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第十五話 11 渓谷 

bandicam 2013-07-18 16-53-58-043
*************************************



その頃、ヨンハは月出山近くの妓楼にいた。
両脇に妓生を侍らせ、優雅に酒盃を傾ける彼を、向かいに座るスンドルは不思議なものでも見るようにぽかんと口を開けて眺めている。
ヨンハはスンドルのぽっちゃりした手に幾らかの金子を握らせると、言った。

「いいな?私の指示通りに、上手くイ・ソンジュンを呼び出してくれ」

スンドルが眉を寄せた訝しげな顔で訊き返す。

「それで本当に、坊ちゃんの病が治るんですか?」
「もちろんだ。イ・ソンジュンの病を治すのに、私ほどの名医はいないよ。あいつの病名を教えてやろう。“恋煩い”ってやつだ」
「こ……恋煩い?」

うちの坊ちゃんが恋を?あの女っけのない成均館で、いつそんなひとと知り合ったんだろう?

しきりに首を捻るスンドルに、ヨンハは「ま、いろいろあってね」と笑った。


*   *   *


仲間以外の人の目がないからか、それとも山の空気がそうさせるのか、川岸の宴は、酒房での男たちを見慣れているユニでさえ呆れるほどの盛り上がりを見せていた。
歌い踊るくらいはまだ序の口で、奇声を発しつつ服を着たまま川に飛び込む者や、挙句の果てに水の中で相撲を取り始める者までいて、一体男たちはこれだけの元気を普段どうやって押し込めているのだろうと逆に感心してしまう。

そんな馬鹿騒ぎの中、少し離れたところで一人静かに読書に耽るユニの姿は、彼等の方からすれば奇異に映ったのだろう。ドヒョンら例の三人組が、何やら含み笑いしながらじりじりとユニに歩み寄ってきた。

「おいテムル、こんなところで本なんか読んでたら、目を悪くするぞぉ」

「え?」と思わず後退る。ヘウォンとウタクが、すっかり酔いの回った赤ら顔で腕まくりした。

「我らがテムルの視力が落ちちゃ大変だ」
「水の中でじゃぶじゃぶ洗ってやるか」

───川に放り込む気だ!

危機を察したユニは辺りを見回したが、どこへ行ったのかジェシンの姿は見えない。彼女は兎のようにぱっと飛び上がるや、一目散に逃げ出した。

「あっ、こら、テムル!」
「なんだよー。一緒に遊んでやろうと思ったのに……あれ?」

茂みの向こうを透かし見たヘウォンが、言った。

「あいつら、なんでテムルの後を?」

ユニが逃げて行ったのを追いかけるようにして、こそこそと現れたビョンチュンとコボンの姿が森の中に消えて行くのを見、三人が首を傾げたときだった。

「おい、キム・ユンシクはどこだ?」

振り返ると、ジェシンがそこに立っていた。

「たった今、ビョンチュンたちと、あっちに……」

ウタクが指差す。
ジェシンは さっと顔色を変え、弾かれたように駆け出した。


*   *   *


渓流に沿って、森の奥へと入っていくユンシクの後をこっそりとついて行きながら、ビョンチュンが呟いた。

「……やっぱりおかしい。泳げないからって、水に入るのをあそこまで嫌がるか?フツー」

がさがさと茂みを掻き分けて、コボンが顔を出した。

「ないない。俺だって怖くないのに」
「ありゃ絶対、上衣を脱げない身体なんだ。そうに違いない」
「じゃ、じゃあまさかテムルが……」

「紅壁書だ」と、ビョンチュンが、確信に満ちた顔で頷く。

「掌議のいない間に俺たちで紅壁書を捕まえるぞ。掌議もきっとお喜びになる。あいつを、水の中に突き落とすんだ。ドボーンと」
「そして服を脱がす!」

ほくそ笑んだ二人は、舌なめずりでもしそうな目つきで獲物の後を追うのだった。


一方。

「早く、早く来てください坊ちゃん!奥様がお待ちです」

スンドルがソンジュンを急かして連れてきたのは、書院近くを流れる渓流のほとりだった。麓とは反対の方角である。辺りを見渡しながら、ソンジュンは怪訝な顔で尋ねた。

「……本当に、こんなところに母上がいらしてるのか?」

途端に、スンドルはまるまると太った身体を小さくして黙り込んだ。

彼は元来、嘘がつけない性質なのである。どうにかここまでソンジュンを連れ出すことには成功したものの、主人を騙しているという後ろめたさに耐えるのもそろそろ限界のようだった。

スンドルはひしとソンジュンに抱きつくと、泣き出しそうな顔で天を仰いだ。

「天地の神様!どうか見逃してください!坊ちゃんの病気を治したら、スンドルは地獄にだって行きますから!」
「何をやってる」
「ここに、成均館の皆さんが来てるんです。坊ちゃんの病気を治したいなら連れてこいと、ご学友のヨリム坊ちゃんが」

ソンジュンの頬が強張った。成均館は、今の彼の傷そのものだった。その名を聞いただけで、まだ乾ききっていない傷口がじくじくと疼きだした。

彼はスンドルからさっと身を引くと、踵を返した。

「余計なことをしたな。帰るぞ」

元来た道を引き返そうと足を踏み出した、そのときだった。

「坊ちゃん!確かにここです!ほら、あれ!きれいな学士様じゃないですか?」

首を巡らすと、少し離れた川岸にぽつんと立つ人影が見えた。間違えようもない。その華奢な佇まいは確かに、キム・ユンシクだった。

彼の姿を見た途端、ソンジュンは金縛りにあったかのように、そこから動けなくなった。
最後に会ってからまだほんの数日しか経っていないのに、酷く懐かしい気がした。
憂いを帯びた横顔、白く細いうなじの線。水面に反射する陽の光が彼の周りでゆらゆらと揺れて、まるでソンジュンをいたずらに誘うかのようだ。

と、一枚の絵のようだったその光景に、邪魔な人影が二つ、割り込んできた。ユンシクの更に向こうの茂みに身を隠すようにして彼の方を伺っている、ビョンチュンとコボンだった。

ソンジュンは我に返ったようにユンシクから視線を引き剥がすと、言った。

「行こう。僕には、もう関係ない」


*   *   *


───静かだな……。

それほど離れているわけではなかったが、酔って大騒ぎしている儒生たちの声も、ここまでは聞こえてこない。
鬱蒼と茂る森の木々が、あちらとこちらを遮断し、まるで別世界のようにしているのだ。

ユニは川岸に突き出た岩の端に腰を下ろした。足を伸ばしても水面には届かなかったが、すぐ下に見える水の流れとその音は充分に涼しげで、そうしているだけで気分が良かった。

大きく息を吸うと、清冽な山の気が自然と身体に満ちてくるようだ。
あまり気乗りしなかった野遊会だが、来て良かったと思った。
ソンジュンは今もきっと、こんな気持ちのいい場所で、冷涼な風に吹かれながら静かに書物を読んでいるのだろう。
そう思うと、少しだけ慰められる気がした。

ユニが、胸に淡く残るソンジュンの面影にしんみりと浸っていたとき。
突然、背後でがさりと物音がした。はっとして振り返ると、すぐ近くの茂みが風もないのにそこだけ大きく揺れていた。

(イノシシ?───ひょっとして熊とか?)

慌てて立ち上がる。その拍子に靴が片方脱げて、ぽちゃんと川に落ちてしまった。
辺りを見渡したが、拾うのに使えそうな木の枝もない。ユニは仕方なく、小舟のようにぷかぷかと流れていく靴を追いかけて、道袍の裾をはためかせた。





********************************

あまるですどうもこんにちわ。
拍手のお礼ページ、どーもコロの登場が多くないかとのご指摘を受けましたので(笑)数えてみました。
結果、今のとこ全30ページ中、ソンジュン16、コロ11、ヨンハ3、ユニ6 となっております。
(ごめんよヨリム先輩。そのうち増やすから(^^ゞ)
合計とページ数が合わないのは、二人一緒の画像も各キャラの一枚としてカウントしているためです。
とゆーわけで局さん、それはアナタ様のコロたんの引きが強いせいに他ならないのですヨ!(笑)
今回、4枚ほど別テイストのものを追加しましたので、お暇な方は探してみてくだされ~。



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2013/07/18 Thu. 16:59 [edit]

category: 第十五話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: ちゃむさま

そらもーウハウハですよ、ウハウハ!!(爆)
いっそのこと悩んだ3枚、全部載っけちまうかと思ったくらいです。

あーこっから先はキャプ絵選ぶのほんと大変そうだぁ~(悦)

あまる #- | URL
2013/07/22 01:05 | edit

ドラマ終盤に入りユチョンの演技が本当に素晴らしいですよね。ひとつひとつの表情、どれをとっても。画像選択も悩みどころ、わかります。でも、うはうは楽しんでるあまるさんが見えるよう…ソンジュンの嬉しくてさけびだしたいけど我慢してる笑顔がみれるのはすぐそこです。

ちゃむ #- | URL
2013/07/21 10:53 | edit

Re: あらちゃんさま

この次の回、たった今アップしたんだけど、キャプ画像どれにしようかほんと悩みました。
他有力候補としてはソンジュンがユニを見つけたとこと、真実がわかってガーン、ってなってるソンジュンの図。
そんなこんなで結果、アレになったわけなんですが(笑)

あーこれも、ユチョンの表情が良すぎるせいだわ~。
まったくあの野郎は罪な男だ!(でも好き)←バカです

> あ、でも、私の日常も大差ないけど(爆)

それはワタシもです( ̄^ ̄)
やっぱりビョーキだったんですね、ワタシ。立派なソンジュン煩いww
なんかこーゆちょ見てるときって、アドレナリンやらプロラクチンやら、いろんなもんがピュッピュ出てる気がしますもの。

たたっと走ってってヒシッ!のシーン、あんなんでよろしかったでしょーか?ビクビク
ソンジュンの久々の笑顔まであともー少し!頑張ろ~。

あまる #- | URL
2013/07/19 01:49 | edit

病ですね~

ユチョンの表情ほんといいですよね~。とくに目。

脳の本で、恋煩いと強迫神経症は構造が一緒、と読んだことがあります。
強迫神経症の強迫観念とは「考えないでおこうとしても考えずにはいられない、意識からどれだけ追い払っても追い払うことができず、自分の意志で消し去ったり忘れたりすることができない」・・・やはりこのときのソンジュンは本当にイコール病いですね。
あ、でも、私の日常も大差ないけど(爆)
この次に待っている、思わず走っていってヒシッと抱き締めるシーンが大好き(よだれ)です。
私にはキスシーンと同レベルの萌えポイント。
今から楽しみで楽しみで、仕方ありませんです。

あらちゃん #- | URL
2013/07/18 21:42 | edit

Re: 阿波の局さま

イエイエ、こちらこそ俊足のコメント、ありがとうございますー(^^)

このあたり、ソンジュンのビジュアルが最高潮なときですね。
ちょっとやつれてるせいカシラ(笑)ユニを見るときのあの表情、ワタシもホント好きです。

あまる #- | URL
2013/07/18 17:56 | edit

ソンジュンの痛みが

怒涛の更新、ありがとうございます。
嬉しいやら、慌てるやら・・・

私のOS(脳みそってことです)はもう古いし処理能力は落ちてるし、遅いし・・・大変なんです。
咀嚼にとても時間がかかります。

世間では、シア君のお祭り状態らしいですが、ぜんぜん追えてません。
とってもかっこいいとかかわいいとかすんばらしいとか聞こえては来るんですけど。

ところで・・・この渓谷での場面も美しいですよね。
ソンジュンの心の痛みがなおさら際立って私も心を痛めながら、ハラハラしながら見た記憶があります。

ユニを見つけたときのあの表情。
印象的です。

阿波の局 #3FtyQ0do | URL
2013/07/18 17:14 | edit

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