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第十六話 12 義務と権利 

bandicam 2013-08-13 06-43-07-638

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黄柑製の決勝戦で勝利したのは、ソンジュンだった。
首席が決定するなり、肩を落として正録庁を出て行ったユニが気になり、ソンジュンは副賞の蜜柑の授与もそこそこに彼女を追った。
だがそのユニが足早に向かったのは、尊経閣だった。

「もう、なんてバカなんだろ。こんなことも思い出せないなんて」

『大学』を開いて一人歯噛みするユニを見、ソンジュンの口元は知らずほころんだ。
試験は終わったというのにまたすぐ尊経閣に飛び込む学問好きなところも、あの負けず嫌いも。
これまで女という性には備わっていないものだとソンジュンは思っていた。いや、彼だけではない。この世の男たち誰もが、そう信じて疑わない。
女を馬鹿にしているわけではない。ただそういう生き物なのだと、頭から決めてかかっている。
男に尽くし、子供を産み、育てるのが役割である女には、そういった要素は必要ないからだ。

だがソンジュンは見つけた。ユニという一個の存在を。
今まで見てきた彼女の姿は、女という生き物に対する彼の考えを一変させた。自分にとって好ましい女性とは、美しく、優しく、慎ましやかで、ただひたすら夫に尽くす、そういうものだと思っていた。彼の母のように。
だが女にも、難解な論文や算学を学び、理解する頭がある。男と同じように世の道理や他人の心、自分自身のままならなさに憤り、悔しさに涙する心がある。
その事実はソンジュンを大いに驚かせ、戸惑わせたが、また彼を魅了するものでもあった。
それまでも、キム・ユンシクという儒生の考え方や価値観が自分と違うことに新鮮な驚きを感じ、惹かれてもいたのだが、その理由がやっとわかった気がした。

ユニは、ソンジュンにとって新しいもう一つの“目”だった。彼女を知ることで、今まで自分のいた世界がいかに狭量で、偏見に凝り固まったものであったかを思い知らされた。

本当に大した女だ、と、ソンジュンは自分が賭けに勝利したにもかかわらず舌を巻く思いだった。

───だが。

それとこれとは話が別だ、とソンジュンは気を取り直した。
いくら彼女の才能が惜しかろうと、愛する人の身を危険に晒すわけにはいかない。これは男としての絶対的な義務だ。でなければ。
目の前にいる彼女を、ともすれば押し倒したくなるのを必死で我慢して試験勉強、なんて苦行にも等しいことを、誰が好き好んでするものか。

「こんなところで悔しがってる暇はあるのか?これから退学手続きを取り、増えた荷物をまとめるのは時間がかかる。さっさと始めたらどうだ?」

わざと冷たく声をかけてみる。ユニは書物から顔を上げると、急にしおれて小さな肩を落とした。

「……もう一度だけ、機会をくれない?」

小さな声で、そんなことを言う。
だが約束は約束だ。ソンジュンがそっぽを向いて取り合わずにいると、ユニがぐっと彼に顔を近づけて、言った。

「イ・ソンジュン庠儒、お願い、あと一回だけ。ね?」

細い人差し指を口元に立て、すがるような上目遣いで“お願い”ときた。

(これは、反則じゃないのか?)

顔が、耳の先まで熱くなるのにうろたえて、ソンジュンは思わず後退った。
いくら女とバレたからって、この腹立たしいほどの可愛らしさはいったい何なんだ。

「僕は、成均館に女人がいるなんて承服できない。国法を軽んじるなんて許されざる行為だ」

殊更表情を厳しくしてそう言うと、ユニはたちまち眉根を寄せて泣き出しそうな顔になった。
内心慌てふためいたソンジュンは思わず言葉を継ぐ。

「だが、やむを得ない」
「え?」

彼は完全に籠絡された。彼女のこんな、僅かな仕草や表情ひとつで。

キム・ユニ、きみはなんて恐ろしい女なんだ。

「民に指導するより、親しもうとする役人なら、会ってみたいと思うし。それに、国法も王命も軽んじる命知らずな女を、一人で外に出したらどんな問題を起こすかわかったものじゃない」

自分でも言い訳がましいと思いつつ、体裁を保つために、そんな空々しいことを言ってみる。
ユニはちょっと考えるように二、三度瞬きすると、言った。

「えと、つまりそれって……成均館にいてもいいってこと?」
「ああ」

男の絶対的な義務はどうした、である。

我ながら情けなくなったが、彼はユニのほっと胸を撫で下ろす姿を見ながら、自分は正しいことをした、と思った。
彼女がここで学びたいと思うのは、世の中をひっくり返したいわけでも、現実から目を背けたいわけでもない。家族のため、生活のため、理由はいくらでもあるだろう。だが彼女の根底にあるのは、学問に対する純粋な探究心そのものだ。もっと知りたい、学びたいという情熱を、どうして自分が止めることなどできるだろう。

彼は決心した。彼女が、女とバレる危険と常に背中合わせでもここに居るというなら、自分が全力でその危険から彼女を守ればいい。
今までよりももっと彼女にぴったりと張り付いて、彼女の行動や周囲に目を配り、彼女に近づこうとする不穏な輩は徹底的に排除する。何人たりとも、彼女に触れることはもちろん、必要以上に親しくすることは絶対に許さない。
これは嫉妬とか独占欲とかそういうことではない。(と断言する自信はないがきっとそうだ)
彼女の身の安全を守るため、自分にはそうする義務と権利がある───はずだ。

ちら、とソンジュンは隣で本を物色しているユニを見た。
彼女を守る義務はともかく、権利となると少し心許ない。

彼は今までのことを思い返してみた。自分の方は、ユニに対する想いを何度となく口にしている。はっきりと、あるいは普通の会話に紛れ込ませて、それとなく。だが彼女の口からは一度も、そういう類の言葉を聞いたことがないのだ。
好意を持ってくれているのは、わかる。まだ彼女が女だと知る前、彼に見せたいくつかの涙の理由。ソンジュンの自惚れでないなら、たぶんあれは、そうなのだろう。
だが問題はその好意が本当に、今自分が抱いているのと同じ、男女間に生じる、ある熱情を伴ったものなのか、確信が持てない。
ここに来て今更、あれは友人としての好意だったなんて言われたら、いったいどうすればいい?

知る機会はあった。
渓谷で、断ち切れない苦しい想いをソンジュンが打ち明けたあの時だ。
あの時確かに、彼女はソンジュンに何かを伝えようとしていた。そのユニが、足を滑らせて川に落ちて、女だということがわかって。
それから幾度と無く、ソンジュンは彼女が言おうとしていた言葉を聞き出そうと試みた。実はやっきになっている胸の内を悟られないよう、できるだけさりげなく。だがその試みはことごとく失敗に終わっていた。
何やかやと上手くはぐらかされるうち、試験勉強に追われ、二人きりでじっくり話す時間はなくなり………。
彼女が女だとわかってからも、二人の関係が友人以上のものに進展した気が少しもしないのだ。

ソンジュンは少しばかり焦っていた。
彼女の気持ちがどうしても知りたい。でないと、このままでは手を握ることもできない。

今日こそは聞き出してみせる。
固い決意を胸に、彼は小さく咳払いした。




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2013/08/13 Tue. 06:44 [edit]

category: 第十六話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: shuuyuchun さま

ついに来ましたよ~(^^)
あーほんとここまで長かったですわ。
いくら番外編で最後までいってても、やっぱ本編でソンジュンが幸せでないと!ですもんね(笑)

あまる #- | URL
2013/08/14 23:11 | edit

Re: ukya さま

言動はドSなんですけどね~。結局ユニのいいように転がされてるという(笑)
そーいうところがソンジュンの愛しくてたまらんとこです(*・ω・*)ポッ

> ソンジュン、一時停止にならなきゃいいけどww

一時停止してますね、完璧に(笑)
二人のポッポの回、たった今アップしてきました~。
初々しいソンジュン、出てましたでしょーか……ドキドキ

あまる #- | URL
2013/08/14 23:08 | edit

来ますね、来ましたね♪

ソンジュンというか、ユチョンのあの表情

じっくりとあまるワールドの

ファーストキス(///ω///)♪

待ちきれない~

shuuyuchun #dDm6s.8Q | URL
2013/08/14 00:44 | edit

籠絡万歳!

いやぁ、ソンジュン、完全に言われるがままですね(*≧∀≦*)
ツンデレ…いや、デレデレソンジュンに私も籠絡されちゃいました。
ユニの気持ちが未だに不安だなんて…なんて可愛いの、あなた!ww
ついに来ちゃいますか、ユニが仕掛ける不意打ちの………(///∇///)
ソンジュン、一時停止にならなきゃいいけどww
………いや、あまる様、是非ともソンジュンの初々しさを全面に出してください!(*´∀`)♪

ukya #CGSys/Bo | URL
2013/08/13 13:56 | edit

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