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第六話 2 特訓の再開 

丕闡堂の弓場は、いよいよ間近に迫った大射礼に向け、練習に余念のない儒生たちでごった返していた。
ええーい、とドヒョンが忌々しげな声を上げる。

「この五十肩さえなければ、本当の腕前を見せてやれるのに!」

無駄無駄、とヘウォンが諦め顔で言う。

「どうせ優勝するのは掌議かイ・ソンジュンだ」
「子曰く、『射は男子の大事である』!」

と、ウタクが弓を構えたはいいが。

「男子の……だ、男子のすべき……仕事だ!」

腕力の無さではユニといい勝負なので、わなわなと弓を震わせた挙句、矢を取り落とす始末である。

「とかって、簡単に言うよな……」
「まったくだ」

お前もそう思うだろ?と同意を求めて3人が隣の射台を見る。そこには、相変わらず満足に矢を飛ばせないでいるユニの姿があった。傍らには、眉間に皺を寄せたソンジュンが立っている。

『まともに弓も握れぬ身で、男たちと同等に戦い、勝てるとでも思うのか?』

ユニの脳裏に、チョン博士の声がこだまする。
それでも彼女は、矢を取り、弦を引き絞った。足がふらつき、身体を支えることもおぼつかない。
何度やっても、矢は的の遥か手前で虚しく地面に落下した。

昨日の雨のせいで、じっとりと湿り気を帯びた空気は、ユニの体力を確実に奪っていった。流れ落ちる汗で指が滑り、手元は増々狂ってしまう。

「もうよせ」

流石に見かねたソンジュンがユニの腕を掴んでやめさせようとするが、ユニはそれを振り払った。
ほとんど意地になっていた。少しも自分の思い通りにならない弓が、憎らしくて仕方ない。気付くと、握っていた弓を足元に叩きつけていた。

「ユンシク!」

ソンジュンの声を背中に聞きながら、ユニは無言で射台を降りた。

丕闡堂を出る門に差し掛かった所で、肩にどしんとぶつかるものがあった。俯いたまま、ろくに前も見ずに大股で歩いていたので、誰かがいたのに気付かなかったのだ。

「気をつけろよ!あーあ、俺の矢が」

と、はずみで落とした矢筒を拾っているのはコボンだった。そこには当然のように、インスとビョンチュン、カン・ムがいた。

「なんだテムル、男のくせにひ弱だな。もうやめるのか。大射礼も棄権するか?」

おそらくは人をからかうことに無上の喜びを感じているのだろう。こういう時のビョンチュンは妙に生き生きとしている。

「それは許さん」

インスが、ユニを追ってきたソンジュンにちらりと視線を投げながら、言った。

「キム・ユンシク、お前には頑張ってもらわねばならん。官僚たちの前で、跪かせたい奴がいるからな。蕩平だか何だか知らんが、どこの馬の骨とも知れぬ連中を集め、この成均館を汚している王と、その王にそっくりな、ある男だ。だから、どんな手を使ってでも決勝に残ってもらう。お前のせいで、私の計画を台なしにされたくない。ああそうだ、望むならまた弓を教えてやろう。今度はここに───」

インスが、ユニの頭に手を伸ばす。だがソンジュンはそれを許さなかった。さっとインスの手首を掴んで払いのけると、鋭く彼を見返した。

「やめてください、掌議」

少しでも触れたら殺してやる。
そんなソンジュンのただならぬ気配に、その場にいた者たちは皆ごくりと息を呑んだ。

「決勝戦で、待っていてください。先日の指導に、結果で応えます」

そう言い返したユニに視線を移し、ほう、とインスが面白そうに眉を上げる。

「そして、勝ちます。貴方に」

こいつ正気か?とビョンチュンが笑う。いつの間にか周囲に集まってきていた儒生たちからも、失笑が漏れた。だがユニは構わず、インスに視線を据えたまま言った。

「その時は、謝罪してください」
「謝罪だと?」
「”どこの馬の骨とも知れない”。そうおっしゃいましたね。ぼくばかりか、ぼくの家族まで侮辱したことを謝ってください。ぼくは陛下に直接選ばれ、ここに入学した学生です。そのことも、ちゃんと認めていただきます」

インスの表情から、それまでの余裕のようなものが すっと消えた。

「生意気なのは中二房の流行り病のようだな。その病、私が治してやろう。───決勝で待っているぞ」



*   *   *


東斎への道をとぼとぼと歩いていたユニを、ソンジュンが追い越した。
ほら、と差し出された矢筒と弓を、黙って受け取る。ソンジュンが、小さく溜息をついた。ユニには、彼の言いたいことはよくわかっていた。だから、まともに目も合わせられない。

「矢も飛ばせない状態で、優勝する?根拠の無い自信だけは、一等賞だな」
「ぼくに……出来ると思う?」

どうかな、とソンジュンは言った。彼は本当に正直だ。時々、憎らしくなるほど。

「難しいだろう。肩は華奢で狭く、弓を引く腕力も無い。呼吸は乱れているし、足の踏ん張りもきかない」

憎らしいどころか、なんだか泣きたくなってきた。がっくりと肩を落とすユニだったが。

「だが、男が志を胸に死ぬ気でやれば───きっと道はある」



このとき。
ユニはうっかり失念していたのだ。
イ・ソンジュンが、何があっても絶対に諦めない男だということを。







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2012/01/25 Wed. 00:35 [edit]

category: 第六話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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