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第五話 7 ソンジュンの決意 

「なんですって?あたしのソンジュン様に、矢があたったの?」

ヒョウンが、大きな目を更にひん剥いてポドゥルに詰め寄った。むしろ驚いたのはポドゥルの方だ。
いつこの私がそんなことを言いました?と慌てて両手を左右に振る。

「そうじゃありませんよ!弓の練習中に、近くの木材がガラガラッっと倒れてきて、それが左議政の若様に………あの、ちょっと、お嬢様?」

こうしてはいられない、とヒョウンはポドゥルが話し終わるのを待たずに、さっさと立って部屋を出た。
向かうは、父ハ・ウギュの部屋である。

「左遷と見せかけ、王はチョン・ヤギョンを成均館へ送った。───なぜだ?そして王は夜な夜なチョン・ヤギョンに密命を下している───どんな?………わからん」

兵曹判書ハ・ウギュはぶつぶつと独り言を言いながら、室内を歩き回っていた。先日、左議政イ・ジョンムが密かに彼に見せたもの。それは、ここ数日の王への謁見記録だった。
そこに記されたチョン・ヤギョンの名は、彼を驚愕させた。その数ときたら、尋常ではなかったのだ。
全く日を置かずに、ともすれば昼夜二度に渡ってその名が記されている日もあった。
いったい何の用があって、王はああも繰り返しヤギョンを王宮に呼びつけているのか。
理由はわからない。だが、長年宮中の権謀術数の中に揉まれていると、その手の勘だけは鋭くなってくる。
何かが動き始めている。ハ・ウギュのそれは、確信と言ってもよかった。

とそこへ、編んだ髪を背中で跳ねさせながら、ヒョウンが部屋へと入ってきた。

「私、行くから」

娘は唐突に、父に告げた。

「どこへ?」
「成均館」
「なぜだ?」
「大射礼があるから」
「どういうことだ」

さっきから疑問詞しか口にしていない自分に気づき、ウギュはうんざりした。まるで自分が頭の悪い猿にでもなったような気分だ。
だが彼の愛娘は、父の渋い顔など全く意に介さず、無邪気に言った。

「掌議であるお兄様の家族として、練習に励む学生たちに差し入れを持っていくべきでしょ?」

何を言ってるんだ、とウギュは頭を振った。

「ただでさえ私は頭が混乱しているんだ。おかしなことを言わないでくれ」
「準備は私が全部するから」
「ダメだ。成均館は、女がむやみに入れる場所ではないのだ」

ヒョウンはたちまちぷーっ、と頬を膨らませ、父を上目遣いに睨んだ。

「まったくお前は、いったいいつになったら大人になるんだ。成均館は遊び場ではないのだぞ」

そう娘を戒めはしたものの、ふと、ある考えがウギュの脳裏に浮かんだ。
これは、案外いい口実かもしれない。王がこのところやけに成均館に執心している理由を、少しでも探る機会になりはしないか?

「あー待ちなさい、ヒョウン」

拗ねて足音高く部屋を出ていこうとしていた娘を、父は呼びとめた。

「お前が全部準備するのだな?」

ヒョウンは ぱっと表情を明るくして、「お父様!」と声を上げた。

「掌議の家族として、奉仕してやらんとな。さりげな~く………」

父の思惑など知る由もなく、ヒョウンは目をキラキラさせて頷いた。


*   *   *

右手に弓を持ち、握りの位置を確かめる。やはりかなりの違和感だ。左手だとあれだけしっくり馴染んでいたものが、手を変えただけで重さまで違うような気がする。
左手の親指を弦にかけ、ぐっと力を込めて引いてみた。弓を支える右肩に痛みが走り、彼はわずかに顔をしかめた。

───できるのか?こんな状態で。

一瞬、そんな不安が頭をよぎったが、彼はすぐにそれを振り払った。
決めたのだ。必ずやり遂げてみせると。
これまで、一度決意したことを途中で投げ出したことなどなかったじゃないか、と、ソンジュンは自分を叱咤した。
絶対に諦めるわけにはいかなかった。今回ばかりは。

『君にとっては当たり前のことでも、もしぼくにそんな機会があるとしたら、それは───奇跡だ』

溢れる才気を持ちながら、自分の未来に何の希望も持てずにいるキム・ユンシク。
腹立たしかった。もどかしさが募った。始める前から、どうして全てを諦めてしまうのか。
自分次第で、運命はいくらでも変えられる。決めるのは、自分自身の強い心だけなのに。
なぜそれを、わかろうとしない?自分を、信じようとしない───?

ソンジュンは矢を手に取り、弓を構えた。前方の的を見据え、弦を引き絞る。
思うように力が入らない。無理に肩を引くと、ぶるぶると腕が震えて、狙いが定まらなくなる。
利き腕でするときの半分も弦を引くことができないまま、指を離した。
矢は、的まで届くことすらできずに、力なく地面に落ちた。

隣の射台から、ぷっ、と吹き出すヘウォンたちの声が聞こえたが、ソンジュンは気にもとめなかった。
彼は次の矢を手に取った。弓を構え、引き絞る。
放った矢が的に届くことはなくとも、黙々とそれを繰り返した。


*   *   *

「子曰く、巧言令色鮮し仁」

明倫堂に、論語を唱和する儒生たちの声が響く。

「曾子曰く、吾日に我が身を三省す。人の為に謀りて忠ならざるか、朋友と交わりて信ならざるか、習わざるを伝えしか」

声に混じって、きりりと小さな音が聞こえる。ユニはふと、隣のソンジュンを見た。
皆と同じように唱和しながら、彼の横顔には微かな苦悶にも似たものが浮かんでいる。
理由は、彼の文机の下にあった。
ここ数日の彼は、片時も弓を離そうとしない。食事の時と寝ている時以外は、たとえ講義の最中でも、こうして左手で繰り返し弓を引き、腕を鍛えているのだ。

「子曰く、千乗の国を道むるに、事を敬みて信あり、用を節して人を愛し、民を使うに時を以てす」

論語の頁をめくるソンジュンの指には、弓懸がはめられている。その下に見える皮膚は擦り剥け、赤くただれていた。
彼はユニに何も言わない。講義が終われば、その足で丕闡堂へ向かい、的に向かって矢を射る。
指がそんな状態になっていても、まるで痛みを感じていないかのように、ただ一心に、的に向かう。
陽が落ち、弓場に誰もいなくなっても、彼は一人、弓を射続けた。
始めは彼を笑っていたヘウォンやウタクたちも、やがてそんなソンジュンの姿を、息を詰めて見守るようになっていった。

そしてついに。

ソンジュンの放った矢が、ダンッと力強い音をたてて的に突き刺さった。中心から大きく外れてはいたものの、確実に的を捉えることができたのだ。

「やったな!」

ドヒョンら3人組から、自然と拍手が起こる。
的までの距離の半分にも届かなかった最初に比べれば、驚くべき進歩だった。

「すげぇな、あいつ。この短期間で」

普段何かというとソンジュンに絡むヘウォンまでもが、感嘆の声を漏らしている。
ソンジュンの表情に、ようやくかすかな安堵の色が浮かんだ。

───届いたか。

弓場を望む大銀杏の上。
ジェシンは視線を手元に戻した。手にしているのは、親指ほどの小さな木片である。彼は小刀を握り直すと、器用にそれを削り始めた。







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2012/01/17 Tue. 22:39 [edit]

category: 第五話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: びわさま

悪役もどこか憎みきれないソンスの、兵判は代表格ですね。
イ・サンでは異様に老けてたけど、実際いくつくらいなんだろ。
悪役専門役者としては恵まれてるよなぁ、あの三白眼……(笑)

あまる #- | URL
2013/07/23 17:09 | edit

ステキ父娘☆

ほんと、もろもろのことがなければ、兵判とヒョウンって、
仲良しだし笑えるし、ベストカップルならぬベスト父娘のタイトルでももらえそう♪
この兵判の役者さんは、イ・サンでは老論の長、トンイではいきなり死人wだったので、
こんなにコミカルな演技が出来る人とは思わなかったです☆

びわ #p6hXJKzs | URL
2013/07/23 10:23 | edit

Re: あたしのソンジュン様~☆

芙蓉花はすっかり人格憑依してるから(笑)この人の場面は書き始めると早いのだ~
パパとヒョウン役の彼女はたぶん、撮影現場でも仲良しさんだったんじゃあないかなぁ。
画面見てると、なんとなく伝わってくるんですよね。
兵曹判書は悪役だけど、ヒョウンと一緒のときの彼は結構好きだ(^^)

あまる #- | URL
2012/01/18 13:17 | edit

あたしのソンジュン様~☆

大胆にも《あたし》のだって~( 一一)
え?いつのまに・・・・。(-"-) さ~すが、芙蓉花☆

父娘の会話、生き生きと(なま生しい?)さすが、あまるさん~。
この娘にしてこの父あり!

〉ヒョウンは目をキラキラさせて頷いた
そうでしょ、そうでしょ。オトメゴコロ❤炸裂★
わかるわ~。今回の巻はなれるならuki-uki♡ヒョウンになりたいワ~( ..)φメモメモ
春らしいオトメゴコロ❤ありがとう~☆

みずたま #- | URL
2012/01/18 11:22 | edit

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