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第十五話 10 野遊会 

bandicam 2013-07-17 18-06-10-346

******************************


斎会の後に行われる野遊会は、一泊二日の日程で行われる。
成均館の寄宿舎生活の中で、泊まりがけで遊びに行ける行事など他にはないから、儒生たちは当然、朝から大はしゃぎだ。お祭好きのドヒョンを先頭に、大声で歌いながら月出山へと出発する一行は、もう既に酒が入っているのじゃないかと疑いたくなるくらいの騒ぎっぷりである。

そんな彼等とは裏腹に、ヨンハは正録庁の裏手でげんなりと天を仰いでいた。さっきから大司成が彼の手をぎゅっと握りしめたまま、一向に離してくれないのである。

「頼みましたよ。必ずやイ・ソンジュンを連れて帰ってきてください」
「どうでしょうね。何しろ、頑固な男ですから」

大司成の分厚い座布団のような両手からようやく自分の手を抜き取ることに成功し、ヨンハは半笑いで答えた。
すると、大司成の眉がたちまちきりりと吊り上がった。

「君はク・ヨンハでしょ!君ならできる!信じるんです!私の政治人生が、辺境を転々として終わるか、華やかな中央の舞台で幕を閉じるかは、すべて君にかかってるんですからね!だからこの通り、頼みましたよ」

哀れっぽく言って、またヨンハの手を握りにかかる。彼は慌てて、塀の向こうを指差した。そこにはちょうど、並んで歩くジェシンとユンシクの姿があった。

「では私はこれで。急がないと、作戦会議がありますので」

大司成の「頼みましたよー!」という声を背中に聞きながら、ヨンハはあたふたと二人の元へ走っていった。


伝香門へと歩いて行くジェシンとユンシクには、すぐに追いつくことが出来た。だが声を掛けようとしたヨンハは一瞬、それを躊躇った。
こんな風に少し距離を置いて改めて見ると、彼等の様子は、つい今しがた出て行った連中とは明らかに違っていた。

ソンジュンの退学がまだ尾を引いているのだろう。小さな肩を落とし、とぼとぼと俯きがちに歩いて行くユンシクと、その隣で歩調を合わせながら、彼に時折気遣わしげな視線を送るジェシン。
いつものように後ろから不意打ちで飛びつくのはなんとなく憚られて、そっと近づいたヨンハは ふわりと二人の肩を抱いた。

「おいおいテムル、まだそんな浮かない顔してるのか?野遊会じゃなく、まるで死にに行くみたいだぞ」

ユンシクを覗き込んでそう言うと、桃色の唇が微かに微笑んだ。

「ケチらずにもっと笑えよ。お前の笑顔見たさに、天下のムン・ジェシンが、らしくもなく初めて野遊会に参加しようってのに……もがっ!」

いきなり、ジェシンの手がヨンハの顔にびたんと張り付いた。勢い余って、そっくり返る。

「朝っぱらからベラベラうるせぇんだよ、お前は」

ヨンハは笠の位置を直すと、にっこりと凝りない笑顔を浮かべた。

「そう怒るなって。ひとつ計画があるんだ。きっと楽しめるよ。さ、行こう!」


*   *   *


その日は天気にも恵まれ、野遊びにはいい日和だった。月出山の渓谷を流れる川の水は冷たかったが、長い距離を歩いてきた儒生たちは到着するなり、服を脱ぎ捨て、汗ばんだ身体を次々と水の中に投げ入れた。
目のやり場に困ったユニは、木陰に座ると、持ってきた本を広げ、ひたすら文字を追った。

日差しが、川面に反射してきらきらと眩しい。こんな日に、冷たい水に全身を浸すのはきっと気持ちがいいだろう。
想像することしかできないユニは、水飛沫を上げてはしゃぐ男たちを少しばかり羨ましく思いながら、小さくあくびをした。

「おいテムル、座ってないでお前も来い!」

ひとしきり水の中でふざけあっていたミョンシクたちが、ユニに向かい手まねきする。ぎょっとしたユニは半裸の男達を見ないようにしながら、慌てて首を振った。

「ぼ、ぼくはいいです」
「なんだ、お前まさか泳げないのか?」
「え?ああ……はい」

川になど入ったことがないからわからないが、泳ぎ方は確かに知らない。

「なら、いい機会だ。教えてやるから来い」
「ほ、ほんとに結構ですから!」
「こいつは風邪気味なんだ。ほっといてやれ」

いきなり頭の上からそんな声がして、ユニは窮地を脱した。見上げると、そこにいたのはジェシンだった。
彼は木の枝に突き刺した芋を「ほら」と彼女の目の前に差し出した。こんがりと焼けたそれは、ユニの鼻先で香ばしい匂いを放っていた。

ユニがにっこり笑って手を出そうとすると、ジェシンははたと思い立ったようにそれを引っ込め、ふうふうと息を吹き掛けたり、扇で扇いだりして冷ました。

普段、粗暴な言動の多い彼は、ややもすると良家の家柄の子息だということを忘れそうになる。
だが、おそらくは愛情深い家庭で、きちんと育てられた人なのだろう。こんな風に、彼がたまに見せる細やかな気遣いに胸を温められるたび、ユニはそう思う。暴れ馬なんて呼ばれてはいても、本来はとても繊細で、優しい人なのだ。

これでよし、とばかりにまた芋を差し出したジェシンは、微笑みを浮かべて見つめるユニの視線に戸惑ったように、ふいと目を逸らした。

「……熱いから」

まるで言い訳のようにそう言うのが可笑しくて、ユニはつい、笑ってしまった。

「先輩は、きっといい夫になれますね」
「バ、バカ。何言ってんだ」

照れたように笑うジェシンから、芋を受け取り、両手で割る。いい匂いのする湯気が、ほかほかと立ち昇った。
齧り付いたユニは、芋を頬張る自分をジェシンがじっと見ているのに気付いた。
煤でもついていたのだろうか、つと伸びてきた彼の指先が、頬に触れそうになる。反射的に身を引くと、ジェシンは はっとしたように手を下ろして、あらぬ方を向いた。

「……それにしても、ヨンハの野郎はどこ行ったんだ?」

小さく舌打ちして、すたすたと何処かへ行ってしまう。

(───やだ。何意識しちゃったんだろ、私……)

ふざけてジェシンに触れられることなんて、今まで何度もあったのに。

ユニは手の甲で、これでもかというほどごしごしと頬を擦った。






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2013/07/17 Wed. 18:10 [edit]

category: 第十五話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: ちゃむさま

あのおイモふーふーでいったいどれだけのコロ煩いが萌死したんだろーか……(笑)
しかしユニ!「いい夫になりますね」っとか言ってコロを舞い上がらせといて
触られそうになったら避けるなんて、なんてなんて罪なことを~(T_T)
ソンジュン贔屓のワタクシですらあれはしどいと思ったわ~。

あまる #- | URL
2013/07/22 01:01 | edit

ジェシンのこの芋を冷ましている姿やばかったですね。ユニじゃなくてもキュンときます。ジェシンでいいじゃん。と初めて思ったの憶えています。ふふ。この後、ジェシンにはどんどん辛い展開が…しかし、反比例してますますファンが増えていくという…今後の立ち位置を決意するジェシンはもう少し先ですね。

ちゃむ #- | URL
2013/07/21 10:32 | edit

Re: あらちゃんさま

触ってる……というか、触ろうとしてる(笑)
確か大射礼の時にも、ヨンハのお尻撫で回し事件があったから、
ヨンハはこのときは咄嗟に防御したんでしょうね。

うーん。一番危険なのは大司成かも……(-_-;)

あまる #- | URL
2013/07/17 19:42 | edit

気になること

この回で一つ気になっていることがあります。
あまる様の書かれた中にはなかったのですが、大司成って、ヨンハの尻を触らなかった?

せっかくコロのいい場面ある貴重な回なのに、これかよ!って感じですが、気になる。大司成って、あっちの気もあるのかしら?クスクス…

あらちゃん #- | URL
2013/07/17 19:34 | edit

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