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第十六話 13 言葉より確かな方法 

bandicam 2013-08-14 10-17-20-851
*****************************************



「……ところで、僕もきみに訊きたいことがある」
「なに?」

手にした書物をめくりながら、ユニはちらとも視線を動かさない。

「もういい加減、話してくれないか。あの日、渓谷で………川に落ちる前、僕に何を言おうとしてたんだ?」

ぴたりと、ユニの指先が止まった。だがそれもほんの一瞬で、すぐに彼女は本を閉じ、別の棚へと移動する。

「何か、言ったっけ?」

───は?

そりゃないだろう、とソンジュンはユニを追って狭い書架の間をすり抜けた。

「話を聞いてから行けと言ったじゃないか。まさか、本当に覚えてないのか?」
「そう言われれば、言ったような気もするけど」

ユニは一向にソンジュンと目を合わさず、そらっとぼけている。
まるで蛇の生殺しだ。こうなったら見栄もへったくれもない。しつこいのを承知で、彼は食い下がった。

「頼むから思い出してくれ。僕にとっては大事なことなんだ」
「……口で言わなきゃわからない?」
「わかるわけないだろう。言葉にする以外にどんな方法があるっていうんだ」

ユニはソンジュンに向き直ると、挑むように言った。

「本当に本当に、わからない?」
「だから、さっきからそう言ってるじゃないか。このままじゃもどかしくて───」

言いかけたソンジュンは言葉を飲み込んだ。いきなり、何かひどく柔らかいものに唇を塞がれたのだ。
その瞬間、彼の周囲で全てのものが静止した。
何が起きたのかすぐにはわからず、息をすることはおろか、瞬きすらもできない。

やがて、触れていたのがユニの唇だと彼の頭がようやく理解する頃には、ぬくもりは既に離れてしまっていた。
爪先立っていたらしい彼女の身体が、すとんと落ちる。
ユニは自分で自分の行動が信じられない、という顔をしていた。そして、石像のように固まっているソンジュンが人間に戻るより先に、逃げるように尊経閣を飛び出して行った。

一瞬の出来事だった。くちづけと呼ぶには、あまりに短すぎる接触だった。
かつてソンジュンをあれほど苦悩せしめた、キム・ユンシクの唇。
触れてみたくて、奪いたくて、目が離せなかった。
それが突然、向こうから降ってきたのだ。夢なのか現実なのか未だ判らずに、ソンジュンはただ呆然とその場に立ち尽くしていた。

うるさく詰め寄るソンジュンを一瞬で黙らせたユニからの答え。それは、彼の予想を遥かに超えるものだった。
彼自身は、二人の気持ちの温度差を測りかねて、手を握ることさえ躊躇していたというのに。

彼女は全く正しかった。言葉以外にも、いや、それ以上に、相手の想いを知る方法はあった。というか、こんな方法なら、ソンジュンにとってはむしろ言葉なんかよりずっと歓迎すべきものだ。

だがしかし。

(たったあれだけで我慢しろと?冗談じゃない)

最初の衝撃から立ち直った途端、むくむくと欲の出てきた彼がユニを追いかけようと身を翻した、そのとき。
その行く手を阻む者が、彼の前に現れた。



一方、その頃のユニはといえば。

───どうしよう。

尊経閣の前庭を一人歩きながら、ユニはまだ熱く火照る頬を両手で抑えた。
いつの間にか、あたりはすっかり暗くなっている。
構内の所々に灯された明かりがちろちろと揺れているのを、ユニは見るともなしに眺めた。

いったい自分のどこに、あんな恥ずかしいことをやってのける大胆さがあったのだろう。
それもこれも、みんなソンジュンのせいだ、とユニは彼に罪を着せた。

渓谷でユニが告白しようとしたことを、彼が聞きたがっているのはよくわかっていた。何度か尋ねられるたび、寝たふりをしたり話をはぐらかしたりして胡麻化していたのに。

言葉の持つ儚さを、ユニはよく知っている。口約束ほどあてにならないものはないと、街で働き始めた12の頃、身に染みて学んだ。だから、口に出したりしなくてもソンジュンにはわかっていて欲しかった。
この気持ちを。彼に対する、この、切なくて熱い想いを。

ユニはそっと、指先を唇に滑らせた。
触れ合ったのは瞬きするほどの僅かな時間ではあったが、彼の唇の感触がそこにまだはっきりと残っていた。
知らなかった。彼の唇が、あんなに柔らかくて、温かいなんて。

はしたないとは思いつつも、思い出すとつい頬が緩んでしまう。
次にソンジュンと会うとき、どんな顔をすればいいのやら皆目見当がつかなくて、ユニは困った。

そのときふと、足元に影が落ちた。顔を上げたユニはそこに、見慣れぬ黒い編笠の男が立っているのを見た。


*   *   *


同じ頃、屋根の上で弓を構えた紅壁書───ジェシンは、その背にじっとりと汗を浮かべ、周囲を伺っていた。

広通橋で商人の屋敷を派手に荒らし回っていた偽の紅壁書を、雲従街の手前まで追って来た彼はそこで、先回りしていたらしい官軍兵らに取り囲まれていた。

逃げ道を塞がれたジェシンは弓を収め、兵の只中に飛び降りた。そこへ一斉に飛び掛ってきた兵は皆、剣や槍を振りかざしてはいなかった。かなりの訓練を積んでいると思われる屈強な男たちが、素手で紅壁書に挑んできたのである。どうやら、紅壁書を相手に武器はたいして役にたたないと見て、戦法を変えたらしい。
だがまっとうな武術での格闘ならむしろジェシンの得意とするところだ。次々と掴みかかってくる男たちを華麗な足技と投技でかわし、退路を作ると、彼は隙をついて素早く官軍兵たちから逃れ、駆け出した。

松明を手にした追っ手を、物陰に身を潜めてやり過ごす。と、そこで待ち伏せていたかのようにふいに現れた人影に、ジェシンは思わず身構えた。

「そう驚くなよ、私だ」

軽く手を挙げ、歩み寄ってきたのはヨンハだった。

「広通橋から雲従街は兵判の私兵だらけだ。今夜は私の屋敷に泊まるといい」

頷いて、額から落ちる汗を拭ったジェシンは はっとして自分の右手首を見た。

「腕輪が……!」

ヨンハの顔色が変わる。

「落としたのか?」

わからん、と答えたジェシンは、先程の兵たちとの格闘を思い出し、唇を噛んだ。
奪われたとすればあのときだ。珍しく武器を使わなかった本当の目的はこれか───!

踵を返したジェシンの肩を掴み、ヨンハが引き留める。

「今行くのは危険だ」
「あれは、兄貴の唯一の形見なんだ」
「だからって自分から虎の巣穴に飛び込む気か!」
「───お静かに」

低く響いた声に、二人はぎくりとして動きを止めた。彼等の前に、編笠を深く被った男が、まるで闇の中から浮かび上がるように姿を現した。


*   *   *


連れて来られたのは、何処かの室内のようだった。ようだった、というのは、黒い布で目を覆われて何も見えなかったからだ。自分や周囲に聞こえる足音で、そうと知れたのである。
ようやく目隠しを外されたユニはそこに、ヨンハとジェシン、そしてソンジュンまでがいるのを見た。彼等も恐らくユニと同じように目隠しされ、わけの分からぬままここまで連れて来られたのだろう。揃って戸惑いの色を浮かべ、互いの顔を見交わしていた。

「ここは一体……」

口を開いたのはソンジュンだった。辺りを見回すと、部屋の壁一面に、何かの設計図のようなものが無数に貼られている。
目の前にある大きな机の上には、建物───ひょっとして城だろうか。触れるのを躊躇うほど精巧に作られた模型が置かれていた。
ひょっとすると地下室なのかもしれない。さほど広くはない部屋には窓がなく、ユニの背後には、ここへ来るときに降りてきた階段があった。部屋の様子といい、穏やかでない招待のされかたといい、何か秘密の匂いが立ち込めている。

ゆっくりと階段を降りてくる足音が聞こえ、四人は一斉にそちらを見た。その人物は、足元から順に姿を現した。皮をあてた黒い靴、そして青い道袍の裾、軽く後ろに組んだ両手と、がっしりとした広い肩───そして、最後に現れたその顔を見るや、彼等は肝を潰した。

「手荒な真似をしてしまったな」

そう言って、王は彼等に向かい、微笑んだ。






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2013/08/14 Wed. 22:51 [edit]

category: 第十六話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

cm 8  tb 0 

コメント

Re: ク*ーム*ンナさま

コメントありがとうございます~

王様、けっこー二人のオイシイとこ邪魔しちゃってくれてますよね……
ソンジュンのウキウキ家庭訪問のときもしっかり妨害してくれたし(笑)

不快なんてことはありませんよー(^^)むしろ大歓迎です。
今後ともどうぞお気軽に声かけてやってくださいまし。

あまる #- | URL
2013/08/16 21:51 | edit

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# | 
2013/08/16 10:05 | edit

Re: snowwhiteさま

ご無沙汰ですー(^^)

一大イベントはまだまだありますからダイジョブですヨ!
というか、17話はワタクシにとってユニとソンジュンの絡みはほとんど全部一大イベントですわー。
ますます暑苦しいブログになるかと思いますがヨロシクお付き合いいただけると嬉しいです。

あまる #- | URL
2013/08/15 23:53 | edit

Re:ukyaさま

随分と遅い春になっちゃいまして、ソンジュンにも読者様方にも申し訳ないです(^^ゞ
あの時代の割に、このドラマはどっちかというと女子の方が積極的なようで(笑)
ユニの気持ちもわかったことだし、ソンジュンにはこれからバリバリ頑張って欲しいものです。←何を

あまる #- | URL
2013/08/15 23:49 | edit

Re: あらちゃんさま

> 止まっていた息を復活させる一瞬が死ぬほど好き・・・ヨダレ(爆)

ソンジュンのあのショーゲキの表情、たまらんですね。可愛くて。
慣れてないだけに、アレで火つけられたらもー止まらんでしょう、彼は(笑)

ワタクシもいつまでたっても冷めやらぬ熱に浮かされて早○年。
屋根プリもポゴシプタももちろん好きなんだけど、やっぱり個人的にはソンスのユチョンが一番好きです(^^)

あまる #- | URL
2013/08/15 23:43 | edit

お久しぶりでーす

ご無沙汰している間に一大イベントのところが過ぎていたー!とちょっと後悔中・・・
ああ、このあたりが一番、盛り上がったんですよね~個人的には笑
思い出すだけでニマニマしちゃいます☆

暑い日が続きますが、お体、大切に~

snowwhite #bSUw9.7Y | URL
2013/08/15 08:56 | edit

オーマイソンジュン!

ついに来ました!ソンジュンの春ww
行動から見ると、ユニの方がソンジュンより男前な気が…( ^∀^)
ってか、一瞬の接触でムクムクと欲が…って…もう、ユニの貞操を守る手立てはなくなったと思われます…
go!go!ソンジュン!
男ソンジュンの実力を見せてやれ!ww

ukya #CGSys/Bo | URL
2013/08/15 00:27 | edit

とうとうきましたね~

よかったね、ソンジュン( ̄▽ ̄)
止まっていた息を復活させる一瞬が死ぬほど好き・・・ヨダレ(爆)
この瞬間からユニはソンジュンを追わせるようになるわけですね・・・ソンジュンの頭の中は一色になるし。
DVDじゃなくレコードなら擦り切れてしまうほど見た場面ですけど、16話12、13も擦り切れるほど繰り返し見るでしょう。
ハァ~こんな歳になってこんなに好きでホントどうしよう~。完全にイカレてる自分に苦笑するくらい好きですわ。

あらちゃん #- | URL
2013/08/14 23:59 | edit

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