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第十四話 12 斎会 

bandicam 2013-06-19 00-15-06-963

**************************************


ソンジュンが求婚書の入った袱紗を差し出すと、兵曹判書は高らかな声を上げて笑った。

「私の人生に、ついにこの時が来たのだな!このハ・ウギュと左議政様が、親戚となる日が!」

すぐ目の前にいるのに、この男はどうしてこんなに割れんばかりの大声で話すのだろう。

きちんと姿勢を正して座すソンジュンの胸には、ウギュに対する拭いようのない不快感があったが、ちらとも顔には出さず、軽く頭を垂れた。

「いいかね、婿殿。人間にとって最も難しいのは、頭を下げる術を身につけることだ。君の家と肩を並べるまで、私も随分と努力してきたものだ。君は婿として完璧だが、頑なすぎる。息子となるからには言うが、世間に立ち向かっては損だ。肝に命じておきなさい」

兵曹判書は訳知り顔にそう言って、手振りでソンジュンに茶を勧める。
ソンジュンは素直に茶器を手に取り、一口含んだ。
神妙な娘婿の態度に気を良くしたのか、彼はいかにも上機嫌に人差し指を立てて、言った。

「今私は君に、出世に役立つ秘法を伝授しているのだ。結婚祝いとしてな」

そしてまた、声を上げて笑った。
ソンジュンはただ、この苦痛でしかない時間が早く終わることだけを、ひたすら願っていた。



「本当に夢のようです。ここで、初めて若様〈トリョンニム〉にお会いしてからずっと、自分が物語の中にいるみたい」

帰宅するソンジュンを門の外まで送りながら、ヒョウンが上気した頬を両手で押さえた。
彼等の数歩後ろでは、スンドルがポドゥルに何かとちょっかいをかけ、けたけた笑っている。
ヒョウンが、胸の前に組んだ手をもじもじと遊ばせて、ソンジュンに尋ねた。

「婚礼は、寒くなる前に挙げた方がいいですよね?」

そんなに早く?
ソンジュンは思わず足を止め、眉を曇らせた。その反応に気付いたヒョウンが慌てて、言葉を継いだ。

「あ、いえ……それより、初雪の降る頃にしましょう───ああ、でもやっぱり、春の花が咲く頃がいいですね。実は、私もそう思ってたんです」

ヒョウンの声は、何故か聞くたびにソンジュンの気持ちを重くさせた。
そのとき、するりとソンジュンの腕にヒョウンが手を絡ませてきた。ソンジュンはほとんど反射的に、その手を振り払ってしまった。
ヒョウンの傷ついた表情に、しまったと思う。

「───すみません」

取り繕う言葉すら何も思い浮かばず、ソンジュンは言葉少なに詫びた。
ヒョウンはぎこちなくではあったが、微笑んで、俯いた。


*   *   *


自宅に戻ったソンジュンは、その足で真っ直ぐ父の部屋へと向かった。
父イ・ジョンムは、文机を挟み暫くの間無言で息子と向かい合っていたが、やがて言った。

「結婚間近の男の顔ではないな。妻の実家と付き合う難しさを知ったか」

ソンジュンは返す言葉もなく目を伏せる。ジョンムは手にしていた茶器を置き、小さく笑った。

「お前が兵曹判書を気に入らないことは、わかっておる。欲深く、目的のためには手段を選ばぬ男だ。お前の目には、卑怯に映ることもあろう」
「では、何故……」
「お前のためなら、どんな手も尽くす人間だ。義父としては悪くない」

それを、甘んじて受けろと?
娘婿のために義父が何をやっても、たとえそのやり方が気に入らないとしても、知らぬふりをしろと?
それは、卑怯とはいわないのですか、父上───。

朝廷での地位と、権力。国を思うように変えるためには確かにそれは必要だ。けれど、自分の信念を曲げて得ることのできた権力で、果たして本当に自分のやりたいことができるのか、ソンジュンには疑問だった。
だが、心臓が急速に冷え固まっていくような感覚が、それ以上ソンジュンに考えることを許さなかった。

疑問など持つな。僕の人生は、初めからこうと決まっているのだ。
老論の長の息子として、党派の強大な力を維持するために。
成均館でキム・ユンシクと過ごしたあの眩しい日々は、束の間に見た儚い夢に過ぎないのだ───。

「父上、僕は……」

ソンジュンは顔を上げ、父に告げた。

「───結納を済ませたら、成均館を出ます」


*   *   *


翌日。

斎会は、物々しい雰囲気の中始まった。
正面の議長席には、儒生たちの上疏によって復権した掌議ハ・インスを真ん中に、斎任であるク・ヨンハと、ナム・ミョンシクが座している。
中央に設けられた被疑者席を挟み、向かい合うようにして儒生たちの席がずらりと並ぶ。
被疑者席に座るのは当然、ユニとジェシンだ。

インスは、一同に会した儒生たちを見渡すと、告げた。

「本日の斎会は、ムン・ジェシンとキム・ユンシクの男色事件を審議の議題とする。男女有別は儒教の基本である。礼と法を尊ぶ成均館で、男色は許されざる大罪だ。よって我ら儒生一同は、この斎会で罪が事実と認められた場合には、二人の名を青衿録から削除し、科挙と出仕の道を断ち、その不道徳を罰する。同時に除名処分とし、成均館の名誉を守る」

審判員である儒生たちが、「そうだ、除名しろ!」「成均館の名誉を守れ!」と、儒罰〈ユボル〉を与える『罰』の札を掲げ、口々に叫んだ。
ユニは、隣に座るジェシンが彼等に激しい憎悪の目を向けるのを見、そっと宥めるように彼の握り締めた拳を抑えた。

インスが二人を見据え、言った。

「二人に訊く。あの晩、享官庁で不適切な関係を結んだのは事実か?」
「いいえ、違います。ぼくたちは……」

嘘はついていない。だが真実を話すことはできない。
ユニはインスの目を見返し、ただ「信じてください」と言う他はなかった。

「違うのなら、あの晩享官庁で何をしていたのか、皆の前で事実を話せ」
「ぼくたちは……ぼくたちはただ」

言いよどむユニに、儒生たちがざわつき始める。やっぱり男色だ、儒罰は確定だという声が、針のようにユニの全身を刺した。

「───では、目撃者の証言を聞こう」

インスが、最前列に座るソンジュンを見た。ユニもつられてそちらを見る。彼の静まりかえった表情からは何の温かみも感じられない。
ソンジュンは立ち上がると、証言者用に設えられた円座に腰を下ろした。

インスは、殊更にゆっくりと尋ねた。

「イ・ソンジュン。あの晩、享官庁で二人を見たか?」

ソンジュンは黙っている。インスは尚も続けた。

「二人は確かに男色だ。違うか?」

暫しの沈黙が流れた。やがて正面を見据えたまま、ソンジュンは口を開いた。


「男色は……僕です」


一瞬の間があった。その場の誰もが、今自分が耳にした言葉の意味を、咄嗟には理解できなかったのだ。
儒生たちから、どよめきが起こる。インスは鋭い眼をソンジュンに向け、問うた。

「……今、何と言った?」

ソンジュンはゆっくりとインスに視線を移すと、皆の鼓膜をしっかりと震わせるように、答えた。


「男色なのは───この僕です」









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2013/06/18 Tue. 19:56 [edit]

category: 第十四話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: あらちゃんさま

お仕事頑張ってください(笑)

>そうなってたらソンジュンと義理の親子?ですか?うわ~

そ、そうか。しぇ~。なんかソレはソレで萌えな設定ですが。イカン。昼ドラ設定だ。
ソンスは青春ドラマだった(爆)サワヤカさがないと!サワヤカさが!←お前が言うな

いやもう、ユニが兵判のヨメになんてことになったら憤死です、憤死。ソンジュンもだけどワタクシが!(笑)
ユニを妾にって計画に兵判がもっと執着してたら、また別の展開があったんだろうなぁ……うむむ。

あまる #- | URL
2013/06/20 07:26 | edit

別の意味で仕事ができない

蜜月と別の意味で仕事ができない~~~

演じた役者さんには気の毒ですがホントに兵曹判書って嫌い。ユニったらこんなのの妾にならなくてよかったですよね。そうなってたらソンジュンと義理の親子?ですか?うわ~

蜜月のソンジュンが、ユニが危機一髪でこんなのの妾になるところだったって知ったら、死ぬね、きっと(爆)←死ぬところも見てみたい。

あらちゃん #- | URL
2013/06/20 00:09 | edit

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