スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
web拍手 by FC2

--/--/-- --. --:-- [edit]

category: スポンサー広告

cm --  tb --  

第十三話 12 願い 

bandicam 2013-04-26 16-13-00-854
*****************************


兵曹判書の口元には、残忍な笑みが浮かんでいた。

獲物が罠にかかったという知らせを受け、雲従街のとある専売商人の屋敷に駆けつけた彼は、今まさに紅壁書が官軍に囲まれ、袋の鼠となっているのを見たのだ。

いくら武芸の達人と噂される紅壁書といえど、この状況で、武装した数十名の兵が相手では逃げおおせるはずもない。太刀を振り回し、激しい乱闘を繰り広げていた紅壁書の一瞬の隙を突き、兵の剣が紅壁書の脇腹を割いた。紅壁書の身体がよろめき、途端に動きが鈍くなる。

待ちに待った瞬間がついに訪れたのだ。

「捕らえよ!」

兵曹判書の声と共に、紅壁書を取り囲む官軍兵の輪が一気に狭まる。
そのときだった。

彼等の頭上から、突如として降ってきた3つの影が、紅壁書と官軍の間に割って入った。皆、漆塗りの黒い編笠を被り、顔まではわからない。彼等は紅壁書を庇うように官軍の前に立ちはだかると、目にも止まらぬほどの鮮やかな太刀さばきで、兵を次々となぎ倒していった。

「あやつらは一体……!」

形勢はたちまち逆転し、兵曹判書の顔に焦りの色が浮かぶ。彼は傍らの指揮官の肩を掴み、叫んだ。

「何者だ!紅壁書の仲間か?!」
「わかりません」
「何だと!」

視線を戻した兵曹判書はそのまま、頬を強張らせた。手中に収めたはずの手負いの紅壁書は、既にその姿を闇の中にくらましていた。


*   *   *


王は、指先に摘んだ煙草の葉をぱらぱらと紙の上に置くと、慣れた手つきでそれを巻き始めた。
近頃、王は読書堂にいるときは必ずといっていいほど巻き煙草を作っている。もしかすると以前と比べ、吸う本数が増えたのかもしれない。
そんなことを少し気にしながら、領議政チェ・ジェゴンは低頭し、静かに言った。

「兵曹判書から紅壁書を逃がすことができたようです。先程、手の者から知らせがございました」

そうか、と王は言い、休むことなくそのまま二本目の作業に取り掛かった。

「ですが、紅壁書は深手を負ったようだと」

ジェゴンが重ねて言うと、王はふと手を止め、深く嘆息した。

「───愚かな奴だ」

そう言ってまた、乾いた煙草の葉を紙の上に乗せる。言葉とは裏腹に、王のその表情は微かに笑っているようにも見えた。


*   *   *


本の頁をめくっていたソンジュンは、ぴたりとその手を止めた。
こちらに近づいてくる小さな足音に、思わず耳をそばだてる。
誰のものか、振り向かずともわかった。歩幅の短い、体重をあまり感じさせない足音。そのせいか、彼の歩調はいつもどこか軽やかだ。本人が、酷く落ち込んでいるときでさえ。

ソンジュンのすぐ横で、足音が止まった。悪夢から目覚めた直後のように、身体が硬直して動けなかった。

「ここにいたんだ。てっきり、部屋だと思ったのに。偶然だね」

はは、とユンシクの乾いた笑い声が、誰もいない尊経閣に響いた。それをかき消すように、ソンジュンは音をたてて本を閉じると、無言のまま立ち去ろうとした。が、彼等のいる書架の間の通路は酷く狭い。ちょっとユンシクが身体をずらしただけで、ソンジュンは行く手を塞がれてしまう。

「もしかして、ぼくのせい?」

黒い瞳が、ソンジュンをじっと見上げていた。

「ぼくと顔を合わせたくなくて、ここに来たの?尊経閣の次は、どこへ行く気だ?」

微かな苛立ちが、ユンシクの声に混じっていた。ソンジュンは目を逸らした。何もかも見透かされそうな彼の瞳が、怖かった。

「……自意識過剰だ。わざと避けなきゃならないほど、キム・ユンシクという人間が僕にとって重要な存在だとでも思ってるのか」

自分の口から発せられたものでありながら、ソンジュンは己の声を他人のそれのように聞いていた。
だがユンシクの瞳は少しもひるまない。ソンジュンを開放するどころか、ますますその光を強めて彼を追い詰めようとする。

「まさか、入清斎のときのことを、まだ怒ってる……?」

答える気にもならず、ソンジュンは足を踏み出してユンシクに背を向けた。その背に投げつけるように、ユンシクは言った。

「ぼくと過ごしてきた時間は、君にとって何だったんだ?ぼくらの間にあったものは、そんな些細な誤解で失われるほど、意味の無いものだったのか?それとも───」

言いかけて、ユンシクは俯いた。一呼吸置いてから、彼は小さく言った。

「それとも……あの人のことがそれほど……好きなの?」
「その話は、もうしたくない」

「いや、話すべきだ」と、押し被せるようにユンシクは言い、ソンジュンに迫った。

「成均館を卒業したら、もう一緒にいられないと言ったろ。そのときまで……同室生として、前みたいに仲良く過ごしたいという願いすら、ぼくには許されないっていうのか?そんなに、大それた願いなのか?ぼくは欲張りか?答えろよ、頼むから」

ユンシクの畳み掛けるような悲痛な言葉が、ソンジュンの胸を切り刻む。
あの、入清斎の晩を思い出すと胸がむかついて仕方ないのは確かだ。ユンシクはそれが芙蓉花のことが原因だと思っているが、実際は違う。

酔いつぶれて、無防備にジェシンの背におぶわれていたユンシクの姿を思い出すたび、怒りがこみ上げた。
自分の身体を顧みずだらしなく酔っ払うユンシクにも腹が立つし、まるで彼の保護者みたいな態度をひけらかすジェシンも癇に障る。何より彼が一番許せないのは、ユンシクにあんな無茶をさせた自分自身だった。

僕が、君にこんな邪な想いを抱きさえしなければ、僕らはきっといい友人になれた。
他愛無い話をして笑い、時には互いの悩みを打ち明けて、励まし合って。刺激し合い、競争し合いながら共に成長していける、そんな友人同士に。

だけど駄目なんだ、キム・ユンシク。
僕はもう、君といい友人になることなど望んではいない。
それだけでは満足できないことに、気づいてしまった。

いつも君のそばにいて、君に触れ、君のぬくもりを感じていたい。
君を僕だけのものにして、僕だけを見、僕だけに笑い、僕だけを───愛して欲しい。
そう、願ってしまった。

この願いは、叶うことなど決してあってはならない罪だ。
だから、僕は君から離れる。
苦しみに耐えられなくなった僕の心が、これ以上の罪を犯してしまう前に。
君の姿を、声を、その笑顔を、全て自分の中から締め出して鍵を掛け、僕は逃げ出す。
いつか時が経って、君のことを忘れられる日が来るまで。

そうするしかない未熟で、情けない僕をどうか、許してくれ。

ソンジュンはユンシクを見た。

「───よく聞け、キム・ユンシク。僕は、君と以前のように親しくするつもりはない」

ユンシクの瞳が、大きく見開かれた。心と身体がバラバラになるというのはこういうことかとソンジュンは悟った。激し過ぎる違和感に目眩すら覚え、酷く気分が悪かった。だが彼は必死に平静を装って、言った。

「もう、無理なんだ」






↓楽しんでいただけたらポチっとお願いします
にほんブログ村 小説ブログ 韓ドラ二次小説へ
スポンサーサイト
web拍手 by FC2

2013/04/26 Fri. 16:18 [edit]

category: 第十三話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

cm 4  tb 0 

コメント

Re:ちゃむさま

やや、許すも何も(笑)
そっかー。ガラケーからだと確かにブロとも申請は面倒かも……。
なんだか今までのブロともさんにもヒジョーに面倒なことお願いしてたのね、とあらためて申し訳ない気がしてきた(^^ゞ
とゆうわけで、何か今更ですがパスワードだけでも入れるようにしました。
コレはコレでまた面倒かもしれませんが(笑)お気が向かれましたら、「パスワードよこせ」とでもメールフォームにて申請くださいまし~。

ってか、“夢じゃないかソンジュン”って!(笑)

あまる #- | URL
2013/04/28 01:16 | edit

わかる~

あらちゃんさん!わかります。ブロとも申請。結構長くあまるさんファンを自認している私も小数点ものは読めていません。そもそもガラ系携帯で訪問している時点でものすご~いものぐさなものでf^_^;でも、あまるさん、いつも心よりエールを送っているので許してね。本編も早く夢じゃないかソンジュンを読みたいです。頑張って下さい。

ちゃむ #- | URL
2013/04/27 05:11 | edit

Re: あらちゃんさま

ワタシもここしばらく幸せボケしたソンジュンしか書いてなかったので、本編の痛いソンジュンの感覚を思い出すのに苦労しました(笑)

ブロとも限定記事に関しては、ちらっとでも面倒だなぁと思われたのであれば全然スルーしていただいて構わないですよ。というか、むしろスルーしてください(^^ゞ
注意書きにもありますが、ホント落書きみたいなモンですので。
「面倒なことさせたわりにはコレかい」と思われちゃう方が怖いワ(笑)

あまる #- | URL
2013/04/27 01:28 | edit

久々に胸が締め付けられました

この感覚、ここしばらく忘れていましたが、やっぱりソンギュンガンはいいです~(T_T)
目に涙のたまっていたユニよりよっぽど泣きそうな表情のソンジュンがたまらなく切なくて、うれしい。

水月18,5も是非のぞかせていただきたいと思いつつ「ブロとも申請について」を読ませていただくのですが・・・
>これだけです。やっぱわからん、ってかたはご遠慮なくお問い合わせください(^^)/
いえいえ、わからんっていうより、面倒くさい・・・人間終わってるかもなファンですいません。でも18,5のぞいてみたい(>_<)葛藤してるよりやればいいようなモンですが、情けないです。
(ちなみに・・・水月18。感激のあまり何もコメントできない状態です。)

あらちゃん #- | URL
2013/04/27 00:18 | edit

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://amaru0112.blog.fc2.com/tb.php/190-29dc4aa9
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

2017-10
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。