スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
web拍手 by FC2

--/--/-- --. --:-- [edit]

category: スポンサー広告

cm --  tb --  

第十八話 2 卑怯になる理由 

bandicam 2013-09-22 16-13-01-915



**************************************


また、こんなとこに篭もってやがる。

尊経閣の机で一人、脇目もふらずまるで取り憑かれたように書物をめくっているユンシクの姿を見つめ、ジェシンは胸の内で舌打ちした。

金縢之詞と向き合うことは、イ・ソンジュンの父親が犯したかもしれない罪と向き合うことにもなる。今のユンシクには辛いはずだ。
なのに、敢えて自分を痛めつけようとするかのように、真実を求めることをやめない。
そんなところが、多分二人は似ているのだ。
この不器用なまでの、バカ正直さが。

ジェシンはつかつかとユンシクに歩み寄ると、彼女が広げていた本を、ばたんと強引に閉じた。

「もう夜中だ。ろくに眠りもしないで本ばかり読んでると、背が伸びねぇぞ」

驚いたようにジェシンを見つめていた瞳が、ふっと微笑んだ。その笑顔を見ていられなくて、ジェシンは目を逸らした。
机の上の本を手早くまとめて、小脇に抱える。振り向きもせずにさっさと尊経閣を出ると、ユンシクが小走りでついて来た。

その晩の夜空には低く雲が垂れ込め、月も星も見えなかった。だが上空は風が強いのか、黒い雲は何かに駆り立てられるように早く流れて行く。

そこにあるはずのものが見えない。本当のことを知らない。それは、人を不安にさせる。
だが自分ばかりか、大切な人間までも傷つけるかもしれないのに、それでも真実を明らかにしようとするのは、優しさといえるのか───?

無言で中二房への道を歩くジェシンに、ユンシクが言った。

「貰冊房で見つけた『書経』の記述を読んで、老論が金縢之詞を怖れる理由がわかりました。連中はそれで、父を……」
「ゆっくりでいい」

ユンシクの言葉を遮るように、ジェシンは言った。
そんな風に、自分で自分を虐めることはない。
彼女の、思い詰めたような瞳を見ながら、ジェシンは思った。
今はただ、何も思い煩わせず休ませてやりたかった。

「ひとつずつ、ゆっくり考えよう。もう寝ろ。俺はヨンハの部屋へ行く。お前、寝相悪いから」

言いながら、抱えていた本をユンシクに手渡す。
受け取る彼女の指に、銀の指輪が光っていた。ジェシンの胸に、ちくりとした痛みが走る。
それはユンシクのためではない、彼自身の想いに対する痛みだった。

背中を向けたジェシンに、先輩、とユンシクが問う。

「本当なんですか。何かの、間違いでしょう?そうですよね?」

そこに、たった一筋でもいい、少しの希望があるなら全力で縋るとでもいうようなユンシクの瞳があった。

あの老論の野郎は、こいつのこんな瞳を見ていないのだ。もし見たら、この世の全ての人間が事実を語ろうとも、自分だけは最後まで嘘を突き通そうとするだろう。───こいつのために。

だが。

「あんまり心配するな。あいつが戻ったらわかることだ」

彼女に対し嘘をつく資格さえない自分にはただ、そう言って微笑んでやるだけが精一杯なのだ……。


*   *   *


翌日は、貰冊房の地下工房跡で落ち合うことになっていた。
ユンシクをヨンハに任せ、一人、店の前でソンジュンを待っていたジェシンは、通りを歩いてくる頭一つ分抜きん出た長身を見つけるなり、深い溜息をついた。
足取りは重く、周囲を見ていないのか、真っ直ぐにすら歩けていない。ちょっと突いたらたちまちぽきんと折れてしまいそうな危うさはあの、王をも怖れぬ成均館きっての天才と呼ばれたかつてのイ・ソンジュンとはとても思えない。
予想していたこととはいえ、実際にこの男のこんな姿を見ると、やりきれなくなると同時に腹立たしささえ覚える。

「おい」

声を掛けると、落ち窪んだ目がジェシンを見返した。話がある、と半ば連行するようにジェシンは店の裏手にソンジュンを引っ張っていった。

「“あの権利書は、自分とは何の関係もない”。テムルにはそう言え」

ソンジュンが、僅かに瞠目した。

「密命は、金縢之詞を捜すことだ。黒幕を突き止めるのは、俺ももうやめる」
「なぜですか。暗号文が解けない以上、事件の黒幕だけが、金縢之詞を捜す唯一の糸口です。やめる理由はありません。しかも先輩はこれまで、黒幕を暴くために───」
「そうだ!その俺が、真実を伏せるのは卑怯だと、心底軽蔑してたこの俺が、口を閉ざすんだ。だからお前も、正々堂々と正直でありたいとか綺麗事抜かすつもりなら、やめとけっつってるんだ」

正直なばかりが、正しいとは限らない。互いに傷つけあう道を、わざわざ選ぶことはないんだ。それが、何故この男にはわからない?

「人が卑怯になるのは、守りたい人間がいるからだ。キム・ユンシクを───守りたいんだろ」

その名を聞いた瞬間、ソンジュンの瞳が揺らいだ。唇を引き結んだ彼は、黙ったままジェシンに背を向けようとした。その肩を掴んで阻み、ジェシンは言った。

「あいつがお前を、許せると思うか?」

僅かな間のあと、ソンジュンはジェシンを見た。その目には既に、迷いはなかった。

「許しを請う前に、まずは心から罪の償いをすべきです。それに……先輩。僕が許しを請わねばならない人は、キム・ユンシクだけではありません」

一瞬、何のことかわからなかった。それが、兄を亡くした自分のことだと悟ったとき、ジェシンは初めて気づいた。
他でもない自分自身が、この頑固で融通の利かない男を恨みたくないと思っていることに。

ソンジュンはジェシンの手首をぐっと掴むと、自分の肩から外した。
その指に光る、銀色の指輪。

「力を尽くします。キム・ユンシクが傷つかぬように」

ジェシンにはもう、何も言えなかった。







↓楽しんでいただけたらポチっとお願いします
にほんブログ村 小説ブログ 韓ドラ二次小説へ
スポンサーサイト
web拍手 by FC2

2013/09/22 Sun. 16:37 [edit]

category: 第十八話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

cm 2  tb 0 

コメント

Re: あらちゃんさま

まー結局ソンジュンだったらヤサグレてよーが幸せボケしてよーがなんだっていいってことっスね!禿同。

しかし改めてキャプ絵見ると確かにやつれてますね……。この頃ってもうツアーが始まってたとかカシラ。
ソンスの後にポゴシプタ見たら妙にぷくぷくしてて笑えるww

あまる #- | URL
2013/09/24 00:39 | edit

不器用なソンジュン∴愛する

>そんなところが、多分二人は似ているのだ。
 この不器用なまでの、バカ正直さが。

そんなところが多分好きなのです。可愛い~の~。
苦悩するソンジュンは基本的に色気があって好き(*^_^*)
うれしいときのくりくりした目のソンジュンとどっちが好きかと言われると
困っちゃうな~WWW
この辺は痛みや苦しみのあまり一睡もしてない感じでやつれまくってますが、撮影スケジュールもきつかったんでしょうか。
がんばれ!ソンジュン。

あらちゃん #- | URL
2013/09/22 23:23 | edit

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://amaru0112.blog.fc2.com/tb.php/257-a0d6311b
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

2017-08
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。