スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
web拍手 by FC2

--/--/-- --. --:-- [edit]

category: スポンサー広告

cm --  tb --  

第十七話 3 紅壁書の腕輪 

bandicam 2013-08-20 20-43-56-407
************************************



「何を考えてるのか先に教えてくれ。本当に何も知らないのか?」

人通りの増えてきた雲従街を歩きながら、ヨンハがジェシンに尋ねた。ジェシンは前を向いたまま答えた。

「金縢之詞は、息子の思悼世子を死なせた先王が、後悔の念を記した文書だ」
「何だって?」
「金縢之詞の存在が世間に知られたらまずい連中がいるんだよ。そいつらが、真実の暴露を怖れて、その文書を葬り去るために兄貴を殺した。事件の裏には、老論がいる」
「お前……何も知らないと言ったじゃないか。どうして黙ってた」

ジェシンはそれきり口をつぐんでしまった。ヨンハにはなんとなく察しがついた。おそらくジェシンはこのまま行けば、自分たち四人にとって何か重大な事実にぶつかることに薄々気付いている。
ヨンハはそこで初めて、微かな不安を覚えた。何事もまずは楽しむことが信条である彼にとって、王の遷都計画も、暗号文の謎解きも、半分は道楽の延長みたいなものだったのだが。
事が自分たちの間に直接関わってくるとなると、そう気楽に構えてもいられなくなる。

「ここで会えるとは嬉しいね」

声に振り向くと、まるで待ち伏せていたかのように、インスが薄笑いを浮かべて立っていた。途端、どこに隠れていたのやら、四方から三叉槍を構えた私兵たちが駆け寄ってきて、ヨンハとジェシンは、あっという間に取り囲まれてしまった。
インスはジェシンをじっと見据え、言った。

「昨晩、広通橋に紅壁書が現れた」

ヨンハが頬を上げ、「酷いなぁ」といつもの軽い調子で応じる。

「そういうことは早く教えてくれよ。見物したかったのに」
「今から見ればいい」

インスの右手が挙がった。すると私兵の一人が懐から半紙を取り出し、さっと広げた。それは、黒い覆面をつけた紅壁書の人相書きだった。

「詳しくは義禁府〈ウィグムブ〉で聞こう」

私兵たちが一斉に間合いを詰め、二人に向かい槍を突き付ける。
はっ、と笑ったヨンハは、人相書きを私兵の手からむしり取り、自分の目の前に掲げた。

「こんな人相書きだけで捕らえるつもりか?ハ・インス。こいつに一番似てるのは、私はむしろお前だと思うぞ」
「これを見ても、そんな冗談が言えるか?」

そう言って差し出されたインスの手には、淡い水色の石を連ねた腕輪があった。

「昨晩、広通橋で紅壁書が身に着けていたものだ。この腕輪がムン・ジェシン、お前のものであることは、成均館の誰もが知っている」

ジェシンの両肩が、私兵に取り押さえられた。身動きの取れなくなった彼の右腕を、インスが掴む。
その手首にはやはり、腕輪は無かった。ついに獲物を捕らえた獣の目が、舌なめずりでもしそうにジェシンを見た。

そんなインスに向かい、ジェシンは小馬鹿にしたように鼻を鳴らした。

「お前の言ってるのはこれのことか?」

と、左腕を上げてみせる。そこには、インスが今手にしているのと寸分違わぬ腕輪があった。
凍りついたインスの前に、今度はヨンハがひらりと自分の左腕を見せつける。

「それとも、これかな?」

色も形も同じ腕輪が、ジェシンばかりかヨンハの手首にもあった。馬鹿な、と驚愕したまま動けずにいるインスに、ヨンハが「あっ!しまった」と声を上げる。

「そろそろユ博士の『中庸』の講義が始まるぞ。お前も急いだ方がいい。───ああそうだ。こんなありふれたものじゃ、紅壁書の手掛かりにもならないし、お前にはもう必要ないだろ?」

そう言って、ひょいとインスの手から腕輪を取り上げる。

「私たちとお揃いにしたいって、テムルが欲しがっててさ。不要なものを他人に譲ってこそ、極楽浄土へ行けるってもんだ。ま、お前の場合少し努力が必要だけどな」

インスの顔が、土気色に変わった。静まり返る私兵たちの中、ヨンハはインスの肩をぽん、と叩いて、その場を後にする。

二人の、完全なる勝利だった。



通りの角を曲がったところで、ヨンハはこみ上げる笑みを抑えきれず、言った。

「どんなもんだ。私はク・ヨンハだぞ」

腕輪を見たときの、インスの顔といったら。こんな痛快なことはなかった。
ジェシンも笑い、二人は互いの手のひらを打ち合った。

インスから取り返した形見の腕輪を受け取り、右腕に嵌めながら、ジェシンが尋ねた。

「昨日の今日でいったいどうやって用意したんだ?しかも二つも」
「以前、お前を熱狂的に崇拝してる妓生たちが作ってつけてたのを、取り上げたことがあってさ。まさかこんなところで役に立ってくれるとはね」

ジェシンにとって、兄の腕輪は特別なものだ。浮かれた妓生たちが真似をして戯れにつけていいものではない。
といって、本物そっくりなそれを捨てるに忍びず、なんとなく実家に置いたままにしていたのだ。

妓生から腕輪を取り上げたこと、それを捨てられなかったこと。理由を訊かれたら、単なる焼きもちだと答える用意はあったのだが、ジェシンは微かに口元を引き上げただけで、何も訊かなかった。

「───俺は見つけてみせる。金縢之詞を捜せば、兄貴を殺した犯人もわかる。奴等が本当に怖れるべきものは何なのか、きっちり教えてやる」

互いの視線を交差させ、二人は強く頷いた。


*   *   *


成均館に戻って早々、チョン博士の呼び出しを受けたジェシンは、その足で真っ直ぐ薬房へと向かった。
密命に関することなら、ジェシン一人を呼ぶことはないだろう。
ある予感めいたものを感じながら、ジェシンは天井から無数に吊り下げられた薬袋の下で、チョン博士と向かい合った。

「陛下からの伝言だ。今後は敵に付け入る隙を与えぬよう、紅壁書としての活動を控えよとの仰せだ」

やはり知っていたのだ。王も、チョン博士も。
驚きはしなかった。傷を負い、官軍に取り囲まれたあの晩、突如として現れた編笠の男たち。
彼らが王の差し向けた護衛官であることは、察しがついていた。
チョン博士が厳しい表情で、言った。

「父親が大司憲とはいえ、兵曹に捕らえられれば命はない」
「承知してます。助ける力も、そんな意志もない人ですから。俺の父は」

皮肉めいた笑みを浮かべ、背を向けたジェシンに、博士の声が掛かる。

「君の兄も名文家だった。壁書の中に、君の兄の姿を久々に見た気がして、懐かしかったよ。兄の文体に近づこうと余程の研鑽を積んだか……あるいは、血は争えんといったところか?」

背中を向けたまま、ジェシンは呟くように言った。

「“民を愛し、国を憂えねば、詩にあらず。時代に胸痛め、世に憤慨することなくば、詩にあらず。善を勧め、悪を警戒する志がなければ───其れもまた、詩にあらず”」

「それは……」と言葉を切ったチョン博士を、ジェシンが振り返る。

「俺の愛読書は、成均館の万年学生だった、チョン・ヤギョンの詩文集です」
「……おだてても出席日数が足りなければ、単位はやれんぞ」

眉間に寄せていた皺をふと緩めて、博士は微笑んだ。






***********************************
あまるですどうもこんにちわ。

ジェシンの腕輪、(ドラマでは落としたことになってますが)奪われて翌朝ですヨ!
ヨンハったらいくらなんでも手回し良すぎ!ってことで、妓生から取り上げた云々のくだりは例によってあまるの捏造でございます~。ご注意!




↓楽しんでいただけたらポチっとお願いします
にほんブログ村 小説ブログ 韓ドラ二次小説へ
スポンサーサイト
web拍手 by FC2

2013/08/20 Tue. 21:12 [edit]

category: 第十七話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

cm 4  tb 0 

コメント

Re: ちゃむさま

ちょっとインスが気の毒になるくらい、どや!でしたね(笑)
腕輪は、せめて一日あればヨンハのことなので用意できただろーとは思うんですが、流石に翌朝ですからね~。
貰冊房から自宅に帰ったのも夜遅かっただろうし……。
というワケでかなり頭捻りました(^^ゞ

ワタクシは腐女子ではありませんが(笑)この二人は確かにベストカップルだなーと思いますね。
ユニはソンジュンに譲っちゃったコロだけど、ヨンハがいるからまいっか~と。
幸せになってくれコロたん!←無責任

あまる #- | URL
2013/08/25 01:31 | edit

二人のドヤ顔

この、ど〜だっていう顔、してやったりですよね。捏造部分ピタリとはまるんじゃないですか?私もあれはどうやって用意したのか気になりました。確かジェシンとヨンハでベストカップル賞かなんかもらったんですよね。このくだりをみると納得です。ジェシンの不器用な愛情表現がファンにはたまらないんでしょうね。

ちゃむ #- | URL
2013/08/24 07:26 | edit

Re: ukya さま

ヨリムとコロの友情には泣かされます、実際。

このチョン博士とコロのシーンもナニゲに好きなんですよね~(^^)
コロ、あんな態度とってたけど、チョン博士の最初の論語の講義は
けっこうワクワクしながら出席してたのかなぁなんて(笑)

あまる #- | URL
2013/08/22 02:58 | edit

ヨンコロカップル、永遠に!

やっぱりいいですね、この二人。
周りにいてくれたら、毎日が楽しくなりそうです。ヨンハの猥談は勘弁ですがww

インスをしてやったり!…痛快です(*^^*)

何気に読書家ジェシン。おだてが上手い!

ukya #CGSys/Bo | URL
2013/08/20 22:14 | edit

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://amaru0112.blog.fc2.com/tb.php/240-3f866a0f
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

2017-08
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。