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心宿 1 

ご無沙汰しております、あまるです。
本日の更新はソンス番外編です。

ソンジュンの野望を叶えてあげようシリーズ第二弾。
膝枕の次に彼が狙っているモノは果たして……?(笑)
いつもと違い今回はちょっと時間を遡って、ユニとソンジュンが一緒に住み始める前のお話です。


***********************************


開け放した扉から吹き込んでくる風は、早くも秋めいた涼しさを含んで、明倫堂に集まる儒生たちの頬を撫でていった。
だが今の彼等の中に、そんな季節の移り変わりに気付いた者など一人としていなかっただろう。
講義堂の中央には、文机が適当に寄せ集められ、儒生たちはその周囲を取り囲むようにして座している。室内はしんと静まり返っているが、それはそこにいる者たちのほぼ全員が、呆気にとられてぽかんと口を開けているためだった。
下色掌、イ・ソンジュンがこの斎会の議場で放った、たった一言によって。

「新榜礼〈シンバンネ〉は廃止すべきです」

彼は、涼やかな目元に寄せた皺にほんの僅か嫌悪感を表しつつ、そう言った。その口調はまるで、厠で用を足した後は手を洗うべきです、というくらいのごくさらりとしたものだったが、その場に居合わせた者たちにとって、事はそれほど軽いものではなかった。
一斉に、ソンジュンめがけて非難が集中する。

「ちょっと待て、一体何を言い出すんだカラン!」
「新榜礼は成均館の由緒正しき伝統だぞ!」
「そうだ!新榜礼を経ずして成均館の儒生が務まるか!」

ソンジュンは軽く片手を挙げて東西色掌以下斎任たちを制すると、表情をちらとも変えずに付け加えた。

「言葉が足りませんでした。正確に言うと廃止すべきは新榜礼ではなく、その際に密命と称して行われる“新来侵虐”(新入り虐め)です」

苦笑とも呆れともつかぬ低い笑いが、儒生たちの間から漏れた。成均館に籍を置く人間で、過去、当のイ・ソンジュンが新榜礼の密命を果たせず危うく小便まみれになるところだったのを知らぬ者はいない。
彼がどこにでもいるぼんくら学士なら、入学当初のそんな汚点などすぐに忘れ去られていただろうが、成均館創立以来の天才、貴公子の中の貴公子と呼ばれるほどの完璧さが彼にとっての災いだった。
イ・ソンジュンの優秀さを目の当たりにする度、他の平凡な儒生たちが繰り返し思い出して溜飲を下げられることと言えば、彼の新榜礼での失態くらいしかなかったのだから、無理もない。
そのせいで事実は次第に彼等のいいように捻じ曲げられ、ソンジュンが泣きべそをかいて当時の優勝者キム・ユンシクに助けを求めたとか、実際に泮水橋〈パンスギョン〉から小便の川に突き落とされたとか、まことしやかな噂が成均館の内外を問わず流布している有り様だった。

「新来侵虐を行う意義はお前の入学時に説明してやったはずだが?」

それまで頬杖をついて退屈そうに爪を弾いていたヨンハが、のんびりと言った。
掌議の言葉に、そうだそうだ、と儒生たちから賛同の声が上がる。

「自分が痛い目にあったなら、なおのこと次の新入りはたっぷり虐めてやるべきじゃないか。お前の憂さも晴れるだろ?」

色掌ナム・ミョンシクが薄く笑いながら顎をしゃくると、ソンジュンは深い溜め息をつき、目を細くしてヨンハを見た。

「掌議がご教示くださった意義と、先輩方のそれとでは随分隔たりがあるようですが」

そうだったっけ、とヨンハはそっぽを向いてそらっとぼけた返事をした。

「───とにかく」

ソンジュンは居住まいを正すと、斎任一同を見渡し、きっぱりと告げた。

「新榜礼が、新入生たちの生まれや家門による驕りを捨てさせ、一学士としての虚心を持たせるという本来の目的を失い、単なる先輩儒生の憂さ晴らしや余興と化している現状では、我々が根絶すべき地方官吏の低俗で無益な弱い者虐めと何ら変わりはありません。将来、役人として民を導く立場の者たちが、このような悪習を伝統とうそぶき、連綿と続けていることを我々は恥じ入るべきなのでは?」

居並ぶ儒生たちは、たかだか下色掌一人の意見にぐうの音も出ず、虚しく口を開け閉めするばかりである。
こいつがお堅いのは今に始まったことじゃないが、それにしてもとヨンハは苦笑いを浮かべた。

通常、科挙は三年に一度しか行われないものだが、今年は大幅な定員割れのため、王命による別試が式年試とは別にこの夏、行われたばかりだった。喜んだのは新榜礼での洗礼の記憶もまだ新しい今の新入生たちである。成均館にはただでさえ娯楽が少ないというのに、この上貴重な新入りいびりの楽しみまで奪われては、たまったものではないだろう。

「あの、じゃあひとつ、提案があります」

そろりと挙った手の方を、全員が一斉に注視する。そこにいたのは、今回から新榜(新入生の成績優秀者)として斎会に参加しているユンシクだった。速記の腕を買われ、初参加にも拘わらずいきなりヨンハに会議の書記に任命されてしまったテムルことキム・ユンシクは、それまでひたすら無言で筆を走らせていたのだったが。

「どんな提案だ、キム・ユンシク」

彫像のように無表情だったソンジュンの面輪に、その日初めて、明らかな不機嫌のいろが浮かんだ。


*   *   *


「きみは相変わらず何もわかっていない」

そこは東斎の、ユニの部屋である。入って来るなり、ソンジュンは憮然としてそう言った。
何が、と筆写の手を休めてユニが尋ねると、彼は座したまま掬い上げるようにしてユニの顔を見た。

「僕が、何故わざわざ斎会に新榜礼廃止の議案を出したと思うんだ」
「ちゃんとわかってるってば。私がまた新榜礼で先輩たちのおもちゃにされるんじゃないかって心配してくれてるんでしょう?」

キム・ユンシクはその愛らしい外見と素直な性格から、弟分として儒生たち皆に可愛がられている。だがそれ故に何かと弄られることも多く、傍にいるソンジュンにとっては気が気ではないのだ。

「わかってるなら、どうしてあんな提案をしたんだ。僕は、新入生がいびられようがどうなろうが、知ったことじゃない。きみが女だってことがばれる危険を出来る限り減らそうとしてるのに、あれじゃ逆に自分から火の中に飛び込むようなものじゃないか」
「イ・ソンジュン」

ユニはかたりと筆を置き、膝をずらしてソンジュンと向かい合った。

「あなたも、もう少し周囲の空気を読むってことを学ぶべきよ。新榜礼を楽しみにしてる儒生たちに、いきなり廃止だなんて言ってみなさい。不満が高じて、もっと厄介なことになるわよ。祭りを禁じられた農民の怖ろしさを知らないの?」
「しかし……」
「私なら大丈夫」

そう、ユニは言って、にっこりと笑って見せた。

「うまくやるから。今度の新榜礼はきっとあなたの望み通り、有意義なものになるわ」




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2014/09/04 Thu. 02:22 [edit]

category: 心宿

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コメント

Re: オ***スさま

返信は不要とのことでしたが、とりあえずお礼だけ……
コメントありがとうございます!気まぐれな更新で申し訳ないですが、思い出したときにでも覗いてくださると嬉しいです(^^)

あまる #- | URL
2014/10/04 03:37 | edit

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# | 
2014/10/02 20:25 | edit

Re: ほっほさま

コメありがとうございます(^^)

>でも読めないところがソンジュンの良さですよね。

ですね~。ソンジュンはやっぱりあのぶっきーなところが愛しくてならんのです。
世渡り上手なユニがいるからそっちは彼女に任せて、彼にはずっとあのままでいて欲しいですね~。

あまる #- | URL
2014/09/16 05:09 | edit

Re:めぐめぐさま

読んでくださってありがとうございます(^^)
ワタシも久々にソンジュン書けて嬉しかったデス。

と言いつつまた違うもん書き散らかしてますが……(^^ゞ
ちんたら更新で申し訳ないです。早くお見せできるよう頑張ります。

あまる #- | URL
2014/09/16 05:04 | edit

ソンジュンは相変わらずまっすぐですね。ユニの言うとおり少しでも空気を読めば、周りと上手くやれると思いますが…。でも読めないところがソンジュンの良さですよね。皆ができないから妬まれもするけど、ちゃんと結果を出して尊敬される。
続き楽しみにしています♪

ほっほ #NgR3hZSs | URL
2014/09/05 13:21 | edit

ソンスだーっ!

あまる様、お忙しい中の更新ありがとうございます!ソンジュンに会いたかったっ!(´;ω;`)
ソンジュンの野望…ユニの考案新歓コンパ…一体なにが起こるのでしょうか~??

読み返し、推理しながら?更新お待ち申し上げます

めぐめぐ #3FtyQ0do | URL
2014/09/05 00:03 | edit

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