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第七話 2 予選 

丕闡堂の正面に設えられた特別席には、大司成や領議政たちと和やかに談笑する王正祖の姿があった。
ハ・ウギュは、するりとそこに混じると、隣に立つイ・ジョンムに耳打ちした。

「万事上手く事は運んでおります。どうぞご心配なく」
「兵判」

王から不意に声を掛けられ、ウギュは背筋を伸ばした。

「は、陛下」
「兵判の息子は、掌議だったな」
「はい。我が愚息は成均館の学生のうち、最も優秀な掌議を務めております」

はっはっは、と得意げに笑う。王は微笑み、今度はジョンムに視線を移した。

「先日、科挙の試験場で余を試すと申したイ・ソンジュンは、左議政の息子であった」
「恐れ多いことにございます」

ジョンムが深く低頭すると、王は楽しげに言った。

「すると今日は、朝廷の官僚ではなく、学生の父親たちと同席しているというわけか」

傍に控えている官僚たちから、笑い声が上がる。

「さて。では誰を応援すべきかな」

王は口元に笑みを湛えたまま、儒生たちの集う弓場を見渡した。



ユニは緊張した面持ちで、射台の前に進み出た。横には、色掌ナム・ミョンシク、キム・ウタク、そしてビョンチュンが並ぶ。彼等に向かい、チョン博士がまず競技規則を説明した。

「予選では各選手が3本ずつ射る。的の中心に命中させれば10点、離れるほど点は低くなる。競技は予選、準決勝、そして決勝と行い、優勝の組を決定する。優勝者には陛下より酒が下賜され、円点が加算される。───健闘を祈る」

予選開始の銅鑼が鳴った。
射台に立ったユニは、じっとりと汗の浮いた手を腰のあたりで拭うと、高鳴る心臓を落ち着かせようとそのまま胸にあてた。

大丈夫。あんなに練習したんだもの。きっと大丈夫───。

そう自分に言い聞かせ、白羽の矢を手に取った。


その頃、貰冊房の特別会場は、いよいよ始まった大射礼に大いに盛り上がりを見せていた。

「さぁて、大射礼の優勝は、どの組が手にするのか!」

太鼓が景気よく打ち鳴らされる。
貰冊房の主人、ファンは、対戦表の前で“高”“低”と記された紙を掲げ、集まった客に向かって声を張り上げた。

「さあ、これと思う組に、はったはった!」
「中二組に賭けるわ」

真っ先に声を上げたのは、兵曹判書の令嬢、ヒョウンである。彼女は下女のポドゥルと数人の女友達を引き連れて、すたすたと対戦表の前に進み出た。

「お嬢様、今、中二組とおっしゃいました?」
「ええ」

ごほん、と一つ咳払いをして、ファンは両手を広げた。

「ではでは、中二組の選手をご紹介~!」

3人の似顔絵とともに、貰冊房の店主お得意の口上が始まった。

「“成均館はぼくに任せろ”期待の新星、キム・ユンシク!」

おお~と拍手が起こる。世にも稀な美少年であるキムの若様は、巷のご婦人方に人気が高い。(というのは本人も知らない事実である)

「やっぱり貴公子が一番!その左手で奇跡を起こすか、イ・ソンジュン!」

今度は若い娘たちの集団から、悲鳴にも似た声が上がる。(ヒョウンが恐ろしげな形相でそちらを睨んだのは言うまでもない)

と、ここまでのうたい文句は良かったが。

「野生馬かはたまた暴れ馬か、それが問題だ!ムン・ジェシン!」

たちまち、集まった人々は苦々しい顔で一斉に頭を振った。
どうやら暴れ馬の名は成均館ばかりか、市井の人々にまで浸透しているらしい。あんな与太者が弓なんか扱えるわけがない、というのが彼等の一致した見解のようだった。
その場の空気を察して、ファンが遠慮がちに声を掛ける。

「あのぅ……お嬢様」
「なぁに?」
「兄君のいらっしゃる掌議組に賭けなくていいんですか?」

ヒョウンは、愚問だとでも言いたげにつんと顎を上げた。

「私には私の賭け方があるの」

そう言って、籠の中から“高”の札を取り上げる。とそれを、

「いざ、勝負!」

バシッ、と中二房の札の上に貼り付けた。



風が止んだ。斎直のポクトンが、合図の旗を振る。恥ずかしがり屋のチョンドンとよく一緒にいる、可愛らしい子だ。彼は、ユニに向かって「頑張ってください」と言うように にこっと笑った。
その笑顔で、少し、気持ちが落ち着いた。ユニはポクトンに微笑み返すと、的に向かって弓を構えた。

特別席で、その姿を見つめる王が ふっと目を細める。

「緑鬢紅顔───キム・ユンシクの父親は弓の名手であったが……息子はその血を受け継いでいるだろうか。楽しみだ」

ユニの父、キム・スンホンと同じ南人である領議政は低頭し、まるで孫を見るような眼差しを射台に立つユニに向けた。が、大司憲ムン・グンスは直立不動のまま、硬い表情で王の言葉を聞いている。
射台の近くに控えるチョン・ヤギョンの胸中もまた、穏やかなものではない。
キム・ユンシクという儒生を前に、大人たちはそれぞれに、失われた過去を見つめていたのだった。

そしてもう一人、宴席から食い入るように射手を見つめる者がいた。
胸の前で祈るように組み合わせた両手を、きつく握り締め、美しい顔を緊張で強張らせている。

「まるで姐さんが射るみたい」

それまで見たこともなかったチョソンの姿に、隣のソムソムは半ば呆れたように笑って、言った。

待機席から同室生をじっと見つめるソンジュンとジェシン、そしてヨンハの面持ちにもまた、緊張感が漂う。
彼等の視線を感じながら、ユニは的を見つめた。

的の前では無心になれ。

ソンジュンの言葉を、胸の内でただ繰り返す。

(一本目……)

ユニは息を止め、矢を放った。

───当たれ!

パッ、と書吏の旗が上がった。

「9点です!」

ユニの顔に、ほっとしたような笑顔が広がる。ソンジュンは大きく息を吐き出し、ジェシンとヨンハは破顔した。
チョソンも同様だ。その双眸に悲壮感すら漂わせていたのが嘘のように、晴れやかに笑っている。

ユニに続き、ウタク、ミョンシク、ビョンチュンが射るが、命中には及ばない。各者二本目、三本目と射るうちに、次第にビョンチュンの表情が強張っていった。

「キム・ユンシク、9点!」

西斎の待機席からも、自然に拍手が起こる。当初のユニの腕を知るドヒョンなどは、同じ組のウタクが散々な成績であるにも関わらず、感心することしきりである。「まともに弓も握れなかったのになあ」と目頭を抑える姿は、まるで甥っ子の成長に感涙する親戚の叔父さんだ。

結果は以下である。

西斎下二組 キム・ウタク    5 6 5 計16点
東斎上三組 ナム・ミョンシク  6 7 7 計20点
西斎掌議組 イム・ビョンチュン 7 8 9 計24点

「……上達したな」

ぼそりと、カン・ムが言った。

「ビョンチュンは前から上手いよ」
「キム・ユンシクだ」
「奴が上達したところで、たかが知れ……」

言いかけたコボンのにたにた笑いが、絶叫に変わった。キム・ユンシクの三本目が終わり、合計得点が発表されたのだ。結果は26点。中二房は射手一人目にして首位に躍り出た。

次の選手であるソンジュンが射台に向かう。好成績に意気揚々と射台を降りたユニは、彼に笑いかけた。

「見てた?」

だが、ソンジュンは頷いただけで、そのまま黙って通り過ぎようとする。
ユニは慌てて、その行く手を塞いだ。

「今日は、何も言わないの?」

またあのときみたいに褒めて欲しくて、ユニはつい、そんなことを言ってしまった。いや、ただ単に彼の笑顔が見たかっただけかもしれない。
ソンジュンはああそうだった、と言ってにこりともせずにユニを見た。

「しっかり気を引き締めろ。決勝までの12本のうちの、まだたった3本だ。少しくらい上手くできたからって、もう優勝した気でいるんじゃないだろうな?」

たちまち、ユニはしゅんとなって俯いた。ソンジュンの言うとおりだ。まだ予選だというのに、有頂天になっていた自分が恥ずかしかった。

「そうだね。……ごめん」
「───具合でも悪いのか?」

ふと、ソンジュンが言った。え?と顔を上げると、本当に戸惑っているようなソンジュンの瞳とぶつかった。

「別に……。どうして?」
「やけに素直だから」

ユニはいたたまれなくなって、目を逸らした。自分の気持ちを自覚した途端に、これだ。確かに、ソンジュンからしてみれば変に映るかもしれない。

「顔が赤いな。見せてみろ」

ソンジュンが左手を伸ばし、ユニの頬に触れた。驚いたユニは咄嗟に、彼の手を振り払ってしまった。

「しっ、心配、いらないよ。気を引き締めて、頑張るから」

彼の顔をまともに見ることすらできずに、ユニはすたすたと待機席に戻った。

───びっくりした。

まだ胸がどきどきしている。ソンジュンの指先が、ほんの少し触れただけだというのに。
まるでそこだけ火がついたように、熱い。ユニは火照った頬に手を当て、射台を振り返った。
そこには、真剣な眼差しで的を見詰めるソンジュンの姿があった。

陽の光が、弓を構えるソンジュンの輪郭を際立たせている。すらりと背が高く、肩幅も広い彼がそうやって弓を持つ姿は、ひときわ凛々しく、美しく見えた。

矢をつがえ、ぐっと腕を引き付ける。その流れるような一連の動作には無駄というものがまるでない。彼の目が、真っ直ぐに的を見据えるその瞬間、ぴんと張り詰めたような侵しがたい空気が周囲を包んだ。
それはまるで研ぎ澄まされた刃物のようで、怖くもあり、不思議と惹きつけられるものでもあった。

今更ながらに思う。あんな人と、よくも毎日平気で一緒にいられたものだ。
この間など、あの肩にもたれて居眠りまでしてしまった。至近距離でずっと寝顔を見られていたかと思うと恥ずかしく、どうしてすぐ起こしてくれなかったんだとユニは抗議したが、彼は知らん顔だった。

「10点です!」

表情を変えず、当然のように次々と得点を叩き出すソンジュンから、ユニは、目を離すことができなかった。








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2012/03/07 Wed. 18:17 [edit]

category: 第七話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: 開幕~☆

これは弓の大会と見せかけて、激しいラブラインがあちこちで形成されている模様ですよ、実況のみずたまさん!
いやー楽しみですね~。
特にこの後の休憩時間、いちゃこくユニコロを横目に見つつヤケ酒ならぬヤケ水を煽るソンジュン様は最高です(笑)

あまる #- | URL
2012/03/10 02:13 | edit

開幕~☆

いよいよ始まりましたね~、解説のあまるさんっ!
手に汗握る、試合運びに会場騒然です~ぅwww。

父さんズ、ユニを通して過去に思いをはせ・・・。
しみじみと、憎々しく、懐かしむ。
それぞれのいままでの人生の生き様だね。

現代のチョソンやヒョウン(行動アヤシイが・・。)この巻を中和させてます。
でも、ユニのソンジュンに対するキモチが見えてきて、大射礼の舞台裏でオトメゴコロもドキドキ大活躍~☆
更新感謝です~(^O^)/

みずたま #- | URL
2012/03/08 11:56 | edit

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