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第十五話 7 重荷 

bandicam 2013-07-12 02-33-41-659


**************************


───君が好きだ、キム・ユンシク。

僕のこの想いのせいで、君を非難させたりはしない。君の前に現れることも、もう無い───


人けの無い尊経閣で、ユニは繰り返し、ソンジュンの言葉を思い返していた。
そして、去って行く彼の、今にもくずおれてしまいそうな危うい背中。
それは常に、実力に裏打ちされた自信に満ち、時に尊大ですらある彼が、初めて見せた弱さだった。

彼をそんな風にしたのは自分だと思うと、ユニは己の肉を刃物で抉り取られるような痛みを感じ、思わず両手で胸元を押さえた。

「罰が当たったんだね……。世間を欺いた罪の報いだ」

天は、罪人に容赦無い。罰を受ける者にとって、何が最も過酷なのかをちゃんと知っているのだ。




西日が、格子窓から斜めに差し込んでいる。その金色の帯の中を、無数の細かな塵がゆっくりと漂っているのを見、ジェシンは顔をしかめた。
大量の蔵書を擁するここ尊経閣は、いつ来ても埃だらけだ。一歩足を踏み入れただけで、くしゃみが出そうになる。
ここにある本を全て読破した彼が、それでもなお、この場所に足を運ぶのは。

あの、チビのせいだな。間違いなく。

少し奥まったところにある閲覧用の机の前に、ぼんやりと座っているユンシクを見つけ、ジェシンは心の中で小さく溜め息をついた。

どういう目的があったのかは知らないが、大胆にも女の身で男だらけの成均館に入学し、いい年をした男たちですら音を上げる講義、試験、また講義の毎日に、必死で食らいついている少女。

女みたいに、妙に線の細いやつだと思っていた。どうせ耐えられなくてすぐに出ていくだろうとも思っていた。
その、キム・ユンシクという儒生を、彼らしくもなくどうにかして守ってやりたいと思うようになったのはいつからだろう。
本当は女だと知り、しかも彼女が、ジェシンの兄ヨンシンと共に死んだキム・スンホン博士の忘れ形見だと知ってからは尚更だ。ユンシクは、ジェシンが己の命に変えても守らなければならない存在になった。

だが、このところの彼女は、端で見ているこっちの胸が痛くなるような顔ばかりしている。
その原因が、あの忌々しい老論の野郎だと思うにつけ、やりきれなさがつのる。
あの野郎の取り澄ましたお綺麗な顔を、思い切りぶん殴ってやりたいと思うジェシンだが、彼女はそんなことを望んではいないだろう。だからこそ余計に腹が立つのだ。

───俺はいつからこんなお人好しになったんだ?

心の中で独りごちながら、ジェシンはユンシクの真横に立った。素知らぬフリで、声を掛ける。

「随分と、深刻そうだな」

ちらりと目を落とした。笠のつばから透けて見える顔は、俯いたままだ。

「邪魔だってんなら、行こうか?」
「先輩」

立ち去ろうとした背中を、ユンシクの声が引き留める。

「ひとつだけ───訊いてもいいですか?」

ジェシンは無言のまま、近くにあった椅子を片手でさっと持ち上げ、ユンシクの正面に置いた。椅子の背を前にして、どかりと跨る。組んだ両腕に顎を乗せると、座っているユンシクと丁度目の高さが同じになった。

さっさと言え。何でも聞いてやるから。

そんなジェシンの心の声を、ユンシクは聞き取ったのかもしれない。じっと見据えると、強張っていたユンシクの表情が、ほんの少しだけふっと和らいだ。

「先輩は、ここの書物を全部読んだんですよね。だったら───こういうときは、どうするのが正解ですか」

言い淀むように唇を湿して、彼女は続けた。

「ぼく……ある人に嘘をついたんです。その人はぼくの嘘のせいで重荷を背負ってしまい、長年の夢も諦めようとしてるんです」

ユンシクは言葉をとぎらせ、顔を伏せた。「それで?」とジェシンが促す。

「正直に話したいんです。本当のことを話して、もう荷を下ろしてもいいって言いたいけど、たぶん、手遅れなんです。ぼくのことを、許してくれない気がして……怖くて」

そこでやっと、彼女はジェシンを見た。縋るような瞳だった。

「ぼくは、どうしたら……?」
「悩むなよ」

即座に、ジェシンは答えた。

「正直に伝えればいい。“悪かった、許して欲しい”って、お前の心を見せてやれ。今、俺にそうしたみたいに」

小さく首を振り、ユンシクは言った。

「ぼくのついた嘘があまりに大きすぎて、簡単には許せないと思います。事実を話したら、その人がぼくから永遠に離れてしまうかもしれません。それが怖くて……勇気が、出ないんです」

ちくりと、ジェシンの胸に刺すような痛みが走った。
こんなにも彼女に想われている男が、無性に羨ましいと思った。だが皮肉な事にその男は、自分の幸せに少しも気づいちゃいないのだ。

「好きなのか?……そいつが」

そう訊いてしまったのは、ほんの僅かな可能性を期待してのことだったかもしれない。
だが彼女は、急に狼狽えたように目を泳がせて「それは……」と言葉を濁した。

答えは、それだけで充分だった。
ジェシンの心は、恐らくそのとき、決まった。

「誰だ?……チョソンか?」

そうする事が、ずっとお前のそばで、お前を守り続けるための唯一の方法なら。
俺はむしろ喜んで、お前の嘘に騙され続ける。


ジェシンの問いに、ユンシクは口元だけで微かに笑った。





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2013/07/12 Fri. 02:39 [edit]

category: 第十五話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

cm 6  tb 0 

コメント

Re: ねーさま

>原作ではもう少しガサツな人物像のように思えましたが、ユ・アインが演じたことで品とセクシーさが加わったように思います。

ですねですね!(^^)
原作はひたすらワイルドな男でしたが、ドラマはナイーブさが絶妙に加味されてて、あれは
アイーンじゃないと出せなかったコロの別の魅力だと思いますー。

あまる #- | URL
2013/07/22 01:14 | edit

この頃のこのコロには萌えます。
ユニを見つめる目があまりに切なくて、「コ、コロぉー(涙)」と画面に向かって呼びかけずにはいられません。(←アホ)

原作ではもう少しガサツな人物像のように思えましたが、ユ・アインが演じたことで品とセクシーさが加わったように思います。

守る男、コロ。

今後もカッコよく書いてくださるとのこと、楽しみにしています!

ねー #- | URL
2013/07/22 00:04 | edit

Re: ラプンツェルさま

ご訪問&コメントありがとうございますー(^^)

ジェシンは想いが実らなくて可哀想な分、めちゃめちゃ格好良くしてあげたいっていつも思いながら書いてますので、そう言っていただけるのはとっても嬉しいです。ありがとうございます。
たぶんこの先、ソンジュンはどんどん恋愛ボケしてカッコ良さからは程遠い男に成り下がっていくと思いますので(爆)そっちはジェシンにお任せとゆうことで(笑)

あまる #- | URL
2013/07/13 01:04 | edit

Re: 阿波の局さま

いてててて……←とんこつくん?(爆)

>ジェシンはお人よしになったんじゃなく、ユニへの想いに苦しむことによって成長しましたよね。

デスね~。
ソンスの公式ガイドブックによると、脚本家さんはジェシンに、怒りよりも愛が世の中を変えることを学んでもらいたかった、みたいなことを言ってて、物凄く納得したんですよね~。
あのドラマが単なるドタバタのラブコメに終わらなかったのは、四人それぞれの成長する過程がきちんと描かれてたからなんじゃないかなーと思います。キャラクターの一人一人にちゃんとドラマが用意されてるというか。
ワタシがこのドラマにこんだけ惹かれるのも、(ユチョが出てるからってのももちろんありますが(笑))そのへんのテーマの深さにあるのかもしれませんです。

あまる #- | URL
2013/07/13 00:57 | edit

ドラマを見てるより細かい部分がわかって、ジェシンがいい男だなって思いました。ソンジュンとユニが両思いで満足してた私が、切ないジェシンの気持ちをよんでるうちに、応援したくなったし幸せになって!って思いました。

ラプンツェル #nRUwMK42 | URL
2013/07/12 18:41 | edit

>罰を受ける者にとって、何が最も過酷なのかをちゃんと知っているのだ。
あ・いたたた・・・。どうぞお許しを・・・

いえ、それはともかく・・・

ジェシン、男前。惚れる・・・(でも、ソンジュンが好き。ごめん。)
ジェシンはお人よしになったんじゃなく、ユニへの想いに苦しむことによって成長しましたよね。
もともと優しいけど。

命をかけてもいいと思えるほどの人に出会えた悦び。
守るためなら、一緒に嘘つきになってやる。騙されたふりをする。

>ジェシンの心は、恐らくそのとき、決まった。
この、何でもなさそうな一文が、効いてますね。

阿波の局 #3FtyQ0do | URL
2013/07/12 14:20 | edit

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