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第十四話 4 共闘 

bandicam 2013-05-20 10-18-32-838

*******************************



ヨンハの部屋を出たインスたちを待っていたのは、ユ博士だった。
彼の見回りは常に厳格だ。紅壁書が現れた晩であろうと、相手が掌議であろうと、それは変わることはない。

「就寝時間はとうに過ぎているぞ。皆5点ずつ減点だ」

講義の時よりも一層声を厳しくして、ユ博士は言った。
ビョンチュンが慌てて進み出る。

「ほ、紅壁書が成均館に逃げ込んだと知らせがあったんです!」
「紅壁書だと?」
「紅壁書は逆賊です」

逆に詰問するように、インスはユ博士を見据えた。

「まさかこの成均館で逆賊を匿うなど、有り得ませんよね」

しかし、とユ博士は言った。

「成均館は治外法権だ。いくら紅壁書といえど、勝手な捜索は……」
「紅壁書なら是が非でも捜さねば」

そんな声と共に、暗がりから現れたのはチョン博士だった。

「で、見つかったのかね?紅壁書は」
「───いえ」

インスの答えにチョン博士は小さく頷くと、「ついて来なさい」と踵を返した。
不本意ながらも、インスたちはその断固とした背中に従う他なかった。

「何故呼ばれたのか理解できないという顔だな」

ほんの数本しか蝋燭が灯されていない正録庁は、部屋の殆どが闇に沈み、チョン博士の机の周囲だけが浮かび上がって見えた。この空間を支配しているのはチョン博士に他ならず、それだけでインスは腹立たしさを覚えた。

「成均館は治外法権だ。王命が下るまで義禁府も兵曹も、学生を取り調べることはできん。たとえ教官でもな。それは、成均館が孔子を祀る聖殿だからだ。さらに、学問の自由と真理を守るためでもある」
「ですが、唯一掌議には」

反論しようとしたインスをぴしゃりと遮り、チョン博士は言った。

「学生に罰則を与え得る掌議は、実に嘆かわしい事に権限停止処分中だ。君の不注意でな」

こめかみのあたりが、怒りでどくどくと激しく脈打つのを感じ、インスは拳を握り締めた。
だがチョン博士は、インスの発言を一切許すつもりはないらしく、重ねて言った。

「肝に命じておけ、ハ・インス。君はどの学生にも、掌議の権限を行使できない。規定を破れば、儒学者を招集し、掌議の地位を剥奪する」

(成均館の博士ふぜいが、この私から掌議の資格を剥奪するだと?)

インスは黙っていたが、その口元には不敵な笑みが浮かんでいた。

やれるものならやってみるがいい。私が、そんな脅しに屈すると思ったら大間違いだ───。


*   *   *


部屋の扉の隙間から外を伺っていたヨンハは、ほっと小さく息をつくと、室内に向かって独り言を言った。

「流石にもう疑ってこないだろう」

うず高く積まれた春本を両手で掻き分けるように乱雑に押し遣る。その向こうに垂らされた帷帳をヨンハはさっとめくり上げた。そこに隠されていたのは、納戸の扉だった。把手を引いて開けると、不安げに揺れるユンシクの瞳がこちらを見上げた。大丈夫だ、と力づけるように頷いてみせたヨンハだったが、ユンシクの膝に頭を預けてぐったりとしているジェシンを見、その眉を曇らせた。

怪我を負った身では、この狭苦しい納戸の中で身体を折り曲げているのは相当な苦痛だっただろう。
インスの蛇のような執拗さを、ヨンハは今ほど憎んだことはなかった。

「ありがとうございました、先輩」

布団を敷き、ジェシンを寝かせて落ち着いたところで、ようやくほっとしたのだろう、ユンシクが言った。
「礼を言うのは私の方だよ」とヨンハは微笑んだ。
見れば、ユンシクの儒生服はあちこち泥と血で汚れ、青い快子の裾は大きく裂けてしまっている。それだけでも、奮闘ぶりがわかろうというものだ。大怪我を負った紅壁書がたまたま出くわしたのがユンシクだったことは、実に幸運だったと言うべきだろう。

「ところで、どうしてわかったんですか?紅壁書の正体がコロ先輩で、今夜、こんなことが起こるって」

ユンシクの問いに、ヨンハはふと笑顔を収めた。いつもの彼なら、己の観察眼をここぞとばかり得意気に披露するところだが、今夜はとてもそんな気にはなれなかった。
まさしくユンシクの件がいい例だが、秘密の匂いを嗅ぎとるとどうにも好奇心がうずくのがヨンハの習性である。
だがそんな彼にも、知りたくなかったことというのはある。
紅壁書の正体がそれだ。
壁書の筆跡や文体の癖、そしてジェシンの行動傾向と紅壁書の活動を照らし合わせてそうと確信したときには、知ってしまったことを酷く後悔した。
こんな事実を知りさえしなければ、夜な夜な危険に晒される友人の身を案じることもなかったのにと。

そんなヨンハの心中を知ってか知らずか、代わりに答えたのは、当のジェシンだった。

「こいつはク・ヨンハだからな。十年間俺を追い回してる、しつこい奴だ」

お前な、とヨンハは思わずジェシンの目の前に握った拳を突き出した。

「もう一度言ってみろ。殴ってやるぞ、その傷口」

筆より重いものを持ったことのない拳だが、今なら確実にこの強情っぱりの男にお灸を据えてやれる。半ば本気でそう言ったヨンハだったが。
ジェシンの片頬に、いつもの冷めた笑いが浮かんでいるのを見、肩の力がようやく抜けていくのを感じた。
殴る代わりに、両手で彼の手を握りしめる。

「───だがまあ、許してやるよ。生きて帰ろうと、頑張ってくれたから」

正直、今回ばかりは覚悟していた。本人に生きる意志がなければ、助かるものも助からない。成均館を出たときの、むしろ死に急いでいるようなジェシンの言葉が、ずっとヨンハの胸に重く沈んでいたのだ。

「ああ、ほんとに良かった。愛してるぞぉ、コロ」

言いながら、握った手に頬ずりする。途端にジェシンは ぱっと手を引っ込めて「男のくせに気持ち悪いんだよ」と吐き捨てた。

そんな二人のやり取りを、ユンシクは微笑んで見つめていた。ヨンハは急に真面目な顔に戻って、言った。

「テムル、今日のことは誰にも秘密だぞ。今こいつは、王までが懸賞金を懸けて捜してる凶悪犯だ。イ・ソンジュンにも言うなよ。奴のためにも、その方が……」
「わかってます」

言われるまでもない、というように、ユンシクは力強く頷いた。
秘密を知ったのがキム・ユンシクだったことは、ジェシンだけでなく、自分にとっても幸運だったのだと、ヨンハはそのとき思った。






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2013/05/20 Mon. 10:20 [edit]

category: 第十四話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: あらちゃんさま

木枯らし紋次郎とはまた渋すぎる……(笑)
わざわざ10年前って言ってるから、コロ兄が亡くなったことが二人の関係に何らかの形で影響してることは確かでしょうね~。
兄ちゃんが亡くなるまでは、コロも真面目に学童に通ういい子だったんじゃないかと思うし。
イロイロ妄想が膨らむ部分ではありますな(^^)

ドラマはそうでもないけど、原作は明らかに腐女子を煽る(笑)場面が随所にあって、営業的なイヤラシさを感じないでもないんですが(^^ゞ実際相手が男だろうが女だろうが気にしないんじゃないかと思わせるところがヨンハの魅力でもあるので、コロに対しては限りなく愛情に近い友情かなぁという気はしとります。
コロがああだから、BLにはなってないだけ、というか。
(やっぱキケンな男だヨリム先輩(^^ゞ)

あまる #- | URL
2013/05/21 06:12 | edit

ヨンハの気持ち

この辺り、ヨンハのジェシンを大事に思う気持ちがすごく伝わってきますね~ユニより大事(当たり前か)
二人の関係を私はBLとは考えていません(それもいいけど♪)
想像するのは、木枯らし紋次郎(古)の主題歌。
紋次郎がどんなに荒んだ毎日を送っていようと 

”けれども お前はきっと待っていてくれる~
 きっとお前は風の中で待っている~”  というところです。

お前とは、異性ではなく、同性の、本当の心許せる友、と思っています。

原作でもドラマでも触れてませんが、ヨンハがジェシンを追いかけるようになるきっかけがあったはず。それって、ヨンハの痛みに触れる事件なんじゃないかな?中学生くらいのお年頃? 
その事件を介してヨンハはジェシンにシンパシーを感じたのでは?と想像して楽しんでいます。10年前って言うとジェシンは兄を亡くした頃でもありますね。

仮にジェシンがいなかったら、ジェシンがユニに惹かれていなかったら、ヨンハはだまってソンジュンにユニを渡してはいないのでは?
ユニを想うジェシンの気持ちを想って自分に縛りをかけている?

お目汚しでしょ~もないことを書いてしまいましたが、いろいろ想像すると楽しくて仕方ない(笑)のです。うちではだ~れも相手にしてくれないんです。
どうかご容赦下さい(>_<)→中間テスト始まってるのに誰が相手するか!

あらちゃん #- | URL
2013/05/20 23:23 | edit

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