はこっちにあるんだよ」

書吏が侵入を阻止しようとするが、するりと交わして、彼はまんまと妓生たちのいる宴席に入り込んだ。

「ヨンハさま!」
「おお、元気にしてたかな?お嬢さんたち」

すかさず駆け寄ってきたソムソムとエンエンの肩を抱き、にっこりと微笑む。

「外でお会いすると一層ステキですわ」
「陽の下で見るとヨンハさまのお肌はまるで白玉のようですね」

ヨンハはしょうがないなという風にエンエンの頬をつまんで、軽く引っ張った。

「まったく。だからお前たちは一流の妓生になれないんだ。そんな使い古したような褒め言葉なんかじゃ、男の心は掴めないぞ。ん?」
「───これほどご立派な武人は、見たことがございません」

ふいに、背後からそんな声がした。女笠に垂らした薄衣の陰から、白い横顔が覗く。

「堂々たる気概と、品位……そのお姿はまるで、戦場に立つ将軍のようです」

ぱちんと指を鳴らして、ヨンハはエンエンとソムソムに言った。

「ほら聞いたか?さすがはチョソンだ。お前たちもああ言わなきゃ」

ソムソムが頬をぷうっと膨らませる。

「チョソン姐さんは特別なんです」
「私たちはチョソン姐さんの真似なんてとてもできません」

拗ねたように唇を尖らす妓生二人に笑ってみせて、ヨンハは宴席に並べられた酒瓶を手に取った。とくとくと盃に注ぎながら、さらりと言う。

「だがその天下のチョソンも、意外に不器用なんだな」

眉をひそめてこちらを見たチョソンに、彼は続けた。

「今日くらいは、想いは胸にしまっておいたらどうだ?」
「何のお話でしょうか」

ヨンハは盃の酒を煽ると、ぐっとチョソンに顔を近づけ、声を落とした。

「お前のせいでテムルと呼ばれた。お前のせいで死にそうな目にもあった。この大勢の儒生たちの中で、お前の目に映る唯一の男───キム・ユン・シク」

チョソンの表情が変わった。やっぱり気づいてなかったか、とヨンハは口の端を引き上げて彼女から離れた。恋というのはこれだから厄介だ。この聡明な女を持ってして、周囲を見えなくさせる。
弓を射るユンシクを、彼女には珍しくはしゃいだ笑顔で見つめるチョソンに、インスが鬼のような視線を向けていたことなど、露程も知らないのだろう。

「これは奴のための忠告だ。覚えておいて」


*   *   *


丕闡堂裏手。人気のないその場所で、ビョンチュンはインスの背中を前に、小さく縮こまっていた。

「私がどれだけ大射礼を待ちわびていたか、お前は誰よりわかっているはずだ」
「もちろんです、掌議」
「ではわかるな」

インスがゆっくりと振り向く。

「私が最も頼りにしているのは、お前だということを」

ビョンチュンは力が抜けたように、ばたりとインスの足元に跪いた。

「ご期待に添えるよう、全力を尽くします、掌議!どうか、私を信じてください」

インスは表情をちらとも動かさず、跪くビョンチュンの両肩をがっちりと掴んだ。ビョンチュンは思わず、「ひっ!」と声を漏らす。

「必ず優勝するんだ。信じて欲しいなら、まず行動で示せ」

インスの口元に、ぞっとするような笑みが浮かぶのを見、ビョンチュンはごくりと息を呑んだ。



*   *   *


競技の間中、ジェシンは彼らしくもなくコソコソしなければならなかった。役人の格好をした官軍が、紅壁書を探して会場のあちこちで目を光らせていたからだ。
はっきりと顔を見られたわけではない。手掛かりとするなら、恐らくは紅壁書の射法だろう。こればかりは隠しきれるものではないから、下手に目立つと厄介なことになる。

───ヤバイな。傷口が開いちまったか。

流石にこう何度も弓を引いていると、身体の負担も大きくなる。
植え込みに腰掛け、だんだん酷くなる脇腹の痛みをやり過ごしていると、目の前に ぬっと竹筒が差し出された。
顔を上げると、そこに立っていたのはユンシクだった。微かに笑いを含んでいるようなくりくりした目が、こっちを見下ろしている。まるで小動物のような、なんとなくいじってみたくなる顔だ。ジェシンは竹筒を受け取ると、ユンシクの小さな鼻をつまんで、ぐいっと引っ張ってやった。いたた、と笑う。

竹筒の水を口に含んでから、ジェシンは言った。

「たいしたもんだ、テムル。まさかここまでやるとは思わなかった」

ユンシクはちょっと顎を上げると、とん、と拳でジェシンの肩を突いた。

「人騒がせな先輩への怒りを込めたんです」
「なんだと、こいつ!」

ジェシンはユンシクの首根っこを掴むと、後ろから羽交い締めにした。

「苦しっ!先輩、離してっ!」
「逃がすか!」
「わぁっ!」

じたばた暴れながらも、ユンシクはけらけら笑っている。まるで2匹の仔犬がじゃれあっているようなその光景を、木陰から黙って見つめる者がいた。
ソンジュンである。
彼は持っていた2本の竹筒に目を落とした。彼なりにユンシクを労ってやりたくて持ってきたのだが、どうやら無駄になりそうだ。

「先輩、痛いってば!やめて!」

楽しげに笑うユンシクに、ついさっきの出来事を思い出す。少し様子が変だった彼に、熱でもあるのかと触れようとしたら、手を振り払われてしまった。単に、他人に触れられるのが嫌なのかと思っていたのだが。
ジェシンに対しては、そうではないらしい。

ちくりと、胸に刺さるものがあった。

「───駄目な奴だ。態度に一貫性がない。あれでは、大事を成すことは到底無理だ」

ユンシクには、君子としての素養がまだまだ足りない。妙な腹立たしさを感じるのは、きっとそのせいだ。
ソンジュンは手にした竹筒に口をつけ、一気に煽った。口元を拭い、まだじゃれあっている二人に背を向けると、彼は足早にその場を立ち去った。

「ちょっと待って、休戦!」
「何が待ってだ」

掴みかかろうとするジェシンの脇腹に、ユンシクの肘鉄が入った。思わず身を屈めた隙に、ユンシクはぱっと駆け出していく。

「こら、待て!」

痛みに顔を顰めながら、ジェシンがユンシクを追う。
誰もいなくなった中庭には、ユンシクの落とした弓が、ぽつんと残っていた。






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2012/03/14 Wed. 13:44 [edit]

category: 第七話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: 特製☆てんこ盛り♪

ジェラシーソンジュンに萌え萌え~♪
このあたりから挙動不審になってくる中二房のお兄さんたち!(笑)

にしてもあの糸電話はねぇ~(^^ゞ
ドラマはビジュアルがあるからまだいいとしても、文章だとあれでイッキにリアリティなくなっちゃうんですよね。例によってあまるの力量不足のせいかもしらんが……


あまる #- | URL
2012/03/15 09:01 | edit

特製☆てんこ盛り♪

いや~、今回も盛りだくさんでバラエティ~に富んでますね~☆

ジェラシ~ソンジュンが目玉☆
チクチクと・・・。いいね~(^^)v
トキメキ✿こうでなくっちゃ~\(^o^)/

糸電話。伝言ゲームの有効性が確立されていないと成り立たない生業だね。
伝書ハトという手はありえなかったのかな・・。(笑)

みずたま #- | URL
2012/03/14 17:01 | edit

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