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幻月 1 

ご無沙汰しております、あまるです。
毎度のことながら亀更新ですみません。
今回はソンス番外編です。前々から書きたかったあのサブキャラについに手を出した、というか、墓穴を掘った、というか(^^ゞ
どうなることやらな見切り発車ですが、生暖かく長い目でどうかひとつ。

******************************


事件はまたしても、突如として起こった。


ここしばらく降り続いていた雨が上がり、明倫堂の瓦屋根の上には初夏の、目に染み入るような紺碧の空が広がっていた。
その日の講義を終えたソンジュンとユニは、いつものように他愛ない話をしながら、揃って帰宅の途についていた。

「そういえば、今朝ユンシク君から手紙が届いていた。近々うちに来たいそうだ」

ソンジュンの言葉に、ユニが「そうなの?」と瞳を輝かす。

「あの子から言ってくるなんて、珍しいこともあるのね。何かあったのかな」
「どうだろう。手紙には特に何も書いてなかったが……」

言いさして、ソンジュンは はたと口を閉ざした。左議政である父のはからいで、漢陽のとある私塾に通い始めたユンシクは、そうするのが礼だと思っているのだろう、折に触れ、父やソンジュンに宛てて、塾の様子やそこで学んだこと等を手紙で報告してくれるようになっていた。いつも丁寧だが、時に思慮深く、時に若者らしい闊達さを覗かせる機知に富んだ文面は、ソンジュンばかりかあの厳格な父をも微笑ませるものだった。

その手紙の中に最近、『同胞の父君からしきりに縁談を持ちかけられて、困っている』というような内容のものがあったのをソンジュンは思い出したのだ。
困っているとはいっても、その時の手紙の語り口にははさほどの深刻さは感じられなかったし、むしろ照れの中にも隠しようのない喜びが垣間見えて、義兄としては「彼もなかなかやるな」とにんまりしていたくらいだったのだが。

よもやユンシク自身の優秀さや人となりではなく、別の理由で彼に近づこうとしている輩がいるのでは、とソンジュンはにわかに不安を覚えた。
キム・ユンシクはいずれ左議政と親戚になる身である。考えられないことではない。しかも一家にはユニという機密事項があるのだ。例えばかつての兵曹判書のような腹黒い連中が何やら良からぬことを企んで義弟の周辺をうろついているというなら、一大事である。

「何か、思い当たることでもあるの?」

傍らを歩くユニが、微かに顔を曇らせてソンジュンを覗き込んでいる。
ソンジュンは頭に浮かんだ懸念を即座に打ち消して「いや、何も」と微笑んだ。そのまま人差し指で、ユニの眉間に寄った皺を伸ばすように軽く押す。

「本当にきみは、いつまでたっても心配性だな。あんまり過保護だと、きみの夫がユンシク君に嫉妬することになるぞ」

何言ってんだか、とユニは呆れたように笑った。

「ユンシクと結託して、私を仲間外れにしてるのはそっちのくせに。嫉妬するなら私の方でしょ」
「きみが妬くのはどちらにだ?僕にか?それともユンシク君か?」
「どっちだっていいじゃない、そんなの」
「いや、そこが一番重要だ。ちゃんと答えてくれ」

また始まったとでも言いたげな表情で、ユニが天を仰いだ、そのときだった。

「キム・ユンシクというのは貴様か?」

いきなり、二人の前に大柄な男が立ち塞がった。
日焼けしている上に眉も髭も濃く、まるで仁王像のようないかつい顔をしている。がっしりとした肩や分厚い胸板は、道袍の下に隆々たる体躯があることを容易に想像させた。

「え?あ、は……」

不用意にも、ユニが「はい」と返事しようとするのを遮り、ソンジュンが素早くユニと男の間に割って入る。

「僕に何か用ですか」

男が不穏な空気を纏っているのを嗅ぎ取ったソンジュンは、背中でユニを男の視界から隠しつつ、低く問うた。男は一瞬、気圧されたように僅かに身を引いたが、すぐに両の目をぎらつかせて、ソンジュンを睨み据えた。

「俺は今この場で、貴様に決闘を申し込む!」

男が、威嚇でもするかのように顎をそびやかし、ふんっ、と鼻から息を吐き出した。

「───は?」

束の間の沈黙の後、ソンジュンは白々とした声で言った。代わりに驚いたのはユニだ。

「け、決闘?!」

慌てて背後から飛び出して来るのを左腕で押し留め、ソンジュンは冷静に告げる。

「仇討ち、果たし合いの類は王の勅令で禁じられているはずですが」
「殺し合おうとは言わん。貴様が俺に勝る士大夫〈ソンビ〉なのかどうか、この目で確かめたい」
「理由は?」

男は、座布団のような手で薄青の道袍の袂をまさぐると、一通の書をそこから引っ張り出した。

「これを読め!」

ソンジュンはちら、と男の熊のような顔を一瞥してから、突き出された書を受け取る。折りたたまれた半紙をはらりと広げると。

絹 一疋
綿布 十反
米 三俵

「……見たところ借用書のようだが」

男が、真っ赤な顔をして ばっ、とソンジュンの手から書面をひったくる。

「ま、間違えた。こっちだ!」

再び、がさごそと袂を引っ掻き回して取り出したのは、くしゃくしゃになった別の、手紙らしき半紙だった。
あからさまに胡散臭げな視線を男に投げながら、ソンジュンは手にした書を広げてみる。
そこにあったのは、ごく短い一文だった。

『雪月花時 徐潤〈ソ ユン〉

いつの間にかソンジュンの横で手紙を覗き込んでいたユニが、ぽつりと呟くように言った。

「スウォル……?」

その名がユニの口から零れるのを聞いた途端、ソンジュンの身体は 火を投げ込まれたように かっと熱くなった。


琴詩酒友皆抛我 
雪月花時最憶君

琴や詩や酒の上での友はみな私から遠く離れてしまった。
雪、月、花の美しい時、とりわけあなたのことが懐かしく思い出されます───


手紙は、白居易が遠く長安から江南に住まうかつての部下、殷協律に寄せた詩の引用だった。
だがこれは、清に渡ったあのスウォルがユニに宛ててしたためたものだ。
握りしめた紙の端が、ソンジュンの手の中で僅かに割けたのが判った。こめかみの辺りが、どくどくと脈打つように痛い。
またしてもあの不快な、どす黒い感情が、彼の胸で渦を巻き始めていた。
それはどうやら、目の前で“キム・ユンシク”に決闘を申し込んできた男も同様らしく。

「それは恋文だ!」

いつぞやのソンジュンと同じ科白を、男は唾をも飛ばす勢いで口走った。

「ソ・ユンは、俺が清で見つけた唯一無二の可憐な花だ!貴様のような、情のない浮ついた男に簡単に渡すわけにはいかんのだ!」




つづく
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2015/07/13 Mon. 21:16 [edit]

category: 幻月

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: い**ゆさま

コメントありがとうございます(^^)
ゆるりと、のお言葉に温かいお心遣いを感じて(T_T)です。
ご期待にちょっとでも沿えるよう頑張ります~。

あまる #- | URL
2015/07/16 05:14 | edit

Re: 49ママさま

早速読んでくださって、ありがとうございます(^^)
なんかもうほんと、申し訳ないとしか言いようのないこの更新頻度(^^ゞ
やっぱ何かしら目標みたいなもんがないとダメですね~。前は「完走!」っていうのがあったから良かったけど。

スウォルは残念ながら(笑)今回生での登場はありませんが、また別の女子を新しく出す予定です~。
原作には既に登場してる彼女ですが、名前だけ借りてちょっとアレンジしよっかなと目論んでるトコロ……。

こちらこそ今後ともよろしくお願いしますm(__)m

あまる #- | URL
2015/07/16 05:08 | edit

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

# | 
2015/07/15 09:33 | edit

お待ちしておりましたあっ!!!

あまる様
 毎朝毎晩、更新を確かめるのは日課です。そう、日課です。ええ、日課ですとも・・・・・・くどいわっ!!!つい今し方更新を知り(広告バナーが消えているのを見たときの嬉しさ!)、一気読みし、変わることなく冴え渡った文章を堪能いたしました。
 スウォル・・・嗚呼、水月!この女人の名前を聞くと、胸がふるえます(別の意味で胸がふるえる女人もいますが(爆))。どうか、本人が登場してくれますように。あまる様の文章から立ち上ってくる水月の姿や声、楽しみで楽しみで・・・。
 掟破りな(?)登場のしかたをしたいかつい男は、本編最終話の「あの」彼でしょうか?こういう出会い方をした相手ほど、濃く長い付き合いになるような・・・こちらも楽しみです。
 むやみにテンションの高い文になってしまいましたが、まずは!

 それと・・・
「すみませんでした。今後とも、どうぞよろしくお願い致します」
心から。

49ママ #- | URL
2015/07/14 19:41 | edit

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