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第十六話 1 岩陰 

bandicam 2013-07-22 18-47-58-469
******************************


気付くと、ユニは川岸の岩の上に横たわっていた。
酷く咳き込んだせいで、息をするのが苦しかった。思わず胸元に手をやると、いつの間にかそこがはだけ、白いサラシが露わになっていた。はっとして衿を掻き合わせ、身体を起こす。すぐ傍に、青褪めた顔で座り込み、茫然自失しているソンジュンがいた。

ユニと同じように全身びしょ濡れで、その顎からはまだ雫が滴り落ちている。
彼はゆっくりと視線を上げると、震える声で言った。

「キム・ユンシク、君は……きみは、女だったのか……?」

ぱっ、と、咄嗟にユニは彼に背を向けた。

知られた。
彼に、女だとばれてしまった。
頭が真っ白になっていた。振り向いて、もう一度彼の顔を見るのが怖かった。

彼はきっと私を責めるだろう。
女の身で、国法を犯し成均館に入学したこと。彼にずっと嘘をつき、騙していたこと。
好きだと言われて、それでもなお、真実を話さずに彼を苦しめたこと。

言葉を失い、背を向けたまま衿元を固く握りしめているユニの耳に、場違いなほど陽気な歌声が聞こえてきた。
見ると、すっかり酔いの回っているらしいドヒョンやウタクたちが、ミョンシクら少論の連中まで引き連れて、千鳥足でこちらにやって来るではないか。

ユニは乱れた服の衿を、急いで直そうとした。だが気が動転しているせいか、指はもつれて少しも上手く動いてくれない。こんな簡単なことが、どうして?と焦れば焦るほど、帯紐は緩み余計に乱れていく有様だ。
ドヒョンたちの歌声はどんどん近づいてくる。途方に暮れて手を止めたそのとき、いきなり腕を掴まれた。
そのまま、引っ張られるようにして岩陰へと連れて行かれる。

ごつごつした岩肌に背中を貼り付けるようにして、しゃがみ込んだ。
ユニのすぐ隣には、ソンジュンの怜悧な横顔がある。
彼は、ユニと目を合わそうとしなかった。唇を引き結んだ厳しい表情で、反対側のドヒョンたちの様子を伺っている。

(やっぱり怒ってる……よね)

ユニはたまらなく悲しくなって、震えだしそうになる唇を噛み締めた。
どんな言葉も、きっと言い訳にしかならない。自分のやったことは、彼が常に重んじてきた礼と法を、踏みにじって唾棄しているにも等しいのだ。

ソンジュンは軽蔑して、私を嫌うだろうか?

彼の気配を全身で感じながら、ユニは切なく思った。
だがどのみち、彼はユニから離れようとしていたのだ。
彼に辛い想いを抱かせたまま別れるより、きっとこの方がいい。彼は何も悪くない。だから、苦しんではいけない。
彼に軽蔑され、憎まれて、苦しむべきなのは、罪を犯した自分なのだから、と、ユニは胸の痛みを逃すようにぎゅっと衿元を押さえた。

「おお、ここなんか良くないか?見ろ、この景色!」

頭の上から、そんな声が降ってきた。儒生たちはよりによって、ユニとソンジュンが隠れている岩の真上にやってきたようだった。
ユニは反射的に、ソンジュンの方に身を寄せた。彼の、衿の合わせから覗く胸元が目の前にあった。どきりとして、そっと顔を上げる。驚いたことに、ソンジュンもユニを見ていた。あの切れ長の涼し気な瞳が、戸惑ったような色を浮かべて彼女をじっと見下ろしている。

前にも同じ事があった、と、そんな場合ではないにも関わらずユニは呑気に思い出した。
出会ったばかりの頃だ。雨の中を官軍に追われて、岩陰に身を潜めた。
彼の大きな手に口を塞がれて、身動きがとれなくて。濡れた服を通して伝わってくる体温と、微かに漂ってくる彼の香り。そして目の前にある、かたちの良い喉仏。理由もわからず、頭がくらくらした。

今にして思えば。

あの瞬間にはもう、惹かれていたのかもしれない。
一目惚れなんて信じてはいなかったが、自分の中で恋に落ちる用意は既にあったのだ。あのときに。

「待て待て。あっちの方がいい。もう少し先に行こう」

このときばかりは、ドヒョンのダミ声がユニには天の助けにも思えた。一行は再び移動を始め、調子外れの歌声は頭の上から次第に遠ざかっていった。

一気に緊張が解け、詰めていた息を吐き出す。
ほとんど抱き合うようにして寄り添っていた二人は、互いに気まずい表情でぎこちなく身体を離した。



「さっきはありがとう。……助けてくれて」

黙ったままのソンジュンの背中に向かい、ユニは言った。言いながら、どっちのことだよ、と胸の内で自嘲する。
川に落ちた自分を助けたこと?それとも、他の儒生たちの目から隠してくれたこと?
相変わらず、ソンジュンには助けられてばかりだ。これでは、いい加減彼がうんざりしたって文句は言えない。

「ぼく……そろそろ戻らないと」

ユニは笠の紐を結ぶと、ソンジュンの顔を見ないようにして、足早に彼の横を通り過ぎようとした。少しでもそちらを見たら、また泣いてしまいそうだったからだ。
すれ違いざま、ソンジュンの手がユニの肩を掴んだ。振り向くと、彼の思い詰めたような瞳がそこにあった。

「このまま、きみを帰せというのか?───僕にはできない」



*   *   *


一方、ビョンチュンとコボンを川に投げ入れてさんざっぱら虐め倒し、ほんの少しウサを晴らしたジェシンは、ユンシクを連れて帰ろうと渓流まで戻ってきていた。
だが、そこに彼女はいなかった。

「キム・ユンシク!もう帰るぞ!」

ジェシンの声が、誰もいない川原に響き渡る。一人で、そう遠くへ行くはずもないのにと、辺りを見渡しながらジェシンは舌打ちした。
儒生たちが宴会を開いていた場所まで引き返してみたが、彼女はまだ戻っていないようだった。既に焚き火や天幕を片付け、帰り支度を始めていた儒生たちの誰に訊いても、キム・ユンシクを見ていないという。

「あいつ……いったいどこ行っちまったんだよ」

苛立つジェシンの肩を、閉じた扇子の先でぽんと叩く者がいた。今朝いつの間にかいなくなって以来、山では全く姿を見かけなかったヨンハだった。

「テムルなら心配いらないよ」
「無事なのか?どこにいる!」

掴みかかるようにして尋ねるジェシンに、ヨンハは「質問は一つずつにしてくれないかなぁ」と、のんびりと言った。

「姿を見たわけじゃないけど、元気だよ。今頃はたぶん、元同室生のいる書院に行ってる」
「何?」
「イ・ソンジュンの竹亭書院だ」

ヨンハは扇子の先をジェシンの顎に添え、ちろりと上目遣いで彼を見た。

「心配なら行ってみるか?直接その目で確かめるといい」

顔を顰めたジェシンは、うるさそうにヨンハの扇子を払いのけると、不機嫌に言った。

「行かねぇよ。あいつが無事ならそれでいい」

ふい、と背中を向けたジェシンを、ヨンハは意味ありげな笑みを浮かべ、見つめた。






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2013/07/22 Mon. 19:08 [edit]

category: 第十六話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re:じ**2さま

なんと!BSと同時!そーだったんですね~(・o・)
ドラマは一時間で一話終わっちゃうから、同時進行は多分この一瞬だけですね!(笑)
楽しんでいただけましたら幸いにございます~

あまる #- | URL
2013/07/23 17:03 | edit

Re: あらちゃんさま

ソンジュン、ここから先はどんどん壊れていきますからね~(笑)
ユニまっしぐら。モーたまりません。

>岩陰のシーンのソンジュンのお手てが可愛くて好きです。

あそこねー。ワタシも書きたくて、ソンジュン目線で書こうかどーしようか、あの手のせいで最後まで迷ったんですワ。

でもあそこだけソンジュンのキモチ入れても妙に中途半端になりそうだしなーと……。
あまるが下手だからってのもあるんですが、映像を文章にする難しさをめためた感じる部分です。
後で、回想シーンとかでどーにかして入れよーかと画策してます、今のところ(笑)

>一緒に立ってるだけでどっかいかがわしい雰囲気あるのはヨンハのせい?

それは当然デスッ!だってヨンハがいかがわしい人だから!( ̄^ ̄)キッパリ

あまる #- | URL
2013/07/23 16:58 | edit

Re: ちゃむさま

ソンジュンに比べてユニもコロも異様に生命力強し!まるでG……モゴモゴ

まー当時はまだ人工呼吸なんて救命法はなかっただろうし、
胸元はだけさすくらいがせいぜいの対処だったのかも、と考えると
あんまりソンジュン責められませんが(笑)
ホント、あのままユニが目覚まさなかったらどーなってたんだろ。
ソンジュン、腰抜かしたままコチラの世界に帰ってこなくなってたかもね~(^^ゞ
よかったねスンドル!←そっち?

あまる #- | URL
2013/07/23 16:44 | edit

Re: 夢*さま

やっときましたヨ~。いやー長かった。
ソンジュン、2年も待たせちゃいました。どんだけ……(^^ゞ

ここはソンジュン目線で書くか、ユニ目線で書くか結構迷ったんですけど、
結局あーなりました。
ソンジュンの方の詳しい胸の内は、おいおい出てきますので、また読んだってください~。


あまる #- | URL
2013/07/23 16:34 | edit

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# | 
2013/07/23 07:56 | edit

きましたねー2

ホントについにきましたねー。
この辺から先は、ソンジュンの壊れっぷりに私も毎日意味もなく顔が笑けてしょうがない(笑)明日仕事中絶対思い出し笑いする ←すごく気持ち悪いらしいです
壊れてもしょうがないですね、私じゃなく、ソンジュンが。彼にとっては天地がひっくり返ったようなものでしょうから。
岩陰のシーンのソンジュンのお手てが可愛くて好きです。初めて女装のユニに出会った時とおんなじで、手の置き所に戸惑う感じが女慣れしてなくて超可愛い。( ̄▽ ̄)
ヨンハの扇子使いも大好き。コロがパシッと払う感じも。
この2人が一緒にいるとやっぱりちょっと絵になるなぁといつも思います。
一緒に立ってるだけでどっかいかがわしい雰囲気あるのはヨンハのせい?
いかがわしいの大好き。( ̄▽ ̄)

あらちゃん #- | URL
2013/07/22 23:09 | edit

きましたねー

ついにばれてしまいました。思いっきり戸惑うソンジュン、ドラマ見てる私ら傍観者は待ってました!ですけど…でも、戸惑いすぎてあーた、救命活動は放棄かよ!って、ユニがどうにかなったらどーすんのよ。さすが生命力半端ないユニは自力復活。よかったわー。さー、ユニロールはもう少し。楽しみです。

ちゃむ #- | URL
2013/07/22 21:53 | edit

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# | 
2013/07/22 20:33 | edit

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