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最終話 11 傷跡 

bandicam 2014-05-14 10-41-08-642
(´;ω;`)
*****************************************



その夜遅く帰宅したジョンムは、着替えを手伝う妻から息子ソンジュンが戻っていることを聞いた。だがそれを告げる妻の表情は何処か沈みがちで、言葉少なだった。いつもなら、そうと聞かずとも息子の帰宅と知れるほど明るい顔を見せるのに、一体どうしたことだろう。
何かあったのか、とジョンムが尋ねると、妻は眉をひそめて言った。

「実はあの子、結婚を考えているお嬢さんがいるらしいんですの。昨夜、そちらのお宅へご挨拶に伺うと言って出て行ったのですけれど、明け方近くに帰ってきてからずっと、食事も摂らずに部屋に閉じこもりっきりで……。まさか、先方に断られてしまったのかしら」

ジョンムは無言で、快子に腕を通す。息子が結婚を考える娘、といえば思い当たる者は一人しかいない。
だが問題なのは、ジョンムが脳裏に思い浮かべるその娘が、笠を被った男の姿であるということだ。

「あんなに嬉しそうなあの子の顔を見たのは、本当に久しぶりでした。余程そのお嬢さんのことが好きなんだろうと私も喜んで送り出しましたのに。ねぇあなた、あの子が可哀想ですわ。どんな事情があるのかわかりませんけれど、あなたのお力でなんとかなりませんかしら」

何も知らず、我が子をひたすら案じる妻にその“事情”を話すのは憚られた。
王の行動は常に迅速だ。キム・ユンシクが女人であることを知った今、何もせずに手をこまねいているはずはなかった。相手の命さえも危ういこの状況で、呑気に結婚の挨拶などできるわけがない。

部屋にいるのだな、とだけ言って、ジョンムは自室を出、息子の部屋へと向かった。


ソンジュンは幼い頃から聞き分けがよく、親を困らせたことなどほとんど無い子だった。反面、一度言い出したら絶対に退かないところもあった。
いつだったかジョンムが、スンドルに暇を出そうとしたことがあった。二人で遊んでいるときに、ソンジュンに後々まで傷跡が残るような怪我をさせたからだ。
父親が絶対的な権力を持つ家にあって、子供が自らの意志を通そうとして選ぶ手段はたった一つ、“食べないこと”だ。ソンジュンは怪我をしたのは自分の不注意だと言って、決定の撤回を求め、一切の食事を拒否した。どうせすぐに音を上げるだろうと高を括っていたジョンムだったが、息子の断食は四日間にも及び、ついには妻に泣きつかれてジョンムが折れる結果となったのである。

こうと決めたら命がけで我を通す。子供ながらたいしたものだと思ったが、その意志の強さが、今また、父親である自分を悩ませている。
息子の実直な性格は、老論に圧力をかけ始めた王の信頼を得るには好都合だと考えた。渋る息子を説き伏せて科挙受験を急がせたのもそのためだ。だが実際は王どころか、我が息子さえも扱いあぐねているとは。
自分もいよいよ年を取ったのだろうか、と考えたくもないことがふと頭をよぎる。

足を踏み入れた室内には、明かりすら灯っていなかった。窓から差し込む月明かりで、かろうじて、文机の前に彫像のように端座する息子の輪郭がわかった。
ジョンムは小さく舌打ちすると、言った。

「男が、国の大事でもないことに命を掛けるつもりか?情けないとは思わんのか、愚か者が」

暫くの沈黙の後、彫像が僅かに身じろぎして、口を利いた。

「───陛下に、キム・ユンシクが女人だと明かしたのは……父上ですね」

ジョンムは黙っていた。ソンジュンは重ねて言った。

「紅壁書の抹殺に失敗した上、金縢之詞の発見で追い詰められていた兵曹判書が、老論にとっての切り札の存在を父上に話さないはずはありません。父上はキム・ユンシクを盾に、金縢之詞を捨てるよう陛下に迫ったのではありませんか」
「私はお前のために、できる限りのことはした。これ以上どうしろというのだ」
「本当に、そうですか」
「何?」
「僕のためを思ってくださるのなら、兵判の手が及ぶ前にキム・ユンシクとその家族を保護し、匿うことも父上であれば出来たはずです。なのに、父上はキム・ユンシクの件を利用し、陛下と取引きをした───貴方が最も案じ、優先したのは、自分の息子ではなく、老論の行く末だったからです。責めるつもりはありません。それが父上の信じる男の生き方だと、僕は幼い頃から教えられて育ちましたから。ですが、僕が信じるものは、貴方とは違います」

ジョンムは深く嘆息し、目見を険しくした。

「……お前を成均館に入れたのが、私の生涯で最も大きな過ちだったようだな」

言い捨てて、踵を返した。するとソンジュンが弾かれたように立ち上がり、「父上!」と声を上げた。
振り返ったジョンムの足元に、くずれるように跪く。

「どうか、お助けください。あの人を、救ってください!」

ジョンムは我が目を疑った。
あの誇り高い息子が、たかだか女一人のために父親に土下座を?

「彼女に出会って、新たな世界が開けました。書物で学んだ男たちが作る世界ではなく、僕の理想とする世界です。
今、その世界が崩れ去ろうとしています。なのに、情けなく愚かな僕にできることは、どこにも……何一つ、ありません。お願いです。どうか、力をお貸しください、父上!」

とめどなく流れる涙が、ソンジュンの頬を伝い、床についた彼の手の上に落ちた。ジョンムは、今は暗く判然としないが、その左手親指の付け根にあるはずの彼の傷跡を思った。ジョンムがスンドルを叱責する原因となった、あの傷だ。
ジョンムは目を眇め、じっと息子の姿を見下ろしていたが、やがて掠れた声で呟いた。

「お前は本当に、我が息子なのか……?」

ソンジュンは床に両手をついたまま、肩を震わせている。
人一倍自尊心が強く、弱みなど決して見せることのなかった息子が。
親の七光を嫌い、己の努力だけで常に他人に先んじようとしていた息子が。
今はただ無力感に苛まれ、恥も外聞もなく、全てをかなぐり捨てて父親に縋っている。
まるで、命乞いをする罪人のように、涙を流して、助けてくれと頭を下げている。

(それほどまでに、あの娘を……)

国のために命を賭すのが男だと教えてきた。だがその息子は、惚れた女が自分にとっての国なのだと言う。

そんな生き方があることすら、ジョンムには想像もできないことだった。







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2014/05/14 Wed. 10:43 [edit]

category: 最終話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

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# | 
2014/05/25 02:28 | edit

Re:48ママさま

ワタクシのしょーもない発言を覚えててくださって感激ですー(>_<)
この回はジョンムのあの科白もあって、書くの楽しみにしてたんですよ~。
スゴイのはきっとドラマの脚本なんだと思います。ここまでハゲシク妄想させてくれるものにはなかなか出会えないですから。四人のそれぞれの親子関係もきちんと描かれてて、良くも悪くも、この親があるから彼等があるって思わせてくれるとこが、深いなぁと思います。

ソンジュンの母上に関しては、ドラマでは原作ほど重要人物として扱われてないので(^^ゞウチでもそれなりな扱いになりました。スマソん(笑)
左議政の正妻、って立場なら、「ウチの息子の何が不満なの!」ってなってもおかしくないと思うけど(ワタシがソンジュンの母親なら絶対そう思う(爆)そうはならない程度の「ふつうにいい人」。苦労知らずのおっとりしたお母さん、ってイメージです。
相手は父親って後ろ盾のない貧乏な南人の娘ですしね。それで文句言わないなら姑としては充分だと。
ユニはきっと上手くやってくれると思いますヨ(笑)

原作の方のソンジュンママはスゴイ好きなんですけどね~。
アチラはジョンムがべた惚れで頭上がんない感じですけど、ドラマのジョンムはそういう雰囲気ではないので、あのママを持ってくるのはちょっと無理があるかなぁと、泣く泣くご登場いただくのは諦めました(笑)

ところでこっから私信ですが。
例のやつ、シリーズ三作のうち最初の二つが文庫で出てたので、今そっち読んでるところです。
なので三作目の感想はかなり遅くなるかも~(笑)

あまる #- | URL
2014/05/18 06:58 | edit

やっぱ、すげーわ・・・

あまる様
 「やっぱ、あまるさん、すげ―わ・・・」
思わず、中学生男子のような口調でつぶやいてしまいました。
 以前、あまる様が、ジョンム氏の「お前は本当に、わが息子なのか?」という台詞を「『異様に』好き」と言われたのをよく覚えています。私はと言えば、この場面、ソンジュンの命の恩人であるユニを、どのくらい本気で助けよう(助けたい)と思っているのか、ジョンム氏の思いが今ひとつ判然とせず、ばかりか「国の大事でもないことに・・・情けない・・・愚か者め!」という言葉に「結局はこうか」と、腹が立ったり、情けなく思ったり・・・。なので、「お前は本当に・・・」は、消化不良のままでした(繰り返し考えてはみたのですが)。
 老論の巨魁であるイ・ジョンムにとって、女は結局のところ「たかだか」がつく存在。そんな彼にしてみれば確かに、王への一連の行動は「できる限りのことはした」ということになるのだろうし、破格のことと言ってもいいかもしれません。ですが、その「できる限り」で覆ったエゴをソンジュンに喝破され、さらには衝撃的な息子の姿を見せられることに・・・。圧倒的・絶対的な「ちがい」を知るプロセスを経ての「お前は本当に・・・」だったのですね。本当に、あまる様、すげ―!!!
 ・・・ところで。ひさびさのソンジュン母上の生出演。息子に好きな女人ができたことを100%喜び、あれこれ問いただすこともせず(←の、ように思います)手づからの祝いの菓子を持たせて送り出してくれた・・・そんな母上のファンになっていた私なのですが・・・。
憔悴した息子の様子に「相手から断られたのでは」と按じるのは当然のこととして、「あの子(ソンジュン)が可哀想」だから「あなた(ジョンム氏)のお力で何とかなりませんかしら」・・・そうきたかζ́◉◞౪◟◉)ζ まあ、時代やら、時の絶対的権力者の正妻(ジョンム氏の気質からして、側室や妾がいたとは思えません。ソンジュン、一人息子だし。)という立場やらからすれば、当たり前の考えなのでしょうが・・・。結婚後のユニ、案外、姑問題に悩みそう(舅とはそれなりだろうけど)。 爬虫類チックな兵曹判書にしても、破談のあとソンジュンを殺そうとしたにも関わらずしれっとしてジョンム氏に接しているし(それはジョンム氏も然りですが)、あれもこれも汚い。そんな中で、ソンジュンの愚直さはひたすら尊いです。
 スンドリとの秘話には泣けました。原作者や脚本家の方が読まれたら、震えられることと思います。

※このような内容のことを、ほとんど全部書いたとき、変なところを押して、消してしまいました・・・嗚呼!!!ショックから立ち上がり(ワタシ、偉いっ!)、何とかもう一度書きましたが、消した文の方が良かったような気がする・・・
(ToT)。人生って・・・(←しょーもない落ち込みに、いちいち人生持ち出すなっ!)
 

48ママ #- | URL
2014/05/17 07:43 | edit

Re: ヒンジさま

コメありがとうございます(^^)
ワタシもこのシーン、短いけどスゴイ好きなんですよ~。絶対1記事分まるまる使って書きたいと思ってたので、またしてもイロイロと捏造を……(笑)
なんか最終話はほとんど毎回こんな感じになってますね、我ながら(^^ゞ

ソンジュンは自尊心のカタマリだけど、大切な人のためには自分を捨てられるところがやっぱ人間臭くて好きです。自分と父親は違う、とはっきり決別を告げていながら、その父を頼らざるを得ない。
このときのソンジュンは本当に辛かっただろうな~と思います(´;ω;`)←そしてまた泣く

あまる #- | URL
2014/05/15 02:16 | edit

あまるさん、私の大好きなシーンを掘り下げてくださってありがとうございます♪

このシーンは、ドラマだと僅かなシーンですが、とてもいろいろなモノが含まれているシーンだったりして、深いですよね。

ソンジュンが自分の無力さに気付き、はじめて父親の権威にすがるシーンでもあるし、ジョンムが息子の曝け出した心の内に気付くシーンでもあります。

あまる流で、より意味深いシーンになりましたね。
読んでて、じ~んときました^^

ヒンジ #- | URL
2014/05/14 22:34 | edit

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