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第十五話 6 悪縁 

bandicam 2013-07-09 22-51-47-177

*******************************


ポドゥルが、床についているヒョウンの額に絞った手拭いをのせた。
うっすらと目を開けたヒョウンは、枕元に座る父に向かい、弱々しく口を開いた。

「今回のことは、全部私のせいですから……お父様」

言うなり、苦しげに咳き込む娘を、ウギュは「わかっとるわかっとる」と宥める。

「結納の日に具合が悪くなるなんて……私ったら、ソンジュン様になんてご迷惑を……」
「気に病むな。この私が左議政様に土下座してでも、破談にはせん。娘よ、養生するんだぞ」

そう言って、ウギュは腰を上げると、ポドゥルに後の世話を言い置いて部屋を出ようとした。
ちょうど、入れ違いに妹の様子を見に来たらしいインスを、「休ませてやれ」とそのまま連れ出す。


「一体、どういうことですか」

ウギュの部屋で父と向かい合ったインスが、尋ねた。

「ヒョウンが急に熱を出してな。婿殿は医者を呼びに行ったそうだ。結納は延期だ。娘が原因だから、左議政様に面目が立たん。まったく、娘を嫁がせるのがこんなに大変だとは」

父の、苛立たしげに文机を叩く指先に目を遣りながら、インスが言った。

「ところでイ・ソンジュンですが……医者を呼びに行ったにしては、連れて戻ったわけでもなく、婚約者の見舞いにも来ていません。我が家を侮っているのでは?」
「何だと?」

あるいは、とインスは薄く笑った。

「私たちの知らない二人だけの秘密がある……そうは思いませんか、父上」




父と兄が部屋を出て行った途端、ヒョウンは布団をはねのけて起き上がった。慌てたポドゥルが、落ちた手拭いを拾い上げる。

「おとなしく寝ていてください、お嬢様。仮病だってのがバレますよ」
「破談なんて……冗談じゃないわ。駄目よ、絶対に駄目!」

悪夢を頭から払い落とすかのように、ヒョウンは両手を頬にあて、激しく首を振った。

「ソンジュン様は残酷だわ。ねぇポドゥル、あの人はどうしてそこまで私を嫌うの?あんな見え透いた嘘で破談にしようだなんて……」
「お嬢様……」

幼い頃から、蝶よ花よと大事にされてきた彼女である。人からああもはっきりと拒絶される経験など皆無に等しかったのだ。
周囲の誰にとっても一番の存在になることなど有り得ない。そんな当たり前のことを理解できないのも、無理はなかった。
ほんの少し、彼女を哀れにも感じたポドゥルだったが。

「このまま諦めたりできるもんですか。いいこと?ポドゥル。ソンジュン様からは破談を言い出さないはずだわ。私に恥をかかせないために。だから、このことは絶対に秘密よ」

他人の同情すら寄せ付けないこのしぶとさ。
お嬢様は確実に旦那様の血を引いている。そのことを、ポドゥルは改めて悟ったのだった。


*   *   *


「兵曹判書の娘の具合が悪いそうだな」

叱責を覚悟して文机の前に座っていたソンジュンは、そう切り出した父の顔を思わずまじまじと見返してしまった。

「結納を延期するより、婚礼の日を早めることにした。準備しておきなさい」
「───あちらからは、何の話もなかったのですか?」

怪訝な表情で息子を見た父に、ソンジュンは居住まいを正した。
ここではっきり言っておかなければ、きっとまたうやむやにされてしまう。今の彼には、親同士の思惑に流されるつもりは毛頭なかった。

「ハ・ヒョウン嬢には、破談を伝えました」
「破談?」

たちまち、父は白い眉を逆立てた。

「結婚を急いだのはお前だ。責任を放棄する気か?お前は、そんな人間だったのか?」
「申し訳ありません、父上。しかしこれが僕の、彼女に対する責任の取り方です」

愛せないことがわかっているのに、芙蓉花と結婚するわけにはいかない。それは自分ばかりか、彼女をも不幸にしてしまうだろう。
絶句する父に向かい、ソンジュンは己の意志の固さをきっぱりと告げた。

「結婚はしません。絶対に」



自室に戻ると、スンドルが「おかえりなさい」と立ち上がってソンジュンを迎えた。部屋はすっかり片付き、代わりに、スンドルの周りには柳行李や風呂敷包みがいくつも並んでいる。

「書院に運ぶ荷物はまとめておきました。明日は長旅になりますから、今夜は早めに休んでください。旦那様がお呼びなので、おれはこれで」

彼なりに主を気遣っているのだろう。スンドルにしては珍しく無駄話もせず、大きな身体を丸めるようにしてそそくさと出て行った。

荷物を見渡したソンジュンはふと、一枚の青い衣が風呂敷包みに入れてもらえず隅に押し遣られているのに気付いた。
ずるずると引っ張り出し、広げる。
それは、小科試験のときにソンジュンが着ていたあの快子だった。裾には、ユンシクの記した漢詩が、少しも色褪せることなくくっきりと残っていた。
なんとなく捨てるにしのびずそのままにしておいたので、スンドルも荷物に入れるべきかどうか、扱いに困ったのだろう。

不思議なもので、その文字を見た途端、ユンシクと出会った頃から今までのことが鮮やかにソンジュンの脳裏に蘇ってきた。共に笑い、共に泣いた成均館での日々が一気に押し寄せてきて、軽い眩暈さえ覚える。

ソンジュンは暫くの間その端正な文字をじっと見つめていた。
絹の青さが、目に染みた。
やがてきちんと快子を折りたたむと、風呂敷包みのひとつを開けて、中に入れた。

女々しいのは承知の上だ。
だがこれくらいはきっと、自分に許してもいい───。

痛む胸の片隅で、彼はそう思った。


*   *   *


「───きれいな学士様のことですか?」

ジョンムの部屋で、スンドルはできるだけ身を小さく縮めるようにして座っていた。
特に悪いことをしたわけでもないのに、この旦那様に呼びつけられると何故かいつも叱られるのではないかとびくびくしてしまう彼である。

「兵曹判書の家へ行く前に、確かに会ったのだな?」

ジョンムはスンドルの小さな目を射るように見据え、静かに尋ねた。

「はい。お屋敷に着いたときに、坊ちゃんと会ってます。……それが何か?」
「その儒生は……同室生といったか?」
「はい。以前坊ちゃんが成均館に入学させた方です。縁といえば縁ですね」

小科の、親臨試〈チルリムシ〉。息子ソンジュンが、南人の学士を受験させ、大胆にも王を試した、あの───?

「試験場で巨擘に雇った者か?」
「そうです。“キム・ユンシクの名で科挙を受けろ。巨擘にしておくには、惜しい文才だった”」

と、ソンジュンの声音を真似て、かかか、と笑う。

「お二人を物語にしたら、並の小説より面白いですよ」
「……その者の名は、キム・ユンシクというのか?」
「はい。キム・ユンシク儒生です」

それは、ジョンムの記憶に新しい名だった。杖打大会で、ソンジュンが身を呈して兵判の息子の殴打から守った儒生。素性を尋ねたジョンムに、大司成は驚くべきことを口にしたのだ。

『彼は、成均館の元博士、キム・スンホンの息子です』

ジョンムは眉間に深い皺を寄せ、呟いた。

「キム・ユンシク……なんという悪縁か……」






*************************

あまるですどうもこんにちわ。
この回、ちょこっとウソ警報。
例の、ユニが漢詩を書いたソンジュンの快子ですが、ドラマではそれをソンジュンがどうしたのかまでは描かれてません。(少なくとも完全版では、ですが(^^ゞ)
もしソンジュンがヒョウンとホントに結婚するんだったら、気持ちにケリをつけるためにも処分しただろうなと思うのですが、ソンジュン、カミングアウトした後だし(笑)この時点ではユニとの思い出だけに浸って世捨て人のように生きていこうかというダメダメな状態なんではと思うので、かなり迷ったのデスが、敢えて未練たらしい方向で書いちゃいました。
別のご意見もあるかとは思いますが、あまるんちのソンジュンはこーゆうヤツなんだということでご理解いただければ幸いです(^^)




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2013/07/10 Wed. 00:00 [edit]

category: 第十五話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: あらちゃんさま

推測するにソンジュン、ヤサグレモードに入ってから時々あの快子取り出してじーっと見てたんかも(笑)
で、スンドルもそれを知ってたから、荷物に入れるべきかどーか迷っちゃって、置きっぱにしてたのかなーとか。

ヒョウンは立ち直り早いと思います、絶対(笑)でもって逞しい。
そうじゃないと、この後のことも考えるとマジで可哀想すぎる(^^ゞパパ島流しだし。

あまる #- | URL
2013/07/11 01:31 | edit

Re: 阿波の局さま

お気遣いありがとうですー。
エコとか節電とかゆう言葉は(∩゚д゚)キコエナーイ 罰当たりなあまるです(爆)

> 見た気がする・・・

快子を手にとってウルウルしてるとこ(多分に妄想の怖れアリ)までなんですよね、ドラマでは。
あの後、果たして書院にまで持ってったのか?アレは置いてヨリム進呈の春本は持ってったのか?
などなどイロイロ疑問が……(笑)

あまる #- | URL
2013/07/11 01:18 | edit

Re: ちゃむさま

ご無沙汰ですー(^^)
お忙しいのにお越しいただけて嬉しいです。
まだ7月も上旬だというのに、物凄い暑さですが(^^ゞくれぐれもお身体ご自愛を~。

つか、なんかもう全て読まれてる……(笑)
我ながらこのムラッ気のあり過ぎな指が恨めしいですが、
ソンジュンの幸せのために頑張るデスよ!(`・ω・´)ゝビシッ!

あまる #- | URL
2013/07/11 01:06 | edit

絹の青さが目に染みる

あ~~こんなに更新されている~(と悲鳴。マジに)

思わず15話DVDセットして見返しました。もちろんちゃんと快子は荷物の一部にありますよ~(^O^) 但し、やはり風呂敷の外だったので、スンドルとしても荷物に入れるか迷ったんでしょうかね。
私だったら例えほかの人と結婚してもとっとくと思う。これは唯一ユニの残したものだから、ソンジュンにとってはユニそのものでしょう。ユニへの思いが捨てられない限り、この快子だってもちろん捨てられません。取り出してみてはスリスリして涙流すかは知らんけど(笑)

>お嬢様は確実に旦那様の血を引いている

毎回あまる様の文章で目からウロコが落ちる私ですが、この回ではヒョウンについてのこの評価に「うおっ」と思いました。
そーか、そーですよね。同情モードに入った私は一段上からとうとう振られちゃてかわいそうに、なんて思ったりしてましたが、流石に強いわけですね~。ただのお嬢様じゃなくてハ家のお嬢様ですもんね。

・・・ジョンム、ホントに人を見る目がない。原作のジョンムはユニも怯える怖さがあったけど、こちらのジョンムは時々ただのじーさんに見えてしょうがなかったです。ソンジュンよくぞ老害を振り切りましたね、あと少しの辛抱だにゃん。

あらちゃん #- | URL
2013/07/11 00:35 | edit

そうでしたっけ???

あまるさん、怒涛の更新お疲れ様です。
ありがたいです。嬉しいです。でも、無理しないでくださいね。暑いですし。

嘘警報の件。
そうでしたっけ?読んでいるときは、全然違和感なくその場面が頭に浮かんできましたよ。
見た気がする・・・
気のせいか???

あの快子はソンジュンにとって思い出の品ですし、手紙をやり取りしていたわけでもない二人にとっては、唯一ユニの筆跡、詩を残した物ですから、捨てるに捨てられないかと・・・

でも、ソンジュンだから思いを断ち切るために捨てたかなぁ・・・
もしそうだったら、破談にした時点で必死に探しに行きそうだし・・・
ぶつぶつ・・・

阿波の局 #3FtyQ0do | URL
2013/07/10 15:07 | edit

ご無沙汰しました

ちょー久々のコメントですm(_ _)m毎日過酷な労働でクタクタな私(T . T)いや、ホント、売れっ子芸能人並。(さすがに言い過ぎか)でも、ちゃっかり信号待ちのわずかな時間だったり、薄暗い駐車場でおにぎりかじりながら読んでました。あまるワールドに浸りきれない哀しさ…蜜月のエロさに実は私もかなりエロ好きと再認識したり、怒濤の更新に早くソンジュンを幸せにしたくて頑張ってるあまるさんを想像してクスクス笑ったり…いや、はたから見たらかなり怪しいが車なので(^_^)v暑さも加わってピーピー言ってますが、一段落しそうなのでまたコメントさしてもらいます^_^夏本番、ご自愛下さいね

ちゃむ #- | URL
2013/07/10 11:41 | edit

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