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蜜月 1 

ソンス番外編です。
前回『水月』の続き。
アチラはちょっと真面目に書いちゃったので、
今回は少し肩のチカラを抜いて書きたいなぁと思ってマス。
多少お見苦しい点があるかもですが、何卒大目に見てやってください。

例によって更新は不定期~(^^ゞ




**********************************


事件は、突如として起こった。


その日、明倫堂に集った儒生たちは、朝から書を開いたり、教本を筆写したりと、思い思いの時を自由に過ごしていた。
予定通りであればこの時間は論語の講義が行われるはずだったのだが、何でも、講師であるチョン博士が王宮から急な呼び出しを受けたとかで、自習となってしまったのである。

ふいにもたらされた貴重な空き時間を無駄にする手はない。
ユニは嬉々として、溜まっていた仕事を片付けるべく、注解本を広げ、筆写に励んでいた。


「……きみは、本当に仕事が好きなんだな」

隣の席に座るソンジュンが、最早諦めの境地で呟く。

「注解本だもの。自分の勉強にもなるし、書の練習にもいいんだ。自習もできてお金も貰えるなんて、一石二鳥でしょ?」

ユニは悪びれた様子もなく、にっこりと笑ってそう言った。
くす、とソンジュンが笑みを漏らしたのは、その言葉が全く彼女らしいと思ったのと、うっかり擦ってしまったのだろう、彼女の頬についた黒い墨のせいだった。

顔を汚しているのにも気づかず、そんな風に無邪気に笑う彼女は罪作りなほどにかわいらしい。
そのまま黙っていようかという悪戯心がちらとソンジュンの頭を掠めたが、彼女が他の男どものからかいの種になるのは許し難いし、何より、女人に人前で恥をかかせることは士大夫〈ソンビ〉としての礼に反する。

ソンジュンは置いてあった墨溶き用の水の器を引き寄せると、袂から手巾を出してそれに浸した。
きょとんとしているユニの顎を指先でそっと持ち上げて顔を寄せると、こんなところでくちづけされるとでも思ったのか、漆黒の瞳が丸くなって「な、なに?」と慌てた。

「じっとして」

そう囁いて、優しく頬を拭ってやる。
手巾に移った墨の跡を見て、ユニが「ありがとう」と微笑んだ。
恥ずかしそうに頬を赤らめたその顔もまたたまらなく愛しく思え、ソンジュンは口元を緩めた。

すると。

「テムルよ……」

地の底から湧いたかというような声が、微笑み交わす二人の背後から聞こえてきた。
振り返るとそこには、文机に覆い被さるようにしてこちらに身を乗り出しているアン・ドヒョンがいた。
落ち窪んだ眼窩に、やつれて痩けた頬。かっと見開いてユニを凝視するその目は血走り、口は半開きだ。
彼が酷い二日酔いで廃人同様になっているときですら見たことのない表情である。あきらかに尋常ではなかった。

「ド……ドヒョン兄?」

身の危険を感じ取ったのだろう。ユニが怯えた声を出した。次の瞬間。

「頼む!俺の心の平穏のために、今だけ犠牲になってくれ!!!」

叫ぶや、ドヒョンが猛り狂ったヒグマのようにユニに襲い掛かった。
驚愕して目を見開いたユニが、声にならない悲鳴を上げたそのときだった。


みしっ。


そんな穏やかならざる音を、その場にいた儒生の誰もが聞いた気がした。
そこで彼等が目撃したのは、もろ手を上げ、まさしく前述の熊の如くにユニに飛びかからんとしているドヒョンと、その顔面に見事にめり込んでいるソンジュンの左足だった。

「……一体、何の真似ですか」

ユニを腕の中にがっちりと抱え込んで庇い、素早く身体を反転させた上でドヒョンの顔に足蹴りを食らわすという荒業を瞬時にやってのけたらしいソンジュンが、冷え冷えとした声で言った。

「ほ……ほへはひゃひや……」

ソンジュンの足を顔にめり込ませたまま、ドヒョンが弱々しい声を出した。ウタクが、さっと傍らにやってきて色眼鏡をずり上げる。

「『お……俺はただ』と、言っております」
「へうるが、はんはひははいふへ……」
「『テムルが、あんまり可愛くて』と、言っております」

「通訳などしなくていい」

ソンジュンは、長い脚をドヒョンの顔面から離すと、戸惑うユニの肩を抱えたまま立ち上がった。

「ここはとても自習などできる場ではない。僕らは部屋に戻る。───不愉快だ」

全身から怒気を漲らせ、ソンジュンは行衣の裾を翻した。

キム・ユンシクを連れ、明倫堂を出て行くその背中と、残されたドヒョンの、無残を通り越し凄惨でさえある血まみれの顔を交互に見ながら、儒生たちは成均館創立以来と言われる天才の、逆鱗の場所を知ったのだった。


*   *   *


「鼻骨骨折と、折れた前歯が二本。己の欲望の代償とはいえ、ドヒョン兄にはちょっと大きすぎたんじゃないか?」

薬房で哀れなドヒョンの怪我の具合を訊いてきたらしく、ヨンハが苦笑交じりに言った。
明倫堂に置きっぱなしになっていたユニの仕事道具を気を利かせて部屋まで持ってきたはいいが、ソンジュンの怒り冷めやらぬ表情に被害者であるユニまでもが畏まって正座している状況に、彼は若干呆れ気味のようだった。

「それくらいで済んだのなら、むしろ感謝するべきでは?」

この件に関して一切の情けは無用とばかりに、ソンジュンは冷ややかに言った。
だがヨンハはドヒョンの惨状を目の当たりにしたせいもあるのか、どちらかというと彼に同情的だった。

「先月の試験の結果が散々だったってんで、折角の休みに家にも帰らず、尊経閣にこもってたらしい。本宅と別宅に妻が二人もいるのに、だぞ。ついつい癒しが欲しくなる気持ちはわからんでもないじゃないか。ドヒョン兄のことだ、ちょっとふざけただけだろ」
「ふざけただけなら、なおさら性質〈たち〉が悪い」

ソンジュンはまなじりを一層険しくした。
ユニを庇うのが一瞬でも遅れていたらと思うとぞっとする。今回はたまたま彼女と同じ講義を取っていたから良かったようなものの、もし自分のいないときに同様のことが起こっていたら?

男たちの、悪ふざけの中に潜む凶暴さや非情さを、ソンジュンはよく知っている。ましてや、彼等はキム・ユンシクを男だと思っており、唯一の歯止めとなる”罪の意識”を期待するのは無理だ。そこに集団心理が加わろうものなら、それは狂気と紙一重である。冷静な判断力を欠き、野獣の群れと化した男たちの中では、礼も法も全く通用しない。

「ドヒョン兄、弱り切ってたぞ。出来心だったってテムルに謝りたいのに、カランが会わせてもくれないってさ」
「今後、あの人にはキム・ユンシクの半径20尺以内に近づくことを禁じました。アン・ドヒョンに肩入れする気なら、ヨリム先輩も同罪です」

ヨンハは驚いて目を剥いた。

「やめてくれ!20尺も離れたところから、どうやってテムルを可愛がれる?!この私にそんな非道なことを言うなんて、お前気は確かか!」

そうだよ、と、それまで黙っていたユニが横から口を挟んだ。

「もともと悪気があったわけじゃないし……。反省してるんなら、許してあげるべきじゃ……」
「きみは、身ぐるみ剥がされた後でも同じことが言えるのか?」
「だって、今回はその、あなたのお陰で結局何もなかったわけだし」
「何かあってからでは遅いんだ!」

ふぇ、と泣きそうな顔になったユニの肩をよしよしと叩いてやりながら、ヨンハが言った。

「けどさ、言わせて貰えば、お前らにも責任がないとは言えないんだぞ」
「どういう意味です」
「最近のお前たち二人を見てると、なんかこう、ムラムラっとくるんだよ。テムルが、やけに女っぽく見えるっていうか、カランが、あからさまにテムルを女扱いし過ぎっていうか……。ドヒョン兄がおかしくなる前の自分たちを振り返ってみろ。飢餓状態の男を迂闊にも刺激するようなこと、やってなかったか?」

ソンジュンははたと黙って、数刻前のことを思い返した。
ドヒョンがおかしくなる直前。ユニの頬に墨がついていたのを、拭ってやった。ただそれだけだ。

「別に、取り立てて言うほどのことはしてません」

「それだよ」と、ヨンハはソンジュンの方に身を乗り出した。

「自覚がないのが問題なんだ。男と女は一度身体を交わすと、急に距離感がなくなる。周りにはそれが見えてるのに、本人たちは気づいてないことが多いんだ。無事にテムルを卒業させたいなら、もう少し緊張感を持て。いいな!」

言いたいだけ言うと、ヨンハは立ち上がりさっさと部屋を出て行った。まったく世話のやける、と閉じた扉の向こうでブツブツ言う声が聞こえた。



呆然としていたソンジュンが、ごくりと唾を飲み込んで、言った。

「今……何て言った?ヨリム先輩」

同じく放心状態になっていたユニが、呟く。

「男と女は、一度身体を交わすと……って、確か」




























なんでバレてるんだ?????










互いの顔を見合わせたユニとソンジュンが、その後、恐慌状態に陥ったことは、言うまでもない。






つづく。






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2013/06/13 Thu. 16:17 [edit]

category: 蜜月

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: びわさま

ドラマのヨリムは確かに侮れません(^^ゞ
原作と比べると男っぷりは彼が一番上がってると思うんですよね~。
妙に退廃的で色気があって。え?それはワタクシの妄想ですか?(爆)

ワタシも四人が一緒にワチャワチャやってるのが大好きなので、
ユニソンのらぶらぶ以上にいっぱい書きたいですねー。
頑張ります(^^)

あまる #- | URL
2013/07/03 02:20 | edit

さすが笑

ヨリム先輩、ホントに敵には回したくないですね〜(^-^;)
コロが大好きな私ですが、ヨリムの底知れなさも目が離せません!
でも一番はやっぱり…4人衆が一緒に居るのが嬉しいです〜♪

あまるさんの番外編、ドラマの雰囲気がそのまま生かされていて、
読んでいてとても楽しくなります!
これからも楽しいお話を…お願いします(^_-)

びわ #p6hXJKzs | URL
2013/07/03 01:15 | edit

Re: ちゃむさま

おっしゃるとおり煮詰まってます……(_ _;)
って最近こればっか言ってるような気が。
あと一回で14話終わるのになぁ~。梅雨のジメジメのせい?(違)

スッキリ爽やかにとはいかないかもですが(^^ゞ←むしろ暑苦しい
楽しんでいただければ幸いにございます~。

あまる #- | URL
2013/06/17 01:26 | edit

お疲れ様です

題名を見てぷぷって笑っちゃいました、ごめんなさい。あ、あまるさん、さては煮詰まってるな…って。でも、あまるさんの描く番外編も大好物なので大歓迎です。関東は梅雨本番。じめじめしてます。おはなしが清涼剤になってます。ありがとうございます。

ちゃむ #- | URL
2013/06/16 15:06 | edit

Re: ちびけんさま

あんにょ~ん。コメントかむさはむにだ(^^)

あっち方面でヨリム先生に隠し事は無理です、おそらく(笑)
じぇらしーメラメラなソンジュンはワタクシにとってご馳走ですわー。
なのでユニにはもっともっと頑張って欲しいところです。

拍手もありがとうです~。お礼画像は何パターンあるのか最早ワタクシにもよくわかりませんが(^^ゞ
楽しんでいただけると嬉しいです。

あまる #- | URL
2013/06/16 00:21 | edit

ドキドキ☆

あまるさん あんにょん!

ヨリムの一言に爆笑させていただきました^m^
やはりヨリム兄、そっちの方面は鋭いですねv-154

ソンジュンのツンデレとやきもち・・もちユチョンの顔で♪
想像しただけで萌えます―v-238
だから拍手のボタンを押してソンジュンが出てくると
きゃっ!とか言いながらポチポチ押す(爆)
ビョーキです。。。。

ちびけん #a.bU6lrI | URL
2013/06/15 21:29 | edit

Re: じゅさま

いえいえ、コメはどうかお気になさらず(^^)
気が向かれたときで全然構いませんよ~。

> ソンジュンは毎日イライラヤキモキの連続なんでしょうね(≧∇≦)

ユニはたとえ男と思っていても触りたくなる人材ですから。
気の毒だけどソンジュンにはもーちょっとヤキモキしていただこうかと……(笑)

原作はドラマとはかなり違いますが、アチラも面白いですよ~。
ゼヒゼヒ楽しんでください♪

あまる #- | URL
2013/06/14 21:18 | edit

Re: 会****さま

はじめましてー。コメありがとうございます~(^^)
気まま更新になるかと思いますが、おヒマなときにでも覗いていただけると嬉しいです。
今後共よろしくお願いしますね~

あまる #- | URL
2013/06/14 20:56 | edit

いつも読み逃げでコメントご無沙汰しちゃってすみません。

さすがヨンハ(笑)
思わず私も笑いながら突っ込んでしまいました。
ユニはかわいいですもんね〜♪
皆が触りたいのもわかります!
ソンジュンは毎日イライラヤキモキの連続なんでしょうね(≧∇≦)

図書館で原作本を借りる事が出来そうですv(^_^v)♪
ドラマとの違いを楽しみたいと思いまーす。

じゅ #- | URL
2013/06/14 10:08 | edit

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# | 
2013/06/13 18:48 | edit

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