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第十八話 8 真実 

bandicam 2013-11-15 00-18-34-983


*******************************


その晩は、満月だった。漆黒の夜空にしんと浮かぶ月が、漢陽の街道に踊るふたつの影をくっきりと照らし出している。
人間技とは思えぬ素早い動きで格闘を繰り広げている二者は、互いに無言だ。相手の隙を突こうと激しくせめぎ合い、一歩も譲らない。
蹴り上げた賊の右足が、ジェシンの頭をかすめた。敵が体勢を整える前に、咄嗟に背後に回り込んで羽交い絞めにする。そのとき僅かに漂った蘭麝の香りを、彼の鋭敏な感覚が逃すはずはなかった。

非道な略奪と殺戮を繰り返した偽の紅壁書が、今また、十年前の事件の鍵を握る男を亡きものにしようとしている。ことごとく王と自分たちの行動を妨害し、窮地に陥れようとするその者の正体は。

ジェシンはもがく相手を片手で押さえ込み、顔の覆面を剥ぎ取った。
屈辱に歪むその美貌が、月明かりに白く浮かび上がる。

ジェシンが思わず怯んだ一瞬の隙をついて、腕を振りほどかれた。相手は、瞬く間に夜の闇の中に駆け去っていった。

「チョソンか。───やっぱりな」

低く呟いたジェシンの声は、冷え冷えとした夜気に漂い、消えた。


*   *   *


成均館に一人戻ったユニはまた、尊経閣にいた。机の上に放りっぱなしになっていた書物を片付けて傍らに積み上げると、一番下に広げていた漢陽の地図が現れた。

「学問の向かう先、国の始まる所……か」

ユニは何気なく人差し指を地図の上に置き、父とジェシンの兄が通ったであろう道筋を辿った。
道岬寺から王都に入るには、漢陽の西にある龍仁門〈ヨンインムン〉を通る。
二人が暴漢に襲われたのは敦義洞〈トヌィドン〉の辺りだった。真っ直ぐ王宮へ向かわずに、何故わざわざここを通って行ったのだろう。

ユニの脳裏にふと、金縢之詞は先王によって初めは宗廟に収められていた、というチョン博士の言葉が過ぎった。

宗廟。朝鮮の、歴代王の位牌が祀られている場所だ。
敦義洞から、東の方向に指を滑らせる。その先に、宗廟があった。
学士が学問を修めるのは、朝廷に出仕するのが目的だ。朝廷は国を動かす。国とは則ち王。
だとすれば宗廟も、学問の向かう先であり、国の始まる所と言えなくもない。
実は金縢之詞が、最初に収められていた場所から動かされていなかったとしたら。道岬寺に移されたのは、老論の目を逸らすための替え玉だったとしたら───。

ユニは積み上げていた書物の山から一冊を抜き取り、捲った。頁の間に折り込まれた宗廟内の配置図を広げる。
それを一気に破り取ると、手早く畳んで袂に突っ込み、尊経閣を飛び出した。

物陰に身を潜めていたビョンチュンとコボンが、その後ろ姿をじっと見送っていたことなど、もちろん、彼女は知る由もなかった。


*   *   *


それで?と、ヨンハは目の前の盃に酒を注ぎながら、向かいに並んだ武官たちの顔を舐めるように見た。

「ユン参軍は誰の金で借金を返せたんだ?」

まあそれは、と言いよどんだ武官の一人がわざとらしく咳払いする。ヨンハは黙って袂から金子の束を取り出すと、がしゃりと音をたてて卓の上に置いた。
男はそれにさっと目を滑らせるや、すぐさま顎をしゃくって他の武官たちを追い払った。

「兵判に会ったらしい」

そう短く言って、金子を懐にしまう。

兵判。つまり、事件の背後には兵曹判書がいるわけか。

ヨンハは僅かに目を眇めた。
確かに、ありそうな話だ。老論の権勢を維持するためなら人の命の一つや二つ、平然と犠牲にするのがハ・ウギュだ。それは、紅壁書を罠に陥れるあの手口を見ても明らかである。

席を立ち、酒房を出た。いくらも歩かぬうちに、ヨンハの耳に無数の足音が聞こえてきた。通りを見ると、武装した兵士たちが金属の擦れ合う耳障りな音をたてながら慌ただしく駆け去って行くのが見えた。
その中にハ・インスとカン・ムの姿があったのを見、嫌な予感が胸をかすめる。
一団が向かった先にあるのは宗廟だ。
彼は身を翻した。


*   *   *


ソンジュンは戻ってきたジェシンとともに、ひとまずユン参軍を引き摺るようにして漢城府へと連れて行った。彼は十年前の事実を知る重要人物だ。いつまた命を狙われるかわからない。
そんな状況がわかっているのかいないのか、ユン参軍はまたここに戻ってくるとは、と大仰な溜息をついた。

「朝までここで大人しくしてろ。命が惜しかったらな」

吐き捨てるようにそう言ったジェシンに、ユン参軍が肩を竦める。ソンジュンが詰め寄った。

「言え。十年前の晩に、何があった」

ユン参軍の顔一面に、みるみる深い笑い皺が寄った。
これは面白い、とまるで相手の反応を楽しむかのような狡猾な笑みに、ソンジュンは思わずかっとして声を荒げる。

「成均館博士キム・スンホンと、掌議ムン・ヨンシンを殺せと命じたのは誰だ!」

ふん、と鼻を鳴らして、ユン参軍はソンジュンを見返した。

「申し訳ないね。エサを与えられなきゃ、犬は口を開かないんだよ」

やにわに、ジェシンの両手がユン参軍の襟首を鷲掴みにした。怒りでどす黒く染まった顔を、唾を吐きかけんばかりに近づける。

「助けてやっただろうが!貴様は殺されるところだった!何故牡丹閣のチョソンに狙われたか考えてみろ!」
「牡丹閣の、チョソン……?」

その名を聞いて初めて、ユン参軍は薄笑いを収めた。掠れた声で、面白い、と呟くと、ジェシンの手を振りほどいて、彼は言った。

「俺に手引を命じたのは、今の左議政だ。だがそのすぐ後、左議政の意志とは別に、二人を殺せと命じたのは、兵判だよ。土地の権利書は、事の次第を知った左議政が、口封じによこしてきた」

言葉を失っているソンジュンとジェシンを交互に見て、これで気が済んだか、とまた笑う。

「しかし、今になって兵曹判書が俺の命を狙うとはね。面白いと思わないか?なぁ」




*********************************
あまるですどうもこんにちわ。

ドラマ本編にはあんま関係ないっちゃ関係ない話なんですが。
コレ書いてて無性に気になったのが月出山と漢陽の位置関係。

てっきり、成均館から数時間も歩けば着くくらいのとこにあるんだろうと漠然と思ってたんですが、実際調べてみたら月出山があるのは全羅南道。
成均館のある漢陽、つまり現在のソウルとは大阪と東京くらいの距離があったわけですΣ(゚д゚lll)ガーン
いやいやいや、同じ名前の山が都周辺にもあったのかも、と往生際悪く思ったりするも、そこにはしっかり「道岬寺」もあったりなんかして(^^ゞ
交通機関も発達してない当時、一泊二日の遠足、なんてノリで行けるトコじゃねーだろ、コレ(笑)
と、成均館儒生たちの健脚に呆れ返った次第。

病弱なユンシクくんにうっかり無理させてしまったのね、ワタシ。番外編で(笑)



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2013/11/15 Fri. 00:21 [edit]

category: 第十八話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: あらちゃんさま

俳優の色気、が今回のコメのテーマとゆうことで(笑)

「俳優は、ただその役を演じるだけではだめなのよ。そこに『自分』が入っていないと」

今でも何故か鮮明に覚えている、「ガラスの仮面」姫川亜弓様のお言葉。
それでいくと、ソンジュンはユチョンという、男の色気と赤ちゃんみたいな純粋さ、可愛らしさが奇跡的なバランスで共存している稀有な俳優によって産み出された、これまた稀有なキャラクターということになるでしょうか。(←すいません脳味噌なんか湧いてますこの人)

そういえばこのユン参軍役やってる人、確かベートーベン・ウイルスに出てたと思いますが、アチラでいうと多分個性派俳優って呼ばれるような人なんでしょうね、きっと。
ソンスっていう(一応)史劇の中で、「ワァ~オ」なんてセリフが許されるのは、この人とたぶんヨリム先輩くらいでしょうな~。(文字にすると浮きまくってて流石に入れられなかった(^^ゞこういうのも、そんな個性を持った俳優さん本人が使って初めて生きるセリフなんだなーと痛感しますた。)

あまる #- | URL
2013/11/20 20:55 | edit

メールのタイトルは腹上死俳優

更新ありがとうございます。地味な場面ですが、言葉に起こすと結構大変な作業ですよね。頭が下がります。

先日知人が役者デビューするというので、芝居を見に行ってきました。火葬場で二組の家族が交錯するお話。知人の役は腹上死した幽霊。ところが、なんか、全然腹上死した人に見えん!爽やかすぎる。彼がそう見えるかどうかってその芝居のかなり重要なポイントだったと思うのですが、まあ、デビュー作に文句つけてもかわいそうなのですが、考えさせられました。
俳優が感じさせるリアルって、その俳優の演技力なのか、はたまた持って生まれたものなのか。少なくとも色気は持って生まれたものだな~と、ソンスを見ると思うわけです。ユチョン君のソンジュンなんかふるいつきたくなるような色気があります(*^_^*)
芝居の後、じゃあ誰だったら腹上死した役にぴったりか、と次の日まで盛んとメールが交わされましたが、ソンスで言えばちょっとチョン・ヤギョン先生なんかがぴったりかもって、思ってしまいました(笑)いろいろ複雑な背景を持つ腹上死なので。先生、ごめんなさい。

あらちゃん #- | URL
2013/11/19 02:12 | edit

Re: snowwhite さま

遠かったんですよ~。わかったときはショーゲキでした(笑)

> それにしてもあまるさんの息の長い情熱には感服します。

や~我ながらホントよく飽きずにやってんな~と思うこともしばしばですが(^^ゞ
他にも好きなドラマはいくつもあるのに、やっぱソンスは特別なんですよね、ワタクシにとっては。
理由はよくわかりませんが。

ソンスにおいて中二房と中二病はもはや同義語かと……(爆)

あまる #- | URL
2013/11/19 01:11 | edit

Re: 48ママさま

や~皆さんそれぞれドラマの楽しみ方がおありのようで、非常に興味深いです(^^)
敢えて13話と14話をジリジリしながら見る、とゆうドMな視聴法(笑)をワタクシもたまにやったりしてますが、あまるの場合ドラマではかなりソンジュン寄りのようで。
ま、それはそれでツライんですけど、あのプロポーズの場面でソンジュンがヒョウンのことなんてまったく考えてないのがわかるだけに、逆にヒョウンがちょっとだけ気の毒に思えたりなんかして(^^ゞ

ソンジュンはもともと真っ直ぐにしか歩けない人ですから、あんな風に自分を無理矢理捻じ曲げてる状態ってのは死ぬほど苦しかったんじゃあないかなぁと思ったりもします。
だから、48ママさんの仰ること、よくわかりますよ~。18話、ソンジュン相変わらずズタボロですが、決してブレることなく気持ちは真っ直ぐユニに向いてるわけですから、あの頃に比べたらまだ幸せなハズです、奴はきっと(笑)

それにしても人物ピンポイント読みなんてスゴ技があったとわ!(笑)
ヒョウンはともかく、確かにジョンムはなかなか腹が読めない人ですね。
清廉高潔な人、ということはわかるし、彼なりに国や民のことを考えてはいるようなので、彼はきっと、古い時代そのものって存在なんではと。
王様や四人衆が新しい時代を作るときに、絶対に打ち壊さなきゃならない相手。
良いとか悪いとかじゃなくて、ただ古い人なんではと、そんな気がします。
新しい時代を夢見る人たちは、古くなりつつある時代に育てられたわけだから、それは古くても父親のように近くて、安心できて、頼りになる時代でもある。だからそれを壊して、乗り越えていくのは容易ではないんだと、左議政親子を見てると感じます。

……なんかついついダラダラ語っちゃいましたが。
「お前は本当に我が息子なのか?」ってジョンムさんのセリフが異様に好き(笑)

あまる #- | URL
2013/11/19 00:24 | edit

追記

現在、何故か、カン・ムの魅力にやられております~笑

snowwhite #bSUw9.7Y | URL
2013/11/18 11:27 | edit

お久しぶりです。

わたしもむっちゃ近いのか、と思っていました。
が、そんなに遠かったのですね!!!
意外な真実でした・・・
それにしてもあまるさんの息の長い情熱には感服します。
あと少しで終わりかと思うと寂しいですね><

わたしは現在、ドラマを見返していますが、もう何度目か忘れましたが、やっぱり面白いですね。
でも、初めてみたときの熱病がちょっと今は恋しかったりするのですが・・・汗。
それだけ夢中になれたあの頃の自分を懐かしく思い出します。

最近、中二房が中二病に見えて仕方がありません・・・遠い目。

snowwhite #bSUw9.7Y | URL
2013/11/18 11:26 | edit

思いいろいろ

あまる様

 11月も後半に入り、季節が確実に寒さへと向かっていることを感じます。
お忙しい中での更新、ありがとうございますm(_ _)m
 昨日、13話と14話を全部読み返し、またもや胸が痛くなりました。そうなってしまうことは充分予想がついていたのに・・・。「あ~っ、やっちまったっ!!!」です。あらちゃん様が、ソンジュンの側に立つことで求婚のシーンを観られるようになったとおっしゃっていて、私もそれに倣おうと思ってみたものの、全然だめでした(そもそも、あまりにいろいろな思いに至らせてしまう、あまる様の筆力がいけないんです!!!・・・ナンテ(^^ゞ)。  前にも書きましたが、私の心は、100%ユニに寄り添ってしまっていて、どうにも・・・。
そんなふうなので、二人が恋人同士となり、殊にソンジュンがまっすぐにた
めらいなくユニに思いを注ぐようになってからは、今(18話)のように緊迫し、皆が苦しんでいる状況ですら、心落ち着けてあまる様の文章を堪能しています(←変な言い方ですが)。
・・・ところで、ヒョウン嬢(爆)。実は、ヒョウン嬢初登場の場面から、コマ送り(?)して、彼女がでてくる場面ばかりを読む、なんぞということもやってみて(家庭もフルタイムの仕事もある身、これで結構・・・いや、かなり忙しいのに!)、彼女なりの成長に気づくことができました。憎めないかわいらしさも発見。ただ、絶対的に愚かなんですよね・・・自己省察する機会を持つことなく生きてきた者特有の愚かさ。「私は賢くもないし、分別もないんです」という涙まじりの言葉は、たしかに心から出たものだろうけれど、ソンジュンの断りやヨンハの忠告を受け入れられず必死にあがく姿を見ると、「賢くなく、分別のない自分」を許してしまっているように思えてしまいます。・・・ヒョウン嬢、ごめんね。どうにもあなたには厳しくなってしまう。
 ごちゃごちゃと、よくわからないことばかり書いて申し訳ありません。「人物ピンポイント読み」、今日は、ジョンム父さんでやってみようと思っています。実は、この人こそ、登場人物の中で一番人物設定が揺れているのではないかと思っているのですが・・・あまる様は、ここまで彼を描写してこられてどのように感じてこられたのでしょう?これから結末に向けても、とても楽しみにしています。

48ママ #- | URL
2013/11/17 08:44 | edit

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