スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
web拍手 by FC2

--/--/-- --. --:-- [edit]

category: スポンサー広告

cm --  tb --  

第十六話 8 中二房、夜の攻防 

bandicam 2013-08-05 12-53-22-853


***********************************


ソンジュンは覚悟を決めた。
ここが正念場だ。腹を括ってやらなければ、おそらく一生自分を許せなくなる。

彼は枕を握り締めると、出来るだけ何気ない風を装い、言った。

「では僕は、先に休ませていただきます」

手にした枕を、寝床の真ん中にきっちりと置き、そこに何食わぬ顔で横になる。

「おい老論」

案の定、ジェシンの尖った声が降ってきた。

「そこは俺の場所だ」
「誰の場所でもありません。寝たもの勝ちだと言ったのはコロ先輩です」

ソンジュンはジェシンの方に背中を向けると、頑なに目を閉じた。
彼が父に告げるいとまも惜しんで早々に成均館に戻ったのはもちろん、ユニの傍にいたかったのと、彼女を守らなければ、という使命感が働いたためではあるが、実を言うと一番の理由はこれだった。
自分がいなければ、中二房はジェシンとユニの二人だけになる。
そんな当たり前のことに考え及ばず、なぜ軽率にも成均館を出てしまったのか、今更のように悔やんだソンジュンだった。

入学したての頃。まだユニが彼等の寝床の真ん中に寝ていたときだ。朝起きると、彼女がソンジュンにぴったりくっついて眠っていたことなどしょっちゅうだった。ユニの顔をした天女がソンジュンの夢に頻繁に出てくるようになったのもちょうどその頃だ。

自分にあんな夢を見させた彼女の柔らかさや温もりが、毎晩ジェシンのすぐ隣に?
冗談じゃない。考えただけで頭の中がグラグラ煮えてくる。

「どけっつってるだろ!」

枕を数回蹴られたが、それくらいは想定内だ。ソンジュンは飛ばされぬようぎゅっと枕を抱え込んだ。
と、ソンジュンの後頭部に叩きつけるように、ジェシンが自分の枕を投げた。彼はごろりと横になって背中を向けるや、力ずくでソンジュンを布団の端に追い出そうとぐいぐい押してきた。
対するソンジュンも負けじと踏ん張り、背中と尻でジェシンを押し返す。
布団の上で、互いに一歩も引かない押しくら饅頭を暫く続けたあと。

痺れを切らしたジェシンが、がばっと起き上がって鼻息荒くソンジュンを睨みつけた。

「何なんだお前!今日はおかしいぞ!」
「おかしいのは先輩の方でしょう」

とそのとき、部屋の扉が開いて、顔を洗いに行っていたユニが戻ってきた。
ソンジュンとジェシンの間に漂う、一触即発の空気に気付いたのだろう。「何してるんですか?」と眉を潜めた。

「別に。お前も、早く寝ろ」

ここで、と、ジェシンは自分の左隣りを叩いて示した。途端にソンジュンは目を剥いた。

「いいえ。キム・ユンシクは」

力いっぱい反対側の布団を引っ叩く。

「こっちで寝るんです!」

只事でない形相で睨み合う二人に、ユニが怪訝な顔をする。その視線に気付いたソンジュンは、急にバツが悪くなり、口の中でもごもごと言い繕った。

「いやその……キム・ユンシクは寝相が悪いので、壁側の方がいいかと……」
「もういい。いつも通りに寝ろ」
「駄目です!」

一向に解決を見ない二人の争いに、ユニが「ちょっと待ってよ」と水を差した。

「自分の寝場所くらい、自分で決めます」

その言葉に、ソンジュンとジェシンが、固唾を飲んで彼女の決断を待つ。
以前にも同じことがあったが、あの時と今とでは状況がまるで違う。ソンジュンは今回ばかりは絶対に、彼女の可愛らしい唇などに惑わされて退くわけにはいかないのだった。

彼はジェシンからは見えないのをいいことに、ユニに向かい、目だけ動かして自分の隣を指し示した。
軽く睨みまで効かせて、“当然、僕の隣を選ぶよな?”と念を送る。だがどういうつもりか、彼女は困ったような顔をしていつまでもぐすぐずしている。

まさか、迷ってるのか?いったいどうして?!何をそんなに考える必要がある?

軽い混乱をきたしたソンジュンが、業を煮やして口を開きかけたそのときだった。
いきなり、枕を抱えたヨンハが慌ただしく中二房に駆け込んできた。

「いっ、今、外で変な音が聞こえなかった?」

戸口にいるユニを押しのけるようにして、ヨンハは布団の真ん中、つまりソンジュンとジェシンの間に無理矢理身体を割り込ませて転がった。

「きっと妖怪だ。九尾狐〈クミホ〉だ、九尾狐!」と言いながら、枕を抱えて固く目を瞑る。

「今夜は、ここで寝る!」

思わず目が合うソンジュンとジェシンである。

「おい」
「先輩」

揃って抗議しようとするが、ヨンハは一切耳を貸さない様子で、ぶるぶる震えて身を縮こませるばかりだった。
笑いを噛み殺したユニの声が、言った。

「それじゃあぼくは、ヨリム先輩の部屋で寝ることにします」

首を竦めるようにして一礼し、彼女は部屋を出て行った。


結局。

その晩、中二房で繰り広げられた寝床争奪戦は、ヨンハの高いびきを聞きながら男三人仲良く就寝、という結果に終わりを見た。それは不毛ではあったが、ある意味円満な決着とも言えた。

どこからか犬の遠吠えが聞こえる。

真夜中の中二房は、むさ苦しく、そして平和だった。


*   *   *


大司成が、山ほどの蜜柑を儒生たちに見せつけるようにして持ち帰ってくると、普段怠けがちな彼等の試験準備にも俄然熱が入った。
正録庁でも、話題は専ら黄柑製である。大司成はにこにこしながら言った。

「皆、実によく頑張っています。おそらく、大科の試験を目前にしても、これほど熱心には学ばないでしょう」
「我々教官がいくら言っても聞かぬことを、たかだか果物ごときが簡単にやってのけるとは……。参りました。全くもって、恥ずかしい話です」

そう言って苦笑いを浮かべたチョン博士に、ユ博士も深く同意して頷く。
だが大司成は、「とはいえ、今回の黄柑製の首席は、イ・ソンジュンで間違いないでしょうね」と身も蓋もない事を言った。「彼は弁がたちますから。講経でも力を発揮するはずです」

すかさず、ユ博士が異を唱える。

「キム・ユンシクも有力候補ですよ。教典を覚えるのは、誰よりも早い」

チョン博士が茶器を口に運びながら、楽しげに微笑んだ。

「キム・ユンシクとイ・ソンジュンの対決か……。これは、面白くなりそうですね」






↓楽しんでいただけたらポチっとお願いします
にほんブログ村 小説ブログ 韓ドラ二次小説へ
スポンサーサイト
web拍手 by FC2

2013/08/05 Mon. 13:05 [edit]

category: 第十六話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

cm 8  tb 0 

コメント

Re:阿波の局さま

ソンジュンのあの目は、たったあれだけで物凄い饒舌にいろんなことを語ってて、
そこがユチョのスゴイとこなんですワ~(*・ω・*)ポッ
ワタシもあんな風に目配せされてみたいデス(爆)

あまる #- | URL
2013/08/07 01:21 | edit

Re: あらちゃんさま

ソンスのお布団シーンはほんとにどれも外せないですよね~。
このあたりからのソンジュンのオタオタっぷりはもー愛しすぎてたまりません。
大射礼の頃のあのカッコ良さはいったいどこに……(笑)

あまる #- | URL
2013/08/07 01:09 | edit

Re: shuuyuchun さま

ユニはユニでビミョーな乙女ゴコロが働いたんだと思いますけどね~。
でもソンジュンにはそれがまったくわからない。
この噛み合わなさが萌え(笑)

あまる #- | URL
2013/08/07 01:02 | edit

Re: ちゃむさま

果たしてヨンハはマジなのかわざとなのか……ちょっと考え込みましたが、彼のタイミングの良さは立派な才能だと思うので、やっぱりマジなんだろうという結論に至りました(笑)
お化け関係にも異様に弱いみたいだし(^^ゞ

コロが実家に行ってユニとソンジュンが間仕切りして寝たのがどうもこの攻防戦の翌日っぽいんですが、その翌日は黄柑製。ってことはソンジュンは黄柑製の2日前に帰ってきたわけで、その更に前日は野遊会。黄柑製の告知が貼り出されたのって、計算するとたったの3日前ってことになるんですよね~。
いくら成均館の優秀な学生とはいえたった3日しか試験準備できないってどうよ、とか思うんですけど。
まードラマですからそのへんの細かいとこつついてもしゃーないか(^^ゞ

屋根プリはイロイロと放置エピソードが多くて確かに少々不満も残るんですが、とにかくユチョが可愛かったからそれでヨシ!と(笑)

あまる #- | URL
2013/08/07 00:53 | edit

>真夜中の中二房は、むさ苦しく、そして平和だった。

こういう何気ない一文があまるさんのお上手なところで。ぷぷぷ・・・
読むたびに一人でにやけてしまいます。

ヨンハは本当にいつもいいタイミング(?)で飛び込んできますよね。

ソンジュンの目で合図を思い出し、またひとりにやけてしまう・・・

阿波の局 #3FtyQ0do | URL
2013/08/06 19:58 | edit

お布団シーン♪

お布団の敷かれてるシーンはどれも大好きです!
この辺からもうユニの方が上手になってますよね、完全に。ソンジュン翻弄されちゃって、まぁ。
ソンジュンが一生懸命に視線送っても、わかってて従わないユニ。

>まさか、迷ってるのか?いったいどうして?!何をそんなに考える必要がある?
気の毒だけど、真剣なだけに笑える。ソンジュンの戸惑いがすっごくよく伝わってきてこの短い一文がメチャ気に入ってしまいました。

あらちゃん #- | URL
2013/08/06 02:08 | edit

あの視線が大好き

来ましたよー♪
ソンジュンの懸命の目配せ!!

でも、素直に従わないユニー~

イイですねー、イイですよ~
女とわかってからの、カランのがんばり

ファイテン!!

shuuyuchun #- | URL
2013/08/05 14:14 | edit

何度見ても面白い

この場面はホント、ぷぷって笑っちゃいますよね。ヨンハ、グッドタイミング!でも、次の日からはどうしたんだろう?屋根プリやっと見終わりました。よかった〜切なくていいおはなしでしたね。朝鮮時代でイ・ソンジュンとかぶるかな?って思ってたんですが、そんなことなくてユ
チョンは上手ですね。地上波のぶちぶちカットと朝鮮時代の謎解きがやっつけ仕事感がでてた気がするのが残念でしたがとても楽しかったです。さて、こちらも謎解きが始まりますね、続き楽しみにしてます。あまるさんの捏造は、どれも違和感なく大好きです。頑張って!

ちゃむ #- | URL
2013/08/05 14:11 | edit

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://amaru0112.blog.fc2.com/tb.php/232-06576d70
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

2017-08
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。