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第二話 4 嘘の始まり 

「ここに、試験場を汚す者がいます!」

 会場の視線が、一点に集中した。その中心に、高々と右手を挙げているイ・ソンジュンがいる。
初試に引き続き試験監督官として臨席していた成均館博士、ユ・チャンイクがまたか、と顔を顰める。
ユ博士が即座に月台を駆け下り、ソンジュンの席へと向かうのを確認してから、チョン・ヤギョンは静かに王に歩み寄り、一礼した。

「左議政の息子、イ・ソンジュンです」

 王は黙って頷くと、口元に穏やかな微笑を浮かべ、成り行きを見守った。


「試験場を汚す不届き者は誰か!」

 ユ博士の高らかな声が試験場に響き渡る。ソンジュンが立ち上がり、短く答えた。

「私です」

え?とユニは俯いていた顔を上げた。

「彼の試巻を汚してしまいました。新しいものをご用意いただきたい」

 ユニは自分の目の前に広げてあった試巻を見た。さっきソンジュンに声を掛けられたとき、筆を落としてしまっていたらしい。汚した、と言えば確かにそうかもしれないが、これはほとんどこじつけだ。
 訳がわからなくなって、呆然としていたユニだったが。

「では確認が必要だ。号牌を見せよ」

 監督官の言葉に、腑に落ちた。巨擘のつもりで試験場に入ったユニは、受付こそ済ませているものの、自分自身が試験を受ける気などさらさらない。依頼人の名前で答案を書いたら、それをこっそりすり替え、他の受験生たちに紛れて会場を抜け出す算段だった。だが依頼人は他ならぬイ・ソンジュン。まともに巨擘(というのも変だが)の仕事なんてさせてもらえるはずがないし、ここまで注目を集めてしまっては、ごまかすことも無理だ。

 わざわざ新しいものに取り替えさせた答案用紙が提出されていないとなれば、当然、不信に思われるだろう。しかも今回は親臨試。不正は絶対に見逃してもらえない。
 ソンジュンは、ユニに試験を受けさせるつもりなのだ。キム・ユンシクの名で。

ユニは抗議の目でソンジュンを見上げたが、彼の涼しい顔はそのままだ。ユニはそこに、思い切り爪を立てて引っ掻いてやりたい衝動にかられた。彼は知らないのだ。ユニが実は女であり、ユンシクの名で科挙を受けることは、巨擘と同等、いや、もしかしたらそれ以上の重罪になることを。
 
 ユニが躊躇っていると、監督官が声を張り上げた。

「早く号牌を出さぬか。身分を確認できなくば、試験を受ける気がないものとみなし、入門蹂躙として棒叩き100回となるが、よいのか?!」

 警邏隊の三叉槍が、ユニの喉元に突きつけられる。なんてことだろう。結局、何をしてもしなくても、罪を犯すことになるとは。
 ユニは震える手で、袂からユンシクの号牌を出した。

「南山村の……キム・ユンシクです」

 崖っぷちに立っていたユニが、谷底に向かい、自ら飛び降りた瞬間だった。



 その日は少し雲が出ていて、日差しは穏やかだった。風も、初試のときほど強くなく、木々はざわめくこともなく静かに佇んでいる。まさに科挙日和、といってよかった。
 筆先を整え、真新しい試巻に向かったユニは、だが、まだ一文字もそこに書けないでいた。
 問題は、さほど難しいものではない。だがこのまま、普通に試巻を文字で埋めて、万が一にも受かってしまったら?ユニの犯す罪は、留まることを知らず深くなってゆくばかりだ。
 
迷っている間にも、周りの儒生たちは次々と答案を書き終え、席を立つ。気がつくと、試験会場は座って答案を書いている者より、空席の方が目立つようになっていた。

そうだ、あまり時間もないし、いっそこのまま───

「白紙提出は、棒叩き100回だったな」

ユニの心を読んだかのように、背後から声がした。振り向くと、ソンジュンが腕を組み、じっと両目を閉じてそこに座っている。答案はあらかた書き終わっているようで、見ようによっては、墨が乾くのを悠然と待っているように見えなくもない───が。

 あれは監視だ、とユニは歯噛みした。ちゃんと答案を書いて提出するまで、見張るつもりなのだ。
 ユニは筆をとった。
 
 見てなさい、イ・ソンジュン。そうそう、あんたの思い通りにはさせないから。

 ユニのそれは、意地、というより、ほぼヤケクソに近いものだった。
 
 試巻に向かい、猛然と筆を走らせ始めたユニの背中を、ゆっくりと目を開けたソンジュンが見つめる。
 彼はかすかに口角を上げて微笑むと、自分の答案の見直しを始めた。





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2011/08/09 Tue. 11:40 [edit]

category: 第二話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: 阿波の局さま

このシーンはほんと、地味に好きなとこです(^^)
文才だけじゃなく、あのユニの負けん気の強さにソンジュンが惚れたんだと思うとね~(笑)

あまる #- | URL
2013/01/30 08:31 | edit

このあたり、見ていて?と思うところがところどころ(号牌を出し渋るところとか)あったのですが、あまるさんの文章で納得!!です。


>見てなさい、イ・ソンジュン。そうそう、あんたの思い通りにはさせないから。

この負けん気な感じ。いいですねv-238
ラストの二人の関係が、ここで暗示されているようです。

阿波の局 #bo5zNM.6 | URL
2013/01/29 19:01 | edit

Re: ちびたさま

あの目瞑って「某叩き100回……」って呟くソンジュンはワタシもお気に入りです(笑)
あそこで初めて、ほんのちょっとですがソンジュンが笑うんですよね~
あれで見事に堕ちました、ワタクシ(爆)

あまる #- | URL
2012/05/05 00:14 | edit

あまるさま

この、親臨試のシーン、第2話のつぼでした。
あの、ユニちゃんの後ろに座っていたイ・ソンジュン君子の嬉しそうなドs顔ったら(爆)

そしてあまるさんの文章を読んで思わず『そうだったか!』と目からうろこだったのが、後ろで眼を閉じながらさらっという『棒叩き100回』(やっぱりドs)
実は、私はこの棒叩きはイ・ソンジュン君子の嘘だったんじゃないか?って思ってました。
なんとか試験を受けさせるための方便。

でも、後ろで監視しているという方がすんなり納得。
イ・ソンジュン君子の性格なら嘘付くよりも監視する方がぴったりですものね。

そこに負けてないユニちゃん。
あんた、ほんまにええ女や~~(笑)

ちびた #D4zl0nFc | URL
2012/05/03 13:34 | edit

いらっさいまし~

> shinさま

こんばんわ~(^^)はじめまして。
拍手コメに引き続き(笑)コメありがとうございますっ!

> 成均館スキャンダルは 「宮」以来の嵌りドラマです。

にゃは~ワタシもです。間に「イケメンですね」がちらっと入ったりもしてますが。(^^ゞ
しつこく文章にしてまでほじくり返してるのはソンスが初めてです。
巷は猛暑なのにますます暑苦しくて申し訳ないですが、よろしくお付き合いくださると嬉しいデス。
また遊びに来てくださいね~

あまる #- | URL
2011/08/13 23:49 | edit

No title

あまるさま はじめまして。

拍手コメで投稿しようとしたら 1行目で送信されてしまいましたので改めての挨拶です。
よろしくお願いします。

成均館スキャンダルは 「宮」以来の嵌りドラマです。
まだ カットだらけのBS放送でしか観たことが無くこちらのお話 とてもうれしいです。

続きを楽しみにしています。
猛暑の中 お体にお気をつけください・

shin #- | URL
2011/08/13 12:40 | edit

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