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水月 17 

というわけで本日二度目の更新です。
次回でやっと終わりだー。
後は本編に集中します(^^ゞ
*************************


「筆洞へは、筆写の仕事で行ったのか?」

夜更けの享官庁。湯桶に張られた湯の温度を確かめながら、できるだけさり気なく聞こえるように、ソンジュンは尋ねた。外出から戻ったユニが、時折何か深く考え込むような様子を見せていたのが気になったのだ。

だがユニは「あ、うん」と短い返事を返しただけで、脱いだ長衣〈トゥルマギ〉をたたむのにこちらに背を向けてしまった。
なんとなく釈然としないものを感じたが、それ以上訊くのも詮索が過ぎるような気がして、ソンジュンは黙って濡れた手を拭った。

ユニが、網巾を外した。髷がほどけ、柔らかそうな髪が彼女の背中にふわりと落ちた。
髪を下ろした彼女は、何処からどう見ても、正真正銘の女人だ。額から頬にかけて波打つように振りかかる黒髪が、ふるいつきたくなるほどなまめかしくて、ソンジュンは目を逸らすことができなかった。
注がれる視線に気付いたユニが、目で「なに?」と尋ねる。

「あ、いや……何でもない」

もう少し見ていたかったのにと残念に思いながら、ソンジュンはそそくさとそこから出ようとした。

「待って。あの……」

呼び止める声に、ソンジュンは振り返った。ユニの、思い詰めたような瞳が彼を見ていた。

「正直に言って。あなたは、私にどうして欲しい?あなたが、妻として私に家を守って欲しいと思ってるなら、そうする。私の望みは、あなたの気持ちを無視してまで叶えたいものじゃないの。所詮は女だって思ってくれて構わない。ご大層な使命感なんかより、今の私には、目の前にいるあなたの方が大事。いくら考えてみても、そうなの」

ソンジュンは一旦は開きかけた扉を再び閉じ、湯桶の傍に立つユニに歩み寄った。

「言ったはずだ。僕の望みは、きみが思いどおりに生きてくれることだと」

ユニはふるふるとかぶりを振った。

「我侭だってわかってる。勝手過ぎるって、自分でも思うわ。出仕できるものならしてみたいなんて思ってるくせに、怖いの。どうしようもなく、怖い」

今にも泣き出しそうな顔で俯くユニを宥めるように、ソンジュンは彼女の髪を撫でた。指先に伝わってくる柔らかさは想像以上で、彼の胸は密かに震えた。

「勇敢なきみが、どうしたんだ?陛下は、きみは傷つくことなど怖れていないと仰せだったのに」

わななく唇を強く噛み締めたユニは、自分を落ち着かせようとしているのだろう。少しの間目を閉じ、大きく息を吸った。
彼女の小さな手が、ソンジュンの袂を握る。

「私のお父様は……私のために世界を変えようとして命を落とした。私が怖いのは……自分の大それた望みのために、あなたを失ってしまうことよ」

ソンジュンの脳裏を、王の言葉がよぎる。

『あの者にとって、女人であることが出仕の妨げになるとは余は思わぬ。妨げになるとすればそれは───そなただ』

「僕は、きみを絶対に独りにはしない。忘れたのか?陛下から密命を受けたとき、ずっとそばにいるときみに誓った」
「ちゃんと覚えてるわ。でも予測もできない、恐ろしいことが起こるのがこの世の中よ。もし私の存在が、あなたの立場やあなたの身を脅かすようなことがあったら、とても生きてはいけない」

ソンジュンはいつもよりずっと華奢に見えるユニの肩を抱き締め、言った。

「何度でも約束する。今後何があろうと、僕はきみのそばを離れない。絶対にだ」
「……あなたが、私に愛想を尽かすかもしれないわ。私はきっとこの先、あなたをたくさん傷つける。怒らせて、がっかりさせる」
「そうすればいい。僕は構わない。たとえそうなっても、僕がきみに愛想を尽かすなんて有り得ない」

そんなことで彼女を自分の中から追い出せるなら、いっそ楽だとソンジュンは思う。どんなにあがいても彼女と離れることなどできはしない。そう悟ったから、今自分はここにこうしているのだ。

我慢しているわけではない。ましてや、犠牲になっているわけでも。これからも、そうなるつもりはない。
けれどどうしたら、彼女にそれをわかってもらえるのだろう。

肩に顔を埋め、懸命に嗚咽を堪らえようとするユニがいじらしく、ソンジュンは両手で彼女の顔を挟んで上向かせた。
その頬に零れ落ちる涙を、挟んだままの親指でそっと拭う。それでも溢れて止まらない涙を、唇を寄せて掬い取った。
涙は塩辛いはずだが、何故か微かな甘さも感じる。これがユニの味だと思うと、それだけでは足りなくなった。
反対側の頬にもくちづけようとしたが、それはかなわなかった。僅かに顔を離したとき、唇と唇が思いがけず触れあってしまい、一瞬、互いの視線が交差する。そうなるともう、誘惑には勝てなかった。

引き寄せられるように押しあてた唇の隙間から、時折漏れるユニの甘い吐息。その前には、理性など全くの無力だった。

小さな歯列の間に舌を滑りこませると、おずおずと迎えた彼女がそれに応えた。絡み合う想いはすぐに熱を帯び、互いをより深く求め合う。

いっそこのまま、彼女を食らい尽くすか、抱き潰すかして、ひとつになってしまえたらいい。
そうすれば、この苦しみにも似た恋しさから、少しは開放されるかもしれない。
歯止めの効かない心と、自分自身に、得体の知れない恐れを抱くこともなくなるかもしれない。

キム・ユンシクへのやり場のない想いに打ちひしがれていたあの頃には、想像もしなかった。
互いの心を通わせたあとも、こんな風に胸が痛むなんて。

「駄目だ。これ以上は……」

長いくちづけのあと、ソンジュンはやっとの思いでユニを引き剥がし、小さくあえいだ。このまま彼女に触れていたら、自分を抑えられる自信がなかった。

「イ・ソンジュン」

ユニの張り詰めた声が、空気を震わせた。

「一緒にいると触れたくなるのは……男の方だけだって、思ってる?」
「え……?」

するりと、ユニは帯紐を解いた。はだけた単衣の隙間から、きつく巻いたサラシが見えた。そこにも手を掛け、躊躇いなくするすると解いていく。
ソンジュンは狼狽えて、咄嗟にユニの手を掴んでしまった。

「何をする」

ユニは顔を上げ、真っ直ぐにソンジュンを見つめた。

「ここで今すぐ、私をあなたの妻にしてください」






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2013/04/18 Thu. 06:55 [edit]

category: 水月

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

良かった~勘違いじゃなくて!(*´∇`*)日付も変わってないし、本編の時は差し替え公開してたし…でも、このソンジュンとユニの心理描写が大好きで、更新が無くて淋しい時に何度も読んでたので…

あっ!催促ではないですょ! ! 笑



めめちゃん #- | URL
2013/10/24 23:46 | edit

Re: めめちゃんさま

ひえぇぇ~。よくお判りで……(^^ゞ
スゴイなぁ。バレないと思ってたのに(笑)
本編の18話書いてたら、水月のこのくだりにどうしてもユニパパのこと入れたくなってしまって。
細かいとこまで読んでいただいてありがとうございます~。

あまる #- | URL
2013/10/24 00:58 | edit

勘違いならごめんなさい…(-_-;)

少し変わりましたか?

めめちゃん #- | URL
2013/10/23 23:57 | edit

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