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落花流水 2 

毎度のことですが。
2話で終わり、と言っときながら、またしても終わりませんでした(^^ゞ
ソンス番外編の続きです。


****************************************



「……入ってもいい?」

舎廊棟にあるソンジュンの部屋の扉に向かい、ユニは躊躇いがちに声を掛けた。
中からの返事は、ない。予想はしていたので、ユニは構わず扉を開け、チマをつまんで敷居を跨いだ。
奥の文机の前に座る部屋の主は、真面目くさった顔で本を読んでいる───ように見える。

ユニは笑いたくなるのを堪え、静かに彼の正面に腰を下ろした。
すると、ソンジュンはユニの方を見もせずに膝をずらし、本を持ったまま体ごとふいと横を向いた。
ならばとユニは立ち上がり、ソンジュンと向かい合える位置まで行って座り直す。するとまた彼は違う方を向くので、ユニも負けじと移動する。
そんなことを繰り返して、文机を中心にちょうど一回りしそうになったところで、ソンジュンは根負けしたように息を吐き出した。そして、ようやっとユニに視線を置いた。

「食事も喉を通らないほど怒ってたんじゃないのか?」
「死にそうな人を放ってはおけないでしょ」
「さっきのは、忘れてくれ。頼むから」
「嫌よ」
「ユニ」

つんと顎をそびやかして、ユニは言った。

「紙に書いて、表具屋に頼んで、掛軸にしてもらうわ。それで、私が死ぬときには、一緒に棺桶に入れて貰うの」

勘弁してくれという風に頭をもたげ、ソンジュンは恨みがましい声を出した。

「……知ってるか?きみは時々、僕に対してものすごく意地悪になる」
「あなたこそ、知らないのよ。今の私がどれだけ悔しいか。あんなこと言われたら、いくら腸〈はらわた〉が煮えくり返ってても、許さないわけにはいかないじゃない」

ソンジュンはちら、と上目遣いにユニを見ると、ようやく笑顔を見せた。ユニも微笑んだ。
鳥がついばむような軽いくちづけは、仲直りのしるしだ。二人で決めたわけではないが、いつの頃からかそうなった。

「悪かった。きみに黙って、仕事を断って」

ソンジュンはそう言って、貰冊房の一件を詫びた。

「じゃあ、あの仕事、受けてもいいのね?」

勢い込んで言ったユニに、ソンジュンは途端に表情を険しくする。

「僕が悪かったと言ったのは、事前にきみの了承を得なかったことだ。仕事を断ったことに関しては謝らないから。撤回もしない」

そんなぁ、とユニは情けない声を出した。

「心配してくれるのは嬉しいけど、あれくらい、全然平気だったら。私の身体が丈夫なのはよく知ってるでしょ?」
「僕がわからないのは、きみがどうしてこのところ急に仕事を増やしてばたばた働いてるのかってことだ。この家で僕と暮らすのは、そんなに退屈か?」
「そうじゃなくて……」
「ならどうして」

ユニは観念した。ソンジュンをびっくりさせたいのはやまやまだが、そのために喧嘩するなんて、よく考えたら酷く馬鹿げている。
結局、チマの膝のあたりをつまんでいじりながら、ぼそぼそと白状する羽目になった。

「水差しが……欲しかったの」

え?とソンジュンが怪訝な顔で訊き返した。

「あなたに、新しいのを買ってあげたくて。お店で、すごく素敵なのを見つけて。……それで」
「僕に内緒で、自分で買おうと?」

ユニが頷くと、ソンジュンは天を仰いで大きく溜め息をついた。
まったくきみって人は、と、殆ど彼の口癖のようになってしまった科白をまた口にして、チマをいじっているユニの手を掴む。そのまま引き寄せると、彼はユニを優しく抱き締めた。
爽やかな菊花の香りが、ユニの身体を包み込んだ。

ごめんなさい、と小さく言うと、髪にそっと押しあてられる彼の唇を感じた。

「ちょうど私に、指名で依頼がたくさん来てたときだったの。天が味方してると思ったわ。あの水差しを買いなさいって。なのに、他でもないあなたがそれを断っちゃうんだもの」
「……その指名客が問題なんだ」

頭の上で微かに呟いたソンジュンの声に、ユニは顔を上げた。

「何か言った?」
「いや、何も。───それより」

ソンジュンは座り直すと、ユニの両手を握って、にっこりと微笑んだ。

「水差しなら、あれをくれないか?きみが使ってるあの、小鳥みたいな形の」
「あんなの、どこにでも売ってる安物よ」
「あれがいいんだ。きみみたいで、かわ……」

はたと、ソンジュンは口をつぐんだ。だがユニがそれを聞き逃すはずもない。下から彼の顔を覗き込むようにして、「私みたいで、なに?」と悪戯っぽく尋ねる。
ソンジュンはきまり悪げに視線を逸らし、「何でもない」と言ったが、ユニは容赦しなかった。(たぶんこういうところが意地悪だとソンジュンは言いたいのだろうが、仕方ない。私に意地悪されるときの彼が可愛らしすぎるからいけないのだ、とユニはソンジュンのせいにした。)

「言って。あれが私みたいで、何なの?」

今度は扇子に書いて持ち歩くなどと言われてはたまらないと思ったのか、ソンジュンはごほんと咳払いして、言った。

「きみみたいで、可哀想だからだ。いつもお腹空かして、口開けて鳴いてる雛鳥みたいだろう?」

ユニは「ひどい。何よそれ」と唇を尖らせたが、思い出したようにお腹のあたりに手をやった。

「そういえば、急にお腹が空いてきたみたい」

くす、とソンジュンが笑う。

「今からスンドルを起こすのも気の毒だ。厨房に行こうか。こっそり二人で食べよう」

ソンジュンのその提案は、ユニにはとても楽しい誘いに思えた。
二人、子供のようにはしゃいだ気持ちで、部屋を出る。手を繋ぎ、足音を立てないように厨房へと向かったが、くすくす笑う声が抑えようとしてもどうしても漏れてしまい、あまり意味はなかったかもしれなかった。





つづく
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2014/04/23 Wed. 17:53 [edit]

category: 落花流水

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: めぐさま

わざわざwikiってくださってるとは……。嬉しいです。ありがとうございます~(^^)
ヨリム、好きそうですよね~確かに。密かに座右の銘にしてたりして(笑)

二人は深夜の台所でコソコソ何を食ったのか?今だったらラーメンとかでしょうけども。
夜中に食べたら太るとか、そういうの全然気にしなさそうなユニが好きです(笑)
貧乏だったから食えるときに食わねば!って感じだったんだろうなぁ。今は幸せで良かったね~。

あまる #- | URL
2014/04/25 03:43 | edit

Re: ***2さま

ソンスは一応「ラブコメ」ってフレコミですものね~。
なんか本編書いてると時々忘れそうになりますが(笑)
私も楽しいお話が好きです。ラブラブなバカップルならなお良し!

あまる #- | URL
2014/04/25 03:28 | edit

落下流水

最近の番外編、草花の題目が付いているものはどんな花か気になり、wikiってみてるのですが、今回の落下流水もお陰様で初めて意味を知ることができました。こんなにヨリム兄さんの好きそうな意味があったとは…笑 勉強になります(´・ω・`)

今回もあまるさんらしい、ふたりの掛け合い楽しませていただいてます(*´ω`*)延長大歓迎です!指名客の正体も、ふたりがこっそり何を食べたのかも、楽しみに待ってます~!

めぐ #7X15vbXw | URL
2014/04/25 00:13 | edit

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# | 
2014/04/24 21:43 | edit

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