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第四話 6 門限 

 夜の静寂をついて、人定〈インギョン〉の鐘の音が鳴り始めた。

 泮水橋まで来れば、東三門までは目と鼻の先だというのに、今のユニにはいつたどり着くかもわからないほど、遥か遠くに思える。
 それは、彼女の肩にずっしりとのしかかっているイ・ソンジュンというお荷物のせいだ。

 酔いつぶれてしまった彼を放っておくわけにもいかず、仕方なくここまで背負ってきたものの、ユニの体力は最早限界に近かった。
 額から流れ落ちる汗を、服の袖で拭う。酔いなんかとうに覚めてしまった。こういうとき、自分が非力な女であることを思い知らされ、ユニはまたうんざりするのだ。

「ちょっと、手伝ってくれよ!」

 千鳥足ながらも先を急ぐドヒョンたちに息を切らしながら訴えるが、彼らはけんもほろろだ。

「悪いな。門限を破ると、それはそれは恐ろしい罰が待ってるんだ」
「俺はこの年だ。腰は大事にしないとな。任せたぞ、テムル!」

 あんまりだ。どうして自分ばかりがこんな目に?
 ぐったりしているソンジュンに肩を貸し、よたよたと歩くユニを儒生たちが次々と追い越していった。ユニの焦りは募る。

「イ・ソンジュン、お願いだから、歩いて、よっ!」

 橋を渡らせようと背中を押すが、ソンジュンの身体は糸の切れた操り人形のようにその場にくずおれてしまった。
 だらりとした両腕を引っ張り、立たせようとしても、引き摺られて逆に地面に伸びてしまう有様だ。門限の鐘は無情にも鳴り続ける。ユニは途方に暮れ、叫んだ。

「もおぉぉぉ、新榜礼の貸しだけじゃ済まないからね!」


*   *   *


 同じ頃、成均館、東三門。
 ばたばたと駆け込んでくる儒生たちをいちいち確認しながら、書吏ジャンボクが帳簿をめくっている。
 その横で、ビョンチュンが笑いを抑えることができない、といった顔で、傍らのインスに囁いた。

「掌議、イ・ソンジュンとキム・ユンシクがまだ戻っていません」

 牡丹閣から戻るなり、そのまま部屋にも入らずに東三門を睨んでいたインスは、人定の鐘が鳴り終わったのを確かめると、おもむろに口を開いた。

「時刻だ。門を閉めろ」
「え?でも、まだ戻ってない学生が」

 新入生の初めての外出は、少しばかり遅れても大目に見てやるのが慣例となっている。ジャンボクは眉を潜めてインスを見たが。

「………何度も言わせるな」

 インスの底冷えのする声に、彼は即座に姿勢を正した。慣例など、掌議の鶴の一声の前では何の意味もない。

「そ、そうですね。初めての外出なんですから、厳しく教え込まねばなりません。はい」

 帳簿を閉じ、そそくさと門を閉めにかかる。その向こうには丁度、ソンジュンを背負いよろよろと歩いてくるキム・ユンシクの姿があった。

 門が閉ざされていくのに驚いて、思わずソンジュンの身体を突き飛ばし、扉に駆け寄る。だが東三門は情け容赦無く二人を閉めだしてしまった。

「開けてください!これには訳があるんです!次からは気をつけますから!」

 門の扉を叩きながら訴えるが、中からは何の返事もない。ユニは悟った。これは掌議ハ・インスの差し金だ。門が閉まる寸前、彼女は確かに見たのだ。その隙間から、じっとこちらを見ていたインスが微かに笑ったのを。

 ユニは悔し紛れに、門を思い切り蹴りつけた。つま先がひりひりした。振り向くと、ユニに放り出されたソンジュンが塀の脇にだらしなく座り込み、口を開けて天を仰いでいる。

 まったく、身言書判が聞いて呆れる。こんなに酒に弱いくせに、無理して呑んで。お陰でこっちまで酷いとばっちりだ。
万策付き果てたユニは深い溜息をつき、門の扉に寄りかかった。

「───何か、お困りのようだね」

 ユニがうつろな目で、声のした方を見る。そこには、ぱちんと片目を瞑って笑う、ヨンハの顔があった。


*   *   *


 清斎では就寝前の点呼が始まっていた。今夜の担当はユ博士である。部屋の前にずらりと並んだ儒生たちは皆、襲いかかる眠気と闘いながらどうにか直立不動の姿勢を保っていた。その前を歩きながら、一人一人の顔を確認していたユ博士の足が、はたと止まった。

「中二房はまだか?」

 部屋の縁側〈マル〉には誰もいない。儒生たちの列がそこだけぷつりと途切れたようになっているのを見、ユ博士は傍らのインスに尋ねた。灸を据えておきます、とインスが型通りの返事を返すと、博士は眉間に皺を寄せ、言い放った。

「ムン・ジェシン、イ・ソンジュン、キム・ユンシク、不可!」

 そのとき、誰もいないはずの中二房の扉がぱっと開いた。縁側に転がるようにして飛び出してきたユニが叫ぶ。

「イ・ソンジュン、キム・ユンシク、戻ってます!」

 ビョンチュンが、呆気に取られてユニを見た。

「イ・ソンジュンは体調がすぐれず、横になっております。ご容赦ください」

 そんなばかな、とビョンチュンは縁側に駆け上がり、中二房の扉を開け放った。そこには確かに、青白い顔で布団に横たわっているイ・ソンジュンの姿があった。


*   *   *


「恩に着ます」

 その夜遅く、ヨンハの部屋でユニは深々と頭を下げていた。

「先輩のお陰で、助かりました。この御礼は、いつか必ずお返しします」

 締め出されて困り果てていたユニの前に、まさしく救世主のごとく現れたヨンハは、彼が普段使っている秘密の抜け道をユニに教えてくれたのだ。
 お陰で間一髪、ユニとソンジュンは減点を免れたわけである。
 
 神妙な面持ちのユニに、ヨンハは白い歯を見せて笑った。

「大袈裟だな。礼なんていらないよ。新榜礼のこともあるし、これでおあいこだ」
「何のことですか?」
「いや、まぁ………気にするなってこと。それより、今夜はイ・ソンジュンと二人きりだ」

 くいくい、と指先でユニを手招きする。その仕草につられてユニが身を乗り出すと、ヨンハはいつものごとくこちらの予測以上に顔を寄せてきて、ユニはわずかに身を引いた。
 ヨンハはくすりと笑って、ユニの耳元に囁きかけた。

「きっと、格別な夜になる。コロは今夜も外泊みたいだしね」

 えぇ?とユニは思わず声を上げた。

「コロ先輩、戻ってこないんですか?」

 ふふっ、と楽しそうに笑うヨンハとは裏腹に、ユニはがっくりと肩を落とした。


 中二房に戻ったユニは、そこに転がっているソンジュンを見てどっと疲れを感じた。これからまだ一仕事あることを思い出したのだ。
 さっきは慌てていたので、床に放り出したソンジュンにとりあえず布団を被せただけだったから、これから敷き布団を敷いて、このでかい図体の男をその上に寝かさなくてはならない。ユニは重い身体を引きずるようにして布団を敷き、枕を置いて、泥のように眠っているソンジュンをどうにか転がして寝かせた。

 ほっと息をついて、彼の足元を見る。履いたままの足袋〈ポソン〉が気になった。そろそろと手を伸ばして、指先で足袋をつまもうとしたが、ソンジュンが足を動かしたのにびくりとして、思わず手を引っ込めた。
 すると、眠り込んでいると思っていたソンジュンは苦しげな息を漏らし、むくりと起き上がった。そしてあろうことか、着ているものをさっさと脱ぎ始めたのである。

「えっ?ちょっと、何の真似?」

 行衣ばかりか、下着である単衣にまで手をかけ、脱ごうとしているソンジュンにユニは慌てた。止めようとする彼女の手は、うるさそうに払いのけられた。

「『小学』!身なりを整えるのが礼儀の基本だろ!自分が言ってたくせに!頼むからやめて!」

 ユニの悲痛な声など、聞いちゃいない。ソンジュンは服をすっかり脱いで上半身裸になると、満足したようにばたりとまた布団の上に倒れ込んだ。とても見ていられずに、ユニは両手で顔を覆った。
 とにかく早く布団を掛けて隠さなければ、と手探りで掛け布団を引き寄せる。だが、うっかり指の隙間から、ソンジュンの手が下衣をずり下ろそうしているのを見てしまい、彼女は心の中で悲鳴を上げた。

 挙句。中二房を飛び出す羽目になってしまったユニは、胸の動悸をどうにかなだめつつ縁側に座り込み、柱に寄りかかった。

 時刻はもう真夜中だ。東斎はどの部屋も灯りが落ち、辺りは静まり返っている。今夜散々騒いだ儒生たちは皆、今頃夢の中だろう。なのに、彼らの数倍体力を消耗しているはずの自分は、布団の上に横になることすらできないでいるのだ。

「これじゃあ気が休まらないよ………」

 こつん、と柱に頭をもたせかけ、ユニは小さく呟いた。




*********************************************************************

あまるですどうもこんにちわ。
↑のシーン、メイクさんの技術の賜物か、ユチョの左胸のタトゥーが見事に消えてましたね~。スゴイスゴイ。
ワタクシ、時代劇とか見てると俳優さんのピアス穴とかがどーにも気になっちゃう性質なんですが、皆さんそんなことないですか?
台湾ドラマなんかも、絶対やんないだろってキャラがフツーに刺青してたりなんかして、なんか違和感~ってカンジするんですが、これもお国柄なんですかねー。

しかし我が家に地デジが導入されたばかりのときは、韓流史劇の衣装ばかりか、女優さんのほんのわずかな鼻ミズまでキラキラ光っててそらもーびっくりしたもんですが。
映像のクオリティが上がったから、メイクさんもきっと大変になったんだろなーとか思ったりする今日この頃です。





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2011/11/30 Wed. 02:00 [edit]

category: 第四話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: びわさま

結構ユニはソンジュンに容赦ないですよね。
2回も引っ叩いてるし(笑)

最初はこんな二人がやがて~っていうのは韓ドラの醍醐味ですから~。
やっぱ外せない要素ですわ。

あまる #- | URL
2013/07/12 02:01 | edit

突き飛ばしてるし(笑)

このシーン、ユニがソンジュンを思い切り突き飛ばしてるシーンが私のツボでした( ̄∇ ̄)
こんなヤツをそのうち恋い焦がれるんですもんね〜、
分からないもんですよね〜プププ

びわ #p6hXJKzs | URL
2013/07/11 14:44 | edit

Re: ちびたさま

アジア系にタトゥーっていうと、どーしても東南アジアとかあのへんのイメージが……(^^ゞ

俳優のゆちょんさんもステキですが、歌って踊ってるユチョはほんとーにシビレます。
あんな子が現実にいるのかってくらいカッコいいから~(つД`)
でもそれだけに彼等の現状が歯痒くて歯痒くて。
ただでさえあちらの国は兵役とかあって、彼等の「今」を見られる機会が限られてるっていうのに。
……ってなんか愚痴っぽくなっちゃってスイマセン(^^ゞ


あまる #- | URL
2012/05/15 01:16 | edit

私も知りませんでしたわ(汗)
どっからどう見ても、タトゥーするようなイメージがなかったので。
日本人に限らずアジア系の肌というか雰囲気にはタトゥーは似合わない気がします。
東方神起というグループ自体しらなかったので、そんなごたごたがあったとは知りませんでした・・す、すんません(汗)

昔ピアスの穴は『肌色のクレアラシルでふさぐ』というのを聞いたような気が。

で、このストリップ(汗)のシーン、NGで脱ぎすぎちゃったってことはないんだろうかね??
あるなら見せてくれー!(変態・・)

ちびた #- | URL
2012/05/13 01:37 | edit

ユチョンの日本語☆

聴いたことあるよ~(*^_^*)
勢いがあって、語尾が↗だった・・・♪
その時は、お上手~❤❤❤な~んて、おもったのよね~☆
今考えればタモリさんの中国語のようだった・・・。
☆φ(..)メモメモ

みずたま #- | URL
2011/12/01 17:17 | edit

Re: ここのシーン

> ところで、ユチョン、タトゥーあるの?

あるんスよ~。例のゴタゴタがきっかけみたいですが。羽根みたいなパターンに、ちっちゃくジュンスとJJと弟の名前が彫られてる……らしい^^;

ユチョは日本語を上手くしゃべってる風に見せるのが巧いですよね!←え?
発音や文法はともかく、たどたどしさを強引にねじ伏せてるというか、無理やりな流暢さというか。(ほんとにファンか自分)

あまる #- | URL
2011/12/01 14:40 | edit

Re: 家政婦は見た㋱

どーでもいいですが最近のハマリものです。家政婦のミタ(笑)

チャングムでバンドエイド事件なんてあったの?それは見逃してたわ~。ネットで探してみよう……ww

あまる #- | URL
2011/12/01 14:25 | edit

ここのシーン

どこまで脱ぐか、ちょっと心配してみていた。
ところで、ユチョン、タトゥーあるの?

実はメイキング番組で、
ユチョンが日本語を話しているのを見て驚いたのだ。
で、いろいろ調べて、
あの契約問題でゴタゴタしているグループの
一員であることを知った。
それくらい、東方神起に限らず、
韓国関係のこと知らなかったのさ~
今はあの頃よりはましかな?


そうそう、ピアス穴、気になるよね~
時代劇では注意してほしいよね!

にゃん太 #- | URL
2011/11/30 21:55 | edit

家政婦は見た㋱

パッ、パと脱ぎ出すソンジュン~☆
ユニぢゃなくとも、ドッキンコ♡♡♡
げろっこソンジュンをどうやってお連れして、中二房に戻ったのかと思ったのよね~( 一一)
やっぱり、ヨリム(ク・ヨンハ)様御用達の抜け道があったんだねぇ~。いや~、感心・感心☆ニンニン☆
コロ様御用達の塀なんて名所もあるし~
成均館って、観光スポット・見どころいっぱいヨ~

あっ、あまるちゃんも気付いた?
ワタシもピアス穴キニナ~ルヒトでして・・・
コンタクトも、あ~っ、着けてるよ~・・なんて。
チャングムで有名なバンドエイド事件なんて、あの時代絶対あり得ないコトがあったんですが~。

みずたま #- | URL
2011/11/30 10:50 | edit

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