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第十七話 2 結ばれし心 

bandicam 2013-08-16 21-14-55-714

***************************************



その晩、四人はそのまま雲従街近くにあるヨンハの屋敷に泊まり、翌朝から早速行動を開始した。
活動拠点は言わずもがなの貰冊房地下室である。王の密命のお陰で、そこはますます秘密の隠れ家的役割が色濃くなり、ヨンハはそれだけで上機嫌だった。彼は、万が一敵に押し入られたときのために、逃げ道となる抜け穴を掘ろうという提案までしたが、遊びじゃないんだ、と鳩尾に食らったジェシンの鉄拳と共に却下された。

「つまり、遺書となった辞職願いが、密命を解く暗号文ってわけか」

ヨンハが、どこかに隠された文字でもありはしないかとキム博士の遺書を蝋燭の明かりに透かして見る。
昨晩、読んでいるうちにすっかり文面を覚えてしまったユニは、ひとつひとつの言葉を確認するように、それを声に出してみた。

「“我、王と二人、月下に糸で結ぶがごとく心を一つにす。書経を以って人材を成し、均しく教え導く学問の向かう先、国の始まる所に、失いし心を留めん”」
「待て待て。なるほど。これはすごい」

ヨンハが、閉じた扇を手のひらに打ち付けてそう言った。思わずユニとソンジュンが身を乗り出す。

「わかったんですか?」
「いや。さっぱりわからない。これぞ優れた暗号文と言えるな。お見事だ」

さも感心したように、ヨンハが言う。ユニはがっくりと肩を落とし、恨めしげにヨンハを見たが、当の本人は意にも介さず、卓の上に広げた遺書を扇の先で辿り始めた。

「まずは解読の基本からだ。言葉通りでなく、文面の裏の意味を取る。十年前の晩、王は先王の文書を持ってくるよう命じ、成均館博士キム・スンホンは、“我が身が失われようとも、心は王の傍にある”そう答えた。そこでこれだ。“失いし心を留めん”この意味は……」
「きっと、先王の文書をどこかに残したってことだと思います」

ユニが言うと、ソンジュンがその後を継いだ。

「では同様に、“先王の文書“を意味するものが、冒頭にあるはずです」

冒頭にあるのは、“糸で結ばれた心”。これもきっと何かの暗喩だ。
離れているものを、結ぶ。一つにする……。

「「破字〈パジャ〉だ!」」

ユニとソンジュンが、同時に声を上げた。
勢い込んで、ユニは言った。

「父は、破字を使って問題を出すのが好きでした。だからきっと……」

破字か、とヨンハが頷く。

「なら、俺たちには黄柑製の破字の問題で首席になったイ・ソンジュンがいる」

ソンジュンは遺書を覗き込み、指先で文字を辿りながら、言った。

「この文の中で破字が可能な文字は……王、二、人、月、失、糸です」
「王……二……人……」

呟きながら、ユニは、人差し指で空〈くう〉に文字を書いてみた。天、全、と幾つかできたが、すべて使うには至らない。
ソンジュンが言った。

「最初の一文字は、恐らく“金”だ」
「そっか。じゃあ“月”は、肉部で使われることが多い漢字だから、失と、糸を合わせて……」

また宙に書いてみる。こちらはすぐにできた。

「金縢〈クムドゥン〉……?」

はて、とヨンハが顎を撫でた。

「金縢っていうと、普通は針金で厳重に封じられた箱って意味だが」

それまで押し黙っていたジェシンが、口を開いた。

「『書経』にある周の時代の逸話だ。命を捧げ、主君を救おうとした話───『金縢之詞〈クムドゥンジサ〉』」

ユニは驚いて、目を見開いた。

「『金縢之詞』……?それって、紅壁書がいつも壁書で言ってた……もしかして、コロ先輩は何もかも知ってたんですか?」

ヨンハがジェシンの肩を掴み、咳き込むようにして尋ねる。

「金縢之詞のありかを知っているのか?学問の向かう先ってのはどこだ。いやそれより……金縢之詞は本当に実在するのか?」
「わからん。とにかく捜すしかない。俺も知りたいんだ。その十年前の夜、兄貴と博士が会った人間や足取りを辿れば、金縢之詞の行方もわかるはずだ」

そう言って、ジェシンはユニとソンジュンを見た。

「だからお前らは、その調子で暗号文を解け。俺は頭を使うことは苦手なんでな」

ヨンハが「私は?」と問うと、ジェシンはその襟首を猫の仔を運ぶように掴んで「わかるだろ。とっとと行くぞ」と引っ張って行く。

「これは面白くなってきたぞ。誰が一番最初に手掛かりを見つけるか競争だ。じゃあ二人とも、頑張れよ!」

いかにも彼らしいお気楽な科白を残して、ヨンハは昇降機の中に押し込まれた。
地上へ上がっていった先輩二人を見送って、ユニはまた、父の遺書に目を落とした。
とりあえず各自の役割は決まった。他はあの二人に任せて、自分はここに遺された父の意志とひたすら向き合うだけだ。

だがそう考えた途端に、自信が無くなってきた。父といえど、幼い頃の朧げな記憶があるだけで、その人となりを知っているわけではない。父と親しかったという王や、弟子であるチョン博士にも解けなかったこの遺書の謎が、果たして自分に解けるのか───。
ジェシンやヨンハの前では捜し出してみせると意気込んだものの、募る不安に押し潰されそうで、つい、本音が口をついた。

「金縢之詞があるという、学問の向かう先───国の始まる所って、どこなんだろう。ぼくに……見つけられるのかな」

ソンジュンが振り返って、ユニを見た。彼はきっと呆れているだろう。根拠の無い自信だけで強気なことを言って、とまた叱られるかもしれない。

「ぼくは、こんな大役を任されたことはないし、政〈まつりごと〉にも、詳しくなんかない。頭だって、いいわけじゃないし……父の夢や考えなんて見当もつかない。それに……」

ユニの目の前にあった卓が、すっと脇に押しやられた。
ソンジュンが、椅子に腰掛けて俯いているユニの足元に跪く。
見上げる彼の瞳は少しの揺るぎもない。ただユニの目の奥深くを、じっと見つめている。

「僕が、そばにいる」

静かに、だがはっきりと彼は言った。

「もし、密命が手に負えないときみが途方に暮れても、そのときは僕がいる。危険なことを始めたと、きみが悔やむときも、僕はいる。嫌気が差して、諦めたくなったときも、自分の力ではどうすることもできなくて、もどかしいときも。そして結局、僕らが何もできずに、失敗に終わったとしても……」

膝の上に乗せていたユニの手に、ソンジュンの手が重なる。彼はそのまま、強く握り締めた。

「キム・ユニ、きみのそばには、いつだって僕がいるから」

ユニは微笑んだ。その頬に、幾筋もの涙が伝う。
言われて、初めてわかった。自分が、彼のこの言葉をどれだけ必要としていたか。
たとえどんな状況になっても、独りではない。彼が、いつもそばにいてくれる。ただそれだけのことが、こんなにも心強いなんて。

恐れることなど、何もない。
ソンジュンの優しい微笑みと、その手から伝わってくる温もりと力強さが、ユニにそう教えてくれていた。





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2013/08/16 Fri. 21:34 [edit]

category: 第十七話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: あらちゃんさま

> 特に卓をどけるところっ!!すんごい好きです(*≧∀≦*)

ワタシもワタシもー!!あそこは外せないですよね!
惜しむらくは照明が光りすぎていまいちになっちゃってるところですが(^^ゞテーブルどけて跪くまでのゆちょの動作にドキドキします。

この二人にはあと一山ありますからね~。あそこもなかなか書くの辛くなりそうだ。
めいっぱい妄想付け足して頑張ります~(^^)

あまる #- | URL
2013/08/20 07:49 | edit

Re: ちゃむさま

インデックスを見ると、あーもう最終話まであとわずかだなーと思いますね。
長かったようで短かったような(笑)
最終話書いたら燃え尽きたりしないか自分でも心配ですが(^^ゞ
書き続けたい気持ちはあるので、とりあえずはゴールを目指します~

あまる #- | URL
2013/08/20 07:41 | edit

興奮して手が震える

興奮のあまり手が震えとります。大好きな萌えシーンです!
特に卓をどけるところっ!!すんごい好きです(*≧∀≦*)
ユチョンの声も耳に残る。いいなぁこの低音。
言うことないくらい美味しい場面です。

ちゃむさんのお気持ちに同感。
だんだん佳境に入るのはいいけど・・・物語っていつもそうですね。早く結末見たいけど、永遠に最終回が来て欲しくないという。

あらちゃん #- | URL
2013/08/19 19:54 | edit

ソンジュンかっこいい

揺るぎない気持ちがすてきですよねー。でも、ここまで来るとまだいろいろ波乱はあるけど終盤を意識してさみしくなります。いやいや、ドラマ部分が終了しても続きのあまるワールドありですよね?兎にも角にもこの後も楽しみにしています。

ちゃむ #- | URL
2013/08/18 16:08 | edit

Re: mutarunさま

はじめまして~(^^)お越しくださいましてありがとうございます!

いやいや、ゆちょとソンジュンへの偏執的でねちっこい愛故に続けてるだけですので(。・・。)テレ
お付き合いくださる皆様には感謝の言葉もありませんわ~

「ネガ イッスル コダ」、韓国語で、ソンジュンのあの声で聞くとたまりませんね!(号泣)
ヤツはいつだってユニにぞっこんですともさ~。


あまる #- | URL
2013/08/18 00:39 | edit

Re: ukya さま

このシーンのソンジュンはホント男前ですよねえぇぇぇ~(*>ω<*)
跪いて「いつも君の傍にいる」なんて、ほとんどプロポーズじゃないですカ!!!
ユニじゃなくても泣きますわ……(T_T)

あまる #- | URL
2013/08/18 00:22 | edit

Re: yutorinさま

はじめまして(^^)お越しくださいましてありがとうございます~♪

なんですと!あの超萌えシーンをカットするとわー!ヽ(`Д´#)ノ ムキー!!
そういえばワタクシが見たときの地上波は、この後の尊経閣のソンジュンラブレター大作戦(爆)も
さっくりカットされてたんですよね……。どーゆう編集なんだいったい(^^ゞ
コチラのブログではもちろんカットはしませんので(悪徳四人組のどーでもいいシーンはざくざくカットする可能性大ですが(笑))お気軽に覗きにいらしてくださいまし~

あまる #- | URL
2013/08/18 00:13 | edit

初めまして!!  よろしくお願いします。
ずっと読ませて頂いていました。あまる様のがんばりには、頭が下がります。
よくぞ ここまでお話を続けてくださいました。

ネガ イッスル  コダ   って何回も ソンジュンが言ってくれる場面・・
何回も見ました。こうしてお話にして下さると、感激もひとしお!!

私は ユニにぞっこんのソンジュンが、大のお気に入りです。
賢くて、優しい、格好いい(美しい)ソンジュン!!

続きを楽しみにしています。無理なさらずに、あまる様のペースで
書いて下さい。

mutarun #rRQIhdoo | URL
2013/08/17 08:29 | edit

佳郎ソンジュン!

そうさ、密命なんてどうでもいい。
だって最高の花婿候補こと佳郎ソンジュンがいるんだから!ww
甘~~~~い(*≧∀≦*)
ジェシンもヨンハも出てきたのに、あんまり触れることが出来なくてゴメンなさい…
花の四人衆ももちろん素敵!

…でも、ユニソンに浸らせて下さい(>o<")!

ukya #CGSys/Bo | URL
2013/08/17 00:39 | edit

はじめまして、この「僕が君のそばにいる」というシーン凄くいいのに確か先日のBSの放送では、カットされていたはず。なんで~!!叫びたくなりました。

これから、大好きなシーンがたくさんでてくるので、楽しみにしています。

yutorin #- | URL
2013/08/16 22:59 | edit

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