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第三話 5 東斎での夜 

 新入生の第一の試練とも言える新榜礼を、どうにか終えたユニとソンジュンだったが。
 成均館には、早くも波紋が広がっていた。

 ユニが折角の最優秀賞をソンジュンのためにあっさり手放したことで、あの二人には何かあるんじゃないかと勘ぐる輩もいれば、生粋の老論でありながら東斎に残るソンジュンに不信を抱く西斎の者たち。
 当然ながらそれは東斎側も同じで、何故自分たち少論や南人の領域に老論が図々しく居座っているのかと憤懣やるかたない。
 儒生たちの動揺は正録庁の博士たちにも波及した。党派争いを避けるためには暗黙の了解に従うべきだ、明日にでもイ・ソンジュンを西斎に移すと力説する大司成に対し、チョン博士は、ソンジュンの若さを理由にそれは無駄だとやんわり反対した。
 
 あの年頃は、何が何でも自分の信念を曲げないものだ、と。


* * *


「───心配いらないよ。どうせ、耐えられないから」

 東斎の様子を探れと言われたのか、それともインスの眉間に刻まれた深い縦皺に恐れをなしたのか。(ヨンハはおそらく後者だと踏んだが)揃って部屋にやってきたビョンチュンとコボンに向かい、彼は言った。

「イ・ソンジュンもキム・ユンシクも、あの部屋にいられるのは長くて一日……いや、二日が限度かな」

 ビョンチュンとコボンは、明らかに疑いの眼差しでヨンハを見ている。

「それもどうだか。ここんとこお前の企みは何も成功してないじゃないか」

 確かに、とヨンハは軽く頷いて盃の酒を煽る。言っちゃなんだがこういう悪巧みにかけては、成均館で自分以上に周到で、面白い計画を思いつく人間はいないという自負がある。インスにしたって、自分のそういうところを利用するために傍に置きたがるのだということもよくわかっている。

 だがどういうわけかこのところ、というかあの二人───イ・ソンジュンとキム・ユンシクに対しては、どうにも調子が狂う。
 自分の読みが甘すぎたのか、それとも単に彼等の運がいいのか。あんなに、想定外のことばかりやらかしてくれる奴らは本当に久しぶりな気がする。
 
 苦虫を噛み潰したような目の前のビョンチュンたちの顔とは裏腹に、ヨンハは楽しくなってきた。
 予測不可能なあの二人が、今度はどう動くのか。なんだかわくわくしてしょうがないのだ。

「今回は、手を下すのは私じゃないからね。忘れたのか?なんたってこっちには秘密兵器がある」
「秘密兵器?」

 ビョンチュンとコボンが、怪訝な表情で互いの顔を見合わせた。

「桀驁〈コロ〉だよ。別名、泮宮の暴れ馬」

 そうか、とビョンチュンが小さな目を瞠った。

「ヤツなら、イ・ソンジュンを追い出せるか?」

 手の中の杯をゆっくりと回しながら、ヨンハは答えた。

「大事なのは実績だよ。今までコロと同室になって、逃げださなかったヤツが一人でもいたか?あいつが、老論と仲良くしてる姿を見たことは?」

 ビョンチュンとコボンはふるふると首を振った。その顔に、じんわりと笑みが広がる。

「イ・ソンジュンとキム・ユンシク……あの二人が同じ部屋で寝るのは、今夜が最初で最後になる。きっとね」

 そうさ。何事も、この焼けつくような刺激がなければ、つまらない。旨みはない。

 ヨンハは咽喉元をゆるゆると下りていく酒の熱さを楽しみながら、口の端を引き上げて笑った。


* * *


「───脱げよ」

 夜具の上で、はだけた単衣〈チョクサム〉の前を合わせながら、ソンジュンが言った。
 壁際で縮こまるようにして座っていたユニは、びくりとして思わず顔を上げた。と、白い一枚仕立ての衣に透ける、彼の腕や胸板が目に飛び込んできた。

 意外と筋肉質なんだ───って、そうじゃなくて!

 目のやり場に困って、ユニはふいと顔を逸らした。

「ぼ、ぼくが脱ごうが脱ぐまいが、関係ないだろ」
「着替えないと消灯できない」

 上掛けを引き寄せ、ソンジュンは横になった。だが灯を消さないといけないので、半身は起こしたままだ。片肘をついて夜具に横たわるその姿が妙に艶かしく見え、ユニはますます焦ってしまった。

「ぼくは勝手にやるから、気にせず寝ていいよ」
「灯を消さないと寝られないだろう」

 ああもう、とユニは胸に抱きしめるようにして抱えていた荷物を放り出し、ソンジュンに背を向けてころんと横になった。

「ほら、これでいいだろ」

 ユニの後ろで、ソンジュンが身体を起こす気配がした。

「”身なりを整えるのが礼儀の基本”───『小学』の教えにあるだろう。知らないわけはないな?」

 首を巡らせて、背後を見た。そこには、ぴしりと姿勢を正して座るソンジュンがいる。
 なんだこの男は。布団の上で、講義でも始めるつもりか?

「清斎はただ生活するだけではない。礼を学び実践する場だ。日常を通して、心身を鍛錬し、己を律するべく居館修学〈コガンスハク〉という制度が……」
「あーもぉ、わかったから黙って!」

 がば、と身を起こし、ユニはたまらず部屋を出ようとした。ところが。
 扉に手を掛ける前に、それが乱暴に開け放たれた。間から ぬっと突き出された裸足の足が、彼女の行く手を阻む。
 思わず一歩退ると、無精髭の顔がぐっと距離を詰めて覗き込んできた。
 それがあまりに近いので、顔を見られたくないユニは、不自然なくらいに俯かなければならなかった。
 
 男はなおも近づいてユニをしげしげと見る。ユニはじりじりと後退る。そのうちに、ソンジュンのいる部屋の奥まで追い詰められてしまった。ソンジュンが立ち上がると、男のぶしつけな視線は彼にも移った。

「どなたですか」

 ソンジュンの短い質問に、男はフッと片頬を歪めて笑った。「お前らこそ」

 あの笑い方!ユニは思い出した。ざんばらの髪に、着崩した服。いつだったか路地裏でユニを助けてくれた、あの猿のように身軽な男だ。そういえば朝っぱらから酒場で暴れて、塩をまかれてもいたっけ。
 その場面を見たのは今朝のことなのに、なんだかいろんなことがありすぎて、何日も前の出来事のような気がした。

「何だこれは」

 男は床に敷かれた布団を蹴飛ばし、棚に掛けてあったソンジュンの道袍をひっぺがした。

「とっとと失せろ!」

 突然のその怒鳴り声に縮み上がったのは、ユニだけではなかった。
中二房の外で、新入りが飛び出してくるのを今か今かと待ち構えていた、ビョンチュンを筆頭とする老論の上級生たちも、思わずびくりとして縁側から離れる。

 その中で一人、ほくそ笑んだのはヨンハだ。
 縁側の柱にもたれ、ひらりひらりと扇子で顔を扇ぎながら、「ほらね」と彼は言った。

「コロはいつだって期待を裏切らない」

 実に素晴らしい。これからあの向こうで繰り広げられるであろう、中二房の地獄絵図。それを思い描き、障子戸に視線を投げるヨンハだった。






*********************************************

あまるですどうもこんにちわ。
よく見ると向井理くんもなかなかいい喉仏してますなじゅる←変態?

ところで書いてて未だにフラフラ悩んでるのが、表記を含めたヨンハの一人称。
他の三人は結構すんなり決められたんですが、彼だけは「私」も「俺」も「僕」も、全部アリなような気がするだけに、どれもどうもこれだ!と決め難くて。吹き替え版は「俺」なんすけどね。なら素直にそれにしとけって?(笑)や、できれば4人違うのにしたいな~と。書くのにラクだし(爆)

しかし流石はヨリムです。この掴みにくさは只者ではありません。
うーん……アンケートでも取るか?しかしこのブログでは回答が集まるか疑問だが(笑)
どれが一番自然ですかね?




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2011/09/19 Mon. 21:40 [edit]

category: 第三話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: びわさま

> 原作本でも、あんまり前面には出てこないけど一番複雑な人ですよね。

そうなんですよ~。四人衆の中で原作でも家庭の事情が今ひとつ
わからないのがヨリムんち。そのうち明らかになるのかなぁ。

まーでもあのミステリアスなところが彼の魅力なのかも~
コロの単純さもまたヨシですけどね~(笑)

あまる #- | URL
2013/07/07 20:35 | edit

わぁ〜、そうなんですね!>ヨリム一人称
楽しみにこの先も読ませていただきますっ!

でもほんと、ヨリムは人間の底が知れない感じ…
原作本でも、あんまり前面には出てこないけど一番複雑な人ですよね。
逆にコロはまっすぐ(単純ともいう笑)だから、
コロに惹かれちゃうのかも(*^^*)

びわ #p6hXJKzs | URL
2013/07/07 07:18 | edit

Re:びわさま

コロの初登場というかユンシクとの初対面というか……。なかなか
書くときも気合入れて書いた覚え、あります(笑)

> 私的には、その場その場で一人称代えてそうな気がします、ヨリム。

をを!実は参考にさせていただいたヨリムファンの方のご意見も、そんな感じだったんですヨ。
普段は「私」、時々「俺」で、みたいな。
で、ついつい素が出ちゃうときは「俺」で行こうかと……。
結構いろんなヨロイつけてそうですからね、彼は。一度思いきりひん剥いてやりたいものです(爆)

あまる #- | URL
2013/07/06 02:32 | edit

わーい♪コロ先輩☆

やった!コロ先輩登場!(イヤ既に何度も出てきてますけど・汗)
でも、やっとユンシク姿のユニとちゃんと対峙?しているこのシーンが
私にとってはコロの初登場シーンなんです(^-^;)すみません。

で、もうアンケートの締め切りなんてとっくのとうに終わってると思いますけど…
私的には、その場その場で一人称代えてそうな気がします、ヨリム。
どうでしょうか〜(^_^)

びわ #p6hXJKzs | URL
2013/07/04 23:01 | edit

Re: 先輩―

この夜具に横たわるソンジュン、色っぽくてジュル……(爆)

あまる #- | URL
2012/05/09 21:45 | edit

先輩―

部屋に来るのが遅いよ!
ほらー、イ・ソンジュン君子にユニちゃん迫られて『脱げよ』って言われちゃってんじゃーん!

え??まだそのシーンは速すぎるって??失礼しました。

ちびた #- | URL
2012/05/08 21:09 | edit

Re: にゃん太さま

> ま、「私」「僕」「おら」「うち」「わて」「拙者」は無いわな。

すんまそん。↑「私」って既にヨンハに言わせとりますワタクシ(^^ゞ
イメージ的、というかキャラの立ち位置的には『アンジェリーク』のオリヴィエ様とか、
『遙かなる時空の中で』の友雅さんみたいな感じなんだよな~っつっても誰もわかんなかったら
ごめんなさい。ちょっと前の乙女ゲーの話です(爆)

あまる #- | URL
2011/09/21 00:38 | edit

Re: りゅうれんさま

一人称ってこんなにいっぱいあったのね(笑)
改めて日本語の奥深さを感じました……。

あまる #- | URL
2011/09/21 00:27 | edit

ま、「私」「僕」「おら」「うち」「わて」「拙者」は無いわな。
ってことで、「俺」でいいかと・・・。

にゃん太 #- | URL
2011/09/20 22:11 | edit

なんとなく・・・

「おいら」って感じがするのは、私だけでしょうか??
もしくは「ぼくちん」・・・・無いか(笑)

りゅうれん #/ZrAXPAI | URL
2011/09/20 21:52 | edit

Re: みずたまさま

ヨリム、イケてますか?ほんとにぃ~?(喜)

「なぁ~ク・ヨンハだぁ~」って、文字にすると全く伝わりませんが(笑)実際これ言うときのヨンハは、めっさ男前ですよね(^^)

スネイプ先生なヨンハ……ぶぶww



あまる #- | URL
2011/09/20 16:26 | edit

おはようございます~

ヨリム~ イケテる~☆
イメージは (オレ様☆) 
でも自分は ク・ヨンハだっ!!と申しておるので
主語も ク・ヨンハ~ みたいな?(笑)
我・吾・朕・我輩?(スネイプ??) おかしい~わはは~
なんでか このヒトは お笑い担当ですよね~☆
でもホントは深い懐の御仁なことは 皆知ってるよ~♪
朝からおじゃましました~

みずたま #- | URL
2011/09/20 06:01 | edit

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