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第三話 6 桀騖 

「この失礼な挨拶から察するに───コロ先輩ですか」

 部屋の惨状を見渡して、ソンジュンが言った。
 夜中に突如として現れ、折角ユニとソンジュンが運び入れた荷物や布団を盛大に蹴散らかし、ごろりと部屋の真ん 中に大の字になった男。
 ユニは驚愕した。桀驁。成均館の暴れ馬。そしてこの中二房の三人目の住人、ムン・ジェシン。この人が?

「ご挨拶を」
「結構だ。もう会うこともねぇだろうから」

 目を閉じたまま面倒臭そうにそう言ったジェシンに構わず、ソンジュンは続けた。

「今日からこちらでお世話になります。イ・ソンジュンです」

 相手がどんな人間であろうと、己が尽くすべき礼は律儀に守る。ソンジュンはそういう人間だ。だがユニは違う。
 女である彼女の姿を見ている相手であれば尚更だ。荷物を抱え、コソコソと退散しようとすると、ジェシンの鋭い声が降りかかった。

「おい、お前」

 ぎく、と背筋が凍りついた。はずみで、抱えていた荷物をぼとぼとと落としてしまう。

「なんでここにいる?」

 天井を見つめていたジェシンは、むっくりと起き上がり、布団の上に片膝を立てた。

「気は確かか?あ?ここを何処だと思ってる」
「えっとあの、ぼ、ぼくは……」

 膝が震えた。とてもジェシンの顔を見ていられなくて、ユニは身体ごと横を向いた。このまますぐにでもあの扉から出て行きたいのに、足が縛り付けられたように動かない。ジェシンは立ち上がると、邪魔だとでもいうようにユニの背中を押した。
 ユニは短い悲鳴を上げて、前につんのめった。振り向くと、ジェシンがソンジュンを睨めつけるようにして見上げている。二人とも背丈はさほど変わらないのに、目線の高さが違うのはその姿勢と態度の違い故だ。

「理由を言え、老論。何故貴様がここにいる」

 ソンジュンは黙って、足元に落ちている自分の荷物を拾おうとした。が、一瞬早くジェシンにそれを蹴飛ばされる。

「答えろ。ここは東斎だ。なんで老論のクソ野郎がここにいるんだって訊いてんだよ」
「東斎の中二房に割り当てられたからです。僕は党派ではなく、原則に従ったまで。それ以外の理由はありません」

 ジェシンはせせら笑うように肩を揺らした。

「そもそも、成均館……いや、この朝鮮を党派争いで引き裂いたのは、お前ら老論だろうが」
「今、この部屋を党派争いで引き裂いているのは先輩です。では先輩も、老論ですか」
「なんだと?」

 ジェシンの顔つきが変わった。だがソンジュンは怯まない。

「僕は原則に従い、休ませていただきます。消灯時刻ですので」

 さっさと自分の寝床に戻り、枕に頭を乗せて目を閉じる。ジェシンは忌々しげに、羽織っていた衣を脱ぐと床に激しく叩きつけた。
 その剣幕に恐れをなし、ユニは はっしと障子戸に手をかける。


「ハナ……」

 中二房の外で、ヨンハが目を閉じ、数を数え始めた。

「トゥ!」

 縁側に身を乗り出すビョンチュンたち。

「……セッ!」

 パン、とヨンハの扇子が彼の手元で小気味良い音をたてた。

「来るぞ」




───あれ?

 てっきり、殴り合いの喧嘩が始まるとばかり思っていたユニは、しんとした室内におずおずと視線を戻した。
すると ごろりと横になったジェシンが、いきなり「ぶははは」と笑い出し、ぎょっとする。

「この俺が老論だと?ふざけた野郎だ。さんざ罵倒されたが、こんなムカつく悪口は今まで聞いたことがねぇ。───おいそこのチビ」
「はい?」

 声をかけられると思っていなかったユニは、その場で飛び上がりそうになる。

「突っ立ってねぇで灯を消せ。俺は寝る」
「え?あ、はい。じゃあぼくは、ちょっと着替えに、外へ……」

 さっき落としてしまった荷物を取ろうと、戻って腰を屈めたときだった。
 どんっ、とその尻に足蹴りをくらい、ユニは あっと思う間もなく布団の上に突っ伏してしまった。

「俺に老論の横で寝ろってのか?お前の寝床はそこだ。これからずっとな」

 そう言うと、ジェシンは目を閉じた。
 これからずっと。この狭い部屋で、男二人に挟まれて寝ろと。

うそぉ……。

 枕に顎を埋め、深い深い溜め息をつくユニだった。




 その晩、中二房の灯が落ちるのとほぼ同時に、外で待機していた上級生たちも一斉にがっくりと肩を落とした。

「なんだ?え?灯が消えたぞ。どういうことだ?」

 ビョンチュンだけは目の前の事態が飲み込めず、しきりと瞬きを繰り返している。

「くそう、俺の10両が」
「賭けなんかするんじゃなかった」
「なんて奴らだ、あの新入生たちは!」

 口々に歯噛みして悔しがる儒生たちを尻目に、ヨンハはおかしくてたまらない、といった様子で、優雅に扇を閃かせた。

「とりあえず明日の朝まではもちそうだな。そういうわけだから、これはいただくよ」

 ずっしりと金子の入った巾着袋をひょいと持ち上げ、ヨンハはにっこり笑った。彼を除くその場の全員が、イ・ソンジュンが今夜中に中二房を出ていく方に賭けたので、一人勝ちとなったわけだ。

 だがどうやら今回も自分の読みは外れそうだ。

 まんまとせしめた賭金の袋を掌でぽんと弾ませて、ヨンハは思う。
 自分が賭けた「イ・ソンジュンは少なくとも明朝までは耐える」という以外にもう一つ、選択肢があったとしたら。そして無謀にも、その3つめの選択肢を選ぶ酔狂な人間がこの場にいたとしたら。
 もしかしたら自分は、この賭けに負けることになるかもしれない。

「これから、この成均館も面白くなりそうだ」

 空に煌々と輝く月を見上げながら、ふふっとヨンハは楽しげに笑った。


* * *


「少論のコロと、老論のイ・ソンジュンが、同じ部屋で寝てる……だと?」

 自室で、短刀の手入れをしていたインスは、ビョンチュンとコボンの報告を自ら確認するように、低く繰り返した。

「おまけに、例の女みたいなヤツまで一緒です。あの部屋はまさに地獄だ」
「厄介者の掃き溜め!」

 ゲラゲラ笑うビョンチュンとコボンに、インスは磨いたばかりの短刀の切っ先を突きつけた。ひゅっ、と息を吸い込むように、二人は笑い声を一瞬にして引っ込めた。その冷たい銀色の刃同様、撫でるだけで相手の皮膚を裂くようなインスの視線が、彼等を震え上がらせたのだ。

「老論のイ・ソンジュンが東斎に留まる。この意味が貴様ら馬鹿どもにはわからんか?」

 言葉もなく頷く二人に、インスは言った。

「既存の秩序に反旗を翻し、このハ・インスと成均館に、挑戦状を叩きつける───そういうことだ」

 インスは血走った目で短刀を逆手に持ち替えると、力任せに文机に突き立てた。
 微かに震える掌議の肩と、鈍く光る短刀を交互に見ながら、ビョンチュンとコボンはごくり、と唾を飲み込んだ。


* * *


───1、2、3……。


 ユニは、四角い天井板の木目が描く波模様を、一つ一つ数えていた。右上から始めて、今は二列目の三枚目。この調子では、睡魔が訪れるよりも先に、この部屋の天井の木目の数を完全に把握してしまうかもしれない。
いやそれよりも夜が明けるのが先か……。

 ぼんやり考えていると、がつん、と膝のあたりに何かがぶつかった。ユニは上掛けの中でそろそろと脚を動かして、ぶつかってきた”モノ”から距離をとった。
 たぶん今あたったのは、左隣に寝ているジェシンの脚だ。寝苦しいのか、小さく唸っているのが聞こえる。
 布団なんて掛けちゃいない。ばりばりと脇腹を掻く音まではっきりと聞こえて、ユニは耳を塞ぎたくなった。

 しばらくすると、今度は胸の上に長い腕がどーんと落ちてきて、一瞬、息が止まった。
 ユニの耳元に、ジェシンの寝息がかかる。流石に耐えられず、落ちてきた腕を両手で摘むようにして、ポイと横に放った。つられて仰向けの姿勢に戻ったジェシンにほっとして、ユニはもそもそと身体を横に向ける。すると今度は視線の先に、ソンジュンが床に就いたときと寸分違わぬ姿勢で眠っているのだ。

 暗闇に慣れてしまった目は、余計なことに彼の単衣の襟元から覗く胸が、呼吸に合わせてゆっくりと上下しているのも、その喉元が微かに脈打っているのも、はっきりと捉えてしまう。

ダメダメ。貞淑な女人はそんなものを見ちゃいけない。見ちゃ……

 と反対を向けば、上半身裸同然の男が転がっている。しかもあれは、いつ負ったものだろう。浅黒い肌に、いくつもの筋を描く、痛々しい傷痕。まるで、刀傷みたいな。

───刀傷?

 それ以上続けると恐ろしい想像に行き着きそうで、ユニは考えるのをやめにした。
 結局また天井を見つめるしかなくなって、ユニは身体を縮こまらせたまま、胸元の銀粧刀をぎゅっと握りしめた。

大丈夫。お母様が、ユンシクが、きっと祈ってくれてる。私が、上手くやれるようにって───。

 二人の顔を思い出すと、ちょっとだけ泣きそうになった。






************************************************

あまるですどうもこんにちわ。私の地味なお悩み相談(笑)に早速お答えくださった皆様、
どうもありがとうです(^^)

拍手コメくださったヨリムファンの●さま←苦しい対処(^^ゞ
非常に参考になりました。とりあえずその線でいかせていただきます。(*^^*)
どの場面でヨリムの「俺」が出てくるかは……ぐふー。まだナイショですがたぶんあのへんです(わからんて)
ご期待に添えるといいのですが。頑張ります。



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2011/09/20 Tue. 16:13 [edit]

category: 第三話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: びわさま

> 耳元に!コロ先輩の寝息!!!(;´Д`)ハアハア

コロも気になるけど反対側のソンジュンも……ブフッ(吐血)

あまる #- | URL
2013/07/07 20:27 | edit

耳元に!コロ先輩の寝息!!!(;´Д`)ハアハア

…失礼しました(汗)もぉ〜う、腕なんか降って来ちゃったりしたら、
そのままじいっと朝まで顔を見つめていたいなぁ〜(〃▽〃)キャー♪

びわ #p6hXJKzs | URL
2013/07/07 07:10 | edit

Re: タイトルなし

>あ、いいのか?馬だから邪魔しても??

山田くん座布団二枚(笑)

私も背低くて、職場の同僚は何故かやたらでかいのが多いのでよく言われるんですが、
ちっちゃいヤツって、でっかい人間には視界に入らないらしいんですよね……(^^ゞ
え?いた?みたいな。失礼な話だが。o(`ω´*)oプンスカプンスカ!!
このときのユニも、もしかしてそういう扱いだったのかもしれんな~

あまる #- | URL
2012/05/09 21:56 | edit

私の言いたい事は、皆様がおっしゃってくださってますぅ。
ああ、なんだか嬉しい。同士がいっぱい~
あ、コロ先輩女の子のお尻を足で蹴飛ばしてはいけません。

それよりも、『人の恋路の邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえ』ってことわざがあるんだよ。
あ、いいのか?馬だから邪魔しても??

ちびた #- | URL
2012/05/08 21:20 | edit

発見★

見つけた♡ 模様です~

(見つけた) というjyjの歌だいすきです~☆

みずたま #- | URL
2011/09/26 17:56 | edit

ぬをを!

>みずたまさん
ぬぅ!似たよーなIDのヒトがいっぱいいるうぅぅ~Σ(゚д゚lll)
しかもワタクシってばバリバリの初心者なのでどーしたらいいものやら……
あの~よろしければそちらから探していただけないでしょーか。
このブログのURLのドあたまで検索して貰えればたぶんすぐ見つかるかと。←芸ナシ

あまる #- | URL
2011/09/26 13:10 | edit

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

# | 
2011/09/25 06:11 | edit

Re: みずたまさま

うう~ん。一日差とはいえ裏山~(>_<)
コンビニ配達にしたので、ワタクシは明日昼休みに取りに行ってきます。
会社の連中に「また韓流ですか~?」って言われるんだろうな、きっとな……(-_-)
くえすちょんへのお答えです。やってますよ~♪シャイなのであんまし遊びに行けてませんけども(笑)

あまる #- | URL
2011/09/25 03:07 | edit

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

# | 
2011/09/24 20:53 | edit

えっ、え~(マスオサン風)

Amazonから今日届きました☆

ワタシてっきり月曜かと思ってたら 早かった~www

モモ夫人て、章まで読みました。

ジェットコースター気分です♡

作者&訳者にかんぱ~い★


みずたま #- | URL
2011/09/24 20:50 | edit

Σ(゚д゚lll)ガーン

ええ~!いいなあぁぁぁ~
今Amazon見てきたら明日到着になってた…ぐすん。
あとちょっとガマンしまする。はう。

熟読したら(笑)感想聞かせてくださいね~

あまる #- | URL
2011/09/24 14:57 | edit

届いたよ~♡

奎章閣閣臣たちの日々 (下) きました~☆

ぱらぱら~っと黙読し、ゆっく~り読もうと思ってます~

みずたま #- | URL
2011/09/24 12:48 | edit

Re: にゃん太さま

> ユニが女って知っていたら・・・
↓下のコメのことかな?
本能的に、っつーのは女って知ってたってことじゃなくて、ちっちゃいのとか可愛いのとか見たら
なんか意地悪できない、みたいなのってあるでしょ?そういう感じかなぁ?

あまる #- | URL
2011/09/22 07:15 | edit

No title

ジェシンは女の人が傍に来ると
シャックリが出るんだよね?
ユニが女って知っていたら・・・

にゃん太 #- | URL
2011/09/21 20:01 | edit

Re: にゃん太さま

さてソンジュンは20話中何回原則原則言うてるんでしょ……(^^ゞ
ドラマだとそれほど感じなかったんだけど、文字にするとよくわかるわ~
ほんとそればっか言ってる気が(笑)

あまる #- | URL
2011/09/21 01:22 | edit

Re: りゅうれんさま

> コロ→ユニの心の声をぜひ聞いてみたい!

だはー!またしても宿題が!(笑)
コロがユニを初対面からなんか気にかけてたってのはあるでしょうね。
もともとソンジュンとかよりずっとジェントルな男だから、ユニには本能的に乱暴なことができなかったのかもしれないし、おっしゃるように紅壁書を見逃してくれたときの顔を覚えてたとも考えられるし。
極めつけが実は女の子で、兄ちゃんと一緒に死んだキム先生の娘だなんて
知った日にゃーもー……(´Д⊂ヽそら命がけで守るしかないでしょうよ!(萌)

あまる #- | URL
2011/09/21 01:16 | edit

原則に従う

このフレーズ、結構好きだ。
ソンジュンの生真面目さっていうか。、融通の利かなさ?
笑えるよね?

にゃん太 #- | URL
2011/09/20 22:22 | edit

No title

あまるさま こんばんわ。
このシーン、コロは「あの晩(さっき??)見逃してくれた奴だ」と、ユニのことを思い出したと思いませんか?
だから、ユニに関しては何も言わずに置いておいたような。
ついでに言うと、だからその後も何かと気に掛けていたような??
違うかなぁ?
コロ→ユニの心の声をぜひ聞いてみたい!

りゅうれん #/ZrAXPAI | URL
2011/09/20 22:01 | edit

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