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第十九話 10 逢瀬 

bandicam 2014-02-04 15-13-40-625
**************************************


ヒョウンの後についてせかせかと歩きながら、ポドゥルは弱りきって言った。

「お嬢様が心配でお供してきましたが……坊っちゃんや旦那様に知られたら叱られます。もういい加減、お諦めくださいな。一度切れてしまった縁は、元には戻りませんよ」
「そんなこと、期待してないわ」

前を見据えたまま、ヒョウンはにべもなく言った。

「ソンジュン様が捕えられたのは、元を正せば私のせいだわ。じっと座ってるのが心苦しいから行くだけよ」

またそんなこと言って、とポドゥルは溜息をつく。大体、お嬢様は昔から諦めが悪いのだ。こんな夜更けに家人に黙って司憲府まで出向くのも、ただあの左議政の若様に会いたいからに決っている。
おそらくは、牢から出られるよう、兵曹判書に上手く取り計らってくれとあの若様が自分を頼ってくれるのを期待しているのだ。そして、手酷く自分を袖にした男の惨めな姿を見て、溜飲を下げたいという気持ちも少なからずあるに違いない。
現実は物語のようにそう都合よくは運ばないということを、そろそろお嬢様も学ぶべきだわ、とポドゥルは思った。


*   *   *

案内された牢の中は、明々と灯された篝火のせいで、思っていたよりも随分明るかった。
だが空気はどこか淀んでいて、黴と土埃が入り混じったような臭いがし、ユニはすぐに息苦しいような感じに襲われた。
少し奥へ進むと、分厚い格子の向こうに、果たして彼は、いた。
眠っているのだろうか。白い単衣だけの姿で、膝を抱え、じっと目を閉じている。道袍こそ着てはいないが、衿元はきちんと整い、髪も少しも乱れていない。静かに端座するその姿が、囚人のそれなどと誰が思うだろう。
座っているのがたとえ絹張りの座布団だろうと、藁の上だろうと、彼がイ・ソンジュンであることはただの少しも揺るぎはしないのだ。そのことが、ユニには嬉しかった。

牢の前に腰を下ろし、端正な横顔を見つめた。そうしていると、それまで堪えていた気持ちが涙とともに溢れて、ユニの頬を濡らした。

───大丈夫。彼はちゃんと生きて、ここにいる。

この目で、彼の無事を確かめられただけで、満足だった。ユニは音を立てないようにそっと立ち上がると、踵を返した。

「キム・ユンシク……?」

懐かしい声を、背中に聞いた。振り返ったユニの目に、立ち上がってこちらへ来るソンジュンが見えた。
途端、とめどない涙がまた頬を伝った。彼はそんなユニを見つめ、少し困ったように、だが嬉しそうに、微笑んだ。ユニも微笑み返したが、彼の笑顔がせつなくて、結局また涙が出てしまう。

「ずいぶん……やつれたみたい」

格子の間から、手を伸ばす。指先に触れた彼の頬は幾分こけていて、うっすらと伸びた顎髭がちくりとした。
ソンジュンはユニの手を握り締めると、薬指に光る指輪に気づき、彼女を見返した。

「話は、聞いたよ。単純だって思われるかもしれないけど、すごく……ほっとした」

ユニはそう言ったが、ソンジュンの表情は重苦しいままだ。

「僕の父を、きみが完全に許せるとは思っていない。できるなら、僕が代わりに許しを請いたい」

そんな必要ないよ、とユニは小さく首を横に振った。

「人は、生まれる家や親を選ぶことはできないって、前に言ってたじゃない。ぼくがあなたにあげられるのは、許しじゃない。この、想いだけ。あなたを愛する女の……心だけ」

そう言うと、ユニはただ真っ直ぐに、ソンジュンの瞳を見つめた。
あなたが好きです───その、精一杯の想いを込めて。きっと、彼には伝わると思った。

「だから、許しなんて欲しがらないで。ぼくにはただあなたの、愛だけをください。それだけでいい」

ソンジュンは言葉に詰まったように唇を噛み締めると、繋いでない方の手を伸ばした。彼の大きな手のひらが、ユニの頬をすっぽりと包み込む。
始めは涙をそっと拭っていた彼の親指が、次第に降りて来て彼女の唇に触れ、その温もりとかたちを確かめるようにゆっくりとなぞった。
目を閉じたユニは、自分の唇を辿る彼の指の感触に、小さく身体を震わせた。

「……今度は、この格子が邪魔だ」

いつぞやの、笠にくちづけを阻まれたときのことを言っているのだろう。
低く囁いたソンジュンの声は微かに笑いを含んでいたが、篝火の火明に揺らめき、じっとユニを見つめるその瞳は、酷く切ない。
触れたくても触れられない。そんな状況が、互いの胸を締め付ける。

この牢の格子がなかったら、今すぐ彼の胸に飛び込んで、少し痩せた彼の身体を思い切り抱き締めただろう。唇を合わせ、彼の香りと温もりを気の済むまで確かめただろう。
そう出来ないことが、もどかしかった。

「明日から、捲堂を始めるの。必ず戻れるから。そのときまで、待ってて」

ソンジュンは微笑むと、握り締めたユニの手に視線を落とした。そっと持ち上げた彼はそこに、唇を押しあてた。
痺れるような熱が、触れた先から全身に伝わってくる。まるで彼に、新たな血をそこから流し込まれたかのように。



そんな、束の間の逢瀬に浸っていたふたりは、当然ながら知る由もなかった。
牢の入り口で、一部始終を聞いていたヒョウンとポドゥルが、真っ青な顔をしてかたかたと震えていたことなど。


*   *   *


『───ありがとう』

誰かにそんなことを言ったのは、子供の頃以来だった。
何に対しての礼なのか、自分でもよくわからない。
父への誤解が解け、あの地獄から抜け出すことができた。
どうやって死ぬか、そればかり考えていた自分に、どう生きるか考えることを教えてくれた。

彼女に出会えなければ、きっと今も、暗闇の中を彷徨い歩いていただろうことを考えると、そのすべてに対しての感謝とも言えるし───何か、一番大切なことを忘れているような気もする。
ただ、彼女を目の前にしたとき、思わず口にしたのは───好きだ、でも、愛してる、でもなく───何故か、『ありがとう』だった。
それしか、思い浮かばなかった。

華奢な背中が司憲府の門に消えるのを見届けてから、ジェシンは来た道を戻り始めた。
たった今まで、ユンシクと歩いていた同じ道を、やはり同じように月が照らしている。一歩一歩、踏みしめるようにゆっくりと歩いていると、黒装束を着替えて追ってきたらしいヨンハが、曲がり角から顔を出した。
ジェシンが一人でいるのを見、ちょっと眉を上げる。

「テムル一人で行かせたのか」

ジェシンが黙っていると、まったくお前ってやつは、とでも言いたげな溜め息をつき、ヨンハは言った。

「忘れろよ。いつまでも引きずると、癖になるぞ」

いつも自分が言っている科白を拝借され、ジェシンは小さく笑った。並んで歩き始めたヨンハが、ジェシンの肩をぽんと叩く。

「見つめるだけの恋は、これで最後にしとけ」

そう言って、夜空を振り仰ぎ、おお、と声を上げる。

「月が綺麗だ。今夜はバタバタしてて、ちっとも気づかなかった」

───見つめるだけの恋、か。

ジェシンは紫紺の空にくっきりと浮かぶ白い真円を見上げた。
子供の頃、月を見ながらよく走った。どんなに速く走っても追いかけてくる月が不思議で、面白くて。
だがそれはあの月が、一生かかっても辿り着けないほど遠くにあるからだと知ったのは、いつだっただろう。

遥かに遠い。けれどだからこそ、人は月に心惹かれる。こんなにも狂おしく。
それが、世の理というものなのだ、おそらくは。

「……腹が減った。どっかで食ってくか」
「いいね。明日からの捲堂に備えて、しこたま詰め込むぞ」

俄然張り切った声で、ヨンハはそう言った。

明日の捲堂。

今はとにかく、それに賭けるだけだった。




*******************************
あまるですどうもこんにちわ。

久々のウソ注意報です。
牢の中からユニを触りまくるソンジュンはあまるの捏造です念のため。
ドラマの実際のソンジュン様は牢の中からユニを視姦するだけです。(え?違う?)
あと、終わりの方のヨンハとジェシンの「飯食いに行こう」云々の下りも。
捲堂はどうやら断食しなきゃいけないようだし、自宅に監禁されて腐りまくってたジェシンがまともにご飯食べてたとも思えず……。
しかし助けてもらったのはいいが何十枚も壁書書かされーのバラ撒きーの……おまけに明日から断食!(一応怪我人なのに)
つくづくタフな男だ。コロ(^^ゞ



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2014/02/04 Tue. 15:18 [edit]

category: 第十九話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: p**m*さま

ヘンねぇ〜(((o(*゚▽゚*)o)))(笑)

ワタクシには確かに見えました。
ソンジュンがユニにあんなことしたりこんなことしたりしてるのが、はっきりと!
だからウソではないのです!←開き直り?

雪まつり!いいですね~。九州生まれのあまるには札幌の寒さってちょっと想像つかないですが(^^ゞ
一度行って見たいもののひとつです。

あまる #- | URL
2014/02/11 22:27 | edit

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このコメントは管理人のみ閲覧できます

# | 
2014/02/10 17:53 | edit

Re: みあるさま

ドラマではヒョウンのびっくり顔で終わってますが、
絶対あの先があるはずだというかあって欲しいというか(笑)

ヒョウンはあれだけ押せ押せでやれたら、後悔することはないでしょうけど……。
コロはどうなんでしょうね~。ユニにはっきり気持ちを伝えてたらどうなってただろうとか、ふっと考えたこともきっとあっただろうな~。不憫。

でもコロにはダウンちゃんという幼妻がいますから(笑)

あまる #- | URL
2014/02/07 01:03 | edit

Re: クンナム2さま

ゆちょんに恋。そうまさしくこれは恋(爆)
体育座りして居眠りこいてるゆちょがもう可愛くて可愛くて←そこ?

ガクレンの方は……(汗)お待たせして申し訳ないです(^^ゞ
次回からの展開に向けて練り練りしている最中です(笑)
休みの日以外でも書けたらもちっと更新のペースが上げられるんでしょうけどね~。
ボチボチ頑張ります(^^)

あまる #- | URL
2014/02/07 00:29 | edit

Re: ねーさま

ヒョウンはあれでもウギュの娘でインスの妹ですからね~。
“ただ座っているのが心苦しい”なんてことは絶対ねーだろ、と(笑)

昨夜はコメ返しながらうっかり寝落ちしてしまいましたが(^^ゞ続き、早くお見せできるよう頑張ります~。

あまる #- | URL
2014/02/06 07:32 | edit

Re: めぐめぐさま

ヒョウンとポドゥルの関係は、ソンジュンとスンドルの関係と似ているようでいて微妙に違うところが面白いですよね。(^^)
けっこう厳し目のポドゥルのヒョウン評ではありますが、ウギュが島流しになった後も(^^ゞお嬢様のことは見捨てたりできないんだろうなぁとか思います。

オリジナルラスト……どうなることやらです(笑)

あまる #- | URL
2014/02/06 07:26 | edit

Re: 48ママさま

このドラマのハイライト……確かに~。
ユニがあんなにはっきり“愛”なんて口にするのはあの場面だけですもんね。
しかしソンジュン、囚われの身なのに清潔感あり過ぎ!(爆)便宜上アゴヒゲなんて書いちゃいましたが、どんだけ目ぇ凝らしてみてもお肌ツルッツルやしっ!

ヒョウンの登場、喜んでいただけて嬉しいです。(^^)そういえばなんか久々に出てきましたね、彼女。
ワタシもヒョウンは大好きとまでは言いませんが、決して嫌いではないので、あんまりおバカさんには書けないですね~(^^ゞ本編終了後の彼女がどうなったのかも、気になるところです。

あまる #- | URL
2014/02/06 06:55 | edit

Re: すずさま

ゆちょんと目を合わせちゃダメ!妊娠しちゃう!(爆)

それはさておき(笑)
あの牢のシーンは、ほんとにもっともっと色っぽいのを激期待して見てた覚えがあります(^^ゞ
格子に阻まれているからこそのもどかしさというか、狂おしさというか。
ああああ~それだけなのおぉぉぉ~!!!と見てるワタクシの方が身悶えしておりました。
ちょっとでもその煩悩が補填できてるといいのですが(笑)

> 例の弓の大会の時だって、ユニ嬢の手までとって良いこと言ってるのに、

あの弓懸の渡し方はさり気なくて良かったですよね~。(*・ω・*)ポッ
ただその直後に、ソンジュンの没技をユニが見ちゃったばかりに、若干印象が薄くなっちゃった感が(^^ゞ
可哀想な男だよ、コロ……(T_T)

> ユニ嬢とくっつけてやろうとは思いませんが(ヒドイ!)

もちろん、ソレとコレとは全然別ですから!(こいつもヒドイ!)

あまる #- | URL
2014/02/06 01:18 | edit

わ~

いいですね~!!この展開であってほしかった(>_<)な~んて。

本当、2人が幸せなのは嬉しいけれど、ヒョウンや、コロ先輩がかわいそうで、せつなくて何ともいえない気持ちが乱れあっていますね。
2人ともソンジュンやユニに対する気持ちが本物だから、よんでいて、せつなくなります・・・。でも!でも!やっぱり主役の2人には、ラブラブでいてもらいたいのです(>_<)

この2人が幸せになってくれるといいな~・・・。

みある #qsvP4ThM | URL
2014/02/05 11:02 | edit

好きな場面で〜す。

「許しじゃなく、愛情。女心。」これ好きなんです。そう、そう、そうよね。なんて思いながら見てました。切なくて、あ〜ぁ恋したい(≧∇≦)まぁ、ユチョンに恋してるから良いか。
あまるさん、もうすぐ完走ですね。楽しみにしてます。レンとガクの方もゆっくり待ってます(^-^)/

クンナム2 #bZKQlFT. | URL
2014/02/04 22:47 | edit

こんにちは!

私もヒョウンの心理描写に拍手です!
ストン、と腑に落ちました。
さすがです。

格子越しの二人の逢瀬シーンは素敵ですよね。
ユニを一人で行かせるコロの切なさも・・・。

あまる様の想像力&創造力に乾杯!更新待ってますね!

ねー #- | URL
2014/02/04 22:13 | edit

すごい!

下女が見抜くヒョウン嬢の本音や、格子越しの逢瀬…あまるさん、流石です(*´∇`*)

私も視姦に一票デス 笑

もうすぐ怒濤の最終回ですね…少し切なくもありますが、オリジナルラスト楽しみにしております!

めぐめぐ #- | URL
2014/02/04 20:23 | edit

ヒョウ~ン❤

 ソンスファンなら誰もが、愛してやまないこの場面。檻を隔ててソンジュンとユニが交わす言葉は、もしかしたら、このドラマのハイライトかもしれません。
ああ、なのになのに、私ときたら・・・
「待ってたよ、ヒョウ~ン!!!!!」
いやもう、さんざんヒョウン嫌いを言い散らかしておきながら節操ないこと甚だしいのですが、久々のヒョウン嬢とポドゥル(あまる様描かれるところのポドゥル、もう、大好きです(^^)。心のつぶやきが最高!)に、心が躍ってしまいました。全く、どこに食いついてんねん!
 私はこれまで、ヒョウンが司憲府を訪れたのは、「分別がなくて愚か」という、自己評価そのものの理由が全てだと思っていました。「『元を正せば私のせいだわ。』なんて、自己陶酔もええ加減にせーよ、地軸かアンタ!」と、画面に向かって毒づいた黒歴史をカミングアウトします。それが・・・あまる様の「手酷く自分を袖にした男の惨めな姿を見て、溜飲を下げたいという気持ちも少なからずあるに違いない」という洞察、凄すぎ!!!!!!!!!!いくつ「!」をつけても足りないぐらいです。ナルホドネ-!!!ヒョウン、あなたやっぱり、ウギュの娘で、インスの妹よね~!!!血は争えんわ~!!!(こんなこと思っている私の方が100万倍意地が悪いという事実には、この際、目をつぶってしまおう(^_-))
一番溜飲を下げたのは私だということをまずはご報告し、心からの感謝(爆)を捧げます。
※このところ、感想の起伏が激しすぎますが、前回も、今回も、間違いなく同一人物が書いておりますゆえ・・・。

48ママ #- | URL
2014/02/04 20:11 | edit

わたしも……

イ・ソンジュン君子は、ユニ嬢を視姦してたと思います(爆)

というか、逆に何もしてないんかいって感じですが(笑)
あまる様のとこのソンジュンは、「あ~、もうちょっとそこどうにかならんかね」というとこを、私好みに色々とやってくれるので、ほんと大好きです^^

あと、コロたん…… 
もうね、この人ホント切なすぎます……
例の弓の大会の時だって、ユニ嬢の手までとって良いこと言ってるのに、肝心のユニ嬢は、イ・ソンジュンのとこにすっ飛んで行っちゃうし(あ、違った。ホントはヤギョン先生のとこだった。でも私の中ではもはや同じ……笑)
つくづく報われない男だなアと思います。
ユニ嬢とくっつけてやろうとは思いませんが(ヒドイ!)

でも、私はそんな君が大好きだぞ! 頑張れタフガイ!

すず #- | URL
2014/02/04 17:42 | edit

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