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第十四話 8 波及 

bandicam 2013-05-30 03-11-47-845
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二人の男色騒ぎは、思わぬ事態に発展していた。
ユンシクとジェシンを揶揄する貼り紙を前に、老論の儒生の一人が、さすがに少論のやることは違う、と嘲笑混じりに口にしたのが事の発端だった。それを近くで聞いていた少論の色掌、ミョンシクが黙っているはずはない。
すわ老論対少論の大乱闘勃発か、という状況を止めたのは掌議、ハ・インスだった。

「いくら成均館の礼と法が失われても、拳で解決するべきではない。成均館には、我ら独自の法と手順がある」

そう儒生たちを前に毅然として語ったインスの姿に、老論と対立する少論や南人の儒生たちまでもが感嘆し、それは結果的に成均館の掌議に対する信頼を深めることとなった。
暴力を嫌う理性の人、ハ・インスが、杖打の試合中にかこつけて故意にユンシクを殴ろうとするはずがない、という主張が誰からともなく上がり始め、ついに、掌議の権限停止の撤回を求める上疏が大司成に提出されるに至ったのである。

「掌議の権限停止は不当です。どうか速やかな撤回を!」

正録庁は、上疏に詰めかけた儒生たちで立錐の余地もない有様だった。
色掌ナム・ミョンシクを筆頭に党派を問わず集められた署名を前に、大司成は苦り切った顔をした。

「ナム・ミョンシク、少論の君がどうしてまた」
「ムン・ジェシンの件は同胞である我々少論の儒生たちの顔にも泥を塗るものです。掌議復権の暁には、我々は、今回の男色事件を斎会〈チェフェ〉にかけるつもりです」

「斎会?」と大司成が目を剥いた。

「斎会でキム・ユンシクとムン・ジェシンを裁いた上、厳重に処罰し、少論と南人の、ひいては成均館の名誉を回復することをお許しください」
「お許しください!」

ミョンシクの後に続き、儒生たちが一斉に声を上げる。
大司成は、傍らに立つユ博士とチョン博士に助けを求めるように視線を投げた。だが最早ここまで事が大きくなってしまっては、彼等にも為す術はなかった。


翌日、館内の掲示板には、斎会の招集を呼び掛ける貼り紙が貼り出された。
そこには、男色の噂で成均館の名誉を汚した儒生、ムン・ジェシンとキム・ユンシクを斎会にかけ、事が事実と判明すれば青襟録〈チョングムノク〉から永久にその名を削除するとの文言が記されてあった。


*   *   *


中庭を、いつものように取り巻き連中を引き連れ、悠然と歩くインスがいる。
ジェシンは物も言わずつかつかと歩み寄ると、いきなりその襟首を片手で掴んだ。

「根も葉もない噂だ。今すぐやめろ!くだらない噂に振り回されるほど、成均館は低俗で浅はかな場所だってのか!」

インスは落ち着き払って、ジェシンの血走った眼を見返した。

「ここが成均館だからこそ、善悪を明確にすべきなのだ。ムン・ジェシン庠儒」

そう言うと、インスはおもむろにジェシンの手首を掴み、引き剥がした。

「名誉を回復したいか、ムン・ジェシン。ではあの晩なぜ享官庁にいた?そこで何があったのか、ありのままを話せ。そうすれば、面倒な斎会など即刻中止してやる」

ジェシンは言葉を飲み込んだ。敵ながらなんという巧妙なやり口だ。
男色を否定すれば、紅壁書であることを認め、紅壁書であることを隠し通すなら、男色を認めるしかなくなる。
どちらにしても、最初から自分たちに逃げ場はないわけだ。
黙り込んだジェシンを、インスはせせら笑った。

「おやおや、なんてことだ。言えない事情があるらしいな。それは何だ?コロ。ああ、色事故に話せないか」
「てめぇ!」

咄嗟に振り上げた拳を、掴まれる。決死の表情でジェシンを止めたのは、ミョンシクだった。

「文句があるなら、斎会で正々堂々と潔白を証明しろ。これは、お前だけじゃない。我々少論の名誉にも関わることなんだ」

そうだ、証明しろ、と口々に声を上げる儒生たち。
唇を噛んだジェシンは、怒りに震えながらも、握り締めた拳を下ろすしかなかった。


*   *   *


尊経閣の壁に貼られた斎会の知らせを、時を忘れたように呆然と見上げている小さな背中があった。
部屋に戻ろうとしていたソンジュンは、思わず足を止める。
気配に気付いたユンシクが振り返った。その顔を見ないようにして、ソンジュンは足早に通り過ぎようとした。
だが、ユンシクは怯む素振りも見せず、ソンジュンの行く手を塞いだ。

「あの晩、享官庁でぼくたちを見たの?」

真っ直ぐに切り込むように、そう尋ねてくる。イ・ソンジュンは二人の密会現場の目撃者として、儒生たちの噂の中では殆ど当事者同様に扱われていた。

「その話はしたくない」
「まさか、ぼくが本当に男色だと思ってる?」

ユンシクは食い下がるように言った。彼の表情は必死だった。

「ぼくは……ぼくは男だ。同じ男のコロ先輩を好きだなんて、そんなの有り得ないよ!」

───有り得ない。

ユンシクの言葉は、ソンジュンの胸を容赦なく抉った。それはもしかしたら、彼の口から、ジェシンとの只ならぬ関係を告白されるよりもソンジュンを打ちのめすものかもしれなかった。

そうだ。男が男を想うなんて、有り得ないことだ。
君にとっては、そんな感情は、おぞましく、嫌悪すべきものでしかないだろう。
現に、僕だってそうだった。君を知るまでは。

「……同じ男を好きになるのが有り得ないことなら、今後は行動に気をつけるんだな。そうすれば、皆が君を誤解するようなことは起こらない」
「イ・ソンジュン、ぼくは……!」
「その判断は斎会でしたらどうだ」

いきなり、割って入る声があった。後ろ手を組み、薄い笑みを浮かべてゆっくりと二人に歩み寄ってきたのは、儒生たちの上疏により掌議の権限を早々に取り戻したハ・インスだった。

「イ・ソンジュン庠儒、君を今回の斎会の証人とする」

目を瞠ったソンジュンにインスは向き直り、更に言った。

「君はムン・ジェシン、キム・ユンシクとは同室生である上、あの晩の目撃者でもある。これほど相応しい人選はないだろう」

ユンシクは言葉を失ってソンジュンを見た。だがインスは拒否を許さぬ目でソンジュンを睨み据え、宣言でもするかのように告げた。

「斎会の権威には、成均館の儒生は絶対に逆らえない。そして斎会は王や官僚も介入できぬ故、すべては掌議次第だ。私はイ・ソンジュンを証人として指名する」






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2013/05/30 Thu. 03:20 [edit]

category: 第十四話

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