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第十四話 7 噂 

bandicam 2013-05-27 01-18-45-183

*************************


朝は、どうしたってやってくる。

目が覚めたとき、そんな当たり前のことを、うんざりしながら考えた。
割れそうに痛む頭と、床に転がった酒瓶、そして脱ぎ捨てられた快子が、昨夜の自分を物語っていた。

ソンジュンは乱れた単衣の襟元を直すと、解けかかっていた帯紐を結んだ。
心は相変わらず重いままだった。酒なんて、一時の逃げに過ぎないとわかってはいたが、そんなものにさえ頼らずにいられない己が情けなく、自己嫌悪は増すばかりだった。

扉の開く音と共に、眩い日差しがソンジュンの目を刺した。
そこに立っていたのはユンシクだった。

「飲めないくせに、どうして酒なんか」

怒ったようにそう言って、転がっていた酒瓶を拾い上げる。ソンジュンはその手から酒瓶を奪い取ると、音を立てて文机の上に置いた。
立ち上がったソンジュンに、ユンシクは言った。もうやめなよ、と。

「よくわかったから。以前のぼくたちには戻れないって。だから、そんな怖い顔しなくていい。きみの望みどおり、ただの同室生として接してやるから」

ユンシクは破れた快子を脱いで替えの儒生服を羽織ると、ソンジュンの顔を見もせずに部屋を出て行った。
いつ来ていたのか、外でスンドルの声が聞こえた。
結納の日取りが決まったとかどうとか、そんなどうでもいいことをうきうきとユンシクに話している。

どうでもいいこと。そうだ。当事者である自分にさえそうなのだから、ユンシクにとっては尚更だろう。
イ・ソンジュンが誰と結婚しようが、彼にはきっとどうだっていいことなのだ───。

身支度を整え、部屋を出たソンジュンを、ユンシクに相手にされなかったのだろうスンドルが、干柿を齧りながら横目でじろりと見た。

「まったく、坊ちゃんのお陰で苦労しますよ。あのきれいな学士様で23人目ですよ!坊ちゃんの性格に耐え切れず、逃げ出したご学友の数!」

瞼に降りかかる光の眩しさに、ソンジュンは目を細めた。その視界に、明倫堂の方へ歩いて行くユンシクの背中が見える。
噛んでいた干柿をごくんと飲み下して、スンドルが尋ねた。

「相手の足りないところも受け入れなきゃ。さ、聞かせてください。あのきれいな学士様には、いったい何が足りないってんです?」

もう、やめるべきなのだ。こうして、彼の後ろ姿ばかり追い続けるのは。

「彼に、足りないものなんてない。僕の気持ちが───」

彼の姿が門の向こうへと消える寸前、僅かに見えた、その白い横顔。
心臓が、ぎゅっと掴まれたように痛んだ。

「僕の気持ちが、多すぎるんだ……」


*   *   *

その日の午後、尊経閣で予習のための本を探していたユニは、書架の向こうに見慣れたざんばら頭があるのに気づいた。思わず、持っていた本を放り出し、駆け寄る。

「先輩!」

見つかった、とでも言うように、ジェシンはバツの悪そうな顔をした。
もう大丈夫なんですか?と心配顔で尋ねるユンシクに構わず、すたすたと通路に出て行く。

「まだ寝てたほうがいいです。こんなに早く動いたら傷が───」

ジェシンの前に立ち塞がってそう言うと、ぐい、といきなり肩を引き寄せられた。

「はいはい、ちょっとごめんなさいよ」

と、前が見えないくらいに書物を抱えた書吏二人が後ろを通って行って、危うくぶつかりそうになっていたのに気付く。顔を上げたユニは、ジェシンが痛みに顔を顰めているのを見、さっと顔色を変えた。

「先輩!だから言ったのに!まだ寝てなくちゃ……」

再び強く腕を引っ張られて、ユニはジェシンに抱き寄せられる格好になった。
その耳元で、ジェシンが低く呟いた。

「お前、ここに紅壁書がいるって大声で言いふらす気か?」

はっとして、目線だけ動かして周囲を伺う。
そうだった。こんな、人がいるところで迂闊なことは言えない。怪我をした紅壁書が、昨夜成均館に逃れたという話は、当然儒生たちの耳にも入っているだろう。

ユニはすみません、と口元を押さえると、ぺちぺちと自分で自分の頭を叩いた。
ジェシンは小さく笑ったが、まだ一人で歩くのは辛そうだったので、ユニはそのまま肩を貸し、二人で尊経閣を出たのだった。


そんな彼等を、物陰からじっと見ていた者達がいた。
ドヒョン、ヘウォン、ウタクら例の三人組である。

「ほら。やっぱり普通の仲じゃないよ、ありゃ」

ヘウォンが、菓子を齧りながら言った。ウタクが、色眼鏡をずり上げる。

「昨夜、享官庁から出てきたイ・ソンジュンが青ざめてたわけだ」
「だな。同室生があんな仲じゃ、衝撃だろうさ」

大きく溜め息をついたドヒョンは、ほとほと感心したように呟いた。

「やっぱりあいつは、ただの大物〈テムル〉じゃなかった。男女を問わないとは……恐るべし大物」
「どういうことだ?コロとテムルが何だって?」

ぱっ、とドヒョンが口を押さえたが、時既に遅しだった。彼等の背後で、少論のミョンシクたちが只ならぬことを聞いた、とばかりに、色めき立っていたのである。


*   *   *


成均館という閉塞的な場所では、一旦ついた火は広がるのも速い。
“コロとテムルが男色”という噂は、キム・ユンシクの可憐な美少年っぷりと、あのイ・ソンジュンが目撃した、という要素も手伝い、ある種の現実味を帯びて儒生たちの間でまことしやかに囁かれた。

果ては、男同士で抱き合う姿を描いた絵や、二人を中傷する貼り紙が構内のあちこちに貼られるに至り、当然、その噂は大司成ら教官たちの耳にも届くこととなった。

「まったく、こんなバカな話がありますか!神聖な成均館で、だ、だ、男色などと!よりによって私の在任中に!」

正録庁。どこからか引剥がしてきたいかがわしい貼り紙を机の上に叩きつけるや、大司成は顔を真っ赤にして叫んだ。

「まだ事実かどうか確認できてはおりませんよ、令監〈ヨンガム〉」

チョン博士は宥めるようにそう言ったが、大司成には逆効果だったようである。ますますいきり立って、目を剥いた。

「こんなことが、石頭の儒学者たちに知れたら一大事です。私の首がかかってるのに、そんな悠長なこと言ってる場合ですか!」

しかし、とユ博士が冷静に状況を告げる。

「我々が事態を収拾するには、既に噂は広がり過ぎています。最早手遅れかと」

大司成の顔色が土気色になった。今にも卒倒しそうに、ああ、と天を仰ぐ。

それにしても、キム・ユンシクの周りではどうしてこうも次から次へと問題が起こるのか。
王との約束も果たさねばならぬというのに、これではそうもいかなくなってしまった、と、ヤギョンは深い溜め息をついたのだった。






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2013/05/27 Mon. 01:22 [edit]

category: 第十四話

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