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最終話 10 師弟 

bandicam 2014-05-11 02-22-58-718

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伝香門をくぐると、そのすぐ後に続くようにして、チョン博士が構内に入ってきた。ソンジュンら同様、外から戻ってきたらしい。青い堂下官の官服を身に着けている。
三人が目礼すると、博士はこんな夜更けに出歩いていたことを咎めもせず、そのまま立ち去ろうとした。その背中を、ソンジュンはほとんど反射的に呼び止めていた。

「王宮に、行っておられたのですか?」

博士は肩越しにソンジュンを振り返り、そうだ、と短く答えた。

「陛下と、次の経筵に向けての準備を?」

ソンジュンは慎重に尋ねた。動く時機を間違えば、ユニを失うことになるかもしれない。自分の推測に対する確証が欲しかった。だが博士は黙ったまま、そこに立ち尽くしている。暗いのでその表情まではわからなかったが、何かがおかしかった。博士の反応は、王の悲願の成就を目前にした忠臣のそれではなかった。
ソンジュンがなおも踏み込んで訊ねようとしたそのとき、ふいにヨンハが進み出て、言った。

「キム・ユンシクが兵判に連れ去られました」

ソンジュンは顔色を変えた。それはジェシンも同様だった。心配するあまり気でもふれたかという顔で、おい、とその肩に手を掛ける。だがヨンハは構わず、博士を見据え、詰め寄るようにして続けた。

「チョン博士、あなたはご存知のはずです。兵判にキム・ユンシクの秘密を握られたら、金縢之詞も、王の計画も、全てが水泡に帰してしまうことを」

博士は黙って視線を足元に落とした。三人は固唾を呑んで、博士が口を開くのを待った。
暫しの沈黙の後、博士は顔を上げ、言った。

「……そろそろ見回りの時刻だ。来なさい」



清斎の前庭は、帰宅日の晩とあって、明かりが全て落とされ、恐ろしいほど静まり返っていた。
東斎の北にある薬房まで来ると、チョン博士は扉を開け、中へと入っていった。ソンジュンらもそれに続く。
天井近くに小さな明かり取りの窓があるだけの薬房は、外よりも更に暗かった。
こちらに背中を向けた博士が、手に下げていた灯篭を机の上に置いた。中の蝋燭を取り出し、油皿に火を移す。
薬棚に囲い込まれた狭い室内はそれでいくらか明るくはなったが、教え子たちと向かい合った博士の面輪には、より一層深く濃い影が差していた。

「キム・ユンシクを捉えたのは、兵曹判書ではない」

その言葉に、三人は同時に息を呑んだ。

「では誰が?あいつは今何処にいるんですか!」

ジェシンが、掴みかからんばかりの勢いで尋ねる。博士の表情に苦渋が浮かぶのを絶望的に見つめながら、ソンジュンは呆然と呟いた。

「まさか……キム・ユンシクは今、陛下の元にいるのですか?」
「……そうだ」

突然、周囲の光景が歪み、ぐらりと傾いた。真っ直ぐに立っていられず、ソンジュンは思わず半歩後ろに足を踏み出した。
それは考えうる限り、最悪の事態だった。
ユニを拘束しているのが王なら、自分たちには手の施しようがない。

一体何故だ?どうして王までが、彼女の秘密を知ってしまったんだ───。

「それはあいつを保護するためですよね?兵判ら老論が、女の身で成均館に入ったキム・ユンシクを捕らえて処罰しないよう、あいつを守るために……そうなんでしょう?」

青褪めた顔のヨンハが、それでもなお何かに縋るように言った。
彼等のそんな一縷の望みを砕くことは、師として躊躇われたのかもしれない。博士はそれには答えず、静かに三人を促した。

「もう夜も遅い。部屋に戻りなさい」
「教えてください、先生」

博士が、ソンジュンを見返した。ソンジュンは両の拳を痛いほど握り締めた。

「月末に行われる経筵で、陛下が華城への遷都を公表されると聞きました。金縢之詞はその場で、反対する老論を抑えこむ強力な武器となるでしょう。ですがもし兵判ら老論が、その金縢之詞の捜索を女に任せたと糾弾したら、その時陛下はどうなさるお考えですか」

黙っている博士に、ジェシンが声を震わせ、激情を露わにした。

「俺たちはその答えを聞く権利があります。言ってください、“心配はいらない”“王は必ずキム・ユンシクを守る”と。これが、王の仰る希望ですか?答えてくださいよ、先生!」

チョン博士は、優れた師だった。これまで、儒生たちの問いに答えられなかったことは一度として無かった。なのに今、彼は苦しげに眉間に皺を寄せ、弟子たちから目を逸らしている。

嘘だと思いたかった。こんなのは、有り得ない夢だ。

「つまり……キム・ユンシクは」

喉が塞がるような心持ちがして、ソンジュンは言葉を切った。そのとき彼の脳裏に浮かんでいたのは、ユニの面影だった。
金縢之詞を見つけ、ソンジュンが成均館に戻ってきて、四人で祝杯を上げた、あの晩。
新たな朝鮮で、新たな夢を見るのだと───王の言葉を、嬉しそうに語っていた彼女。
瞼の裏が、熱くなった。喉元にせり上がってくるものを懸命に堪え、ソンジュンは言った。

「キム・ユンシクは、金縢之詞を捜し出した、まさにそのために、王に見捨てられるというのですか」

その答えを、博士の口から聞くことはできなかった。彼が三人の視線を避けるように、背を向けてしまったからだ。
ソンジュンは博士が顔を背ける寸前、その目からぱたりと涙が落ちるのを見た。

彼はその瞬間、全ての望みが断ち切られたことを悟った。







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2014/05/11 Sun. 02:24 [edit]

category: 最終話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: pimamiさま

コロたんの着物ですか~(笑)
虎模様ですかね?コレ。まー確かにこの三人の中でこれを着こなせるのはコロしかいないでしょうね~

あちらの俳優さん、ユ博士に似てる人けっこう多い気がする……
あ、ここにも出てる、とか思ったら、よく見ると違う人だったって何度かありました。そういえば(笑)

あまる #- | URL
2014/06/12 09:17 | edit

これ!これ!この写真!ドラマは緊迫した場面なのですが、コロピーの着物に目が釘付けになった場面です!
やぁ〜んステキ〜 (≧∇≦)ちょっと回ってごらん ♡って思ったのは私だけかしら(・・?) それと、しばらくユ博士とコロパパが同じ人だと思ってたのも私だけかしら…あらすじ的にヘンねって思いながら( ? _ ? ) で、あら 違うって気が付いたのもこの頃…(°_°)
とにもかくにも、この写真が見れて嬉しかったです。あまるさん ありがとう\(^o^)/

pimami #- | URL
2014/06/09 23:09 | edit

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