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金鳳花 1 

本日はソンス番外編です。
クリスマスにアップしようと思ってたのに、二日酔いでポンコツになってました。スミマセン(^^ゞ
続きは、年内にお見せできると思います~。
***********************************


朝。身支度を整え、舎廊棟の縁側〈マル〉を下りた庭先でユニを待っていたソンジュンは、内棟の方から彼女が小走りで出てくるのを見て、いつものように声を掛けた。

「おはよう、キム・ユンシク」

夜、一つ布団で寝ている二人はなにも今、目覚めて初めて会うわけではない。だが髷〈サントゥ〉を結い、成均館の儒生服を身に着けたキム・ユンシクとして現れる彼女を前にすると、改めて挨拶するべきだと、そう感じる。

「おはよう、イ・ソンジュン」

やや低く抑えた声で、彼女はそう返す。
キム・ユンシクを男だと思っていた頃は、作り声とは知らずに聞いていた声だ。おそらく彼女の中でも、ソンジュンとそう呼び交わす時が、彼の恋人キム・ユニから、友人キム・ユンシクへと切り替わる瞬間でもあるのだろう。
そんな彼女を見ていると何故か、手を触れて邪魔をしてはいけないような、神妙な心持ちになるソンジュンだった。

後ろ手にしたまま、それじゃあ行こうか、と足を踏み出したソンジュンの手に、ユニがそっと何か柔らかいものを押し付けた。

「……なに?」
「私が、縫ったの。持ってて」

腕を前に持ってきて見ると、握っていたのは綺麗に折り畳んだ手巾だった。右隅に、可愛らしい小花の刺繍が控えめに刺してある。

ソンジュンの頬に、微笑みが浮かんだ。

「最近、何かこそこそやってるなと思ってたら……これだったのか」
「あなたがいつも私を驚かせるから、そのお返しよ」

照れ臭いのか、ユニはそっぽを向いたままだ。ソンジュンは改めて手巾に目を落とし、そこに咲く黄色い花に親指で触れた。
刺繍は得意じゃないと言っていたのに、なかなかどうして、綺麗なものだ。と、そんなソンジュンの心を読んだかのように、ユニが言った。

「刺繍っていうとそれしかできなくて。何度も刺してるから、少しはまともだと思うんだけど」

まとも?とソンジュンはわざと怪訝な表情を作って訊き返す。一瞬、息を止めた彼女に、にっこりと笑ってみせた。

「まともどころか。素晴らしい出来栄えだ。ありがとう。大切に使わせてもらうよ」

そう言うと、ユニは頬を赤らめ、心底嬉しそうに笑った。
お互いを妻と呼び、夫と呼ぶような仲になっても、こんな少女のような可愛らしい反応を見せるユニが、ソンジュンには愛おしくてならない。さっきまでの神妙な気持ちはどこへやら、つい男装の彼女を抱き寄せてしまいそうになるのを、彼はどうにか堪えた。

「あなたは教育者に向いてるわ」

と、ユニは言った。褒めるのもけなすのも上手いからだという。

「そうだろうか。褒めるのはともかく、きみをけなした覚えなどないが」

言いながら、ソンジュンは手巾を丁寧に折り畳んで、袂ではなく合わせの衿元にしまった。手のひらで軽くそこを押さえると、その仕草をじっと見ていたらしいユニと目が合った。

「行こうか」
「ええ」

どちらからともなく、門を出るまではと互いの指を絡め合い、微笑み交わした。講義の刻限まで、それほど余裕があるわけでもなかったが、その歩みは、どうしても遅くなった。




そんなことがあった、数日後。

「……止まないな」
「止みませんね……」

そぼ降る雨の中、明倫堂の軒下に、ぼんやりと並んで立っているソンジュンとジェシンの姿があった。
その日はたまたま講義が合い、久しぶりに四人で飲みに行こうという話になったのだが、ヨンハは斎会の雑務で、ユニはユ博士の手伝いで正録庁に呼ばれ、珍しくこの二人が待ちぼうけをくっているのである。

「テムルは、まだ貰冊房の仕事をやってるのか?」

前を向いたまま、何気ない調子でジェシンが訊いた。
はい、とソンジュンが答えると、名筆ってのも考えものだな、とジェシンは言った。

「周りからあれを書けこれを書けとしょっちゅううるさくせがまれる。相手がユ博士じゃ、金を取るわけにもいかんだろうしな」
「本人は楽しんでやっているようです。ユ博士の論文の清書は勉強にもなるからと」

はっ、とジェシンは小さく笑って、お前ら本の虫の頭の中はさっぱり理解できん、と言った。

ユニやヨンハがいないと、特に話すこともない二人である。それきり会話は途切れ、彼らはただ黙って雨の音を聞いていた。

そうしているうち、冷えてきたのかジェシンが盛大なくしゃみをした。ごそごそと袂を探って取り出した手巾で、鼻の下を無造作に拭う。
何の気なしにそちらに目を遣ったソンジュンは、ジェシンの手元にちらりと見えた花模様に、凍りついたように動けなくなった。

「───先輩、それは……」

あ?とジェシンがソンジュンを見る。と、彼が衿元から取り出した手巾の刺繍に気づき、こちらもぴたりと動きを止めた。

しばしの沈黙が流れた。
気まずい空気の中、先に口を開いたのはジェシンだった。

「あー……これは、だな、その……」
「お待たせー!」

いきなり、場違いなほどに明るい声が響いた。雨を避けて二人のいる軒下に飛び込んできたのは、ヨンハだった。
半歩遅れて、ユニもソンジュンの隣に駆け込み、にこっと笑う。狭い軒下が一気に賑やかになった。

ヨンハは、ソンジュンとジェシンの手にした手巾を目ざとく見つけるや、おっ、と眉を上げた。

「何だ何だ、二人揃いの手巾なんて、ずるいぞ!もしやそれは我らがテムルのお手製か?ん?」
「ち、違……これは、たまたま俺が怪我した時にテムルから借りて、それで」
「───それをずっと、持っていたと?」

冷ややかな声で、ソンジュンが言った。
一瞬にして、寒々しい空気がその場を覆う。だがそんな状況の中、瞬発力を発揮したのはやはりヨンハだった。
彼はばあん、とユニの背中を叩くと、大袈裟に嘆いて、言った。

「酷いなテムル。私だけ仲間はずれとは。花の四人衆の結束はどこ行った!こんなにお前を可愛がってやってる先輩に、あんまりな仕打ちじゃないか」
「わ、わかりました。ヨリム先輩にも縫ってあげますから」

宥めるようにユニが言うと、ヨンハはころりと表情を変え、ホント?と喜んだ。

「ちょうど、成均館〈ここ〉を卒業する前に、お前らとの絆になるようなものが欲しいと思ってたとこだったんだ。頼んだぞ、テムル」
「先輩、次の大科を受けるんですか?」

驚いて尋ねたユニに、頷く。

「まあ、そろそろ潮時だと思ってさ。カランは当然、受けるだろうし。だろ?」
「無論です」

ソンジュンにとっては訊かれるまでもないことだった。ユニとの将来を考えれば、いつまでもこんなところでぐずぐずしているわけにはいかない。

「どうせなら皆一緒に卒業したいじゃないか。なぁ?」
「そうだな。確かに、何かと騒ぎを起こしてばっかのお前らがいなくなると、つまらんしな」
「コロ先輩に言われたくないです」

唇を尖らせたユニに、言いやがったな、とジェシンが笑う。小降りになった雨の中、四人で酒房へと向かいながら、話題は大科のこと、最初に就く官職はどこがいいかといったことから、新傍礼にも引けを取らない各官庁の新入り虐めなど、尽きることなく移っていった。

だがソンジュンは一人、その胸の内に小さなしこりを抱えていた。それは、靴の中に入った小石のように、ふとした拍子にその存在をちくちくと知らしめては、彼を苛立たせた。




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2013/12/29 Sun. 06:26 [edit]

category: 金鳳花

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: コリ姐さま

ご無沙汰です~。わざわざコメありがとうございます(^^)

> 明倫堂の軒下に並ぶ四人の情景が浮かぶ、素敵な番外編ですね♡

そう!明倫堂。尊経閣でも東斎でもなく、軒下に並ぶなら明倫堂!(爆)
四人並んで雨宿りの図、実際に画像があったら欲しいです、まぢで。

こちらこそ、コリ姐様のお話に出会えたお陰で、ステキな年になりました。ありがとうございます(^^)
これからもどんどん妄想の旅に出掛けられ、その成果をワタクシたちにも分けてくださることを切に、切に願っております。

来年も何卒よろしくお願いいたします~(^^)/

あまる #- | URL
2013/12/30 20:53 | edit

Re: あらちゃんさま

あんなんで喝が入りましたなら幸いです。しかしどんな喝だ(笑)

ソンジュンはやっぱり眉間に皺寄せて悶々してる姿が一番のご馳走です。
とはいえ、相手がコロだとやはしドヒョン兄たちみたいなわけにはいかないですね。ソンジュンも本気にならざるを得ないというか。苦労性な男です(^^ゞ

あまる #- | URL
2013/12/30 20:39 | edit

あまる様、久しぶりにコメントさせて頂きます。
明倫堂の軒下に並ぶ四人の情景が浮かぶ、素敵な番外編ですね♡
ソンジュンは一人、悶々としているようですが…(笑)
今年はあまる様の小説に出逢い良い年でした。
素晴らしい文章力に脱帽です(#^.^#)
続編楽しみにしています。

今年もあとわずかですね~
くれぐれもお体ご自愛頂き、良い年越しを迎えることを願っております
<(_ _)>

コリ姐 #- | URL
2013/12/29 12:56 | edit

あまる様、おはようございます!久々の番外編、うれしい限りです!
昨夜までのだらだらとした自分に喝!が入りました(^_^;)

色っぽいシーンも大好きですが、ソンジュンが嫉妬で悶々とするシーンは一番好きです。本当に、なんでこんなに似合うんだろう?と思うのですが、彼が嫉妬しているところを想像するとうれしくてたまりません。(ユニが嫉妬するところは苦しいだけなのですが)
盛大に悶々させてください!!よろしくお願いしますm(_ _)m

あらちゃん #- | URL
2013/12/29 11:31 | edit

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