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第五話 6 ソンジュンの決意 

薬房で、赤黒く腫れ上がったソンジュンの右肩に包帯を巻き終えると、ヤギョンは深い息をついた。

「幸い、骨に異常はないようだ。しかし………大射礼は」

言い終わらぬうちに、大司成が慌ただしく薬房に飛び込んでくる。

「なんと!これぞまさしく青天の霹靂!ああ、できることなら私の肩と取り替えてあげたい!ジャンボク!食堂に伝えなさい!今後全ての汁物は牛骨汁にしろと!」

他の儒生たちの怪我や病気にはまるで無関心な大司成だが、こと左議政の息子となると身を捩っての大騒ぎだ。窓からこっそり薬房の様子を覗いていたドヒョン、ヘウォン、ウタクの3人も呆れ顔である。
痛みに顔をしかめながら服を着たソンジュンは、ヤギョンに尋ねた。

「大射礼には、出られますか」

心配は無用です、とすかさず大司成が口を挟む。

「準決勝まで、不戦勝にすればよろしい」

大司成の学習能力の無さに、ソンジュンは最早諦め顔だ。そういう特別待遇は嫌いだと、何度言ったら理解してくれるのか。

「チョン先生」

改めて訊くと、ヤギョンは厳しい顔つきで言った。

「大射礼は………難しいだろう」

その言葉に、唇を噛んだのは当のソンジュンだけではなかった。薬房の外、ドヒョンら3人とは少し離れた場所で中の様子を伺っていたユニの胸にもまた、複雑な想いが交錯していた。




「イ・ソンジュンを恨んでるヤツなんて大勢いるからな」

東斎の井戸端で足を洗いながら、ヘウォンが言った。
天幕の支柱を支える縄は、儒生たちの安全を考えて全て新しいものが使われていた。その一部に、明らかに刃物で断ち切られた跡があったことは、既に書吏が確認している。
単なる事故ではなく、誰かがソンジュンを狙って故意にやったのだということは明白だった。

「確かにな。お前じゃないのか?昔から良く思ってないんだろ?」

ウタクの言葉に、ヘウォンは心外だとでも言いたげに口を尖らせた。

「俺を何だと思ってる。それを言うならテムルだろ?あんなにしごかれちゃあ、殺したくもなるってもんだ。違うか?」

いきなり、ドヒョンが足を突っ込んでいた金ダライの水をヘウォンにひっかけた。

「うわっ!汚ねぇな!何すんだ!」

バカ、とドヒョンが顎で指し示した先には、沈みきった表情で俯くユニがいた。

「あ………別に、冗談だって、テムル。でも、お前だって誰だか気になるだろ?」

ユニは答えなかった。ソンジュンに怪我を負わせた犯人が気にならないわけではなかったが、ヘウォンの言うように、彼が怪我をしたのはまるで自分のせいのような気がしたからだ。

殺したくなる、なんて本気で思ってもいないことを、高ぶった感情に任せて言ってしまった直後に、あんなことが起こったからかもしれない。
ソンジュンが大射礼に出られないなら、これ以上弓を練習する必要もなくなる。自分にとっては好都合のはずなのに、気持ちは重くなるばかりだ。
ユニは、桶の水に顔を突っ込んだ。弓場で、痛みに歪んでいたソンジュンの顔が、頭から離れなかった。


*   *   *


はっ、とインスはさも可笑しそうに笑った。

「私が、誰かに命じて奴の肩に怪我を負わせたというのか?このハ・インスが、奴が優勝するのを恐れて?」
「ぶっちゃけた話、一番疑われてるのはお前だってことさ」

壁に掛かった洋弓をいじりながら、ヨンハが言った。この洋弓が見事なのは、派手に施された細工のせいで一見装飾品のように見えるが、実際にはちゃんと殺傷能力もあるというところだ。おそらくはその隣に飾られている数々の銃もそうだろう。
どういうわけか、現掌議の私室には物騒なものが多い。
インスは傍らのビョンチュンとコボンを顎でしゃくった。

「この二人にそんな度胸はないし、カン・ムはあんな姑息な手は使わない。そして私は、そこまで愚かではない。私は成均館の掌議だ。奴を痛めつけるのが目的なら、何も今まで待つ必要はない。イ・ソンジュンごとき、名簿から永久に削除するのも、半殺しにするのも、その気になれば簡単だ」

インスの台詞に、ヨンハは「おっかないな」と肩を竦めた。

「私の望みは、奴が自ら服従を申し出てくること。今はその機会を与えてやっているのだ」

掌議ハ・インスの脳裏には既に、自分の足元に跪くイ・ソンジュンの姿が見えているのかもしれない。
この部屋で一番物騒なのはこいつだったか、と改めて思うヨンハだった。


その夜遅く、丕闡堂の射台に一人じっと座り込んでいるソンジュンの姿があった。
左手に弓を携えてはいるが、だからといって何をするでもなく、ただぼんやりと空〈くう〉を見つめている。

天幕が風に煽られ、バタバタと音をたてた。墨を流し込んだような空を、速い雲が流れていく。
やがて彼は正面を見据えた。
その視線の先にはただ、赤く塗られた的だけがあった。


*   *   *


その日、明倫堂から戻ってきたユニは、中二房の前で久しぶりにスンドルの姿を見た。
彼は今にも泣き出しそうな顔で、主人に縋りついていた。

「やめてください、坊ちゃん!もう、ご自宅に連れて帰るつもりで来たのに………」

弓と矢筒を肩に掛け、縁側に出てきたソンジュンは、スンドルを全く無視し、靴を履いている。
例によってドヒョンら3人組が、ユニとは反対側から遠巻きに見ていたのだが、ついに見かねてヘウォンが助け舟を出した。

「おい、その怪我で練習する気なのか?お前正気か?」

その隙に、スンドルはソンジュンの肩から弓袋と矢筒を奪い取り、両腕にしっかりと抱え込んだ。
これは渡しませんからね、と思いつめた目で主人を見る。
小さく溜息をついたソンジュンと、ふと、目が合った。ユニは思わず、胸に抱えていた写本をぎゅっと握りしめた。

ソンジュンはスンドルが抱え込んだ袋からすらりと弓を引き抜くと、真っ直ぐにユニの方へと歩いてきた。
ユニの目を見つめたまま、右手に構えた弓の弦を引く。その左腕は、微かに震えていた。

「この左腕は、今日初めて弓を引く。君と同じだ。───僕は、この左腕で没技〈モルギ〉をやる」

没技。5本の矢を全て的の中心に当てる技だ。
ユニは耳を疑った。利き腕で成功させるのも難しい技なのに、それを左腕で?

ソンジュンの背後で、カッコつけやがって、と言うヘウォンの声が聞こえた。ドヒョンとウタクも開いた口が塞がらない、といった顔をしている。

「左腕で没技か。奇跡を待つほうがまだマシだ」

彼らの失笑混じりの言葉にも、ソンジュンの目は揺るがない。

「奇跡が必要なら、起こしてやる。もし僕が没技に成功したら、ユンシク、君も───もう一度弓を持て」

はっとした。あのとき確かに、ユニは言った。南人である自分が、機会を掴むのは奇跡だと。彼はその答えを、導きだそうとしているのだ。イ・ソンジュン、その人のやり方で。

「僕が大射礼に出るには、君が必要だ」

そう言って、丕闡堂へと歩き出す。スンドルが慌てて、その後を追った。
諦めない背中が、そこにあった。








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2012/01/12 Thu. 02:07 [edit]

category: 第五話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: びわさま

なんだかんだいって、大司成は役に立つお人ですよね(笑)
よーく見ると時々、衣装の下から黄色いTシャツの襟元が覗いてるのもお茶目で笑えます。
撮影中、誰も指摘しなかったんだろーか(^^ゞ

あまる #- | URL
2013/07/17 18:38 | edit

大司成w

大司成の感動的なくらいのソンジュン贔屓w
この特別扱いがあるからこそ、あとあと大司成、良い仕事してますよね〜(^-^)

びわ #p6hXJKzs | URL
2013/07/17 06:25 | edit

外しました(^^ゞ

自分でもちっと邪魔だな~と思っていたので外しました、エコリボン(^^ゞ
テンプレートによっては表示されないものもあるようなのデスが、
けっこう今のテンプレート気に入ってるので、こっちを変えるよりはと。
プラグインいじりだしたらキリないのでこのへんでやめとこ(笑)

あまる #- | URL
2012/01/18 00:19 | edit

管理人のみ閲覧できます

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# | 
2012/01/16 00:36 | edit

Re: センセー、打撲ですよ~(T_T)

ホータイ姿のユチョにちょっと萌え(爆)
スンドルが出てくると和むね~(^^)

あまる #- | URL
2012/01/14 01:11 | edit

センセー、打撲ですよ~(T_T)

派手な事故だったのに打撲ですんで、よかったワ~✿
さすが、ソンジュン鍛え方が違うから☆
受け身が出来てるw←え?
弓のサウスポー~☆☆☆ファイティン♪
スンドル~、お久しぶり~♡会いたかったワ~(^^♪


みずたま #- | URL
2012/01/12 14:39 | edit

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