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第十七話 10 重なる想い 

bandicam 2013-08-15 01-18-35-906


****************************************


とん、と頭が軽く後ろに押されるのを感じて、ユニは閉じていた瞼をそっと開けた。
すると目の前に、張り出した互いの笠のつばに邪魔されて悪戦苦闘しているソンジュンがいた。
頭を傾けたり手で笠を持ち上げたり、どうにかしてユニに接吻しようと頑張って焦る彼の様子が可笑しくて、ユニはつい吹き出してしまった。
するとソンジュンも、降参したように はっと息を吐いて笑いだした。

「貰冊房に戻ろう。先輩たちが待ってる」

差し出したユニの手を、ソンジュンが微笑んで握り締める。
路地を抜けながら、ユニは思った。
こうやってずっと手を繋いで、ふたりで歩いて行けたら。
それ以上のことなんて、何も望まない。

それでも天は、私を欲張りだと断罪するのだろうか───。


*   *   *


一方、貰冊房の地下工房跡では、ヨンハが懐から出した書を得意満面で卓の上に広げていた。

「手に入れたぞ。十年前のあの晩、ユン参軍が受け取った土地の権利書の写しだ」
「お前……こんなものどうやって」

ジェシンが驚きを隠さずに尋ねると、ヨンハはいつもの調子で片目を瞑った。

「例の賭場の女将から、象牙細工のノリゲと引き換えにな。随分高くついたが、それだけの価値はあるぞ。元の地主を突き止めれば、事件の黒幕がわかる」

ついにここまで来た、と否が応でも高揚する気持ちを落ち着けようとしてか、ヨンハは深く息を吐き出した。

「やめよう」
「何だって?」

ジェシンの唐突な言葉に、ヨンハは我が耳を疑うように目をぱちぱちさせた。

「密命は金縢之詞を見つけることだ。十年前の事件の真犯人を暴き出すことじゃない」
「───お前、知ってるんだな?」

黙り込むジェシンに、ヨンハが「誰なんだ」と詰め寄る。
ジェシンの脳裏に、ここに来る前に見た、貰冊房から何故か急いた足取りで出てくるユンシクとソンジュンの姿がよぎった。
喧嘩でもしたのか、人混みを掻き分けながら前を歩くソンジュンに強引に手を引かれ、小走りについて行くユンシク。

まだ始まったばかりのあの二人に、こんなに早く重荷を背負わせるわけにはいかない。
ジェシンはヨンハを見た。

「今ここで誓え。話したら……やめるって」


*   *   *


うっかりしていた、と言って、ソンジュンは昇降機の滑車に伸ばした手を止め、ユニを振り返った。

「きみと一緒だといつも、肝心なことを忘れてしまう」
「ぼく……また何かした?」

ソンジュンの表情からは何も読み取れない。少し不安になって、ユニは彼の言葉を待った。
だがソンジュンは黙って、手にしていた小さな布袋から何かを取り出した。窓からの淡い光にもきらりと反射するそれは、銀の指輪だった。
よく見ると、ソンジュンの右手には既に同じものが嵌められている。用事を済ませて来るというのはこれだったのかと驚いている間に、彼はユニの手を取り、その指輪を彼女の薬指にゆっくりと通した。
まるで何かの儀式のように厳かな仕草で、彼は指輪を嵌めたユニの手を強く握りしめた。

「成均館を出たらそれで終わりか?終わりなんてないんだ。僕が、毎日新しく始めるから」

覚悟しろとでも言うようにソンジュンは微笑んだ。つられてユニも笑った。

あの日、尊経閣で、この先一緒にはいられないだろうけど、自分のことを覚えておいて欲しいとソンジュンに言った。切実な願いだった。だがソンジュンは言った。それは嫌だと。離れた場所で君を思い出すなんてまっぴらだと。この先も、ずっと傍にいてくれと。

あの時はまだ、互いに友人同士だった。嬉しくはあったけれど、彼のそれは、およそ現実からは程遠い言葉にしか思えなかった。
ユニはそっと、自分の指に光る真新しい指輪に触れてみた。
不思議だ。この硬い確かな感触が、あのとき尊経閣で、そしてたった今ここでソンジュンがくれた言葉が、揺るぎないものであることをユニに教えてくれる。

ソンジュンは照れたようにユニに背を向けると、滑車を回し始めた。二人を乗せた昇降機が、軋んだ音をたてながらゆっくりと降りてゆく。
足元に、階下の梁が半分ほど見えた、そのときだった。
またしても がくんと大きな音をたてて昇降機の箱が傾いだ。指輪に触れたままだったユニは咄嗟に身体を支えることもできない。倒れて危うく壁に頭をぶつけそうになったのを、ソンジュンがすんでのところで抱きとめた。

どきりと、心臓が跳ねた。狭い箱の中に二人きりだという事実を今更のように思い出す。
上衣の袖ごしに感じるソンジュンの手が、熱い。丁度彼の胸のあたりに顔を押し付けているせいで、彼の速い鼓動がユニの耳にはっきりと聞こえてくる。

彼も、胸を高鳴らせているのだろうか。今の私と同じように。
あの、何事にも冷静で、王の前ですら、緊張するそぶりも見せないイ・ソンジュンが?

ユニはそっと顔を上げ、自分を抱きとめている彼を見つめた。ちょうど目に入った喉仏が、大きく揺れた。そして綺麗な顎の線。黒い瞳が、じっと自分を見下ろしている。その瞳に魅入られたように、ユニは動けなくなった。

ソンジュンの指先が、掠めるようにユニの顎に触れた。
喉元に結んでいた笠の顎紐が、ゆっくりと解かれるのがわかった。
彼はユニの笠を取ってしまうと、自分の顎紐に手をかけた。
ユニの目線と同じ高さで、はらりと解けてゆく細い布。繊細に動く指には、銀色の指輪が光っている。

ソンジュンはつばに手をかけ、そっと笠を取った。笠から数珠のように垂らした青い飾り玉が、ちりちりと揺れながら、彼の端整な顔を横切ってゆく。その間も、彼の黒い瞳は瞬きすらせずに、ただユニだけを捉えて離さない。

つい先刻、路地裏で二人を隔てた邪魔な笠はなくなった。
それだけなのに、ユニはまるで彼に、着ている服を脱がされてしまったような恥ずかしさに襲われた。

ユニは、彼の黒目がちな瞳が好きだ。
彼の性格には些か不釣り合いな、くるんと可愛らしく上を向いた長い睫毛が好きだ。
なのに、その目に見つめられると、胸が苦しくなる。息をすることさえ、ままならなくなる。
ずっと見ていたいと思うのに、その瞳の熱に身を焼かれるようで、つい俯いてしまう。

顔を寄せてきたソンジュンの吐息を、唇に微かに感じた。首筋がぞくりとして、ユニは目を閉じた。


初めて会ったあのとき、なんて冷たい男なんだろうと思った。けれど重ねた彼の唇は、心とろかすほど柔らかで、温かい。
彼の優しさが、想いが、そっと包みこむようなくちづけに溢れていて、ユニは涙がこぼれそうになるのを堪えた。









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2013/09/05 Thu. 03:08 [edit]

category: 第十七話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: あらちゃんさま

>ここはユニの、というよりあまる様の気持ちじゃなくて!?

モチロンそうです!( ̄^ ̄)キッパリ
あそこはあくまでユニの心情なのであのくらいで勘弁してやりましたが(どんな上から目線)
ワタシだったら睫毛どころかぷっくりほっぺたやらノドボトケやらアヒル口やら反り返った親指やら
直角肩やらいろんなパーツに萌え死んで大変なことになりますワ(笑)

あのくちびるに触れたら、あまるは死んでもいいというかたぶん死にます(爆)
ワタクシのノミの心臓と頭の血管がおそらく耐えられるはずはないと思われ。


あまる #- | URL
2013/09/07 00:43 | edit

ユニは、彼の黒目がちな瞳が好きだ。

ここはユニの、というよりあまる様の気持ちじゃなくて!?実はあのくるんとした睫毛!可愛くて可愛くて私はたまらなく好きです。
紐を解くあのゆっくりさ、色彩、光…ここはあまりに好きすぎていつもボーゼンと見惚れてしまうシーンです。
この初々しいキスはあまりに好きすぎてとても文章には表せないと思っていましたが、触れたくちびるの感触で来るとは!爆死しましたよ~(爆)あのくちびるに、指でいいから触れてみたい。そしたら死んでもいいって、いつも思ってしまいます(笑)

あらちゃん #- | URL
2013/09/06 01:12 | edit

Re: ク**ムパ**さま

韓国はけっこう恋人同士だけじゃなくて、家族とか、男性でも除隊の記念に仲間と贈り合ったりとかするらしいですけどね~。この時代に既にそういう風習があったかっていうとわかんないのでワタクシもそこはスルー(笑)

指輪を買って帰る時のソンジュンのニヤケ顔がまさしく全てを物語ってますね(笑)
男装してるせいで、一緒にいられるのは卒業まで、っていうユニの気持ちをソンジュンも以前から感じてたはずだし、パ**さんのおっしゃるとおり、これがきみが僕のものだって証拠だぞ、みたいな思いは当然ソンジュンにあったと思います。
ユニに指輪を贈って、「毎日始めるから」って伝えるまでは、きっと不安だったんだね……。
ソンジュン、なんて可愛いヤツなんだ(>_<)

ソンジュンのノドボトケ。あのキスシーンでも動きまくってましたね。くすす。

あまる #- | URL
2013/09/05 17:52 | edit

Re:yutorinさま

お気遣いありがとうございます(^^)←リアルでは誰にも心配して貰えないので嬉しい
昨日今日はお仕事お休みなので、全然ダイジョブです!
日中は溜め込んだ家事やったり息子が脇でテレビ見たりゲームしたりうるさいので(^^ゞ
やっぱ深夜が一番集中して書けるんデスよ。

コロ先輩ってやたらああいう、見なきゃいいのにってとこにいますよね。
美男ですねのシヌひょんもそうだったけど(笑)やっぱ二番手君には必須のシチュエーションなんでしょーか。
映像はああいう表現は得意分野ですけど、文章だと視点がころころ変わってわかりずらくなるから、けっこう難しいんですよね。同じ場面で書くのって。
というか、あまるがいわゆる神様視点ってやつで書くの、苦手なだけなんですが(^^ゞ

あまる #- | URL
2013/09/05 17:03 | edit

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

# | 
2013/09/05 10:39 | edit

ありがとうございます

あまる様、更新時間を見てビックリです。
他人事ながら、いつお休みになっているのか心配になってしまいます。
お体大事にして下さいね!

前回、コロ先輩が去っていく二人を見つめるシーンがなかったので、
あれっと思ったら、ちゃんとあって安心しました。あの表情が寂しげで・・・
ソンジュン派の私ですら、切なくなってしまいます。

指輪って正式なプロポーズということなんですよね。いいな~、若いって!!

yutorin #- | URL
2013/09/05 08:39 | edit

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