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第十九話 4 悲憤 

bandicam 2014-01-02 02-19-57-512

****************************************



ソンジュンの司憲府への移送は、翌朝一番に成均館に配られた朝報で、儒生たち全員の知るところとなった。
大寺洞〈テサドン〉から戻ってきた大司成にしてみれば、まさに寝耳に水である。
自分がいれば、泮宮での官軍の横暴など絶対に許さなかったのに、と彼は正録庁で人目も憚らず地団駄を踏んで悔しがった。

「イ・ソンジュンが紅壁書のはずがありませんよ!あの原則の鬼の堅物が、人様の屋敷の塀を乗り越えて矢を放つ?!馬鹿らしいにも程があります!」

これには、聞いていたヤギョンも全く同感だった。冗談にしてもこれほどつまらないものもないだろう。想像するのも難しい。

「これには裏があるはずです。しかし、それが何なのかがわからない。左議政様をお慰めするべきか、黙っているべきか……ああ、どうしたらいいのだ!」

手を揉み絞りながら、悩ましげに室内をうろうろと歩き回る。大司成の頭の中は相変わらずだ。我が身の出世のためにはどう行動するのが最善か、そればかり考えている。
ヤギョンの向いの机で書に目を落としていたユ博士も、おそらくは同じことを思ったのだろう。渋面を大司成に向けて、言った。

「それよりも私は、兵曹の行為が許せません。成均館に立ち入るばかりか、捜査と称してこの聖堂を荒らし回るとは」

まったくです、と大司成は頷いた。

「なぜ私の留守中に兵曹判書が奇襲をかけ、大司憲にイ・ソンジュンを引き渡したか?問題はそこです」

ヤギョンは言った。

「成均館の儒生は、官吏に準ずる者たちです。監察である大司憲がその取り調べにあたるのは当然でしょう」
「そういうことを言っているのではありませんよ、チョン博士。大司憲は少論でしょ?老論である兵判が同じ老論の息子を、敵である少論にあっさりと引き渡したのが、どうにも解せないんです。私が思うに───」

大司成はぎょろりとした目を更に見開いて、人差し指を立てた。

「これ則ち、内部分裂です!」


*   *   *


明倫堂の前庭を、ヨンハは先程から何事か考え込みながら行ったり来たりしていた。
ユニは、手にした朝報から顔を上げると、その声に不安のいろを滲ませて言った。

「まさか大司憲様は、かつて息子を殺された恨みを、今回のことで晴らそうとしているわけじゃないですよね?」
「それはない」

答えたのはヨンハではなく、木立の影から姿を現したジェシンだった。
驚いて、ユニは思わず彼に駆け寄った。自分で身体を起こすこともできないほどの傷だったのに、出歩くなんて正気の沙汰ではない。

「イ・ソンジュンを巻き添えにはさせない。ヤツが紅壁書だなんて、誰が信じるんだ?ここに本物がいるってのに」

そう言って足を踏み出したジェシンの前に、ユニはさっと両腕を広げて立ちはだかった。

「それで?今から自首でもする気ですか。その身体で」

何故か、猛烈に腹が立った。相手が怪我人じゃなかったら、その横っ面を引っ叩いてやりたいほどだ。

「怪我をした先輩の身代わりになった人がいるんです。その思いを無駄にしたら、ぼくが許しません。先輩のためだったら、ぼくでもきっと同じことをした。だからわかるんです」

テムル、とジェシンが半ば懇願するような目で彼女を見た。

「それでも、行かせてくれ。俺が行けば、大司憲に言える。十年前の晩に兄貴を死なせたのは、左議政じゃないと。それでヤツを救える」

思いがけない言葉に、ユニは息を飲んだ。「本当か?」とヨンハが咳き込むようにして尋ねる。
「嘘なんかついてどうするんだ」とジェシンは言い、労るような眼差しをユニに向けた。

「だからお前も……もう心配しなくていい」

全身からくたりと力が抜けたようになって、ユニは腕を下ろした。必死に押さえ込んでいたものが急激にせり上がってきて、喉元を塞ぐ。ソンジュンの面影が脳裏をよぎった途端、瞼の裏が熱くなって、ユニはぎゅっと目を閉じた。
その脇をすり抜け、ジェシンが伝香門へと向かう。ユニがはっとして振り向くと、ジェシンは立ち止まり、「おい!」とヨンハに向かい顎をしゃくった。

「しっかりやれよ。成均館に乱入した官軍の責任を問うんだろ」

無論だ、とヨンハが頷く。

「俺が戻るまでに準備しとけ。できるな?」
「見くびるなよ。私は……」

途中で引き取って、ジェシンは言った。

「そう、お前はク・ヨンハだ」

ふっと片頬を上げて笑うと、彼は踵を返した。

この人もまた、闘いにゆくのだ。
その背中を見送りながら、ユニは、思った。


*   *   *


北村の屋敷に戻ると、幸いなことに父はまだ登庁前だった。
見送りの下男たちを引き連れて足早に門の方へと歩いてくる父の前に、つかつかと歩み寄る。

「イ・ソンジュンは無実です。すぐに釈放してください」

前置きも何もなく、ジェシンはいきなりそう切り出した。

「紅壁書が誰なのか、父上はご存知のはずです」

父はジェシンをちらと一瞥すると、にべもなく言った。

「お前は首を突っ込むな。私に任せろ」
「左議政は、兄上の死に関わっていません。ユン参軍の証言を聞いたでしょう」
「それを知ったところで、何も変わらん。連中が政権を守るために、私の息子を殺したのは事実だ」
「だから父上も、連中と同じ手を使おうというのですか!」

そうはさせません、とジェシンは父の行く手を塞いだ。そして自分の衣の合わせを掴むや、ぐいと広げて、血の滲んだ胸の包帯を見せつけた。

「俺が自首します。この身体には、紅壁書である動かぬ証拠が刻まれていますから」

衿を戻し、父より先に門を出ようと身を翻したジェシンだったが、素早く回りこんできた数人の男たちに前を阻まれ、立ち止まる。

「父上!」

振り返ったジェシンはそこに、握り締めた拳を小刻みに震わせ、怖ろしいまでに頬を歪めて空〈くう〉を睨み据えている父の顔を見た。

「……十年間、私は毎朝、この官服に腕を通すたびに奴らの顔を思い返し、この日を待っていたのだ。たとえお前であっても、絶対に邪魔はさせん」

“取り憑かれている”

いつだったかヨンハにそう言われたことを思い出した。お前は兄の死に取り憑かれていると。

(こういう、ことだったのか)

ジェシンはようやく理解した。
今、彼が目の当たりにしているのは、怒りに支配された人の姿であり───それはかつての、自分自身の姿に他ならなかった。




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2014/01/02 Thu. 02:33 [edit]

category: 第十九話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: あらちゃんさま

筆まめ~?そうかなァ。かなり遅筆な方だと自分では思いマスが(笑)
たった一記事分書くのに何時間かかってんだかねって感じです。

この年末年始っていうと、テレビでは嵐とさんまの顔しか見てない気がする……(^^ゞ
遅ればせになりましたが、こちらこそ今年もよろしくお願いいたします。

あまる #- | URL
2014/01/09 15:06 | edit

明けましておめでとうございます。

相変わらずあまる様は筆まめですね~!うれしいような、残りを考えると寂しいような。
この年末年始、強制的に日本のドラマ漬けにされた私は、久々にみるジェシンのお顔がやたらロマンチックなものに感じられました~(*^_^*)

今年もよろしくお願いいたしますm(_ _)m

あらちゃん #- | URL
2014/01/09 01:24 | edit

Re: soumama さま

あけましておめでとうございます。こちらこそ本年もよろしくお願いいたします~m(_ _)m

> どうなったらベストなのか分かりませんでした。

ですね~。コロ父がそれだけ愛情深い人なんだってこともよくわかりますし。
ただ、この回のユニはステキでしたね。コロの前に立ちはだかるところ。
ソンジュンの身が心配で仕方ないのに、彼の気持ちをちゃんと理解してて、その意志を大事にしようとしてる。
なかなかできないことだと思います。両班というより、最早武士の妻ですね(笑)

明日からは仕事始め。お互い頑張りましょ~。

あまる #- | URL
2014/01/06 02:57 | edit

こんばんは。

あまる様、明けましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願い致します。
(すみません、大変遅くなって。)

この回ですが、本当に難しいなと思います。
様々な事情があって、それぞれの思いがあって、
どうなったらベストなのか分かりませんでした。
ただ、コロ先輩にも、ソンジュンにも、ユニにも、
幸せになって欲しいと思いました。
もちろん、ご家族の皆さんにも。
巧く言えませんが。

明日からは、仕事ですよね~?
頑張って行きましょ♪


soumama #- | URL
2014/01/05 21:45 | edit

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