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最終話 1 金縢之詞 

bandicam 2014-02-18 00-51-18-624
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両手でチマを握り締め、ふらふらと庭先を歩くヒョウンの顔は、すっかり色を失っていた。
昨晩、黙って屋敷を抜け出したことを、今の今まで父にこってりと絞られていたのだが、彼女の脳裏を占めていたのは父親の小言などではもちろん、なかった。

昨夜司憲府の獄舎で見た、ソンジュンと彼の同室生、キム・ユンシクの姿。
牢の格子越しに互いの手を握り、見つめ合う二人の様子は、どう見ても単なる友人同士のそれではなかった。
まさかあの二人が、とあまりのことに血の気が引いた。だが聞こえてきたユンシクの言葉は、更に驚くべき事実を彼女に知らしめたのだ。

(あのキム・ユンシク様が……女人だったなんて)

では、貰冊房でソンジュンが言っていた“心を許した人”とは、まさしくあの時隣にいたキム・ユンシクのことだったのだ。
すっかり騙されていた。入清斎の夜、色目を使われていると勘違いして、ちょっとでもいい気になっていた自分が馬鹿みたいだ。

余程酷い顔色をしていたのだろう。ヒョウンが出てくるのを待っていたらしいポドゥルが小走りにやってきて、大丈夫ですか、と尋ねた。
曖昧に頷いたヒョウンに、ポドゥルは はぁ、と大きな溜め息をつく。

「それにしても信じられない。こんなことってありえませんよ。まったく世も末だわ。女の身で、成均館に入学するなんて、なんて大それた……」
「キム・ユンシク様は、初めから何か違うと思ってたわ」

男にしては綺麗すぎるということ以外にも、今思えば確かにあった。いつも一緒だった彼ら。ソンジュンがユンシクを見るときの、あの目。何故か胸がざわざわと騒いで、落ち着かなくなった。あれは───そういう、意味だったのだ。

「───今、何と言った?」

ふいに、傍らの縁側〈マル〉から声がした。庭先に人がいると思っていなかったヒョウンは、ぎくりとして足を止めた。

「キム・ユンシクが……女だと?」

兄、インスの微かに歪むように上がった口の端を見たとき、彼女は悟った。ソンジュンにとって、よりによって最も知られてはいけない相手に、自分が真実を教えてしまったことを。


*   *   *


玉卓の上に上疏文を広げた王は、ざっとそれに目を通すと、大司憲、と言った。

「つまり昨晩、紅壁書が現れたゆえ、牢獄にいるイ・ソンジュンは紅壁書ではないと言うのだな?」

ほんの僅かな間のあと、大司憲ムン・グンスは「左様にございます」と低頭した。
玉卓を挟んだ王の前には、彼の他に左議政イ・ジョンム、兵曹判書ハ・ウギュ、そして領議政チェ・ジェゴンが並んで控えている。
王は頷くと、ウギュに視線を投げた。

「兵曹判書は、一刻も早く儒生たちの要望通り謝罪すべきだな」
「し、しかし陛下、それは……」

ウギュが目を左右に泳がせ、狼狽えた声を出す。と、王は幾分語気を強めて、言った。

「神聖なる成均館に官軍を入れるという禁じ手を使ってまで、成均館の学生を取り調べた結果がこの有り様とは。血気盛んな学生たちが何日も宮殿の前で訴えていれば、国中の民に失態を知られることになるぞ」

ウギュは最早言葉も無く、頭を垂れたまま額の汗を手の甲で拭った。

今この、自分の目の前に居並ぶ臣下たちの胸中が皆それぞれに違うことを、王は知っている。
おそらく彼らも若い頃は、同じひとつの志を抱き、敦化門〈トンファムン〉をくぐったこともあったろう───今、仁政殿の前に集う儒生たちのように。
王はふと、そんなことを思った。

「今度は、余が批答〈ピダプ〉を下す番だな」

そう言って、王は臣下たちに退出を促すと、内官を呼んだ。



月台〈ウォルデ〉を、一人の堂下官が足早に降りてきた。奏上を続けていた儒生たちの間に、ざわめきが広がる。

「陛下が批答を下される!此度の儒疏の疏頭〈ソドゥ〉※は前へ出よ!」
※疏頭……儒疏の代表者

ジェシンが、隣を見た。だがそこにユンシクの姿はまだない。反対側に座るヨンハを振り返るが、こちらも戸惑った表情で首を横に振るばかりだ。

「テムルは?」
「あいつ、この肝心なときにどうしたんだ」

後ろにいる儒生たちも辺りを見回して騒ぎ始めた。堂下官が苛立った様子で「おらぬのか?」と声を上げる。

「ここにおります!」

澄んだ、一際張りのある声が響いた。
広場に跪く儒生たちは、仁政門からこちらへ向かって真っ直ぐに歩いてくるキム・ユンシクの姿を見た。
ここにいる儒生たちの誰よりも細く小柄な身体を、誰よりも粗末な道袍に包んでいるキム・ユンシク。
けれども、一歩一歩、しっかりした足取りで歩くその瞳には、誰よりも強い光が宿っている。

儒生たちの前まで来たユンシクは、先頭に座すジェシンとヨンハに向かい、手にした八角の長箱を示して、言った。

「見つけました、先輩」

見上げる二人の目が、驚きに見開かれる。ユンシクは笑顔で、繰り返した。

「ぼくが……見つけたんです」

ヨンハが、ぱっと破顔した。少し遅れて、ジェシンの顔にも笑みが広がる。
二人に力強く頷いたユンシクは、そのまま堂下官の前に進み出ると、跪いた。

「此度の儒疏疏頭、成均館儒生キム・ユンシク。陛下の批答を謹んでお受けいたします」


*   *   *


崇文堂〈スンムンダン〉に通されたユニを迎えたのは、正面に座る王と、その傍らに控える領議政チェ・ジェゴン、そしてチョン博士だった。
王の表情は晴れやかだった。低頭したユニに向かい、王は待っていたとばかりに玉座から立ち上がり、言った。

「成均館儒生たちの要求どおり、イ・ソンジュンを無罪放免とし、兵曹の謝罪文も公表する。これが、余の批答である」

ユニは感謝のあまり、言葉もなく深く頭を垂れた。牢獄の中のソンジュンの顔が思い浮かび、涙が滲みそうになるのを彼女は懸命に堪えた。

では、と王はそれまでより僅かにくだけた調子で、言った。

「儒生たちの意見を聞いた後は、酒を振る舞わねばな」

領議政が合図すると、盆の上に一抱えほどもある箱を乗せ、内官がしずしずと進み出てきた。
目を丸くしているユニに、チョン博士が微笑んで言い添える。

「儒疏の後は、学生たちに酒が下賜される。昔からの伝統だ」

ユニは王に向かい一礼すると、言った。

「陛下……私も、陛下に差し上げるものがございます」

傍らの内官に預けていた八角の箱を受け取り、玉卓の上に静かに置いた。

「密命を、果たしました」

王は、ユニの言葉を聞くや、慌ただしい手つきで箱を開け、そこにあった書状を取り出した。信じられないといった表情で、先王の記した文字を見つめる。王の手の震えが紙に伝わり、その端がユニの目の先で微かに揺れていた。

「金縢之詞は、成均館の伝香門の前に埋められていました。学問の向かう先であり、国の始まる所───朝鮮で最も卑しいという、泮村に向かって開かれた門です」

金縢之詞から顔を上げた王の目は、赤く潤んで光っていた。チョン博士はユニを見て頷き、隣の領議政は袖で目の端を拭っている。ユニの胸にも、熱いものが込み上げた。

「これで、そなたの父の夢……そして、余の長年の夢が叶うのだな」

王は噛み締めるようにそう言って、ユニに向かい、微笑んだ。

「感謝するぞ、キム・ユンシク。約束しよう。そなたの努力を決して無駄にせぬよう、余は力を尽くす。次は、新たな朝鮮で、そなたが夢を見る番だ。───新たな夢を」







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2014/02/18 Tue. 00:57 [edit]

category: 最終話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: ちびたさま

おぉ~!お久しぶりです。コメントありがとうございます~。

最終話とはいえ、ほんとの最終話まではまだもちょっとありますから(笑)
よろしければもーしばらくお付き合いのほどお願いいたします。
ユニソンの妄想はおそらくまだまだ続くと思われますので~(笑)

あまる #- | URL
2014/02/20 01:28 | edit

Re: ちゃむさま

さすがに最終話、ってなるとなかなか感慨深いものがありますね~。
第一話、いつになったら終われるんだーとジタバタしてた頃が懐かしいです(笑)

ドラマ観てたときはそうでもなかったんですが、文字にして書いてみるとここに来て今更のように(^^ゞユニパパの気持ちとか凄い考えてしまって。
やっぱ無難な結末だとパパは浮かばれないよなぁ、と、なんかヤバイとこに足突っ込んじゃった感が半端ないです(笑)
多分史実は盛大に無視することになるかと思いますが、かの国の時代劇はそもそも史実とはかなりかけ離れているらしいので、そのあたり大目に見ていただければと……(^^ゞ

あまる #- | URL
2014/02/20 01:18 | edit

Re: wakuwakunike さま

コメありがとうございます(^^)

お陰様でどうにか最終話までこぎつけました。
案外こっからが長かったりして(笑)

ユニが成均館に戻ってからラストシーンまでは、かなりの時間が流れてるようですので(ソンジュンヒゲだし……(^^ゞ)その間何があったのか!妄想を掻き立てられますよね~(笑)

あまる版のラストはどうなることやらですわ~。ご期待に沿えるよう頑張ります(^^)

あまる #- | URL
2014/02/20 01:00 | edit

ご無沙汰してます。
とうとう最終話ですねえ(;_;)
なんか、なんか、終わっちゃわないで〜!と無茶な事考えてます。
ああ〜、分かってるんですがあ!なんか、さみしい、さみしすぎる。
とは言え、あまるさんの文章が大好きなんで、最後の例のシーンも楽しみにしてます。
もう少しですが、無理せずに。

ちびた #- | URL
2014/02/18 13:58 | edit

ついに最終話

ドキドキします、なんだか…
毎日ここを覗くのが楽しみだったから…
ドラマは小説より出来がいいと思ってたけど最終話だけは特に最後、消化不良でしたからこの際あと何話か付け足しちゃってください(笑)
あまるワールドの結末楽しみにしてます。

ちゃむ #- | URL
2014/02/18 12:25 | edit

あまる様

いよいよ最終話ですね~。

近頃ディレクターズカット版を見ています。
後半に追加シーンが多く、よりドラマが深まってて
とてもいいですね。

でも、最終話、ユニが無事成均館に戻った後については
???
妄想もいっぱいです(笑)

あまるさん版ではどうなるのかな~?

とっても楽しみでーす!(^^)!

wakuwakunike #- | URL
2014/02/18 10:48 | edit

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