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最終話 13 経筵 

bandicam 2014-06-13 13-53-07-267

******************************

そして、月末。
経筵当日である。

その日、朝議のために集まった老論の重臣たちは皆、我が耳を疑った。
王の実権を奪うことを至上命題とし、その陣頭指揮を摂っていたはずの左議政イ・ジョンムの口から、信じ難い言葉を聞いたためである。

「王が華城へ都を移す計画に協力しましょう」

大監、と言ったまま絶句した重臣たちに向い、ジョンムはまるでいつもどおり業務通達を伝えるかのごとく淡々と述べた。

「思悼世子の墓所のある華城への遷都に、我ら老論が力添えすれば王もまた、我々に思悼世子の件で圧力をかけることはなくなります」

静まり返っていた重臣たちは、事態にようやく頭が追いついたのか、にわかに騒ぎ始めた。

「急に、何を仰るのです!」
「我らに漢陽を捨てろと?」

ジョンムは大きく息を吸うと、胸にある様々な思いをその言葉ひとつにくるんで吐き出そうとするかのように、重臣たちを見渡し、言った。

「───この私の、政治生命を賭けたお願いです」
「聞くに堪えません!」

叫ぶなり、一人の重臣が音をたてて椅子から立ち上がった。それを合図に、他の重臣たちも次々と席を立つ。

「我々は経筵の場で、兵曹判書を待ちます」
「我らには、王と闘い、老論を守る長が必要だ。行きましょう」

いきなり、それまでとは逆方向に舵を切った船を、彼等は早々に見限っていった。
一人、そこに残されたジョンムは、深く嘆息し、静かに目を閉じた。


*   *   *

石のように動かぬまま、チョソンはぼんやりと空〈くう〉を見つめていた。
牡丹閣の私室に引き篭もり、もうどのくらいそうしているのかもわからない。

動揺、猜疑、そして怒りと、悲しみ。衝撃の後にやってきた様々な感情は、チョソンの中で嵐のように吹き荒れ、彼女を翻弄した。

その嵐が過ぎ去ると、訪れたのは静かな虚脱感だった。思い浮かぶのは、出会った頃の彼───いや本当は、“彼女”だった、キム・ユンシクの姿だ。

人前で肌を晒され、恥辱に耐えていたあのとき、そっと自分の道袍を掛けてくれた。兵曹判書の横暴を、本気で怒っていた、あの爽やかな正義感。

『すまない、チョソン。ぼくが悪かった。何もかもぼくのせいだ』

入清斎の夜、そう言って詫びた。本当に傷ついていたのはたぶん、あの人自身だったのに。

『美しさと強い心を持つ君を前にしては、ぼくは恥ずかしくて至らない人間だ。すまない』

自らの人生を賭けるつもりで、身請けしてくれと迫った。だがそんなチョソンを、優し過ぎる言葉で拒んだ。
当然だ。女が女を身請けしていったいどうしろというのか。自分のしたことの滑稽さに、虚ろな笑いがこみ上げてくる。

思えば、あの人はいつも謝っていた。
美しい眉根を寄せて、自分の方が、今まさに身を切り刻まれているかのように、痛々しい眼差しをして。

『許してくれ、チョソン───』

貴女の想いに応えられないのも、貴女が傷つくのも、みんなぼくのせいだ。
ぼくが……嘘をついているから。

チマの上に置いた両の手を、きつく握り締めた。傍らの化粧箱に目を遣る。立てた鏡に映る自分が、こちらをじっと見ていた。
鏡の中のチョソンは、恋人に捨てられた妹分の妓生に、男への恨みつらみと、未練たらたらの思い出話をさんざっぱら聞かされた先輩妓生のような顔をしている。男に対する激しい怒りと、捨てられた女への同情と労り。そこにちらりと垣間見える、うんざりした色。

彼女は問う。

───それで?あんたはいったいどうしたいの、チョソン。

チョソンは化粧箱の蓋に手を掛け、音を立てて閉じた。そして文机に向かうと、筆を取った。


*   *   *


朝餉もそこそこに、ヨンハとジェシンは行動を開始した。経筵が始まるのは酉の刻である。儒学者たちは当然ながら他言無用の会合場所に招集されており、調査は当日、儒学者たちの動きを探るしかなかった。

「宿を片っ端からあたろう。手掛かりは必ずあるはずだ」

東斎の中庭を早足で突っ切りながら、ヨンハが言った。

「問題は、あの口やかましい連中をどうやって説得するかだな」

ジェシンが噛み潰した苦虫を唾と一緒に吐き出すように、言った。
こういうことはソンジュンの最も得意とするところだが、肝心の原理原則男はユンシクが王に囚われて以来、殆ど成均館に戻っていない。舌に鋭い矛を持つあの男なら、儒学者たちの石頭を粉砕することなど造作も無いだろうに。

奴は奴で、猛獣を相手に闘ってんだろうさ、とヨンハは言う。

「心配するな。そこはチョン博士に頼んである。会合場所を突き止めたら、すぐに来てくれるよう遣いを……」

言いさしてふと投げた視線の先で、ヨンハは書吏のコ・ジャンボクが意味ありげな含み笑いをしながらこちらへ歩いて来るのを見た。
ジャンボクはヨンハの前までやってくると、「綺麗な妓生たちが学士様に恋文を渡したいと。青春とはいいものですな」などと言いながら、素知らぬ顔で右手を出した。
その“綺麗な妓生たち”からもしっかりと心付けは頂戴しているだろうに、相変わらず抜け目が無い。ヨンハは苦笑いしながら、袂から出した銅貨をジャンボクの手に握らせた。
ジャンボクが殊更に恭しい手つきで差し出した手紙を引ったくり、広げる。その文面に目を走らせた途端、ヨンハの顔色が変わった。

「これは……チョソン?」

ジェシンが横から奪い取るようにして、手紙の内容を確かめる。
そこには流麗な文字で、ただ短く次のような文面がしたためられていた。

『昨今 兵曹判書よりキム・ユンシクを連れて来いとの指示あり  至急来られたし
草善〈チョソン〉





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2014/06/13 Fri. 13:57 [edit]

category: 最終話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: ちびたさま

チョソンはワタクシもかなり肩入れしてマス。ヒョウンほどじゃねーだろう、と言われるかもですが、いやホントに(笑)
チョソンもインスも(ビョンチュンはどーでもいいので除外)登場シーンは、この次にアップした回でラストなんですよね、思えば。
考えるとちょっと寂しい気も(´・ω・`)

あまる #- | URL
2014/06/23 03:31 | edit

あうううう
ご存知の通り(知らんちゅうの)私、チョソンにはかなり、かなーーーり!肩入れしてるんです。ええ、もう、身請けしてもいい位!
(やめんか)

はかなげなべっぴんには弱いんですう
( 久々のカキコなのに、すいましぇん)

ちびた #- | URL
2014/06/23 00:12 | edit

Re: すずさま

ご無沙汰してます~。
お仕事、頑張ってらっしゃる中でのご訪問とコメント、ありがとうございます(^^)

>ドラマを見た時はそんなに深く考えなかったのですが、今回の記事を読んで、妙にこの台詞が響いてしましました。

ワタシも、自分で書きながら同じこと思いました。ドラマではさらっと流してたんですが、よく考えたら重い言葉ですよね、コレ。息子にはああいう風に言っておきながら、最終的には、息子のために政治生命を賭けた行動に出たわけですから……。
これからのジョンムの生き方も、ちょっと変わりそうですよね。たぶん、ソンジュンとユニにとっては心強い方向に(^^)

あまる #- | URL
2014/06/15 09:14 | edit

Re: じぇぐんよんさま

この場面は科白もないし、短いし、チョソンはただ座ってるだけ、なんですけど、多分いろんな思いが彼女の中にあったんだろうな~とか考えると、なかなか指が進まなくて(笑)
実は書くのに相当難儀してました。それでもまだ全然書き足りてない気はしますが。
チョソンの男気(笑)を損ねてなかったなら良かったです(^^)

あまる #- | URL
2014/06/15 08:44 | edit

命がけ

あまる様、ご無沙汰しております(>_<)

「───この私の、政治生命を賭けたお願いです」
ドラマを見た時はそんなに深く考えなかったのですが、今回の記事を読んで、妙にこの台詞が響いてしましました。
というかパパ、それって自殺行為なんじゃないのかと。
下手したら暗殺ものじゃないかと(韓流時代劇の見過ぎですw)
といった具合に、彼のその後を今さらながら考えてしまいました。

でも彼はそういう事をわかった上で、この発言が出来る人間なんだなと思ったら、やっぱり好きだなと思ってしまうんですよね(→結局これが言いたかったという爆)

いや、でも彼は何と言ってもソンジュンパパですからね。
何だかんだでこの後、宮廷内で力を盛り返したのかもと、ちょっと思った休日の夕方でした☆

すず #- | URL
2014/06/14 19:41 | edit

チョソン

チョソンがすごく綺麗です。
本当に、男気があるというか、カッコイイおんなですね。
だから、大好きです。
ありがとうございます。

じぇぐんよん #- | URL
2014/06/13 14:49 | edit

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