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第十六話 11 黄柑製 

bandicam 2013-08-13 06-11-27-717


**************************************


明けて、黄柑製〈ファンガムジェ〉当日。

試験は、まず筆記の製述〈チェスル〉から始まり、その採点の間、幾つかの組に分かれて講経〈カンギョン〉が行われる。
この講経の試験方法というのが独特だった。
教官の口頭での出題に、いかに素早く札を挙げ、正確に答えられるかを競う、言わば勝ち抜き戦で、中には折角教典を暗記していても一言も発言できぬまま脱落していく者も少なからずいた。
この講経の結果に、製述の点が加算され、次の試験に進むことができるかどうかが決まる。
大方の予想どおり、イ・ソンジュンとキム・ユンシクは他の儒生たちの追随を許さぬ成績で勝ち進み、決勝戦はこの二人の対決となった。

最終決戦は、明倫堂ではなく、正録庁の一室で執り行われた。
成均館の教官全員が見守る中、二人に用意された席には、それぞれ二十枚ほどの破字〈パジャ・漢字を分解したもの〉の札が並べて置かれている。

決勝の問題が破字?と、ユニとソンジュンは虚をつかれて思わず互いの顔を見合わせた。
その二人の前に、チョン博士が進み出る。

「決勝戦の問題は、陛下が出題された」

そう言って、チョン博士は手にした巻物を解き、高く掲げた。

“民に対する役人の正しい心構えを、これらの破字を用いて表せ。ただし正解の原典は、『礼記』第四十二編の朱熹の解釈本とする”

実に素晴らしい、と大司成がにこにこして、言った。

「陛下はこうした問題を作る才能をお持ちです」

ユ博士も、感じ入ったように深く頷く。

「まったくです。『礼記』を暗記するだけでなく、解釈本も読み、尚且つ自身の考えがなければ解けぬ問題です」

更には、朱熹の解釈をこの破字で表せる文字にまとめる、ちょっとした感性も必要だ。
解答方法を破字にするという斬新さと、恐らくは少しの遊び心。そんな王に、七巧〈チルギョ〉が好きでいつも手にしていたという父の姿が重なり、ユニはまた少し心が温められた。
絶対に負けられない、と気持ちを引き締め、箱に並んだ文字札を見つめる。

(『礼記』第四十二編は『大学』だ。『大学』なら……民の徳を高める役人だ)

だが朱熹の解釈はどうだっただろう。民と、役人。言及していた箇所は思い出せるのに、内容は朧げだ。

イ・ソンジュンは、どんな答えを……?

ちらりと、隣を見た。するとソンジュンもこちらを見ていて、互いの目が合った。

「あと一刻で終了だ」

残り時間を告げるチョン博士の声に、ユニは心を決め、破字の札を手に取った。

そして、息詰まるような一刻が過ぎた。

「イ・ソンジュン、キム・ユンシク。答えを出しなさい」

チョン博士の声は静かだったが、そこには僅かな期待と緊張の色があった。

二人の破字を覆っていた布が、同時に取り払われる。
その下から、それぞれひとつの完成された言葉が現れた。

ユニの解答は、「親民」。対するソンジュンの解答は「新民」───。

一見、同じと見まごうほどよく似た言葉だが、その意味するものは全く違っていた。
大司成が説明を促すと、ソンジュンが解答の根拠を述べた。

「僕は『大学』にある、“日々、民の徳を新たにす”を引用し、新民としました。官僚は民を教え導き、新たにせよとの朱熹の解釈を借りました」

続けて、ユニが答える。

「ぼくは……正確には思い出せませんが、『大学』の一節である“賢者は民の好むことを好み、民の憎むことを憎む”を引用し、親民としました。つまり、民と親しむことが、役人の務めと考えます」

二人の解答に、教官たちは揃って頷いた。

「では正解を発表する。ここに記されたものと同じ答えを出した者が、黄柑製の首席だ」

チョン博士の宣言とともに、正解の貼られた額が、二人の前に掲げられた。


*   *   *


明倫堂の裏庭に ぱたぱたと駆けて来たポクトンを、庭石に腰掛けて待っていたヨンハが笑顔で手招きする。するとポクトンは重大任務を負った伝令よろしく、真剣な表情でヨンハに耳打ちした。
なんとこの男は、こんな子供まで手足にするのか、とジェシンはあきれて苦笑いする。
ヨンハがよくやった、とポクトンの頭を撫でた。小さな伝令は嬉しそうにまた駆けていった。

「イ・ソンジュンは民を新たにし、キム・ユンシクは民と親しむ、か」

ヨンハが言うと、「首席は決まったな」とジェシンが頬を上げた。

「テムルとイ・ソンジュンに伝えてやれ。お疲れってな」

ぽん、とヨンハの肩に手を置き、立ち去ろうとしたジェシンだったが、すぐにその行手を塞がれた。
取り巻きを引き連れて彼の目の前に現れたのはハ・インスだった。
ジェシンは胡散臭げにインスを見返した。そう言えばこのところ、この男の姿を見なかったことに思い至ったのだ。
インスは片頬に薄く笑みを浮かべて、言った。

「花の四人衆で黄柑製の首席を争うかと思っていたが、キム・ユンシクとイ・ソンジュン、二人のどちらかに譲るつもりのようだな」
「そういうお前はどうなんだよ」

虫唾が走るというのは単なる比喩ではないらしい、と、ジェシンは首の後ろをばりばりと掻いた。その手首に嵌められた腕輪に、何故か じっと目を凝らしながら、インスは言った。

「───幼稚な試験などより、大事な用があってね」







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2013/08/13 Tue. 06:12 [edit]

category: 第十六話

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