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第五話 1 秘密 

キム・ユンシクをここまで運んできたムン・ジェシンの話によれば、弓場で標的にされたが矢にあたりはしなかったというから、外傷の心配はない。顔が紙のように白くなっているところを見ると、恐らくは貧血を起こしたのだろう。

成均館の学生ともあろうものが芸人の真似事とは呆れたものだ、とヤギョンは深い息をつくとユンシクの手を取り、脈診を始めた。

(………?)

彼は眉を寄せると、もう一度目を閉じ、意識を集中させた。反対側の手を取り、そちらも診る。確かに貧血の症状だが、これは。

ヤギョンはにわかに自分の診断に確信が持てなくなり、立ち上がってユンシクの襟元を広げた。普段はあまりしないことだが、手首の寸口だけでなく頸動脈を診ようと思ったのだ。と、手の甲に何か硬いものが触れた。ユンシクが懐中に忍ばせていたものらしい。取り出して見ると、それは女性だけが持つ守り刀───細かな彫りの施された、小さな銀粧刀だった。
ヤギョンの胸に、衝撃が走る。

「キム・ユンシク。君は………」

彼は全てを理解した。



*   *   *



薬房から出てきたチョン博士の表情は険しかった。ユンシクの容体を尋ねようとしたソンジュンとジェシンが、揃って言葉を失う。

「皆、戻りなさい」

チョン博士はそこで待っていた儒生たちを見渡してそう言った。薬房の前庭には、他にも東斎の仲間数人がユンシクを心配して集まってきていた。
ドヒョンが、不満気な声を漏らす。

「そんな、ちょっと様子を見るだけでも………」
「いいから戻れと言ってる!」

博士のいつになく強い口調に、その場にいた者たちは皆、しんと静まり返った。

「キム・ユンシクは安静が必要だ。許可するまで誰もここに入ることはまかりならん。よいな」

承知しました、と傍らに控えていた書吏が低頭した。
博士が薬房に戻るやいなや、ジェシンは憤怒に頬を歪め、ヘウォンの背負っていた弓矢を乱暴に引き抜いた。それと察したソンジュンがすかさず、彼の行く手を阻んだ。

「掌議に仕返しするつもりですか?」

ジェシンがソンジュンを睨み返す。邪魔するならお前から片付けてやると言わんばかりの形相だ。

「お前は?同じ老論だからって庇い立てするつもりか?」

ソンジュンはまさか、と言った。

「原因は僕です。この件は………僕が解決します」

ジェシンは思わず息を呑んだ。言葉は静かだが、ソンジュンの目には、ジェシンですらも戦慄を覚えるほどの冷たい殺気が宿っていた。


*   *   *


「誰も薬房に入れるなって?」

人けの途絶えた明倫堂。耳敏いのは相変わらずだ。話を聞きつけたヨンハが色めき立った様子で、昼寝を決め込んでいたジェシンをつついた。

「なのに、恵民署〈ヘミンソ〉から医者も呼ばなかった、と。───何故だ?」

ぱちん、と扇を鳴らして、ヨンハは窓際に寝転がっているジェシンの顔を覗き込んだ。

「気にならないか?テムルに何があったか」
「テムル?」
「キム・ユンシクのことだよ。あのチョソンが認めた大物〈テムル〉を持ってる。だからテムル」

バカ言え、とジェシンは鼻で笑った。あの女みたいな可愛い顔にでかい一物?

抱え上げたユンシクは、一瞬戸惑うほど軽くて、柔らかだった。血の気を失っていたせいもあるだろうが、間近で見た肌は透き通るほどに白く、ジェシンはそのせいで酷く不安になったのだ。
こいつはもとから持病でもあったんじゃないか、と。

だから思わず、あんな似合わない真似をしてしまったのだ。
この俺が、男を抱きかかえて薬房まで運んで、その上、様子がわかるまでアホ面下げて外で待ってるなんて。
女子供ならいざ知らず、男相手に。しかもそいつが大物?あり得ない。

「まさしくだ。あの顔に似合わず大物とは。奴にはきっと何か秘密がある。人に知られてはいけない、すごく危険で、恐ろしい秘密が」

ジェシンの心を読んだかのように、ヨンハが言った。何かくだらない遊びを思いついたときの、あの顔だ。

完全に面白がってやがる。

ジェシンは目を閉じ、寝返りを打ってヨンハに背を向けた。

少しだけ暑さのとれてきた風が、窓からするりと入ってきてジェシンの髪を揺らした。






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2011/12/21 Wed. 15:06 [edit]

category: 第五話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: びわさま

まさにフラグ(笑)
でも二人は女子に免疫がないので、ヨンハみたいにピンとこなかったんでしょうね。
「こーゆうもん?」って思っちゃったんだろうなぁ。
可愛い奴等です(^^)

あまる #- | URL
2013/07/14 07:21 | edit

気になってる( ̄∇ ̄)

ソンジュンにしても、コロ先輩にしても、
男のはずのユンシクが思ったより柔らかいとか、軽いとか、
拍子抜けするような印象を受けるから余計に心に引っかかってるんですよね〜
まさにフラグ( ̄∇ ̄)

びわ #p6hXJKzs | URL
2013/07/13 16:47 | edit

Re: ちびたさま

ソンジュンはインスの方に走っちゃったけど(笑)アレはインスの手元が
狂ったりしたら逆に危ないんじゃ、とかいらん心配してました。

あの助け方も、なんか二人の性格が出てて面白かったですよね~。

あまる #- | URL
2012/05/17 09:26 | edit

あたしもコロ先輩に抱きかかえられたいわあ(爆!)
にしても、あの心配した顔ったら萌えるわ!
コロ先輩にあんな顔させられるのはユニちゃんと嫁だけだわよね。

このあたりは、イ・ソンジュン君子は完全にコロ先輩に食われてますなあ。
あんな顔されて気付かないユニちゃん、あんたどんだけ鈍感なんだか。
あ、気絶してたんか。

ちびた #- | URL
2012/05/15 21:16 | edit

Re: 昔の先生

ヤギョン先生はきっとダビンチみたいな天才だったんでしょう、ってことで(笑)

あまる #- | URL
2011/12/22 08:07 | edit

Re: 奥さ~ん、事件です~☆

韓流史劇見てると、「そんなんでわかるのか?!」っていうシーンが多々あってオドロキですが(笑)実際、脈診で妊娠がわかったり、胎児の性別がわかったりとかホントにするらしい………。おそるべし。

あまる #- | URL
2011/12/22 08:05 | edit

昔の先生

オールマイティーに何でも出来るのね~

にゃん太 #- | URL
2011/12/21 21:37 | edit

奥さ~ん、事件です~☆

チョン・ヤギョン・・・・・。
只者ではないな、おぬし・・・・。φ(..)メモメモ

ヤギョン先生のユニぱぱご訪問の折の回想場面にココロが暖かくなったのをおもいだしたよ~☆
しかし医術スゴイっ!!
脈で病名がわかったり、性別がわかったり、ご懐妊が分かったり・・(・・?
世が世なら、FBIがスカウトしそう☆

みずたま #- | URL
2011/12/21 21:10 | edit

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