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第十四話 1 目撃 

bandicam 2013-05-02 05-23-57-315


*************************************


尊経閣を飛び出したユニは、篝火に照らされた前庭を早足で突っ切りながら、溢れる涙を拭った。
耳を冷たく打ったソンジュンの言葉が、繰り返し彼女の胸を刺し、堪えようとしても、視界はすぐにぼやけた。

友人で充分だと思っていた。女として愛されたいなどと、身の程知らずなことを願ったわけではないのに、彼はそれすらも許してはくれない。
ソンジュンと芙蓉花の結びつきは、それほどに強いものなのだ。今まで自分たちの間で培ってきた友情という絆も、簡単に断ち切ってしまえるほどに。

ユニの足は次第に速くなった。涙でぐちゃぐちゃになった顔を誰にも見られたくなくて、人の気配と灯りを避けるうち、いつの間にか享官庁の近くまで来てしまっていた。
暗がりに逃げ込んで歩を緩めたのも束の間。彼女は、塀の上からどさりと重い音をたてて目の前に降ってきた影に はっとして立ち止まった。

一瞬、黒い砂袋のように見えたそれは、人だった。低い呻き声をたてて、地面にうずくまっている。
恐る恐る近寄ってみたユニは、その人物が全身黒ずくめで覆面までしているのに気づき、ぎくりとした。成均館の書吏たちが、篝火まで焚いていつもより構内を明るくしている理由を思い出したのである。

(まさか……紅壁書?!)

思わず尻込みしたが、よく見ると男は酷い怪我をしているようだった。世間を騒がすお尋ね者とはいえ、怪我人を放っておくことはできない。助け起こそうと身を屈めたユニの肩を、男の血まみれの手が掴んだ。

(えっ……?)

そのまま、ぐいと引き寄せられる。助け起こすというよりも強く抱き締められているような格好になって、ユニはうろたえた。

「……よかった」

覆面の男が、そう言った。くぐもってはいたが、どこか聞き覚えのある声だという気がして、ユニは動きを止めた。その耳元で、男はあえぎながら、だがはっきりと言った。

「また……会えた」

ユニは弾かれたように男から身体を離した。唯一窺い知ることのできるその目を、食い入るように見つめる。
男は苦しげに大きく息を吐くと、震える手で覆面を剥ぎ取った。
そこから現れた顔に、ユニは息が止まるほどの衝撃を受けた。

「コロ……先輩?」

ほとんど声にならない声で尋ねたユニに、ジェシンは珠のような汗の浮かんだ顔を歪めて、笑った。


*   *   *


その頃、インスはビョンチュンを始めとする配下を庭先に集め、指示を飛ばしていた。

「紅壁書が成均館の塀を越えた。奴は深手を負っている。そう逃げ回ることはできないはずだ。必ず引きずり出せ」

ビョンチュンらは一斉に頷くと、各々棍棒を手に散らばっていった。
報告によれば、あと一歩のところで思わぬ邪魔が入ったと父は歯噛みしていたようだが、インスにはむしろ好都合だった。お陰でこの手で、紅壁書の化けの皮を剥いでやることができる。
あの四人組の中の誰であろうと、構わなかった。

紅壁書の正体か詳らかになれば、あの可愛げのない奴らばかりか、王にも相当な打撃を与えてやれるはずだ。
全て計画通りだ、とインスは低く笑い、篝火の向こう、紅壁書が息を潜めているのであろう暗がりを見据えた。


*   *   *


手元に落ちた影が、ふいに踊った。書物に目を落としていたソンジュンは思わず顔を上げ、扉の方を伺う。
だがそれは、短くなった蝋燭の炎が、小窓の風に煽られただけだった。
視線を戻した彼はまた文字を追い始めたが、目は紙の表面を虚しく撫でるだけで、内容など、少しも頭に入ってこなかった。

ソンジュンの胸を占めていたのは、ユンシクの目からこぼれ落ちた、涙だった。
理不尽な仕打ちをした自分を、怒るなり殴るなりすればいいのに、彼は何も言わず、ただ涙をこぼして、出て行った。

ソンジュン自身、うじうじとユンシクを避けているだけだという自覚はあった。
そんな女々しさを本人に知られたくなくて、関心などないと言った。
白々しい嘘だ。彼にとって、キム・ユンシク以上に重要な存在など、この成均館にいるはずもなかった。

『成均館を卒業したら、もう一緒にいられないと言ったろ。そのときまで……同室生として、前みたいに仲良く過ごしたいという願いすら、ぼくには許されないっていうのか?』

ユンシクの言葉は、旬頭殿講の後、ここで二人で交わしたあの約束を思い起こさせた。
彼に、ずっとそばにいろと言ったのはソンジュンの方だった。あのときは思いもしなかった。この同じ場所で、もう友人には戻れないと彼に告げ、あんな涙を見ることになるとは。

ユンシクは、あのときと何も変わってはいない。変わったのはソンジュンだ。なのに、彼はきっと自分を責めるのだろう。友であることを望んだ自分が分不相応だったのだと、ソンジュンを恨みもせずに。

胸が、きりきりと締め上げられるように痛んで、ソンジュンは手にしていた本を置いた。

───違う。キム・ユンシク、悪いのは君じゃない。僕なんだ。

彼は踵を返すと、急いで尊経閣を出た。卑怯な自分が恥ずかしかった。
士大夫〈ソンビ〉にあるまじき邪な想いを勝手に抱いたのは自分だ。彼の前に懺悔して許しを請わなければならないのは自分であるのに、成り行きに任せて、非があったのは彼だと言わんばかりの振る舞いをしてしまった。

蔑まれるかもしれない。気味が悪いと怖れられるかもしれない。だがそれでもいいと思った。彼が自分自身を責め、傷つくよりはずっとましだった。

打ち明けよう。君が好きだと。
罪に問われるべきは、男である君にこんな想いを抱いてしまった僕なのだと。

ソンジュンはユンシクの気配を追って、その姿を必死に捜した。だが東斎はもちろん、明倫堂や六一閣にも、彼はいなかった。享官庁まで来てやっと、ユンシクらしき小柄な背中を見つけ、彼はほっと息をついた。声を掛けようとして、思わず立ち止まる。

ユンシクは何故か、竹箒を持って地面を掃いていた。といって、周囲をちらちらと伺いながら、音をたてないように箒を動かしている様は、お世辞にも奉仕精神を発揮しているようには見えなかった。彼はそうやってひとしきり地面を撫でると、竹箒を放りだし、享官庁の方へと駆け出していった。

明らかに妙だった。
ソンジュンは知らず、足音を忍ばせてユンシクの後を追っていた。





*********************
GW?ナニソレなあまるですどうもこんにちわww

ぢつは今回ヒジョーに悩んだ箇所が2つほどありまして、書き終わるのにいつもの倍はかかりました。
ひとつは、コロの「生きてて良かった」ってやつ。
怪我してるのをいいことにユニをギュ~して「生きてて良かったァ」てあんた(笑)と一度思っちゃったらもうそこから抜け出せなくなってしまって(^^ゞ
スミマセン。セリフが全然違うのはそういうワケです。やっぱこの場面はお笑いにしちゃイカン、と。
や、勝手にお笑い変換してるのはワタクシなんですけど。

で、ふたつめは、あんだけユニを冷たくあしらっといて、思い直して追っかけるソンジュンの心理。
何を思って彼はユニを追ったのか、ユニにもう一度会って、何を言うつもりだったのか、考え始めるとどんどんドツボにハマってしまい、うがーっ!もうアカン、とフテ寝すること数日(爆)
で、こうなりました。
皆様の解釈はイロイロだと思いますが、とりあえずあまるはこんな感じなんだとどうかご理解いただければ。
では~。







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2013/05/02 Thu. 05:26 [edit]

category: 第十四話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: shinonさま

いえいえ、過去記事にコメントいただけるのはスゴク嬉しいです。ありがとうございます~。
中にも書いてますが、このシーンは書くのにすごい苦労した覚えがあるので、愛着もひとしおです。
そう言っていただけると悩んだ甲斐があったなーと思います(^^)

あまる #- | URL
2013/12/19 08:49 | edit

遅ればせながら…

ドラマの中で、このシーンとチャンチギ大会の保健室のシーンはいつも切なく観てました。でも、あまる様の描くユンシクの気持ちを思うソンジュンの心理を読んでいるうちに、そうだったのね〜と涙してました。素敵な解釈ですね!

shinon #mveJhveA | URL
2013/12/18 15:30 | edit

Re: あらちゃんさま

いやいや、ワタシもね、フツーにドラマ見てたときは「ヤベ、言い過ぎた」的な行動だったと思ってたんデスよ。
けど文章にしようとするとどうにもこうにもしっくりこなくて。
やっぱソンジュンのあの特異な性格のせいかも……(笑)


あまる #- | URL
2013/05/03 23:32 | edit

GW?ナニソレ右に同じです

100人いれば100通りの解釈があるとよく言いますが、いろんな角度から新しく読み直すことができて、幸せを感じております♪ホントによかった。

私は今日あまる様の描く14話を見るまで、
感情のタガが外れて子どもにGWAAAAっと怒って、言わなくていいことまで言っちゃって、子どもが泣いてすぐ後悔するんだけど止まらなくて、言うだけ言っちゃってから後で子どもに言い訳がましく許しを乞う・・・という自分ちのパターンに当てはめて見ておりました。恥ずかしながら(笑)

あらちゃん #- | URL
2013/05/02 19:48 | edit

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